薬剤師みかんのおくすり手帳https://gorokichi.com/okusuri-jouhou医師・看護師・薬剤師(薬学生)のための新薬まとめThu, 25 Dec 2025 07:48:28 +0000jahourly1【2025年12月24日発売】スピジア点鼻液(ジアゼパム)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1471https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1471#respondWed, 24 Dec 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1471

みなさん、こんにちは。今回は2025年12月に新たに発売された、てんかん重積状態治療薬「スピジア点鼻液」について、簡単にまとめました。ついに、成人の方でも医療機関外で介助者が投与できる点鼻タイプのレスキュー薬が登場しました。緊急時に迷わず正しく使えるよう、重要なポイントを確認していきましょうね。

はじめに:スピジア点鼻液(ジアゼパム)とは

てんかんは、脳の神経細胞の過剰な興奮により、繰り返し発作が起こる慢性疾患です。国内の患者数は約60万〜100万人と推定されています。多くの発作は自然に収まりますが、発作が5分以上持続する「てんかん重積状態」は、脳に不可逆的なダメージを与えるリスクがあるため、一刻も早い治療介入が求められます。

これまで、重積状態への第一選択薬であるジアゼパムは、主に静脈内投与(IV:Intravenous injection)が行われてきました。しかし、病院外の現場では静脈路の確保が困難であり、経口薬も意識障害がある場合には誤嚥のリスクから使用できませんでした。口腔用液の適応は小児に限られており、成人の患者においては院外で介助者が使用できる適切な薬剤が限られていたのが現状です。

「スピジア点鼻液」は、ジアゼパムを有効成分とする国内初の経鼻投与型(Intranasal)抗けいれん薬です。鼻粘膜から速やかに吸収されるため、静脈路確保が不要で、嘔吐や口腔内分泌物が多い状況でも簡便に投与可能です。成人および2歳以上の小児が対象となり、てんかん患者とそのご家族にとって、社会生活を送る上での大きな安心材料となることが期待されています。

製品概要

販売名スピジア点鼻液5mg、7.5mg、10mg
一般名ジアゼパム(Diazepam)
薬効分類抗けいれん剤(ベンゾジアゼピン系)
製造販売承認日2025年6月24日
発売日2025年12月24日
製造販売元アキュリスファーマ株式会社(発売:ヴィアトリス製薬株式会社)

作用機序と特徴

有効成分であるジアゼパムは、脳内の抑制性神経伝達物質であるGABA(Gamma-Amino Butyric Acid:γ-アミノ酪酸)の受容体に結合します。これにより、GABA作動性神経の働きを強め、神経細胞の過剰な興奮を抑制することで、速やかにけいれん発作を停止させます。

本剤の最大の特徴は、その独自の製剤設計にあります。鼻粘膜への付着性を高め、限られた鼻腔内のスペースでも効率的に吸収されるよう設計されており、投与後速やかに有効血中濃度に到達します。また、1回使い切りの単回投与デバイスを採用しており、緊急時でも焦らず正確な用量を片鼻に投与できる仕組みになっています。

効能・効果・適応症

てんかん重積状態

用法・用量と投与時の注意点

用法・用量

通常、成人及び2歳以上の小児にはジアゼパムとして、患者の年齢及び体重を考慮し、5~20mgを1回鼻腔内に投与する。効果不十分な場合には4時間以上あけて2回目の投与ができる。ただし、6歳未満の小児の1回量は15mgを超えないこと。

投与時の注意点

  • 年齢による制限:2歳未満の幼児、低出生体重児、新生児、乳児には使用経験がなく、安全性が確立されていません。
  • 小児への監視:2歳以上6歳未満の小児に投与する場合は、救急蘇生設備が整った医療機関において、医師の監視下でのみ使用可能です。
  • 空打ち禁止:本剤は1回使い切りです。試験噴霧(空打ち)をすると薬液がなくなってしまうため、絶対に避けるよう指導が必要です。

相互作用・代謝経路

ジアゼパムは主に肝代謝酵素CYP3A4およびCYP2C19で代謝されます。

  • 中枢神経抑制剤・アルコール等:作用が強く現れすぎ、呼吸抑制などのリスクが高まるため併用注意です。
  • シメチジン、オメプラゾール、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール:ジアゼパムの代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性があります。
  • 強いCYP誘導剤(リファンピシン等):ジアゼパムの血中濃度を低下させ、十分な効果が得られない可能性があります。
  • ミルタザピン:相加的な鎮静作用を示し、鎮静効果が増強するおそれがある。また、精神運動機能及び学習獲得能力が減退するとの報告がある

    などその他複数あり

食事の影響について

本剤は点鼻投与されるため、食事による直接的な吸収への影響は受けません。

主な副作用と安全性情報

主な副作用として、傾眠、浮動性めまい、意識レベルの低下、貧血、鼻の不快感、頭痛などが報告されています。

  • 呼吸抑制:ベンゾジアゼピン系薬剤に共通する重大な副作用です。投与後は呼吸状態、意識状態を十分に観察する必要があります。
  • 依存性:長期連用により依存性が生じる可能性がありますが、本剤は緊急時の単回投与を目的としているため、適正使用を守ることが重要です。
  • 投与部位の反応:鼻粘膜への刺激感、鼻閉、鼻出血などが起こる場合があります。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 患者(または介助者)が、てんかん発作のパターンや緊急投与が必要な状態を正しく理解しているか。
  • 急性閉塞隅角緑内障や重症筋無力症などの禁忌事項に該当しないか。
  • 体重・年齢に基づいた適切な用量(5mg/7.5mg/10mg)が選択されているか。
  • 2歳以上6歳未満の場合、適切な監視体制下で使用されることが保証されているか。
  • 本剤交付時に、介助者が使用方法(点鼻デバイスの操作)を習得できているか。

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 警告事項の伝達:介助者が「いつ、どうやって」使うかを確実に理解していることが交付の条件であることを伝える。
  • デバイスの操作指導:1回使い切りであること、空打ちをしないこと、ノズルを鼻の奥まで入れすぎないことを説明する。
  • 投与後の対応:投与後も発作が続く場合や呼吸が弱まった場合の救急要請基準について、あらかじめ家族と確認しておく。
  • 保管方法:室温保存で、高温多湿や直射日光を避けること。また、いざという時にすぐに取り出せる場所に保管するよう指導する。
  • 使用後の記録:いつ投与し、その後発作が何分で止まったかを「頭痛・てんかんダイアリー」等に記録するよう促す。

ケアポイント(看護師向け)

  • 介助者の不安に寄り添う:「発作中に鼻に薬を入れる」ことに不安を感じる家族は多いため、手技のシミュレーションを行い自信を持ってもらう。
  • 呼吸状態の観察ポイント:投与後の異常な眠気や、呼吸が浅くなっていないかを確認する具体的な見方を家族に教える。
  • 鼻腔の状態確認:鼻炎などで鼻粘膜が著しく荒れている場合や、鼻閉がある場合に吸収が不安定になる可能性を念頭に置く。
  • 投与後の安全確保:発作停止後のふらつきによる転倒や、誤嚥に注意し、回復体位(横向き)をとらせるよう指導する。
  • 社会生活へのアドバイス:学校や職場での介助者にどのように依頼しておくべきか、連携の相談に乗る。

スピジア点鼻液の登場により、これまで病院に着くまで「見守るしかなかった」ご家族や周囲の方々に、新たな「守る手段」が加わりました。迅速な処置が脳を守ることに繋がります。このお薬が患者様の安全と、ご家族の心の安心を支える大きな一歩になりますように。

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【2025年12月18日発売】ビルベイ顆粒(オデビキシバット水和物)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1469https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1469#respondThu, 18 Dec 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1469

みなさん、こんにちは。今回は2025年12月に新たに発売された進行性家族性肝内胆汁うっ滞症治療薬「ビルベイ顆粒200μg・600μg」について、簡単にまとめました。国内ではわずか数名という極めて稀な疾患に光を当てる、革新的な新薬の登場です。

はじめに:ビルベイ顆粒(オデビキシバット水和物)とは

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC:Progressive Familial Intrahepatic Cholestasis)は、肝細胞における胆汁輸送に関わる遺伝子の変異により、胆汁がうっ滞し肝障害を引き起こす極めて稀な遺伝性疾患です。全世界的な疫学としては、5万から10万出生に1名の患者発生率が推測されていますが、本邦では症例報告が散見されるのみで、推定患者数は約100人とされています。

PFICの主な症状は、胆汁酸の蓄積による「重度のかゆみ(そう痒)」です。このかゆみは極めて激しく、皮膚を掻きむしり、出血や睡眠障害、さらには注意力低下など、日常生活のあらゆる面に深刻な影響を及ぼします。これまでは肝機能の維持や症状管理において有効な経口治療薬が乏しく、最終的に肝移植を必要とすることも少なくありませんでした。

「ビルベイ」は、国内で初めてPFICに伴うそう痒を適応とした、1日1回経口投与の回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT:Ileal Bile Acid Transporter)阻害剤です。遠位回腸での胆汁酸再吸収を抑えることで、血清中胆汁酸濃度を低下させ、患者様を苦しめる激しいかゆみを改善することが期待されています。

製品概要

販売名ビルベイ顆粒200μg、ビルベイ顆粒600μg
一般名オデビキシバット水和物(Odevixibat Hydrate)
薬効分類回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤
製造販売承認日2025年9月19日
発売日2025年12月18日
製造販売元IPSEN株式会社

作用機序と特徴

オデビキシバットは、小腸末端の遠位回腸に発現する回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT:Ileal Bile Acid Transporter)を強力かつ選択的に阻害します。通常、胆汁酸の約95%は回腸で再吸収されて肝臓に戻る「腸肝循環」を行っていますが、本剤はこの再吸収プロセスをブロックします。

その結果、胆汁酸は再吸収されずに結腸へと排出され、糞便中へのクリアランスが増加します。これにより、体内の過剰な胆汁酸プールが減少し、血清中胆汁酸濃度が低下することで、かゆみの原因物質である胆汁酸の皮膚への刺激が軽減されると考えられています。本剤は全身への曝露が極めて少なく、局所的に作用を発揮する点も大きな特徴です。

効能・効果・適応症

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に伴うそう痒

用法・用量と投与時の注意点

用法・用量

通常、成人及び小児にはオデビキシバットとして40μg/kgを1日1回朝食時に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、120μg/kgを1日1回に増量することができるが、1日最高用量として7200μgを超えないこと。

投与時の注意点

  • 服用形態の注意:本剤はカプセルに入っていますが、このカプセルは容器です。カプセルごと服用せず、必ず開封して中の顆粒のみを飲食物に混ぜて服用してください。
  • 投与タイミング:1日の最初の食事(朝食)の際に投与することが推奨されています。
  • 肝機能不全患者:重度の肝機能障害患者への投与は、血漿中濃度が上昇する可能性があるため推奨されません。

