おくすり情報

【2025年3月19日発売】ルンスミオ点滴静注1mg・30mg(モスネツズマブ(遺伝子組換え))の特徴、作用機序

『みなさん、こんにちは。今回は2025年3月に新たに発売された再発・難治性の濾胞性リンパ腫治療薬「ルンスミオ点滴静注1mg・30mg」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ルンスミオ点滴静注1mg・30mgとは

ルンスミオ(一般名:モスネツズマブ(遺伝子組換え))は、中外製薬株式会社が2025年3月19日に発売した、抗CD20/CD3ヒト化二重特異性モノクローナル抗体製剤です。対象は再発または難治性の濾胞性リンパ腫(Follicular Lymphoma:FL)患者です。


濾胞性リンパ腫は白血球の一種であるBリンパ球ががん化した非ホジキンリンパ腫の一つで、国内の年間罹患者数は約9,000人と推定されています。FLは低悪性度(インドレント)リンパ腫に分類されますが、病理学的にはGrade1~3A、3Bに分けられ、Grade3Bはより悪性度が高く積極的な治療を要します。一般的に初期は化学療法に感受性が良好ですが、再発・難治性になると治療効果が次第に低下し、予後が不良となるケースが多く、特に2つ以上の治療歴のある患者では新たな治療法の開発が望まれていました。


こうした背景のもと、ルンスミオはCD3を発現するT細胞とCD20を発現するB細胞腫瘍を同時に標的とし、T細胞を活性化させて腫瘍細胞を直接攻撃・破壊する機序を持ちます。抗CD20抗体を含む標準治療が無効または再発したGrade1~3AのFL患者に投与されます。

製品概要

作用機序と特徴

ルンスミオの有効成分モスネツズマブは、CD3に発現するT細胞とCD20に発現するB細胞性腫瘍細胞の両方に結合する二重特異性モノクローナル抗体です。この結合によりT細胞が活性化され、標的となるCD20陽性のB細胞腫瘍を攻撃し、傷害すると考えられています。


これにより、免疫系の細胞間相互作用を強化し、従来の抗CD20抗体製剤に比べて再発・難治性患者にも効果が期待できる新しい治療オプションとなっています。点滴静注により、安定した血中濃度での投与が可能です。

効能・効果・適応症

再発または難治性の濾胞性リンパ腫(Grade1~3A)患者の治療

用法・用量と投与時の注意点

21日間を1サイクルとして以下の通り投与します。




8サイクル終了時に完全奏効を得た場合は治療終了、病勢安定または部分奏効の場合は最大17サイクルまで継続可能です。



投与前にはサイトカイン放出症候群予防のため、副腎皮質ホルモン剤などの前投与が必須です。投与速度は患者の状態により調整し、初回は4時間以上かけて点滴します。

相互作用・代謝経路

モスネツズマブは蛋白質製剤であり、主に免疫細胞で代謝されるため肝薬物代謝酵素系とは関係がありません。しかし、投与によるサイトカイン放出でCYP酵素活性が抑制され、シクロスポリンやシロリムスなどのCYP基質薬の血中濃度が上昇する可能性があるため、これら併用時は副作用に注意が必要です。


また、生ワクチン等の接種は免疫抑制の影響で注意が必要です。

食事の影響について

点滴静注製剤のため、食事の影響は特に報告されていません。通常通りの食事摂取が可能です。

主な副作用と安全性情報

処方時のチェックリスト(医師向け)

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

ケアポイント(看護師向け)

まとめ

『ルンスミオは、再発・難治性の濾胞性リンパ腫患者さんに新しい治療の選択肢を提供する抗CD20/CD3二重特異性抗体です。リスク管理を徹底しながら、現場で積極的に活用していきたいですね。患者さんのQOL向上に繋がることを願っています。』

モバイルバージョンを終了