おくすり情報

スプリセル錠(ダサチニブ)の特徴・作用機序

開発の経緯について

 スプリセル®錠(ダサチニブ水和物;以下ダサチニブ)は、米国ブリストル・マイヤーズスクイブ社によって開発されたチロシンキナーゼ阻害薬である。本剤は5種類の重要な発癌性チロシンキナーゼ/キナーゼファミリー(BCR-ABL、SRCファミリーキナーゼ、c-KIT、EPH(エフリン)A2受容体及びPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体)に対するATPの結合を競合的に阻害する作用を有している。
 ダサチニブはアミノチアゾール基を有する経口チロシンキナーゼ阻害薬であり、BCR-ABL阻害作用を有しているが、イマチニブメシル酸塩(以下、イマチニブ)とは異なる分子構造を有する。ダサチニブは、イマチニブを含む既存の治療に抵抗性又は不耐容となった慢性骨髄性白血病(CML)及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)を対象とし、臨床開発が始められ、その後、初発の慢性期CMLを対象とした臨床開発が行われ、現在、世界60ヵ国以上において承認を取得している。

作用機序

 ダサチニブは特定の蛋白チロシンキナーゼのキナーゼドメインにあるATP結合部位においてATPと競合する。本剤はBCR-ABLのみならずSRCファミリーキナーゼ(SRC、LCK、YES、FYN)、c-KIT、EPH(エフリン)A2受容体及びPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体を阻害する(IC50=0.2〜28 nM)。
 一方、他の関連性のない蛋白チロシンキナーゼ(FAK、IGF1受容体、インスリン受容体、HER1/HER2受容体、VEGF受容体-2、FGF受容体-1、MEK、MET、EMT/ZAP-70、SYK)及びセリン/スレオニンキナーゼ(P38、PKA、PKCキナーゼ、GSK-3、CaMKII等)に対しては阻害を示さず、SRCに対する阻害活性はこれらキナーゼの100〜20,000倍高かった。

製品情報

商品名スプリセル錠20mg、50mg
一般名
(洋名)
ダサチニブ水和物
(Dasatinib Hydrate)
発売年月日2009年3月
メーカーブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社
ステムチロシンキナーゼインヒビター:-tinib

[こちらも参照:ステムで薬の名前を暗記!【一覧リスト】薬が覚えられない人必見!]

効能又は効果

・慢性骨髄性白血病
・再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病

警告

本剤は,緊急時に十分対応できる医療施設において,造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで,本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また,本剤による治療開始に先立ち,患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し,同意を得てから投与を開始すること。

禁忌

・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人

用法及び用量

〇慢性骨髄性白血病
(1) 慢性期
通常,成人にはダサチニブとして1日1回100mgを経口投与する。
なお,患者の状態により適宜増減するが,1日1回140mgまで増量できる
(2) 移行期又は急性期
通常,成人にはダサチニブとして1回70mgを1日2回経口投与する。
なお,患者の状態により適宜増減するが,1回90mgを1日2回まで増量できる

〇再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
通常,成人にはダサチニブとして1回70mgを1日2回経口投与する。なお,患者の状態により適宜増減するが,1回90mgを1日2回まで増量できる

注意

イマチニブに忍容性のない患者に本剤を投与する際には,イマチニブの投与中止の原因となった副作用と同様の副作用が起こるおそれがあるので,前治療の副作用の内容を確認してから投与すること。

代謝・代謝酵素について

 ダサチニブは主にCYP3A4により代謝され、活性代謝物は主にCYP3A4を介して生成される。その他にも、本剤はフラビン含有モノオキシゲナーゼ酵素3(FMO-3)及びUDP-グルクロニルトランスフェラーゼ(UGT)により代謝される。

食事の影響

 健康成人54例を対象に薬物動態に及ぼす食事の影響を検討するため、3期3処置のクロスオーバー試験を実施した。各処置は、絶食後、高脂肪食(985kcal)摂取後及び低脂肪食(319kcal)摂取後30分にダサチニブ100mgを単回投与するものとした。高脂肪食摂取後(47例)及び低脂肪食摂取後(49例)のAUCは絶食後に比較してそれぞれ14%及び21%増加し、ダサチニブの曝露量に対する食事の影響はわずかにあるものの、臨床上問題ではないと考えられた

副作用(抜粋)

 重大な副作用として、骨髄抑制(:汎血球減少(0.9%)、白血球減少(21.5%)、好中球減少(34.3%)、血小板減少(34.0%)、貧血(16.4%))、出血(脳出血・硬膜下出血、消化管出血(3.3%))、体液貯留(胸水(17.3%)、肺水腫(0.6%)、心嚢液貯留(3.0%)、腹水(0.3%)、全身性浮腫(3.5%))等)、感染症、間質性肺疾患、腫瘍崩壊症候群、心電図QT延長(2.7%)、心不全、心筋梗塞、急性腎障害、肺動脈性肺高血圧症が報告されている。

 その他10%以上の頻度の副作用として、リンパ球減少、電解質異常、頭痛、出血、咳嗽、下痢、悪心、AST上昇、ALT上昇、LDH上昇、発疹、筋痛、Ck上昇、発熱、表在性浮腫、倦怠感、体重増加が報告されている、

こちらのサイトは記載日時点の添付文書、インタビューフォームをまとめたものです。記載内容には十分な注意を払っておりますが、医療の情報は日々新しくなるため、誤り等がある場合がございます。参考にする場合は必ず最新の添付文書等をご確認ください。

情報更新日:2021年12月

モバイルバージョンを終了