相互作用・代謝経路

オデビキシバットは主にCYP3A4(Cytochrome P450 3A4)による代謝をほとんど受けず、糞便中への未変化体排泄が主体です。全身への吸収が最小限であるため、全身性の薬物相互作用のリスクは低いと考えられています。

食事の影響について

本剤は食事とともに投与されることが前提となっており、臨床試験では朝食時に投与されました。空腹時に投与した場合と比較して、食後投与では血漿中濃度がさらに低くなる傾向がありますが、回腸での局所的なIBAT阻害作用が主目的であるため、臨床上の効果に影響はないと考えられています。指示通り「朝食時」の服用を徹底してください。

主な副作用と安全性情報

臨床試験において認められた主な副作用は、下痢(約10%)や腹痛です。これは回腸での胆汁酸吸収阻害により、大腸に流入する胆汁酸が増加することに起因します。

  • 肝機能値の上昇:ALT(Alanine Aminotransferase)、AST(Aspartate Aminotransferase)の上昇が報告されています。投与前および投与中は定期的な検査が必要です。
  • 脂溶性ビタミンの減少:胆汁酸の吸収阻害に伴い、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の吸収が低下する可能性があります。血中ビタミン濃度やプロトロンビン時間(PT-INR)の定期的測定を行い、必要に応じて補充を検討してください。
  • 重度の下痢:脱水症状を引き起こす可能性があるため、腹痛や下痢が持続する場合は、減量や投与中断を検討します。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • PFICの確定診断がなされており、中等度〜重度のそう痒を伴っているか。
  • ベースラインの肝機能検査値(ALT, AST, ビリルビン等)を確認したか。
  • 脂溶性ビタミン(A, D, E, K)の血中濃度およびPT-INRの事前測定を行ったか。
  • 妊婦又は妊娠している可能性がないか(動物実験で催奇形性、禁忌に該当)。
  • 体重に基づいた正確な投与量(開始用量:40μg/kg)が算出されているか。

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • カプセル服用禁止の徹底:カプセルは「薬を測るための容器」であり、丸飲みせず、必ず開けて中の顆粒を出すように説明する(万が一カプセルを服用しても安全性について特段の懸念はないとされている)。
  • 飲食物への混ぜ方:少量の柔らかい食べ物(アップルソース、ヨーグルト等)や飲み物に混ぜ、噛まずに速やかに摂取させる。
  • 朝食時の服用:1日の最初の食事に合わせて服用し、飲み忘れた場合は、当日中であればすぐに服用していただく。
  • 下痢への注意:便が緩くなる可能性があるため、症状が続く場合やぐったりしている(脱水疑い)場合はすぐに受診するよう伝える。
  • 保管方法:光を避けるため、ボトル開封後も元のボトルのまま保管することを徹底する。

ケアポイント(看護師向け)

  • そう痒の変化の確認:皮膚の掻き傷(スクラッチマーク)の改善や、夜間の睡眠状況が良くなったか聞き取る。
  • 体重測定の継続:成長期の子どもが多いため、用量調節の指標となる体重変化をこまめにチェックする。
  • 脱水症状のサイン:下痢に伴う皮膚の乾燥、活気のなさ、尿量の減少などがないか観察する。
  • ビタミン欠乏症状の観察:皮膚の乾燥(V.A)、骨の痛み(V.D)、出血傾向(V.K)などの兆候がないか留意する。
  • 家族への心理的ケア:稀な難病であるため、家族の負担は非常に大きいです。治療によるQOL向上の喜びを共有し、支える姿勢が重要です。

「ビルベイ」の登場は、激しいかゆみに耐え、日常生活が制限されていたPFICの患者様とそのご家族にとって、大きな希望の光となりますね。1日1回の内服でかゆみが改善され、子どもたちが元気に過ごせるようになることを、私も心から願っています。

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【2025年12月16日発売】ナルティークOD錠75mg(リメゲパント硫酸塩水和物)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1467https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1467#respondTue, 16 Dec 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1467

みなさん、こんにちは。今回は2025年12月に新たに発売された片頭痛治療薬「ナルティークOD錠75mg」について、簡単にまとめました。国内初の『1剤で急性期治療と発症抑制の両方に対応できる経口薬』として非常に注目されています。医療現場で役立つポイントを整理しましたので、ぜひチェックしてくださいね。

はじめに:ナルティークOD錠75mgとは

片頭痛は、脈打つような中等度から重度の頭痛が4~72時間持続する慢性の機能性神経疾患です。国内の有病率は成人の約8.4%(男性3.6%、女性12.9%)と報告されており、特に活動性の高い世代の日常生活やQOL(Quality of Life:生活の質)を大きく阻害します。症状は頭痛だけでなく、悪心・嘔吐、光過敏や音過敏を伴うことが特徴です。

これまでの片頭痛治療は、発作時に服用する「急性期治療薬(トリプタン系、NSAIDsなど)」と、発作頻度を減らすための「予防療法(経口予防薬、抗CGRP抗体注射製剤など)」に分かれていました。しかし、患者様によっては急性期薬の使いすぎによる薬剤の使用過多による頭痛(MOH:Medication Overuse Headache)のリスクや、自己注射への心理的ハードルが課題となっていました。

今回登場したナルティークOD錠75mg(一般名:リメゲパント硫酸塩水和物)は、国内初の経口CGRP(Calcitonin Gene-Related Peptide:カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体拮抗薬です。最大の特徴は、片頭痛発作が起きた時の「急性期治療」と、発作を未然に防ぐ「発症抑制」の両方に適応を持つ点にあります。水なしで服用可能なOD錠(Orally Disintegrating tablet:口腔内崩壊錠)であり、ミントフレーバーの採用など、患者様の利便性にも配慮された薬剤です。

製品概要

販売名ナルティークOD錠75mg
一般名リメゲパント硫酸塩水和物(Rimegepant Sulfate Hydrate)
薬効分類経口CGRP受容体拮抗薬
製造販売承認日2025年9月19日
発売日2025年12月16日
製造販売元ファイザー株式会社

作用機序と特徴

ナルティークの有効成分であるリメゲパントは、経口投与可能なCGRP受容体拮抗薬です。片頭痛の病態生理において重要な役割を果たすCGRPの作用を抑制します。具体的には、CGRP受容体に対して強力かつ選択的に結合(K値:32.9pmol/L)し、CGRPが受容体に結合するのを競合的に阻害することで、血管拡張や神経原性炎症、痛みの伝達を抑制すると考えられています。

既存の抗CGRP抗体製剤(注射剤)がCGRP分子そのものや受容体に結合して長時間作用するのに対し、本剤は低分子化合物であるため経口摂取が可能であり、血中半減期は約10時間(日本人健康成人75mg単回投与時)と、急性期・予防の両面で使いやすい動態プロファイルを有しています。

効能・効果・適応症

片頭痛発作の急性期治療及び発症抑制

用法・用量と投与時の注意点

用法・用量

<片頭痛発作の急性期治療>
通常、成人にはリメゲパントとして1回75mgを片頭痛発作時に経口投与する。

<片頭痛発作の発症抑制>
通常、成人にはリメゲパントとして75mgを隔日経口投与する。

投与時の注意点

  • 1日あたりの総投与量はリメゲパントとして75mgを超えないこと。
  • 急性期治療において、本剤投与により効果が認められない場合は、再検査の上、頭痛の原因を確認し、他の治療法を検討すること。
  • 発症抑制において、投与開始後3ヵ月を目安に有益性を評価し、改善が認められない場合は投与中止を考慮すること。
  • 新医薬品であるため、2026年11月末日までは1回14日分が処方制限の限度となります。

相互作用・代謝経路

本剤は主にCYP3A4(Cytochrome P450 3A4)で代謝され、一部はCYP2C9で代謝されます。また、P-gp(P-glycoprotein:P糖蛋白質)の基質でもあります。

薬剤名等措置方法・機序
強いCYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)併用を避けることが望ましい。本剤の血漿中濃度が著しく上昇(イトラコナゾール併用でAUCが4.14倍)し、副作用が増強されるおそれがあります。
強い・中程度のCYP3A4誘導剤(リファンピシン、フェニトイン、セント・ジョーンズ・ワート等)併用を避けることが望ましい。本剤の血中濃度が低下し、作用が減弱するおそれがあります。
P-gp阻害剤(シクロスポリン、キニジン、ベラパミル等)併用注意。本剤の消化管吸収が増大し、血漿中濃度が上昇するおそれがあります。

食事の影響について

健康成人に本剤75mgを高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、空腹時と比較してCmax(最高血漿中濃度)は41%、AUC(血中濃度-時間曲線下面積)は32%低下したとのデータがあります。食事により曝露量が低下する傾向がある点に留意が必要です。

主な副作用と安全性情報

主な副作用として、便秘、浮動性めまい、悪心、下痢などが報告されています。国内第II/III相試験(急性期治療)における副作用発現割合は2.5%と比較的低めですが、以下の重大な副作用には注意が必要です。

  • 過敏症(頻度不明):呼吸困難や発疹等のアナフィラキシーを含む過敏症があらわれることがあります。投与から数日後に症状が現れる遅延型の重篤な過敏症の報告もあるため、注意深い観察が必要です。

また、末期腎不全(eGFR 15mL/min/1.73m2未満)および重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)の患者様への投与は、血漿中濃度上昇の懸念から避けることが望ましいとされています。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 国際頭痛学会の診断基準に基づき、片頭痛の確定診断がなされているか。
  • 重度の肝機能障害(Child-Pugh C)や末期腎不全(eGFR < 15)に該当しないか。
  • 強いCYP3A4阻害剤や誘導剤を常用していないか(併用を避けることが望ましい薬剤の確認)。
  • 発症抑制目的の場合、月複数回の発作があり、日常生活に支障をきたしているか。
  • 14日分の処方制限(2026年11月末まで)を考慮した処方設計になっているか。

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • OD錠の扱い:吸湿性があるため、使用直前に乾いた指で取り出すこと。非常に柔らかい錠剤なので、裏面のシートを完全に剥がしてから取り出し、押し出さないよう説明する。
  • 服用方法:水なしで服用可能。舌の上などで唾液を含ませて崩壊させてから服用する(水での服用データが未整備のため、水なし服用を推奨)。
  • 服用上限:急性期・発症抑制のいずれの目的であっても、1日1回75mgを超えて服用しないこと。
  • 副作用の遅延:発疹や息苦しさなどの過敏症状が、服用から数日経ってから出る可能性を伝える。
  • 保管方法:ブリスターシートから出したまま保管せず、直前に取り出すことを徹底する。

ケアポイント(看護師向け)

  • 頭痛ダイアリーの活用:発症抑制で使用する場合、隔日投与が守られているか、発作回数や痛みの程度が軽減しているかを患者と一緒に確認する。
  • 随伴症状のモニタリング:頭痛そのものだけでなく、悪心やめまいなどの随伴症状の変化についても聞き取る。
  • 過敏症の早期発見:特に初回投与時や開始数日間は、皮膚症状や呼吸器症状の有無を注意深く観察する。
  • OD錠の誤飲防止:高齢者などの場合、ブリスターシートを誤って飲み込まないよう、取り出し方の指導を補助する。
  • QOLの評価:「仕事や家事ができるようになったか」など、日常生活動作への貢献度を評価し共有する。

