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レットヴィモカプセル(セルペルカチニブ )の特徴・作用機序

開発の経緯について

 レットヴィモ(一般名:セルペルカチニブ、以下本剤)は、RET、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)等のキナーゼ活性を阻害する。本剤は、RET 融合タンパク等のリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。RET は腎臓及び腸管神経系の正常な発達、並びに成人の神経組織、神経内分泌組織、造血組織及び雄性生殖組織などの組織の維持に重要な役割を果たしていると考えられている。また RET 遺伝子の変化は、複数の異なる組織由来の腫瘍で確認されており、腫瘍形成のドライバー遺伝子として機能していることが明らかになっている。
 RET の活性化は、主に RET のキナーゼドメインとパートナータンパク(CCDC6、KIF5B、NCOA4 等)の二量体化ドメインが融合することにより、リガンドに依存せず恒常的にキナーゼが活性化した状態になる染色体再構成(RET融合遺伝子)と、キナーゼが直接的又は間接的に活性化される変異(RET 遺伝子変異)の二つの機序により起こると考えられている。
 本剤は、活性化された RET(RET 融合及び変異の双方)を阻害することで、腫瘍の増殖を阻害すると考えられる。非小細胞肺癌(NSCLC)及び甲状腺癌(TC)の一部の患者では RET 融合遺伝子が、甲状腺髄様癌(MTC)の一部の患者では RET 遺伝子変異がドライバーとして働くことが知られている 。RET 融合遺伝子は、NSCLC の約2%、甲状腺乳頭癌の 10~20%に認められ、RET 遺伝子変異は、MTC の遺伝性 MTC で 90%超、散発性 MTCで 60%超に認められている。
 本剤は、LOXO Oncology, Inc が開発をはじめ、その後米国イーライリリー・アンド・カンパニーに開発が移管された。固形癌患者を対象とした国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験(LIBRETTO-001 試験)は、2017 年より開始された。
 米国では、RET 融合遺伝子陽性の固形癌、RET 遺伝子変異陽性の MTC 及びその他の RET 活性化腫瘍を対象とした LIBRETTO-001 試験(データカットオフ日:2019 年 6 月 17 日)の成績に基づき、2020 年 5 月に「RET 融合遺伝子陽性の転移性の NSCLC(成人)、全身療法を要する RET 遺伝子変異陽性の進行・転移性の MTC(成人及び 12 歳以上の小児)、全身療法を要する及び(放射性ヨウ素内用療法が適切な場合)同療法不応の RET 融合遺伝子陽性の進行・転移性の TC(成人及び 12 歳以上の小児)」の適応で、世界で初めて承認された。EU では、LIBRETTO-001 試験の成績に基づき、2021 年 2 月に「免疫療法及び/又はプラチナ製剤ベースの化学療法歴のある全身療法を要する RET 融合遺伝子陽性の進行性の NSCLC(成人)、ソラフェニブ及び/又はレンバチニブの治療歴のある全身療法を要する RET 融合遺伝子陽性の進行性の TC(成人)、カボザンチニブ及び/又はバンデタニブの治療歴のある全身療法を要する RET 遺伝子変異陽性の進行性の MTC(成人及び 12 歳以上の小児)」の適応で承認された。2021 年 12 月時点において、セルペルカチニブは、RET 融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の NSCLC にかかわる効能・効果にて 36 の国と地域で承認されており、また、RET 融合遺伝子陽性の根治切除不能な TC 及び RET 遺伝子変異陽性の根治切除不能な MTC にかかわる効能・効果にて 35 の国と地域で承認されている。
 本邦では、2020 年 11 月に「希少疾病用医薬品」の指定を受け、主に LIBRETTO-001 試験(データカットオフ日:2020 年 3 月 30 日)の成績に基づき日本イーライリリー株式会社が製造販売承認申請を行い、2021 年 9 月に「RET 融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能又は効果で承認された。また、同じく、LIBRETTO-001 試験(データカットオフ日:2020 年 3 月 30 日)の成績に基づき、「RET 融合遺伝子陽性の根治切除不能な甲状腺癌」及び「RET 遺伝子変異陽性の根治切除不能な甲状腺髄様癌」の適応で製造販売承認申請を行い、2022 年 2 月に追加承認された。

作用機序

 セルペルカチニブは、RET、VEGFR、FGFR 等のキナーゼ活性を阻害する。セルペルカチニブは、RET 融合タンパク等のリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

製品情報

商品名レットヴィモカプセル40mg、80mg
一般名
(洋名)
セルペルカチニブ
(Selpercatinib)
発売年月日2021 年 12 月 13 日
メーカー日本イーライリリー株式会社
名前の由来非公表
ステムチロシンキナーゼ阻害剤:-tinib

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効能又は効果

〇RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
〇RET融合遺伝子陽性の根治切除不能な甲状腺癌
〇RET遺伝子変異陽性の根治切除不能な甲状腺髄様癌

警告

本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

禁忌

本剤の成分に対しアナフィラキシー等の重篤な過敏症の既往歴のある患者

用法及び用量

〈RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌〉
通常、成人にはセルペルカチニブとして1回160mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

〈RET融合遺伝子陽性の根治切除不能な甲状腺癌、RET遺伝子変異陽性の根治切除不能な甲状腺髄様癌〉
通常、成人にはセルペルカチニブとして1回160mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

通常、12歳以上の小児には体表面積に合わせて次の投与量(セルペルカチニブとして1回約92mg/m2)を1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。[1回投与量] 体表面積1.2m2未満:80mg、1.2m2以上1.6m2未満:120mg、1.6m2以上:160mg

注意

十分な経験を有する病理医又は検査施設により、RET融合遺伝子陽性が確認された患者に投与すること。

代謝・代謝酵素について

本剤は、主にCYP3A4によって代謝され、CYP2C8及び3Aの阻害作用を示す。また、本剤の溶解度はpHの上昇により低下する。

食事の影響

 健康成人 20 例に、本剤 160 mg を高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、空腹時投与に対する食後投与におけるセルペルカチニブの Cmax及び AUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ 0.862 及び 1.09 であった。

副作用(抜粋)

 重大な副作用として、肝機能障害(30.8%)、QT 間隔延長(14.5%)、過敏症(5.3%)、高血圧(31.8%)及び間質性肺疾患(0.8%)が報告されている。

 副作用(発現率 20%以上)は、口内乾燥、高血圧、ALT 増加、AST 増加、疲労、浮腫、下痢があげられる。

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