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【2024年8月21日発売】ジャイパーカ錠50mg、100mg(ピルトブルチニブ)の特徴・作用機序

開発の経緯について
ジャイパーカ[一般名:ピルトブルチニブ]は、Loxo Oncology, Inc.が開発を始め、イーライリリー・アンド・カンパニーに開発が移管されたブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)に対して可逆的な非共有結合型の阻害作用を有する経口投与可能な BTK 阻害剤である。
BTK は、B 細胞抗原受容体及びサイトカイン受容体を介したシグナル伝達に関わる蛋白質であり、B 細胞内でのBTK シグナルは、B 細胞の増殖、遊走、走化性及び接着に必要な伝達経路を活性化する。可逆的非共有結合型 BTK 阻害剤であるピルトブルチニブは、BTK の Cys481(C481)に共有結合する既存の BTK阻害剤とは異なり、ATP 結合ポケット内の複数のアミノ酸に非共有結合することで BTK キナーゼ活性を阻害し、B細胞性腫瘍の増殖を抑制すると考えられる。
マントル細胞リンパ腫(MCL)は B 細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)の 1 つであり、リンパ節濾胞のマントル層を構成する B 細胞と同じ細胞表面形質を有する腫瘍である 5、6)。MCL は、再発を繰り返す難治性の予後不良な疾患である。
ピルトブルチニブは、2019 年に BTK 阻害剤の前治療歴がある再発又は難治性の MCL 及び慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含む B 細胞性 NHL を対象に安全性と有効性を検討するための、国際共同第 I/II 相臨床試験(用量反応探索試験を含む:BRUIN-18001 試験)を開始した。BRUIN-18001 試験は検証的臨床試験ではないが、本試験の結果、米国では 2023 年 1 月に BTK 阻害剤を含む少なくとも 2 ラインの全身療法後の再発又は難治性の MCL、2023 年 12 月に BTK 阻害剤及び BCL-2 阻害剤を含む少なくとも 2 ラインの治療後の CLL 又は SLL を効能又は効果として迅速承認された。また、欧州では 2023 年 10 月に単剤療法としてBTK 阻害剤の治療後の再発又は難治性の MCL を効能又は効果として承認された。本邦においても BRUIN18001 試験において有効性及び安全性が確認された結果、2024 年 6 月に「他の BTK 阻害剤に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫」の効能又は効果で承認された。なお、本承認を裏付ける解析は、BRUIN-18001 試験の 3 つのデータカットオフ日の中間データに基づいている。

作用機序

ピルトブルチニブは、B 細胞に発現する B 細胞受容体の下流シグナル伝達分子である BTK に対する阻害作用を有する低分子化合物である。ピルトブルチニブは、野生型 BTK 及び共有結合型の BTK 阻害剤に対して耐性となる C481 変異を有する BTK に非共有結合し、BTK のキナーゼ活性を可逆的に阻害することにより、B 細胞性腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。

製品情報

商品名ジャイパーカ錠50mg/ジャイパーカ錠100mg
一般名
(洋名)
ピルトブルチニブ
(Pirtobrutinib)
承認年月日2024年6月24日
発売年月日2024年8月21日
メーカー製造販売元: 日本イーライリリー(株)
販売元:日本新薬(株)
名前の由来特になし
ステムチロシンキナーゼ阻害剤:-tinib

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効能又は効果

他のBTK阻害剤に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫

警告
本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
禁忌
本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者

用法及び用量

通常、成人にはピルトブルチニブとして200mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

注意
本剤投与によりグレード3以上の副作用が発現した場合には、ベースライン又はグレード1以下に回復するまで本剤を休薬すること。また、添付文書に記載の目安を参考に用量調節すること。

代謝・代謝酵素について

代謝酵素(in vitro)

ピルトブルチニブは CYP3A4、UGT1A8 及びUGT1A9 により不活性代謝物に代謝されることが確認された。

外国人健康成人 12 例を対象として、イトラコナゾール(強い CYP3A 阻害剤)及びリファンピシン(強いCYP3A 誘導剤)の反復経口投与が、ピルトブルチニブの単回経口投与時の薬物動態に及ぼす影響を評価した結果、ピルトブルチニブのAUC 及び Cmaxは、イトラコナゾール併用ではそれぞれ 49%及び 4%増加、リファンピシン併用では 71%及び 42%減少した。

食事の影響

外国人健康成人 20 例を対象にピルトブルチニブ 200 mg を空腹時及び高脂肪の朝食(800~
1000 kcal の高カロリー食)後に単回経口投与したときのピルトブルチニブの薬物動態に対する食事
の影響を評価した。その結果、高脂肪の食後投与は、空腹時投与と比較して、ピルトブルチニブの
Cmax が 22.5%減少し、AUC には影響がなかった。

外国人健康成人 10 例を対象にピルトブルチニブ 200 mg を空腹時及び標準食後に単回経口投与し
たときのピルトブルチニブの薬物動態に対する食事の影響を評価した。その結果、標準食後投与は、
空腹時投与と比較して、ピルトブルチニブの Cmaxが約 20%減少し、AUC には影響がなかった

副作用(抜粋)

重大な副作用として、感染症、出血及び骨髄抑制が報告されている。

10%以上の副作用には、下痢、疲労が報告されている。

こちらのサイトは記載日時点の添付文書、インタビューフォームをまとめたものです。記載内容には十分な注意を払っておりますが、医療の情報は日々新しくなるため、誤り等がある場合がございます。参考にする場合は必ず最新の添付文書等をご確認ください。

情報更新日:2024年9月

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