ナルティークOD錠75mgは、1剤で「今ある痛み」と「未来の発作」の両方にアプローチできる、患者様にとっても非常に利便性の高い薬剤です。特に自己注射に抵抗感のある方や、既存薬で十分な効果が得られなかった方への福音となることが期待されます。現場の皆様の適切なサポートで、片頭痛に悩む患者様の笑顔が増えると嬉しいですね。

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【2025年11月27日発売】アイザベイ硝子体内注射液20mg/mL(アバシンカプタド ペゴルナトリウム)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1459https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1459#respondThu, 27 Nov 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1459

『みなさん、こんにちは。今回は2025年11月に新たに発売された萎縮型加齢黄斑変性治療薬「アイザベイ硝子体内注射液20mg/mL」について、簡単にまとめました。』

はじめに:アイザベイとは

加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は、網膜の中心である黄斑部に変性が生じることで、ゆがみや視野の中心が暗く見える・抜けて見えるといった症状を呈し、進行すると読書や車の運転など日常生活に大きな支障をきたす疾患です。国内では視覚障害(法的盲を含む)の主要な原因のひとつとされ、超高齢社会の進展とともに患者数の増加が懸念されています。

AMDは大きく「萎縮型」と「新生血管型」に分類されます。このうち萎縮型AMDでは、黄斑部の網膜色素上皮や視細胞が徐々に脱落し、「地図状萎縮(geographic atrophy:GA)」と呼ばれる境界明瞭な萎縮病変が広がっていきます。GAは世界的にも有効な薬物治療が乏しい領域であり、日本でもこれまでは経過観察や生活指導、サプリメントなどの管理が中心で、「萎縮型AMDを標的とした治療薬」は存在しませんでした。

アイザベイ硝子体内注射液20mg/mL(一般名:アバシンカプタド ペゴルナトリウム)は、萎縮型AMDにおけるGAの進行を抑制することを目的とした、国内初の眼科用補体第5成分(C5)阻害薬/PEG化RNAアプタマーです。補体経路の最終段階に位置するC5を眼内で選択的に阻害することで、網膜の炎症や細胞傷害を抑え、GAの進行速度を遅らせることが期待されています。これまで治療選択肢がなかった領域に登場した、新たなモダリティの硝子体注射製剤として、大きな注目を集めています。

製品概要(承認日、発売日、製造販売元など)

  • 商品名:アイザベイ硝子体内注射液20mg/mL
  • 一般名:アバシンカプタド ペゴルナトリウム
  • 薬効分類:眼科用補体第5成分阻害薬/ポリエチレングリコール共役RNAアプタマー
  • 製造販売元:アステラス製薬株式会社
  • 効能・効果:萎縮型加齢黄斑変性における地図状萎縮の進行抑制
  • 用法・用量:アバシンカプタド ペゴルナトリウム2mg/0.1mL(リンカーを含むオリゴヌクレオチド部分として)を、初回から12カ月までは1カ月に1回、その後は2カ月に1回、硝子体内投与する。
  • 製造販売承認取得日:2025年9月19日
  • 薬価基準収載日:2025年11月12日
  • 発売日:2025年11月27日
  • 承認形態:条件付き早期承認(萎縮型AMDにおけるGA進行抑制薬として)

添付文書の【用法及び用量に関連する注意】には、臨床試験では両眼治療は行われていないこと、両眼に治療対象となる病変がある場合には両眼同時治療の有益性と危険性を慎重に評価すること、さらに初回治療における両眼同日投与は避け、片眼での安全性を確認してから対側眼へ投与することが明記されています。

作用機序と特徴

萎縮型AMDにおける地図状萎縮(GA)の病態には、加齢や環境因子に加え、補体経路の過剰活性化が関与すると考えられています。補体は自然免疫の一部として、異物認識や炎症応答に重要な役割を担いますが、網膜では過剰に活性化されると、慢性的な炎症と細胞傷害を引き起こし、黄斑部の萎縮が進行する一因となるとされています。

補体経路には古典経路・代替経路・レクチン経路がありますが、いずれも最終的にはC3、さらにC5の活性化へと収束します。補体第5成分(C5)が切断されて生じるC5aは強力な炎症メディエーターであり、C5bはC6〜C9と複合体を形成して膜侵襲複合体(MAC)となり、標的細胞膜に孔を形成し細胞死を誘導します。

アバシンカプタド ペゴルナトリウムは、C5を標的とするRNAアプタマー(核酸医薬)の一種であり、ポリエチレングリコール(PEG)が共役された構造を有します。眼内へ硝子体注射すると、局所で補体C5に結合し、その活性化を阻害することで、

  • 補体由来の炎症メディエーター(C5aなど)の産生抑制
  • MAC形成の抑制(網膜細胞膜の孔形成・細胞死の抑制)

といった作用を示し、網膜組織の保護およびGA病巣の拡大抑制に寄与すると考えられています。

本剤の特徴として、

  • 萎縮型AMDにおけるGA進行抑制を目的とした初の眼内C5阻害薬であること
  • 硝子体内投与により眼局所で高い薬効を発揮しつつ、全身曝露は比較的少ないと考えられること
  • 投与間隔が、導入期は1カ月に1回、維持期は2カ月に1回と設計されていること

などが挙げられます。一方で、補体抑制に伴う感染症リスクや眼内炎・網膜障害など、クラスエフェクトとして注意すべき点もあり、適応患者の選択や投与継続の判断には、画像検査を含めた慎重なフォローアップが必要です。

効能・効果・適応症

効能・効果:
萎縮型加齢黄斑変性における地図状萎縮の進行抑制

対象は萎縮型AMDにおけるGA病変を有する患者であり、視力低下や読書障害など、日常生活に影響が出始めている症例が主な候補となります。治療の目的は「失われた視機能の回復」ではなく、今後の萎縮進行を抑制し、視機能低下の進行を遅らせることである点を、患者・家族に丁寧に説明しておくことが重要です。

用法・用量と投与時の注意点

基本用法・用量:

  • アバシンカプタド ペゴルナトリウム2mg/0.1mL(リンカーを含むオリゴヌクレオチド部分として)を、初回から12カ月までは1カ月に1回、硝子体内投与する。
  • 13カ月以降は2カ月に1回、硝子体内投与する。

用法・用量に関連する主な注意点:

  • 硝子体内注射の手技に習熟した眼科医が、無菌操作により投与すること。
  • 投与前に眼局所の感染(結膜炎、眼瞼縁炎、眼内炎など)がないかを確認し、感染が疑われる場合は投与を延期する。
  • 眼圧上昇や硝子体出血、網膜裂孔・網膜剥離など、硝子体注射に伴う一般的なリスクについて、事前に十分説明し、同意を得る。
  • 投与期間中は、眼底自発蛍光検査やOCTなどによる画像評価を用いて、GAの中心窩への拡大や進行の程度を定期的に確認し、治療継続の有益性を検討する。
  • 両眼とも治療対象の病変を有する場合、初回治療では両眼同日投与を避け、片眼で安全性を確認してから対側眼の治療を検討する。
  • 治療中止後も、補体抑制の影響や病勢の変化をみるため、一定期間はフォローアップを継続する。

相互作用・代謝経路

アイザベイは硝子体内投与される局所製剤であり、全身血中への移行は比較的限定的と考えられています。そのため、添付文書上、特定の薬剤名を挙げた明確な薬物間相互作用(併用禁忌・併用注意)は記載されていません。

1. 併用薬との一般的な考え方

  • 眼局所への影響:他の硝子体注射薬(抗VEGF薬など)との同時投与や近接投与は、眼内炎・眼圧上昇・網膜障害などのリスクを高める可能性があり、原則として個々の治療必要性を慎重に評価した上でスケジュールを調整する。
  • 抗凝固薬・抗血小板薬:硝子体注射そのもののリスクとして、結膜下出血や硝子体出血が起こり得るため、抗凝固療法中の患者では局所出血のリスク評価を行う。

2. 代謝・排泄の概要

  • アバシンカプタド ペゴルナトリウムはPEG化されたRNAアプタマーであり、主に眼局所でC5に結合しながら時間とともに分解・クリアランスされると考えられています。
  • 全身循環へ移行した分は、一般的なオリゴヌクレオチド医薬と同様に、血中で分解され、腎から排泄される経路が想定されています。
  • CYP酵素や主要な薬物トランスポーターを介した代謝・排泄は主体ではないと考えられ、典型的な経口薬のようなCYP阻害/誘導薬との相互作用は少ないと推定されます。

このように、現時点で添付文書上、特定の薬剤との明確な薬物相互作用は強調されていませんが、補体経路への作用を持つ生物学的製剤・免疫抑制薬などとの併用症例では、感染症リスクや免疫応答低下を念頭に慎重な観察が必要です。

食事の影響について

アイザベイは硝子体内注射剤であり、経口投与される薬剤ではないため、食事による薬物動態への影響は想定されていません。服薬タイミングや食事との間隔を気にする必要はなく、通常は外来あるいは入院下で、眼科医が手技により投与を行います。

ただし、治療全体の観点からは、喫煙や偏った食事(動脈硬化リスクの増大)などAMDの進行に関わる可能性がある因子について、生活指導を行うことが望ましいとされています。

主な副作用と安全性情報

アイザベイは硝子体注射薬であり、薬剤固有のリスク硝子体内注射手技に伴う一般的なリスクの双方を考慮する必要があります。添付文書やインタビューフォームでは、概ね以下のような有害事象が注意喚起されています(頻度は文書を参照)。

  • 眼内炎(感染性・無菌性):重篤な視力低下につながり得る最も重要な有害事象のひとつであり、投与前後の無菌操作と、眼痛・充血・視力低下などの症状に対する早期対応が不可欠。
  • 眼圧上昇:硝子体注射直後に一過性の眼圧上昇がみられることがあり、必要に応じて眼圧測定や降圧薬点眼等を行う。
  • 硝子体出血・結膜下出血:注射手技に伴う出血が起こり得る。多くは経過観察で軽快するものの、抗凝固療法中の患者ではリスクが高まる可能性がある。
  • 網膜裂孔・網膜剥離:極めて重要な有害事象であり、飛蚊症の急増や光視症、視野欠損などの症状があれば直ちに眼底検査を行う。
  • 白内障の進行:長期的な硝子体内手技により、水晶体への影響が議論される可能性がある。
  • 全身性感染症・免疫関連事象:補体C5阻害に関連し、理論上は莢膜形成菌などに対する易感染性が懸念されるため、発熱や全身倦怠感などの症状にも注意する。

