
『みなさん、こんにちは。今回は2025年4月に新たに発売された小細胞肺がん治療薬「イムデトラ点滴静注用」について、簡単にまとめました。』
はじめに:イムデトラとは
イムデトラ(一般名:タルラタマブ)は、アムジェン株式会社より2025年4月16日に新発売された、がん化学療法後に増悪した小細胞肺がん(SCLC)を対象とした二重特異性タンパク製剤です。小細胞肺がんは悪性度が高く進行が早い予後不良の疾患で、特に三次治療以降の標準治療は確立されておらず、新たな治療選択肢が求められていました。
製品概要
- 商品名:イムデトラ点滴静注用1mg、同点滴静注用10mg
- 一般名:タルラタマブ(遺伝子組換え)
- 製造販売元:アムジェン株式会社
- 薬効分類:その他の腫瘍用薬(二重特異性タンパク製剤)
- 効能・効果:がん化学療法後に増悪した小細胞肺がん
- 承認日:2024年12月27日
- 発売日:2025年4月16日
- 包装:1mg/10mg 各1バイアル(輸液安定化液7mL 2バイアル添付)
作用機序と特徴
タルラタマブは、T細胞のCD3と小細胞肺がん細胞のデルタ様リガンド3(DLL3)の両者に結合する半減期延長型二重特異性抗体製剤です。DLL3はSCLC細胞の85~96%に高発現し、正常組織ではほとんど発現しません。タルラタマブはDLL3陽性腫瘍細胞にT細胞を誘導し、MHCクラスI・II非依存的に腫瘍細胞を傷害するため、免疫回避機構を持つSCLCに対しても新しい治療アプローチとなります。
効能・効果・適応症
がん化学療法後に増悪した小細胞肺がん(SCLC)に適応します。一次治療および二次治療での有効性・安全性は確立していません。
用法・用量と投与時の注意点
通常、成人には1日目に1mg、8日目に10mgを1時間かけて点滴静注します。15日目以降は10mgを2週間間隔で1時間かけて点滴静注します。サイトカイン放出症候群(CRS)や神経学的事象リスクのため、初回・8日目の投与後24時間は入院管理が必要です。投与前1時間以内に副腎皮質ホルモン剤投与、投与後は輸液を実施します。副作用発現時は休薬や中止を検討します。
相互作用・代謝経路
サイトカイン放出症候群発現時はCYP酵素が抑制され、カルバマゼピン、シロリムスなど治療域の狭いCYP基質薬の血中濃度が上昇し副作用リスクがあります。併用薬の管理と慎重なモニタリングが重要です。
食事の影響について
点滴静注製剤のため、食事の影響はありません。
主な副作用と安全性情報
- サイトカイン放出症候群(52.6%):発熱、低血圧、低酸素、疲労など
- 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(5.3%)、筋力低下、失語症、意識レベル低下
- 血球減少(貧血13.5%、リンパ球減少7.5%、好中球減少6.0%、血小板減少4.5%など)
- 発熱(32.3%)、味覚障害(27.1%)、食欲減退(26.3%)、疲労(17.3%)、無力症(15.8%)
- 感染症、便秘、悪心、肝機能障害、発疹、注射部位反応など
副作用出現時は速やかに医療機関へ連絡し、適切な対応を行います。Gradeに応じて休薬や中止、必要に応じてトシリズマブ投与も考慮します。
処方時のチェックリスト(医師向け)
- 治療歴(化学療法後増悪例)・適応症を確認
- サイトカイン放出症候群・神経学的事象の説明と同意取得
- 投与初回・8日目は24時間入院管理
- 投与前後の血液・肝機能検査の実施
- 併用薬(CYP基質薬等)の確認と管理
- 妊婦・授乳婦への注意、妊娠可能な年齢の女性には避妊を指導
服薬指導のポイント(薬剤師向け)
- サイトカイン放出症候群や神経症状など重大副作用の初期症状の説明
- 副作用発現時は速やかに医療機関へ連絡するよう指導
- 併用薬がある場合は必ず確認
- 妊娠・授乳・避妊への注意点を説明
ケアポイント(看護師向け)
- 投与前後のバイタルサイン、意識状態、発熱・皮疹などの観察
- サイトカイン放出症候群・神経毒性などの早期発見と迅速な報告
- 血液・肝機能検査への協力、感染予防の指導
- 患者・家族への副作用説明と心理的サポート
まとめ

『イムデトラは、新たな作用機序による小細胞肺がん治療薬として、難治例に新たな選択肢を提供します。副作用管理と安全な投与体制を徹底し、現場でQOL向上に貢献していきたいですね。』