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【2025年3月19日発売】ダトロウェイ点滴静注用100mg(ダトポタマブ デルクステカン)の特徴、作用機序

『みなさん、こんにちは。今回は2025年3月に新たに発売された抗TROP-2抗体薬物複合体「ダトロウェイ点滴静注用100mg」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ダトロウェイとは

ダトロウェイ(一般名:ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え))は、第一三共株式会社より2025年3月19日に新たに発売された抗悪性腫瘍剤です。TROP-2を標的とした抗体薬物複合体(ADC)で、化学療法歴のあるホルモン受容体(HR)陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌を対象としています。

乳癌は日本人女性で最も多いがん腫であり、2023年には約9.7万人が罹患、約1.6万人が亡くなったと推計されています。乳癌の約70%を占めるHR陽性・HER2陰性タイプは内分泌療法が標準ですが、治療抵抗性や再発症例も多く、新たな治療選択肢が求められていました。

製品概要

作用機序と特徴

ダトロウェイは、TROP-2(trophoblast cell surface antigen 2)を標的とするヒト化モノクローナル抗体に、トポイソメラーゼⅠ阻害作用を持つカンプトテシン誘導体(DXd)をペプチドリンカーで結合した抗体薬物複合体(ADC)です。

腫瘍細胞表面に高発現するTROP-2に選択的に結合し、細胞内に取り込まれるとリンカーが加水分解され、遊離したDXdがDNA損傷作用およびアポトーシス誘導作用を示します。これにより腫瘍増殖抑制効果を発揮します。HR陽性・HER2陰性乳癌に対し、新たな治療選択肢として期待されています。

効能・効果・適応症

化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌(アントラサイクリン系またはタキサン系抗悪性腫瘍剤による治療歴がある患者が対象)

用法・用量と投与時の注意点

通常、成人にはダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注します。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降は30分間まで短縮可能です。患者の状態によって適宜減量します(1段階減量時4mg/kg、2段階減量時3mg/kg)。

投与前にはInfusion reaction予防のため、抗ヒスタミン薬・解熱鎮痛剤、必要に応じて副腎皮質ホルモン剤の前投与を検討します。点滴バッグは遮光し、薬液の血管外漏出に注意しながら投与を行います。

相互作用・代謝経路

ダトポタマブ デルクステカンは細胞内リソソームで分解されますが、結合しているカンプトテシン誘導体(DXd)はCYP3Aで代謝されます。CYP3A阻害薬(イトラコナゾールなど)や誘導薬(リファンピシンなど)、P-gpやBCRP阻害薬との併用により、DXdの血中濃度上昇の可能性があるため、併用薬には注意が必要です。

主な排泄経路は胆汁排泄(糞中排泄約62%)であり、肝機能障害例では薬剤曝露量が増加する可能性があります。

食事の影響について

点滴静注製剤のため、食事による影響はありません。

主な副作用と安全性情報

副作用発現時はNCI-CTCAE ver5.0に準拠し、休薬・減量・中止などの対処を行います。

処方時のチェックリスト(医師向け)

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

ケアポイント(看護師向け)

まとめ

『ダトロウェイは、乳がん治療における新しい選択肢として登場した抗TROP-2抗体薬物複合体です。効果と安全性を両立させつつ、現場でしっかりと副作用管理と患者支援を行いながら、QOL向上を目指していきたいですね。』

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