特に、眼内炎や網膜剥離は視機能に重大な影響を及ぼす可能性があるため、早期発見と迅速な治療が何より重要です。患者・家族には「いつ、どのような症状が出たらすぐ受診すべきか」を繰り返し説明しておくことが、安全な治療継続のポイントとなります。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 対象疾患が萎縮型AMDにおける地図状萎縮(GA)であることを、画像検査(OCT・眼底自発蛍光など)で確認しているか。
  • 治療目的が「視力の回復」ではなく「GA進行抑制」であることを、患者・家族と共有できているか。
  • 硝子体内注射の手技および合併症管理に十分な経験があるか、または経験ある眼科医が担当する体制か。
  • 眼内炎・網膜剥離・眼圧上昇などの重篤な眼合併症について、リスクと対応を事前に説明し、インフォームドコンセントを取得しているか。
  • 両眼が治療対象の場合、初回治療で両眼同日投与を行わず、片眼で安全性確認後に対側眼治療を計画しているか。
  • 抗凝固薬・抗血小板薬・免疫抑制薬など、全身併用薬の内容を把握し、出血や感染症リスクを評価しているか。
  • 投与後のフォローアップ計画(定期的な眼圧測定・眼底検査・画像検査)が明確になっているか。

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • アイザベイは飲み薬ではなく、眼科で行う硝子体内注射のお薬であることを、患者さん・ご家族にわかりやすく説明する。
  • 治療の目的が「これ以上見え方が悪くなるスピードを遅らせること」であり、既に失われた視力を取り戻す薬ではない点を丁寧に伝える。
  • 注射後に起こり得る症状(眼痛、充血、かすみ、飛蚊症、視野欠損など)と、「どのような症状が出たら至急受診すべきか」を具体的に説明する。
  • 他院処方を含む併用薬(抗凝固薬・抗血小板薬・免疫抑制薬・生物学的製剤など)をヒアリングし、必要に応じて眼科医と情報共有する。
  • 生活全般では、禁煙・適度な運動・バランスの良い食事・サプリメントの位置づけなど、AMD全体の管理にも関心を持ってもらえるような情報提供を行う。
  • 患者さんが不安を抱きやすい「注射」という行為について、疑問点や心配事を丁寧に聞き取り、医師や看護師と連携して解消を図る。

ケアポイント(看護師向け)

  • 外来・病棟いずれの場合も、投与前に視力・自覚症状、全身状態(発熱・倦怠感など)を確認し、必要に応じて医師に報告する。
  • 硝子体注射前の準備(点眼麻酔、消毒、清潔操作の確保など)を適切に行い、手技環境の整備をサポートする。
  • 投与後は、眼痛・頭痛・吐き気・めまいなどの症状の有無を確認し、眼帯や保護具の装着状態をチェックする。
  • 退院・帰宅前に、「どのような症状が出たら、いつどこに連絡すべきか」を患者・家族と一緒に確認し、緊急連絡先を明確に伝える。
  • 高齢の患者では通院負担も大きいため、家族構成や介護環境、通院手段を把握し、必要に応じて地域連携やソーシャルワーカーとも情報共有する。
  • 治療が長期にわたることが多いため、「続ける意味」を患者と一緒に振り返り、モチベーションの維持を支援する声かけを心がける。

まとめ

『アイザベイは、これまでお薬の選択肢がほとんどなかった萎縮型加齢黄斑変性の患者さんに、地図状萎縮の進行を少しでも遅らせるチャンスをくれる治療だと感じました。注射や通院の負担はありますが、患者さんやご家族と相談しながら、「今の見え方」をできるだけ長く守っていけるよう、チームで支えていきたいですね。』

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【2025年11月27日発売】ドルミカムシロップ2mg/mL(ミダゾラム)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1453https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1453#respondThu, 27 Nov 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1453

『みなさん、こんにちは。今回は2025年11月に新たに発売された麻酔前投薬治療薬「ドルミカムシロップ2mg/mL」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ドルミカムシロップとは

ドルミカムシロップ2mg/mL(一般名:ミダゾラム)は、小児を対象とした麻酔前投薬専用の経口ミダゾラム製剤です。手術や麻酔は患者さんにとって大きなストレスとなりますが、とくに小児では、保護者と離れる不安や環境の変化から泣いたり興奮したりしやすく、麻酔導入や気管挿管が困難になることがあります。その結果、分泌物による気道閉塞や嘔吐による誤嚥、不整脈など、周術期合併症のリスクが高まることが知られています。

小児麻酔の現場では、こうした不安や興奮を和らげ、スムーズな麻酔導入をサポートする麻酔前投薬(プレメディケーション)が重要な役割を担っています。理想的な麻酔前投薬は、効果発現が速やかで持続は長すぎず、投与経路はできる限り侵襲の少ない経口投与が望まれます。しかし、これまで国内で麻酔前投薬として承認されていたミダゾラム製剤は筋肉内投与のみであり、「小児向けの経口プレメディケーション製剤がほしい」という現場のニーズが大きく、学会からも開発要望が出されていました。

ドルミカムシロップは、こうした背景を受けて誕生した、国内初の小児麻酔前投薬用ミダゾラムシロップ製剤です。ストロベリー様のにおいを有し、小児でも受け入れやすい味と剤形に配慮されている点も特徴です。GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位を介して抑制性神経伝達を増強し、催眠・鎮静・抗不安作用を発揮することで、小児の不安を軽減し、麻酔導入を円滑に進めることが期待されます。

製品概要(承認日、発売日、製造販売元など)

  • 商品名:ドルミカムシロップ2mg/mL
  • 一般名:ミダゾラム
  • 薬効分類:催眠鎮静剤
  • 剤形・性状:無色澄明のシロップ剤で、ストロベリー様のにおいがある。
  • 効能・効果:麻酔前投薬(小児を対象)
  • 製造販売元:丸石製薬株式会社
  • 製造販売承認取得日:2025年9月19日
  • 薬価基準収載日:2025年11月12日
  • 発売日:2025年11月27日

作用機序と特徴

ミダゾラムは、ベンゾジアゼピン系に分類される催眠鎮静薬で、脳内のGABAA受容体に存在する「ベンゾジアゼピン結合部位」に結合し、抑制性神経伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸)の作用を増強します。これにより、神経細胞へのクロライドイオンの流入が促進され、神経の興奮性が低下することで、催眠・鎮静・抗不安・健忘作用を発揮すると考えられています。

ドルミカムシロップ2mg/mLの主な特徴は以下の通りです。

  • 経口投与可能な麻酔前投薬:小児に対して侵襲の少ない経口投与が可能で、筋注に比べて心理的負担を軽減しやすい。
  • 比較的速やかな効果発現:全身麻酔前に投与することで、不安軽減および鎮静を得て、麻酔導入・気管挿管をスムーズに行うことが期待される。
  • シロップ剤で小児に服用しやすい:ストロベリー様のにおいを付与し、小児が受け入れやすい剤形に工夫されている。
  • 薬物動態:主にCYP3A4で代謝され、活性代謝物(1-ヒドロキシ体など)が生じる。小児においては体重や年齢によってクリアランスや半減期に差がみられるため、投与量は添付文書に基づき慎重に調整する必要がある。

一方で、ベンゾジアゼピン系薬剤であることから、呼吸抑制や呼吸停止、循環動態の変動をきたすリスクがあり、添付文書では十分なモニタリング体制のある施設で、経験ある医師のもとで使用するよう強く警告されています。

効能・効果・適応症

効能・効果:
麻酔前投薬

なお、生後6ヵ月未満の小児における有効性および安全性は確立していないとされており、この年齢層に対しては適応外となります。

用法・用量と投与時の注意点

基本用法・用量(添付文書):

  • 通常、小児にはミダゾラムとして1回0.25~1.0mg/kg(最大用量20mg)を、麻酔開始前に経口投与する。

用法・用量に関連する主な注意点:

  • 投与量は、国内外の臨床成績や最新のガイドラインを参考に、年齢・全身状態・併用薬などを考慮して個別に決定する。
  • 肥満小児では、標準体重に基づいて投与量を算出する。
  • ミダゾラムへの反応には個人差が大きく、特に衰弱患者、心不全患者、肝機能障害患者、他の中枢神経抑制薬併用時では作用が強くあらわれやすいため、投与量を減じることが推奨されている。
  • 投与タイミングは、麻酔導入の予定時刻や効果発現時間を考慮し、適切な時間帯に設定する。
  • 本剤は経口投与専用であり、注射には用いない。

重要な警告・注意点(概要):

  • 呼吸抑制・呼吸停止により、速やかな処置が行えなかった症例では、死亡や低酸素脳症に至った報告がある。
  • 呼吸・循環動態を連続的に観察できる設備と、緊急時対応が可能な施設でのみ使用する。
  • 小児の鎮静管理に熟練した医師が、リスクとベネフィットを十分に評価した上で投与する。
  • 過量投与が疑われる場合は、必要に応じてベンゾジアゼピン受容体拮抗薬(フルマゼニル)の使用を検討するが、作用時間の違いによる再鎮静にも注意が必要。

相互作用・代謝経路

ミダゾラム(ドルミカムシロップ)は、主としてCYP3Aで代謝される薬剤であり、CYP3Aを阻害・誘導する薬剤との相互作用が重要です。また、中枢神経抑制作用を有する薬剤との併用により、鎮静および呼吸・循環抑制が増強される可能性があります。

1. 併用禁忌(併用しないこと)

HIVプロテアーゼ阻害剤など強力なCYP3A阻害薬

  • リトナビルを含有する薬剤(ノービア、カレトラなど)
  • ホスアンプレナビル(レクシヴァ)
  • ダルナビルを含有する薬剤(プリジスタ、プレジコビックス、シムツーザ)
  • コビシスタット含有薬剤(ゲンボイヤ、プレジコビックス、シムツーザ など)
  • ニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッドパック)
  • ロナファルニブ(ゾキンヴィ)

これらの薬剤は強力なCYP3A阻害作用を有し、ミダゾラムの代謝を著明に抑制することで、血中濃度を大きく上昇させます。その結果、過度の鎮静や呼吸抑制、呼吸停止を起こすおそれがあるため、併用禁忌とされています。

2. 併用注意(併用に注意すること)

(1)中枢神経抑制作用を有する薬剤・アルコール

  • 中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体、麻薬性鎮痛剤など)
  • モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤
  • アルコール(飲酒)

これらと併用すると、鎮静・麻酔作用が増強され、呼吸数や血圧、心拍出量の低下が生じるおそれがあります。相加的に中枢神経抑制作用(鎮静・麻酔作用、呼吸・循環動態への影響)を増強するため、併用の必要性を慎重に検討し、投与量減量やモニタリング強化が必要となります。

(2)主にCYP3Aで代謝される薬剤

  • カルバマゼピン
  • クロバザム
  • トピラマート など

ミダゾラムと同じくCYP3Aで代謝される薬剤では、代謝の競合により、本剤または相手薬剤の血中濃度が上昇し、作用が増強されるおそれがあります。抗てんかん薬などを併用している小児では、薬物治療全体のバランスを考慮し、必要に応じて血中濃度モニタリングや用量調整を検討します。

