・エソメプラゾールは、AstraZeneca が開発した、ラセミ体であるオメプラゾールの一方の光学異性体(S 体)を含有するプロトンポンプインヒビター(PPI)である。
・酸分泌抑制効果を示し、逆流性食道炎に対して速やかな症状持続消失効果を示す。
・2012 年 6 月、アジア共同第Ⅲ相比較試験成績に基づき、「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の効能・効果が追加承認された。
・2013 年 2 月、「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」の効能・効果が追加承認された。
構造式または示性式
名前の由来
Next Millenniumに由来する
ステム
ベンズイミダゾール誘導体の抗潰瘍剤:-prazole
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発売日
2011年9月
メーカー
アストラゼネカ株式会社
適応
○胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症、Zollinger-Ellison症候群、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
○下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
作用機序
胃壁細胞内においては、各種酸分泌刺激物質(ヒスタミン、アセチルコリン、ガストリン)が胃壁細胞膜上に存在するそれぞれの受容体へ結合することにより、一連の胃酸分泌反応がおこる。この反応の最終過程では、胃壁細胞内から分泌細管腔に H+を放出し、代わりに K+を取り込むプロトンポンプと呼ばれる酵素 H+, K+-ATPase が関与している。
本剤は、強酸性領域である胃壁細胞の分泌細管腔に集積し、酸により活性体であるスルフェンアミド体に変換される。この活性体の S 部分が、プロトンポンプの SH 基と結合し(S-S 結合)、プロトンポンプの働きを阻害することによって、胃酸分泌を抑制する。
なお、本剤とプロトンポンプの SH 基との結合は不可逆結合であり、プロトンポンプのターンオーバー(分解・再合成)に合わせて、胃酸分泌は回復すると考えられている。
代謝などに関して
主に肝臓で代謝され、血漿中の主代謝物はスルホン体及びヒドロキシ体であった(いずれも不活性)。
ヒト肝ミクロソームを用いた in vitro 肝代謝試験の結果、エソメプラゾールは主に CYP2C19によりヒドロキシ体、5-O-脱メチル体に、CYP3A4 によりスルホン体に代謝された。代謝固有クリアランスに基づき算出したヒドロキシ体及び 5-O-脱メチル体の生成に関与する CYP2C19の寄与率は 73%であった。
発現系 CYP2C19及びヒト肝ミクロソームを用いた in vitro試験において、エソメプラゾール(濃度:10~100μM)は CYP2C19 の活性を阻害した(Ki 値:7.9 及び 8.6μM)。
ほとんどが腎で排泄されるが、一部は腸肝循環を経て糞中に排泄される。
相互作用
また、本剤の胃酸分泌抑制作用により、併用薬剤の吸収を上昇又は低下させることがある。
(1) 併用禁忌とその理由
アタザナビル硫酸塩(レイアタッツ)
本剤の胃酸分泌抑制作用によりアタザナビル硫酸塩の溶解性が低下し、アタザナビルの血中濃度が低下することがある。
リルピビリン塩酸塩(エジュラント)
本剤の胃酸分泌抑制作用によりリルピビリン塩酸塩の吸収が低下し、リルピビリンの血中濃度が低下することがある。
(2) 併用注意とその理由
ジアゼパム、フェニトイン、シロスタゾール 、ワルファリン
本剤は主に肝臓のチトクロームP450 系薬物代謝酵素 CYP2C19 で代謝されるため、本剤と同じ代謝酵素で代謝される薬物の代謝、排泄を遅延させるおそれがある。
タクロリムス水和物
相互作用の機序は不明であるが、タクロリムスの血中濃度が上昇することがある。
ジゴキシン、メチルジゴキシン
本剤の胃酸分泌抑制作用によりジゴキシンの加水分解が抑制され、ジゴキシンの血中濃度が上昇することがある。
イトラコナゾール
本剤の胃酸分泌抑制作用によりイトラコナゾールの溶解性が低下し、イトラコナゾールの血中濃度が低下することがある。
チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブ、ニロチニブ、エルロチニブ)
本剤の胃酸分泌抑制作用によりこれらの薬剤の溶解性が低下し、吸収が低下することがある。
ボリコナゾール
ボリコナゾールは本剤の代謝酵素(CYP2C19 及び CYP3A4)を阻害することが考えられる。
ネルフィナビルメシル酸塩
相互作用の機序は不明であるが、ネルフィナビルの血中濃度が低下するおそれがある。
サキナビルメシル酸塩
相互作用の機序は不明であるが、サキナビルの血中濃度が低下するおそれがある。
セイヨウオトギリソウ
セイヨウオトギリソウが本剤の代謝酵素(CYP2C19 及び CYP3A4)を誘導することが考えられる。
メトトレキサート
相互作用の機序は不明であるが、メトトレキサートの血中濃度が上昇することがある。
重大な副作用
- ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
- 汎血球減少症、無顆粒球症(いずれも頻度不明)、血小板減少(1%未満)
- 劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、肝不全(いずれも頻度不明)
- 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群 (Stevens-Johnson 症候群)(いずれも頻度不明)
- 間質性肺炎(頻度不明)
- 間質性腎炎(頻度不明)
- 横紋筋融解症(頻度不明)
- 横紋筋融解症(頻度不明)
- 錯乱状態(頻度不明)
重大な副作用(類薬)
類薬(オメプラゾール)で以下の副作用が報告されている。
- 溶血性貧血
- 視力障害
- 急性腎障害