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サイバインコ錠(アブロシチニブ)の特徴・作用機序

開発の経緯について

 サイバインコ(一般名:アブロシチニブ、以下、本剤)は、ヤヌスキナーゼ(JAK)の ATP との結合を遮断することにより JAK を選択的かつ可逆的に阻害する、経口投与による JAK 阻害剤である。本剤の JAK1 に対する生化学的な阻害活性は、他の 3 種類の JAK アイソフォームと比較すると JAK2 の 28倍、JAK3 の 340 倍超、TYK2 の 43 倍であることが非臨床試験において示されている(in vitro)。
 アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis:AD)の病態生理は複雑であり、完全には解明されていないが、2 つの主な要因が疾患の基幹をなすと考えられている。1 つは表皮の構造と機能の異常、もう 1つは皮膚へ侵入した抗原に対する不適切な免疫応答に起因する皮膚炎症である。AD では JAK/STATシグナル伝達経路の重要性が示されており、本剤の JAK1 を介したシグナル伝達に対する選択的な阻害作用は AD に対して効果を発揮するものと考えられた。
 ファイザー社は、中等症から重症の成人及び 12 歳以上の青少年 AD 患者を対象に、本剤の単剤投与及び外用剤との併用投与における有効性及び安全性を評価するため臨床開発プログラムを計画し、承認申請を目的として 20 試験を超える治験を実施した。本剤は、世界同時開発、同時申請(米国、EU:2020 年 8 月承認申請)を行った。
 本邦では、国際共同第Ⅲ相試験単剤投与試験(B7451012 試験、B7451013 試験)、成人 AD 患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験外用剤併用試験(B7451029 試験)、青少年 AD 患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験外用剤併用試験(B7451036 試験)並びに国際共同第Ⅲ相試験長期継続投与試験(B7451015試験)等における有効性及び安全性データに基づき、2020 年 12 月に本剤の医薬品製造販売承認申請を行い、2021 年 9 月に「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能又は効果として承認された。

作用機序

 アブロシチニブは ATP との結合を遮断することにより、JAK を選択的かつ可逆的に阻害する経口投与が可能な低分子である。本剤の JAK1 に対する生化学的な阻害活性は、他の 3 種類の JAK アイソフォームと比較すると JAK2 の 28 倍、JAK3 の 340 倍超、TYK2 の 43 倍であることが非臨床試験において示された。アブロシチニブは B 細胞、単球及びケラチノサイトにおける IL-4 及び IL-13、T
細胞における IL-4 並びにヒト単球性白血病細胞株(THP-1 細胞)における IL-31、ケラチノサイトにおける IL-22 などの AD の発症に関与する JAK1 依存性のサイトカインのシグナル伝達を阻害する。また、アブロシチニブのヒト循環血中の活性代謝物 2 種(M1 及び M2)は、アブロシチニブと同様に JAK1 依存性経路を介したサイトカイン阻害プロファイルを示した。

製品情報

商品名サイバインコ錠50mg
サイバインコ錠100mg
サイバインコ錠200mg
一般名
(洋名)
アブロシチニブ
(Abrocitinib)
発売年月日2021年12月13日
メーカーファイザー株式会社
名前の由来海外に準じた
ステムチロシンキナーゼインヒビター:-tinib

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効能又は効果

既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎

警告

・本剤投与により、肺炎、敗血症、ウイルス感染等による重篤な感染症の新たな発現もしくは悪化等が報告されており、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現も報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、これらの情報を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
また、本剤投与により重篤な副作用が発現し、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時の対応が十分可能な医療施設及び医師が使用し、本剤投与後に副作用が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること。
・感染症
 【重篤な感染症】
敗血症、肺炎、真菌感染症を含む日和見感染症等の致死的な感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発症に注意すること。
 【結核】
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤において、播種性結核(粟粒結核)及び肺外結核(脊椎、リンパ節等)を含む結核が報告されている。結核の既感染者では症状の顕在化及び悪化のおそれがあるため、本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する患者及び結核の感染が疑われる患者には、結核等の感染症について診療経験を有する医師と連携の下、原則として本剤の投与開始前に適切な抗結核薬を投与すること。
JAK阻害剤において、ツベルクリン反応等の検査が陰性の患者に投与後活動性結核が認められた例も報告されている。
・本剤についての十分な知識と適応疾患の治療の知識・経験を持つ医師が使用すること。

禁忌

・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
・重篤な感染症(敗血症等)の患者[症状が悪化するおそれがある。]
・活動性結核の患者[症状が悪化するおそれがある。]
・重度の肝機能障害(Child Pugh分類C)のある患者
・好中球数が1,000/mm3未満の患者
・リンパ球数が500/mm3未満の患者
・ヘモグロビン値が8g/dL未満の患者
・血小板数が50,000/mm3未満の患者
・妊婦又は妊娠している可能性のある女性

用法及び用量

 通常、成人及び12歳以上の小児には、アブロシチニブとして100mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて200mgを1日1回投与することができる。

注意

・中等度の腎機能障害(30≦eGFR〔推算糸球体ろ過量:mL/分/1.73m2〕<60)及び重度の腎機能障害(eGFR<30)を有する患者には、50mgを1日1回経口投与すること。中等度の腎機能障害を有する患者においては、患者の状態に応じて100mgを1日1回投与することができる。
・強いCYP2C19阻害薬と併用投与する場合には、50mgを1日1回経口投与する。患者の状態に応じて100mgを1日1回投与することができる。

代謝・代謝酵素について

 本剤は主にCYP2C19及びCYP2C9で代謝される。

食事の影響

 健康成人15例に本剤200mgを食後(高脂肪食)投与したとき、空腹時投与と比較して、アブロシチニブのAUCinf及びCmaxはそれぞれ約26%及び29%増加した。

副作用(抜粋)

 重大な副作用として感染症(単純ヘルペス[3.2%]、帯状疱疹[1.6%]、肺炎[0.2%])、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症[0.1%未満]、深部静脈血栓症[0.1%未満])、血小板減少(1.4%)、ヘモグロビン減少(ヘモグロビン減少[0.9%]、貧血[0.6%])、リンパ球減少(0.7%)、好中球減少症(0.4%)、間質性肺炎(0.1%)、肝機能障害(頻度不明)、消化管穿孔(頻度不明)が報告された。

 その他、副作用発現頻度は、本剤200㎎投与群で34.8%(54/155例)及び本剤100㎎投与群では19.6%(31/158例)であった。主な副作用は本剤200㎎投与群では悪心13.5%(21/155例)及び頭痛5.8%(9/155例)、本剤100㎎投与群では悪心4.4%(7/158例)及び頭痛2.5%(4/158例)であった。

こちらのサイトは記載日時点の添付文書、インタビューフォームをまとめたものです。記載内容には十分な注意を払っておりますが、医療の情報は日々新しくなるため、誤り等がある場合がございます。参考にする場合は必ず最新の添付文書等をご確認ください。

情報更新日:2022年2月

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