(3)CYP3Aを阻害する薬剤

  • カルシウム拮抗薬:ベラパミル塩酸塩、ジルチアゼム塩酸塩
  • アゾール系抗真菌薬:ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール など
  • シメチジン
  • マクロライド系抗菌薬:エリスロマイシン、クラリスロマイシン
  • ホスネツピタント塩化物塩酸塩
  • カロテグラストメチル
  • ピミテスピブ
  • エンシトレルビルフマル酸
  • ベルモスジルメシル酸塩
  • カピバセルチブ
  • グレープフルーツジュースなど

これらはCYP3Aを阻害し、ミダゾラムの代謝を抑制することで、本剤の血中濃度を上昇させ、中枢抑制作用を増強させるおそれがあります。併用が避けられない場合には、投与量の減量や投与間隔の調整、呼吸・循環の厳重なモニタリングが必要となります。グレープフルーツジュースも同様にCYP3A阻害作用を持つため、服用前後の摂取は避けるよう指導します。

(4)CYP3Aを誘導する薬剤

  • リファンピシン
  • カルバマゼピン
  • エンザルタミド
  • ダブラフェニブ
  • ミトタン
  • アメナメビル
  • ロルラチニブ
  • イプタコパン塩酸塩水和物
  • フェニトイン
  • フェノバルビタール
  • セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort)含有食品など

これらはCYP3Aを誘導することで、ミダゾラムの代謝を促進し、血中濃度を低下させます。その結果、本剤の鎮静作用が減弱し、期待する効果が得られない可能性があります。併用時は効果の変化を慎重に観察し、必要に応じて用量調整を行います。

(5)抗悪性腫瘍剤・プロポフォール

  • ビノレルビン酒石酸塩、パクリタキセル等:骨髄抑制等の副作用が増強するおそれがある。本剤がCYP3Aを阻害し、これらの薬剤の代謝を抑制することで、血中濃度が上昇すると考えられている。
  • プロポフォール:麻酔・鎮静作用が増強され、血圧低下や心拍出量低下などの循環抑制が強く出る可能性がある。相互に中枢抑制作用を増強し、さらにCYP3A阻害により本剤の血中濃度が上昇したとの報告もある。

代謝経路のまとめ

  • ミダゾラムは肝臓のCYP3A4により主に1-ヒドロキシ体、4-ヒドロキシ体へと代謝される。
  • 代謝物は主として尿中に排泄される。
  • 肝機能障害やCYP3A阻害薬の併用により、半減期延長・血中濃度上昇が生じやすい。

食事の影響について

ドルミカムシロップそのものは、通常の食事との間に明確な制限は設けられていませんが、グレープフルーツジュースはCYP3A阻害作用により本剤の血中濃度を上昇させる可能性があるため、服用前後の摂取は避けることが望まれます。

また、アルコールは中枢抑制作用を相加的に増強させるため、成人患者への応用が検討される場面などでは、飲酒の回避を指導する必要があります。小児への使用が中心となる本剤においては、保護者への説明の中で、他の薬やサプリメント、ハーブ製品(セイヨウオトギリソウを含む)などの摂取状況も確認しておくと安全です。

主な副作用と安全性情報

ベンゾジアゼピン系薬剤の特徴を踏まえ、ドルミカムシロップでも以下のような副作用が注意喚起されています。

  • 呼吸抑制・呼吸停止:最も重要な安全性上のリスクであり、適切な監視と緊急対応体制が必須。
  • 過鎮静・傾眠・錯乱:意識レベルの低下や反応性の低下がみられることがある。
  • 循環動態の変動:血圧低下、心拍数変動、心拍出量低下など。
  • 興奮、逆説的反応:まれに不穏・興奮・攻撃性が出現することがあり、投与中止や対症療法を検討する。
  • 消化器症状:悪心、嘔吐など。

過量投与や感受性の高い患者では、過鎮静から呼吸抑制へ進行するリスクがあるため、経過観察とモニタリング(呼吸数、SpO2、血圧、心拍など)を十分に行うことが重要です。必要に応じてフルマゼニルの使用を考慮しますが、作用時間の違いによる再鎮静には十分注意が必要です。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 麻酔前投薬としての使用目的が明確であり、小児麻酔に精通した医師が管理できる体制か。
  • 施設として、呼吸・循環を連続的に観察できるモニタリング設備と、緊急時の蘇生・気道確保が可能な環境が整っているか。
  • 対象が生後6ヵ月以上の小児であることを確認しているか。
  • 基礎疾患(心不全、呼吸器疾患、肝・腎機能障害、神経疾患など)を把握し、必要な用量調整を行っているか。
  • HIVプロテアーゼ阻害剤など併用禁忌薬の有無を確認しているか。
  • CYP3A阻害・誘導薬、他の中枢神経抑制薬、抗てんかん薬等との併用状況を確認しているか。
  • 肥満児では標準体重に基づいて投与量を算出しているか。
  • 投与タイミング(麻酔導入との間隔)を、効果発現時間を踏まえて設定しているか。
  • フルマゼニルなど緊急時使用薬がすぐに使用できるように準備されているか。

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • ドルミカムシロップは麻酔開始前の一時的な投与であり、家庭で継続内服する薬ではないことを保護者に説明する。
  • 医師が指示した投与量(mL換算)を、体重に応じて正確に調製し、投与直前に確認する。
  • ストロベリー様のにおいがあるが、嫌がる場合は看護師・医師と連携し、無理な投与で誤嚥を招かないよう配慮する。
  • グレープフルーツジュースや一部の薬剤が相互作用を起こす可能性があることを注意
  • フルマゼニル投与歴がある患者では、本剤の鎮静作用が変化・遅延する可能性があることを念頭に置き、医師に情報提供する。

ケアポイント(看護師向け)

  • 投与前に、体重・全身状態・バイタルサインを確認し、予定投与量が妥当かどうか医師と情報共有する。
  • 投与後は、意識レベル、呼吸数、SpO2、血圧、心拍数などを連続的または頻回に観察し、異常があれば速やかに医師へ報告する。
  • 小児が保護者と離れるタイミングや環境に配慮し、不安や恐怖を軽減する声かけ・環境調整を行う。
  • 飲み込みが不十分な場合や、嫌がって暴れる場合は、誤嚥リスクを考慮して投与方法を見直す必要があるため、安易に再投与しない。
  • 手術室・麻酔科スタッフとの情報連携(投与時刻、投与量、投与後の様子)を確実に行い、麻酔導入時の判断材料として共有する。

まとめ

『ドルミカムシロップは、小児の手術前の不安をやわらげて、麻酔導入をスムーズにしてくれるお薬ですね。呼吸や循環への影響にはしっかり注意が必要ですが、チームで連携しながら使っていくことで、親子ともに少しでも安心して手術に臨めるようなお手伝いができるといいな、と思います。』

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【2025年11月27日発売】ボルズィ錠(ボルノレキサント)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1451https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1451#respondThu, 27 Nov 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1451

『みなさん、こんにちは。今回は2025年11月に新たに発売された不眠症治療薬「ボルズィ錠」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ボルズィ錠とは

不眠症は、入眠困難(なかなか眠れない)、中途覚醒(途中で何度も目が覚める)、早朝覚醒(早く目が覚めてしまう)といった睡眠の不調が続き、その結果として日中の倦怠感、意欲の低下、集中力の低下、食欲低下などを引き起こし、仕事や学業、家事・育児など日常生活の質(QOL)を下げてしまう疾患です。一般成人の30~40%が何らかの不眠症状を持つとされ、女性に多く、加齢とともに増加する傾向が報告されています。

不眠の背景には、ストレス、精神疾患、神経疾患、身体疾患、アルコールや薬剤の影響など、さまざまな要因が関与しており、治療では睡眠衛生指導(生活リズム・光暴露・運動・カフェイン摂取の見直し等)とともに、必要に応じて薬物療法を行います。薬物療法としては、ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬などから、患者さんの不眠タイプや背景に応じて慎重に薬剤選択を行うことが求められます。

ボルズィ錠(一般名:ボルノレキサント水和物)は、覚醒維持に重要な役割を担う「オレキシンA・B」が結合する受容体(OX1R・OX2R)を選択的にブロックするオレキシン受容体拮抗薬です。消半減期を短く抑えることを意識して設計されたオキサアジナン誘導体であり、夜間の過剰な覚醒状態を抑えつつ、日中の機能低下を最小限にすることを目指して開発された、新しい不眠症治療薬のひとつです。

製品概要(承認日、発売日、製造販売元など)

  • 商品名:ボルズィ錠2.5mg・5mg・10mg
  • 一般名:ボルノレキサント水和物
  • 薬効分類:オレキシン受容体拮抗薬/不眠症治療薬
  • 製造販売元:大正製薬株式会社
  • 販売元:大正製薬株式会社、Meiji Seika ファルマ株式会社
  • 効能・効果:不眠症
  • 用法・用量:通常、成人にはボルノレキサントとして1日1回5mgを就寝直前に経口投与。症状により適宜増減するが、1日1回10mgを超えない。
  • 製造販売承認取得日:2025年8月25日
  • 薬価基準収載日:2025年10月22日
  • 発売日:2025年11月27日

作用機序と特徴

覚醒状態の維持には、視床下部から放出される神経ペプチド「オレキシンA・オレキシンB」が重要な役割を果たします。これらはOX1R・OX2Rと呼ばれる受容体に結合し、覚醒系の神経ネットワークを活性化することで、覚醒状態を保っています。不眠症では、こうした覚醒シグナルが過剰に働いている「過覚醒状態」が病態の一因と考えられています。

ボルズィ(ボルノレキサント)は、OX1R・OX2Rの両方を阻害する二重オレキシン受容体拮抗薬(DORA)であり、オレキシンA・Bが受容体に結合するのを競合的にブロックします。その結果、覚醒シグナルが抑制され、過剰な覚醒状態から睡眠状態へスムーズに移行させると考えられています。

本剤はオキサアジナン誘導体で、オキサアジナン環を導入することにより、オレキシン受容体阻害活性脂溶性の低減(消半減期短縮)を両立させた薬物動態プロファイルを目指して開発されています。実際の臨床試験では、睡眠潜時の短縮、睡眠維持の改善とともに、日中の主観的眠気や認知機能への影響は大きくないことが示されており、夜間の睡眠改善と日中のパフォーマンス維持の両立が期待される薬剤です。

効能・効果・適応症

効能・効果:
不眠症

入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などの症状を有し、日中の生活に支障をきたしている不眠症患者が対象となります。なお、睡眠衛生指導等の非薬物療法を十分に行った上で、それでも十分な改善が得られない場合に薬物療法の適応が検討されます。

用法・用量と投与時の注意点

基本用法・用量(成人):

  • 通常、成人にはボルノレキサントとして1日1回5mgを就寝直前に経口投与する。
  • 症状により適宜増減するが、1日1回10mgを超えないこと。

用量調節に関する主な注意点(添付文書より抜粋要約):

  • 中程度のCYP3A阻害薬(例:フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル塩酸塩等)との併用時は、本剤の血漿中濃度が上昇し傾眠等の副作用が増強するおそれがあるため、1日1回2.5mgとすること。
  • 中等度肝機能障害(Child-Pugh分類B)の患者でも同様に血漿中濃度上昇・傾眠の増強が懸念されるため、1日1回2.5mgとすること。
  • 重度肝機能障害(Child-Pugh分類C)を有する患者は禁忌とされている。
  • 他の不眠症治療薬との併用時の有効性および安全性は確立していないため、基本的には単剤投与が前提となる。

重要な基本的注意(患者指導に関わるポイント):

  • 不眠症あるいは本剤の影響により、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがある。
  • 自動車運転や高所作業など危険を伴う機械操作の可否を慎重に判断し、眠気等がある場合は従事させないよう指導する。
  • 症状が改善した場合には、漫然と投与を継続せず、本剤継続の要否を適宜検討する。

相互作用・代謝経路

ボルノレキサントは主としてCYP3Aで代謝されるとされており、CYP3A阻害薬・誘導薬との相互作用が重要です。また中枢神経抑制作用を有する薬剤・アルコールとの併用にも注意が必要です。

1. 併用禁忌(併用しないこと)

強いCYP3A阻害薬(本剤の血中濃度が著明に上昇)

  • イトラコナゾール
  • ポサコナゾール
  • ボリコナゾール
  • クラリスロマイシン
  • リトナビル含有製剤
  • エンシトレルビルフマル酸
  • コビシスタット含有製剤
  • セリチニブ

これらの薬剤は強いCYP3A阻害作用を有し、ボルノレキサントの代謝を強く抑制することで血漿中濃度が大きく上昇し、傾眠などの中枢抑制作用が過度に増強するおそれがあるため、添付文書上併用禁忌とされています。

2. 併用注意(併用に注意すること)

(1)中程度のCYP3A阻害薬

  • フルコナゾール
  • エリスロマイシン
  • ベラパミル塩酸塩 など

これらの薬剤は中程度のCYP3A阻害作用を有し、本剤の代謝を抑制することで血漿中濃度を上昇させ、傾眠等の副作用が増強するおそれがあります。そのため、併用時はボルズィの用量を1日1回2.5mgに減量して使用することとされています。

(2)CYP3A誘導薬

  • リファンピシン
  • カルバマゼピン
  • フェニトイン など

これらはCYP3A誘導作用により、本剤の代謝を促進し血漿中濃度を低下させることで、本剤の作用を減弱させるおそれがあります。必要性を慎重に検討し、併用する場合には不眠症状の変化を十分に観察します。

(3)グレープフルーツジュース

  • 本剤の作用を増強させるおそれがある。
  • グレープフルーツ由来成分がCYP3Aを阻害し、ボルノレキサントの代謝を抑制することで、血漿中濃度が上昇すると考えられています。

患者には服用時はグレープフルーツジュースを避けるよう指導します。

(4)中枢神経抑制薬

  • フェノチアジン誘導体
  • バルビツール酸誘導体 など

これら中枢神経抑制薬と併用すると、相互に抑制作用が増強され、過度の眠気、ふらつき、転倒リスクなどが高まるおそれがあります。併用が避けられない場合は、用量調整や活動制限を含め慎重な管理が必要です。

(5)アルコール(飲酒)

  • アルコールと本剤はともに中枢神経抑制作用を有し、精神運動機能の相加的低下を来す可能性があります。
  • ふらつき、判断力低下、転倒・事故のリスクが増大するため、服用中の飲酒は避けるよう指導します。

(6)他の不眠症治療薬

  • 他の睡眠薬との併用時の有効性・安全性は確立していません。
  • 原則として単剤で使用し、他剤から切り替える場合は休薬や漸減を検討します。

代謝経路のまとめ

  • 主としてCYP3Aによる代謝を受ける。
  • 肝機能障害(特に中等度以上)では血中濃度が上昇しやすいため、用量調整または禁忌対象となる。
  • 強いCYP3A阻害薬との併用でAUCが大きく上昇することが薬物動態試験で確認されている。

食事の影響について

ボルズィ錠は就寝直前に服用することが推奨されており、添付文書上、通常の食事に関する大きな制限は示されていません。一方で、グレープフルーツジュースはCYP3A阻害作用により血中濃度を上昇させる可能性があるため、服用前後の摂取は避けることが望まれます。

また、アルコールは中枢抑制作用が相加的に強まり、翌朝まで眠気やふらつきが残るリスクがあるため、服用中の飲酒は控えるよう指導することが重要です。

主な副作用と安全性情報

臨床試験および市販後情報から、以下のような副作用が報告されています。

  • 傾眠(眠気):最も重要かつ頻度の高い副作用。5mg群・10mg群ともに数%台で認められ、長期投与試験でも主要な副作用でした。
  • 浮動性めまい
  • 悪夢などの睡眠関連精神症状
  • 倦怠感
  • 血中乳酸脱水素酵素(LDH)増加などの検査値異常

添付文書上は、「傾眠」「日中の眠気」「注意力・集中力低下」に特に注意するよう記載されており、自動車運転や危険を伴う機械操作を避けるべき状況について、医師から患者さんへ十分な説明を行うことが求められています。

また、重度肝機能障害患者は禁忌とされ、中等度肝機能障害では用量減量(1日1回2.5mg)と慎重な観察が必要です。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 不眠症状が慢性的に存在し、日中の機能低下を伴う「不眠症」と診断できているか。
  • 睡眠衛生指導(生活リズム、光環境、カフェイン・アルコール等)の介入が行われているか。
  • 他の睡眠薬からの切り替えの場合、減量・中止スケジュールを検討しているか。
  • 肝機能障害の有無(特に中等度〜重度)を確認しているか。
  • 強いCYP3A阻害薬(イトラコナゾール等)との併用がないか(あれば禁忌)。
  • 中程度のCYP3A阻害薬(フルコナゾール等)併用時には用量2.5mgへの減量が必要であることを認識しているか。
  • リファンピシン等のCYP3A誘導薬の併用により効果減弱が予想される症例では、必要性を慎重に評価したか。
  • アルコール多飲や中枢抑制薬併用など、転倒リスク因子を把握しているか。
  • 症状改善後には漫然と継続せず、減量や中止も含め投与継続の要否を定期的に評価する計画があるか。

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 「就寝直前に1日1回服用する薬」であることを明確に伝える。
  • 飲み忘れた場合、その夜を過ぎてから気づいたときは服用しないことを説明する(翌日に2回分をまとめて飲まない)。
  • 服用中は飲酒を控えること、グレープフルーツジュースは避けることを案内する。
  • 日中の眠気・ふらつき・注意力低下を感じた場合は、すぐに主治医へ相談するよう促す。
  • 他の睡眠薬や精神科薬、感冒薬(鎮静成分含有)を自己判断で追加しないよう注意喚起する。
  • 中等度のCYP3A阻害薬を併用中で用量が2.5mgに設定されている場合、その理由(相互作用と安全性)をわかりやすく説明する。

ケアポイント(看護師向け)

  • 入院中・外来ともに、日中の眠気・ふらつき・転倒の有無を定期的に確認する。
  • 夜間の睡眠状況(入眠までの時間、中途覚醒の回数など)を聞き取り、薬剤効果の評価に役立てる。
  • 高齢患者や多剤併用患者では、他の中枢抑制薬やアルコール摂取の有無を確認し、必要に応じて医師・薬剤師と情報共有する。
  • 肝機能障害の既往や検査値の変化がないかを確認し、中等度以上の障害が疑われる場合は速やかに報告する。
  • 自動車運転や危険作業に従事している患者には、眠気や注意力低下のリスクを丁寧に説明し、勤務・生活調整の必要性を一緒に検討する。

まとめ

『ボルズィは、オレキシンをターゲットにした新しいタイプの睡眠薬で、夜の「過覚醒」をやわらげてくれるお薬ですね。飲み方や一緒に使うお薬、アルコールとの関係にはちょっとした注意が必要ですが、患者さんの生活リズムに寄り添いながら、無理のない睡眠リズムづくりのお手伝いができたらうれしいな、と思います。』

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【2025年11月21日発売】ネクセトール錠180mg(ベムペド酸)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1449https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1449#respondFri, 21 Nov 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1449

『みなさん、こんにちは。今回は2025年11月に新たに発売された高コレステロール血症・家族性高コレステロール血症治療薬「ネクセトール錠180mg」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ネクセトール錠180mgとは

高コレステロール血症は、動脈硬化性疾患の主要な危険因子のひとつであり、心筋梗塞や脳梗塞などの予防のためには、LDLコレステロール(LDL-C)を管理目標値以下にコントロールし続けることが重要とされています。家族性高コレステロール血症(FH)は遺伝性にLDL-Cが高値となる疾患で、ヘテロ接合体(HeFH)だけでなく、より重症なホモ接合体(HoFH)も存在し、若年から動脈硬化が進行しやすいことが知られています。

ガイドラインではまずスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害剤)が第一選択薬とされますが、最大耐量のスタチンでも管理目標に到達しない例や、筋症状などの副作用のためスタチンによる治療が難しい症例も少なからず経験されます。そのような患者に対しては、エゼチミブやPCSK9阻害薬、インクリシランなど、スタチンとは異なる作用機序のLDL-C低下薬の追加・切り替えが検討されます。

ネクセトール錠180mg(一般名:ベムペド酸)は、HMG-CoA還元酵素のさらに「ひとつ上流」を標的とするATPクエン酸リアーゼ(ACL)阻害剤です。1日1回経口投与でLDL-Cを低下させる新規機序の薬剤であり、スタチンで効果不十分な症例、あるいはスタチン治療が適さない症例に対する新たな治療選択肢として期待されています。

製品概要

  • 商品名:ネクセトール錠180mg
  • 一般名:ベムペド酸
  • 薬効分類:ATPクエン酸リアーゼ阻害剤
  • 製造販売元:大塚製薬株式会社
  • 効能・効果:高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症
  • 用法・用量:通常、成人にはベムペド酸として180mgを1日1回経口投与
  • 承認取得日:2025年9月19日
  • 薬価基準収載日:2025年11月12日
  • 発売日:2025年11月21日

なお、本剤はHMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、またはスタチンによる治療が適さない患者に使用する薬剤と位置づけられています。また、家族性高コレステロール血症のうちホモ接合体(HoFH)に対しては使用経験がなく、治療上やむを得ない場合に非薬物療法(LDLアフェレーシスなど)の補助としての適用が考慮されます。

作用機序と特徴

ベムペド酸は肝細胞内でCoA活性体(ETC-1002-CoA)に変換され、ATPクエン酸リアーゼ(ATP citrate lyase:ACL)を選択的に阻害します。ACLはコレステロール合成経路において、HMG-CoA還元酵素より上流に位置する酵素であり、クエン酸からアセチルCoAを生成するステップを担っています。

  • ACL阻害により、肝臓でのコレステロール合成が低下
  • 肝細胞表面のLDL受容体(LDLR)の発現が誘導される
  • 血中LDL-Cが増加したLDLRに取り込まれ、結果としてLDL-Cが低下

ベムペド酸は主に肝臓で活性化され、骨格筋ではほとんど活性化されないとされており、その点が「筋障害リスクを比較的抑えつつLDL-Cを低下させる」可能性がある点として注目されています。一方で、本剤はスタチンの血中濃度を上昇させ得るため、スタチン併用時には逆に横紋筋融解症などのリスクが増加する可能性がある点に留意が必要です。

効能・効果・適応症

効能・効果(添付文書記載):
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症

適用前には、診察および血清脂質検査などにより、対象が高コレステロール血症または家族性高コレステロール血症であることを確認した上で使用を検討します。また、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、あるいはスタチン治療が適さない患者に限定して使用します。

用法・用量と投与時の注意点

基本用法・用量:

  • 通常、成人にはベムペド酸として180mgを1日1回経口投与する。

用法・用量に関連する注意点:

  • スタチン治療が適さない場合を除き、HMG-CoA還元酵素阻害剤との併用が推奨されます。
  • 投与中は定期的に脂質プロファイルを測定し、反応が不十分な場合は投与継続の是非を検討します。
  • 食事療法・運動療法・禁煙など、生活習慣介入と併せて使用することが基本です。
  • 本剤投与により尿酸値上昇・高尿酸血症・痛風があらわれることがあるため、既往のある患者では特に注意が必要です。
  • 重度の肝機能障害(Child-Pugh C)患者では非結合形の血中濃度が上昇し得るとされ、慎重な適応判断が求められます。
  • 妊婦・授乳婦には使用しないこととされており、生殖能を有する女性には適切な避妊指導が必要です。

相互作用・代謝経路

ベムペド酸は主にNADPH依存性酸化およびUGT2B7によるグルクロン酸抱合で代謝され、CYP依存性代謝の寄与は小さいとされています。一方で、他剤との相互作用に関する検討は複数行われており、臨床的に注意すべき薬剤が存在します。

1. HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系)

アトルバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチンとの併用試験において、本剤併用により各スタチンおよびその活性代謝物のCmax・AUCが最大でおよそ1.5~2倍程度まで上昇することが報告されています。

  • 機序:主として有機アニオン輸送系(OATP・OAT系など)やグルクロン酸抱合への影響が関与すると考えられています。
  • 臨床的影響:スタチン血中濃度上昇 → 筋障害・横紋筋融解症リスク増大。
  • 対応:スタチン併用時はCKの定期測定、筋痛・脱力・こむら返りなどの症状に注意し、症状出現時には速やかな受診と検査を指導します。

2. エゼチミブ

  • エゼチミブのグルクロン酸抱合体(活性代謝物)のCmax・AUCが約1.7~1.8倍に上昇。
  • ベムペド酸側の曝露への影響は軽度(Cmax・AUCともに約1.1倍程度)。
  • 臨床的には併用可能とされますが、胆石症や肝機能異常などエゼチミブの副作用リスクに留意します。

3. プロベネシド(UGT阻害剤)

  • プロベネシド併用により、ベムペド酸のAUCが約1.7倍程度に上昇。
  • 機序:UGT2B7阻害によりベムペド酸の抱合代謝が抑制。
  • 腎機能障害や高尿酸血症を背景にプロベネシドを使用している症例では、本剤の血中濃度上昇と尿酸値上昇が重なり得るため、より慎重なモニタリングが必要です。

4. その他の脂質異常症治療薬との併用

フィブラート系、PCSK9阻害薬、インクリシランなどとの併用は臨床試験で実施されていますが、本剤側からの大きな薬物動態相互作用は報告されていません。ただし、スタチンや他の脂質異常症治療薬と併用する場合には、それぞれの添付文書に記載された禁忌・重要な注意点を必ず確認した上で使用する必要があります。

代謝・排泄の概要

  • 代謝:主にNADPH依存性酸化およびUGT2B7によるグルクロン酸抱合
  • 蛋白結合率:約99%以上と高い
  • 排泄:放射能試験ではおよそ6割が尿中、約4分の1が糞便中に排泄

食事の影響について

健康成人での食事影響試験において、空腹時と食後投与時でCmaxおよびAUCの差はわずか(Cmax比約0.88、AUC比約0.98)と報告されており、食事の影響はほとんどないとされています。

そのため、服用時間は1日1回、患者の生活リズムに合わせて一定のタイミングで継続することが重要であり、特段の「食前・食後」の指定はありません。

主な副作用と安全性情報

臨床試験で認められた主な副作用は以下のとおりです。

  • 高尿酸血症/尿酸値上昇:比較的高頻度。痛風発作の誘発に注意。
  • 肝機能検査値上昇(AST・ALT・ALP・ビリルビンなど):定期的な肝機能検査が推奨。
  • 腎機能関連検査値の変化:血中クレアチニン、尿素窒素の軽度上昇、eGFR低下など。
  • 血液関連:貧血、ヘモグロビン低下など。
  • 筋障害・筋痙縮・四肢痛:単剤では頻度は高くないものの、スタチン併用でリスク増大に注意。
  • その他:四肢痛、関節症状、消化器症状など。

特に高尿酸血症・痛風の既往がある患者では、症状の悪化や新たな発作に注意し、血清尿酸値を定期的にモニタリングすることが推奨されます。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 高コレステロール血症または家族性高コレステロール血症であることを確認したか。
  • 食事療法・運動療法などの基本療法が実施されているか。
  • スタチン治療で効果不十分、またはスタチン不耐(禁忌・副作用)の条件を満たしているか。
  • HoFH症例ではないか(HoFHの場合は非薬物療法の補助としてやむを得ない場合に限定)。
  • 投与前に肝機能・腎機能・CK・尿酸値等の検査を実施しているか。
  • 痛風の既往や高尿酸血症の有無を確認したか。
  • 併用中のスタチンやエゼチミブなど、他の脂質異常症治療薬を把握し、相互作用リスクを評価したか。
  • 妊娠の可能性がないか、避妊の必要性を説明したか。
  • 2026年11月末日までは1回14日分までの投薬制限があることを念頭に置き、処方日数を調整しているか。

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 1日1回服用であること、毎日同じ時間帯に継続することの重要性を説明する。
  • 食事の影響は少ないが、「飲み忘れ防止のための工夫」を患者と相談し決める。
  • スタチン併用中の場合、筋肉痛・こむら返り・筋力低下などが続いたら受診するよう強調する。
  • 高尿酸血症・痛風の既往がある場合、関節痛や足趾の腫れなどの症状にも早期受診を促す。
  • 他の脂質異常症治療薬やサプリメント(ナイアシンなど)を自己判断で追加しないよう注意喚起する。
  • 妊娠を希望する場合や授乳中の場合は、必ず主治医に相談するよう伝える。

ケアポイント(看護師向け)

  • 定期受診時に服薬状況を確認し、飲み忘れや中断がないかチェックする。
  • 体重、血圧、生活習慣(食事・運動・喫煙)の変化を継続的に評価し、必要に応じて指導につなぐ。
  • 痛風発作様の症状(足の親指の疼痛・発赤など)がないか観察し、患者にも注意点を共有する。
  • 筋肉痛や脱力感を訴える場合は、スタチン併用の有無も含めて医師へ情報共有する。
  • 検査予定(脂質・尿酸・肝機能・CKなど)と結果を患者と一緒に確認し、治療継続の意義をわかりやすく説明する。

まとめ

『ネクセトールは、スタチンだけではLDLコレステロールのコントロールが難しい方や、スタチンが使いにくい方にプラスできる新しいタイプのお薬ですね。尿酸値や筋肉の症状などに気をつけながら、患者さん一人ひとりのリスクに合わせて、より安心できる脂質管理につなげていけたらいいな、と感じました。』

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【2025年11月21日発売】フジケノン粒状錠125(ケノデオキシコール酸)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1447https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1447#respondFri, 21 Nov 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1447

『みなさん、こんにちは。今回は2025年11月に新たに発売された脳腱黄色腫症(CTX)治療薬「フジケノン粒状錠125」について、簡単にまとめました。』

はじめに:フジケノン粒状錠125とは

脳腱黄色腫症(CTX:Cerebrotendinous Xanthomatosis)は、胆汁酸合成に関与するCYP27A1遺伝子の変異により、一次胆汁酸であるケノデオキシコール酸(CDCA)の合成が著しく低下する希少疾患です。日本では指定難病に分類され、2023年度の特定医療費受給者証所持者数は54名とされています。

CDCAが不足することで負のフィードバックが働かず、コレステロールから代謝される中間代謝物「コレスタノール」が過剰に産生されます。血中コレスタノールは中枢神経系(脳・脊髄)、腱(アキレス腱など)、水晶体、血管壁など全身に沈着し、以下のような多彩な症状を引き起こします。

  • 小脳失調、錐体外路症状
  • 認知症様症状、精神症状
  • 白内障(若年期から発症)
  • 腱黄色腫(特にアキレス腱)

一度重度の神経症状が確立すると治療による改善は限定的であり、早期診断・早期治療が非常に重要とされています。CTX診療ガイドラインでも、CDCAの補充療法が治療の第一選択と位置づけられていますが、これまで国内では「CTXに対する効能・効果を正式に持つCDCA製剤」が存在しませんでした。

今回発売されたフジケノン粒状錠125は、CDCA製剤として国内で初めて「脳腱黄色腫症」を効能・効果に持つ薬剤であり、早期からの介入を可能とする新たな治療選択肢として期待されています。

なお、CTX を含む先天性胆汁酸代謝異常症を効能・効果として承認されている薬剤に、オファコルカプセル 50 mg(コール酸)があり、CDCA製剤が十分量投与できない場合などに投与されることがあります。

製品概要

  • 商品名:フジケノン粒状錠125
  • 一般名:ケノデオキシコール酸
  • 薬効分類:脳腱黄色腫症治療剤
  • 製造販売元:藤本製薬株式会社
  • 効能・効果:脳腱黄色腫症
  • 規格:1包中125mg(5錠入りの粒状錠)
  • 承認取得日:2025年9月19日
  • 薬価基準収載日:2025年11月12日
  • 発売日:2025年11月21日

作用機序と特徴

ケノデオキシコール酸(CDCA)は、生体内の胆汁酸合成経路における主要な一次胆汁酸です。CTXではCDCA欠乏によりCYP7A1(胆汁酸合成の律速酵素)への負のフィードバックが働かず、コレスタノール産生が亢進します。

● フジケノン(CDCA)の作用機序

  • CDCAを外から補充することで、CYP7A1に対する負のフィードバックを回復
  • その結果、コレスタノールの過剰産生を抑制
  • 血中コレスタノール濃度を低下させ、臓器沈着・進行を抑える

CDCAはCTX治療の中心的役割を担うとされ、国際的にも早期治療の重要性が強調されています。フジケノンは直径約4mmの粒状錠であり、嚥下困難な小児・高齢者にも使いやすい製剤です。

効能・効果・適応症

効能・効果:
脳腱黄色腫症

用法・用量と投与時の注意点

成人:

  • ケノデオキシコール酸として1日250mgより開始
  • 250mgずつ増量し、維持量:1日750mg
  • 1日3回に分割し連日経口投与
  • 最大:1日1000mgまで
  • 1回あたり375mg超は不可

小児:

  • 1日量5mg/kgより開始
  • 5mg/kgずつ増量し、維持量:1日15mg/kg
  • 1日3回に分割
  • 上限:1日15mg/kg または 750mg(いずれも超えない)
  • 1回あたり250mg超は不可

注意点:

  • 維持量への漸増は2週間ごとに実施
  • 定期的に肝機能検査を行い、重度の肝機能障害があれば中止
  • 胆道閉塞がある患者には禁忌

相互作用・代謝経路

● 制酸作用を有するアルミニウム含有製剤(例:水酸化アルミニウムゲル)

  • 本剤の吸収が低下 → 効果減弱のおそれ
  • 機序:アルミニウムがCDCAを吸着し吸収阻害
  • 対応:できるだけ服用間隔をあける

● 陰イオン交換樹脂(コレスチラミン・コレスチミド)

  • 本剤と結合し吸収阻害 → 効果減弱
  • 機序:陰イオン交換樹脂がCDCAと強く結合

● ウルソデオキシコール酸

  • CDCAおよびUDCA双方の吸収が減弱
  • 機序:吸収が競合する
  • 対応:服用間隔をあけることが望ましい

● IBAT阻害剤(エロビキシバット)

  • CDCAの再吸収が阻害され、効果減弱のおそれ
  • 機序:胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害

● シクロスポリン・シロリムス

  • 本剤のコレスタノール抑制作用を打ち消す可能性
  • 機序:胆汁酸代謝への影響や免疫抑制剤の作用

● フェノバルビタール・プリミドン

  • 本剤の「プールサイズ」(胆汁酸量)を減少させる可能性
  • 機序:酵素誘導などに伴う胆汁酸代謝の変化

● 経口避妊薬

  • 本剤の胆汁酸プールサイズが減少 → 作用減弱

● 代謝経路(ポイント)

  • IBATによる吸収+腸肝循環で作用を発揮
  • 肝で抱合 → 胆汁排泄 → 再吸収の循環(腸肝循環)
  • アルブミン結合率約98.5%

食事の影響について

食事による明確な吸収変動の記載はありませんが、胆汁酸は食事刺激に応じて腸肝循環が変動するため、臨床的には「毎日同じタイミングで服用」することが推奨されます。

主な副作用と安全性情報

  • 肝機能異常(ALT/AST/ALP/ビリルビン上昇)
  • 鼓腸
  • 下痢、軟便、悪心、嘔吐
  • 食欲不振
  • 腹部不快感、腹部膨満感
  • 過敏症:発疹、瘙痒
  • 倦怠感、めまい、顔のむくみ

定期的な肝機能検査は必須であり、重度の肝障害が確認された場合は中止とされています。 また、胆道閉塞のある患者へは禁忌です。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • CTXと確定診断されているか(CYP27A1遺伝子、血清コレスタノールなど)
  • 早期治療介入が必要な症例であるか
  • 肝機能検査を投与前に実施したか
  • 胆道閉塞がないことを確認したか
  • 併用薬(制酸剤、陰イオン交換樹脂、UDCA、IBAT阻害剤など)をチェックしたか
  • 漸増スケジュールを患者・家族と共有したか
  • 小児の場合は、体重換算・上限量を厳密に確認したか
  • 14日分制限(2026年11月末まで)を考慮した処方設計か

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 漸増スケジュールの確認
  • 制酸剤・陰イオン交換樹脂・ウルソなどの併用薬の有無を確認
  • 肝機能検査の重要性を説明
  • 粒状錠(直径4mm)のため、小児や嚥下困難者にも服用しやすいことを説明
  • 腹部症状(下痢・膨満感)が続く場合は早めに医師へ連絡するよう指導

ケアポイント(看護師向け)

  • 服薬スケジュール(増量2週間ごと)を家族と共有
  • 肝機能障害徴候(黄疸、倦怠感、食欲不振)に注意
  • 腹部症状の訴えの変化を観察
  • 小児では体重変化を定期的にチェックし用量調整に反映
  • 併用薬が吸収阻害に影響していないか確認

まとめ

『フジケノンは、これまで選択肢が限られていた脳腱黄色腫症に承認された大切なお薬ですね。早く始めるほど将来の症状を抑えることにもつながるので、患者さんやご家族と一緒に、無理のない服薬計画を作っていけたらいいな、って思います。』

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【2025年11月12日発売】アイマービー点滴静注1200mg(ニポカリマブ)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1444https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1444#respondWed, 12 Nov 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1444

『みなさん、こんにちは。今回は2025年11月に新たに発売された全身型重症筋無力症(gMG)治療薬「アイマービー」について、簡単にまとめました。』

はじめに:アイマービー点滴静注1200mgとは

重症筋無力症(MG:myasthenia gravis)は、自己免疫機序により神経筋接合部での神経伝達が阻害されることで、筋力低下や易疲労性が生じる疾患であり、日本では指定難病に指定されています。2024年度の特定医療費受給者証所持者数は28,323人と報告されており、その約80%が全身型MG(gMG)、残り20%ほどが眼筋型MGです。

MGは、自己抗体(抗AChR抗体・抗MuSK抗体など)が病態に深く関与しており、特にIgG抗体の病原性が重要と考えられています。標準治療としては、少量ステロイド、免疫抑制薬、抗コリンエステラーゼ薬などが用いられ、症状が改善しない場合には血液浄化療法(PE/DFPP)、免疫グロブリン静注(IVIg)、さらに新規の抗補体抗体製剤や抗FcRn抗体製剤が検討されます。

日本の診療ガイドラインでも、治療抵抗性MGや、効果の不十分な症例に対して新たな薬物療法が強く望まれており、長期的な症状改善と寛解導入を目的とした治療選択肢が求められていました。

アイマービー(一般名:ニポカリマブ)は、FcRn(新生児Fc受容体)を標的とした抗FcRnモノクローナル抗体製剤で、病原性IgGの選択的低下を目指す新しい作用機序の治療薬です。成人および12歳以上の小児に使用でき、2週間間隔で点滴投与することでIgG濃度を低下させ、症状改善を誘導します。新たな治療選択肢として、難治性MG領域での活用が期待されています。

製品概要

  • 商品名:アイマービー点滴静注1200mg
  • 一般名:ニポカリマブ(遺伝子組換え)
  • 薬効分類:抗FcRnモノクローナル抗体製剤
  • 製造販売元:ヤンセンファーマ株式会社
  • 効能・効果:全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)
  • 承認取得日:2025年9月19日
  • 薬価基準収載日:2025年11月12日
  • 発売日:2025年11月12日
  • ※300mg製剤:薬価収載済みだが未発売(2025年11月12日時点)

作用機序と特徴

アイマービー(ニポカリマブ)は、FcRn(新生児Fc受容体)に結合し、内因性IgGが細胞内でリサイクルされる仕組みを阻害することで、IgGのリソソーム分解を促進します。

● FcRnの役割

  • IgGは血管内皮細胞などで取り込まれ、FcRnと結合することで分解から逃れ再放出される
  • FcRn阻害によりIgGの再利用が阻害され、IgGは分解方向へ

● アイマービーの作用機序

  • FcRnに高親和性で結合し、IgGのリサイクルをブロック
  • 病原性自己抗体(抗AChR抗体などを含むIgG)も血中で低下
  • IgG以外の免疫グロブリン(IgA、IgMなど)への影響は少ないとされる

従来治療で十分な改善が得られないgMG患者では、IgG自己抗体を標的としたFcRn阻害薬は作用機序的に理にかなった治療法であり、症状改善を目指す新たな選択肢となります。

効能・効果・適応症

効能・効果(添付文書記載そのまま):
全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)

用法・用量と投与時の注意点

用法・用量(添付文書記載):

  • 通常、成人および12歳以上の小児には、ニポカリマブとして初回に30mg/kgを点滴静注
  • 以降は1回15mg/kgを2週間隔で点滴静注

投与に関わる注意点:

  • 初回から24週までに症状改善が得られない場合、投与継続要否を検討
  • IgGが低下するため、感染症の発症・悪化のリスクがある
  • 治療中および終了後も定期的に血液検査(IgG、血球、炎症マーカー等)を行う
  • 感染症徴候(発熱、咳、悪寒、傷の化膿など)があれば速やかに受診
  • 点滴投与後のアレルギー反応に注意し、投与中は適切な観察が必要

相互作用・代謝経路

ニポカリマブは抗体製剤であり、CYP阻害や誘導を介した薬物相互作用はほとんどありません。しかし、IgGを低下させる作用から、以下の点が臨床的に重要な注意点となります。

● 相互作用(添付文書・インタビューフォームに基づく要点)

1. ワクチン

  • IgG低下によりワクチンの効果が減弱する可能性
  • 不活化ワクチン:接種可だが効果減弱に注意
  • 生ワクチン:原則接種を避けること(免疫抑制状態によるリスク増大)

2. 免疫抑制剤

  • ステロイド・タクロリムス・シクロスポリンなどとの併用は可能だが、感染症リスクが相加的に増加
  • 白血球減少などが出現しやすい

3. 静注免疫グロブリン(IVIg)

  • IVIgは大量IgGを投与する治療であり、FcRn阻害によるIgG低下が「相殺」される可能性
  • 併用する場合は投与計画を慎重に調整する必要がある

4. 血漿交換(PE)・免疫吸着(IA)

  • IgGが直接除去される治療であり、本剤の効果持続が短縮
  • タイミングによっては効果が大きく変動

※CYP阻害/誘導・P-gp・BCRPなどの取り扱い:
抗体医薬品のため、これらによる薬物相互作用は基本的にありません。

● 代謝経路

  • 通常の抗体医薬品と同様、網内系での分解が主体
  • 腎排泄や肝代謝酵素によるクリアランスは主要経路ではない
  • 半減期は中等度で、2週間隔投与が薬物動態的に適する

食事の影響について

点滴静注製剤のため、食事の影響は受けません。 ただし、治療開始前後の体調管理(発熱・感染症徴候を避けるための生活指導)は重要です。

主な副作用と安全性情報

  • 感染症(最重要):上気道感染、肺炎、尿路感染など
  • IgG低下:免疫低下により細菌/ウイルス感染症リスク増大
  • 頭痛、倦怠感、悪心:比較的高頻度
  • 注射部位反応:疼痛、発赤、腫脹など
  • アレルギー反応:投与中の観察が必要
  • 貧血・白血球減少:定期的な血液検査が必要

添付文書の【重要な基本的注意】では、 「治療期間中および治療終了後も、IgG低下による感染症に十分注意し、異常時は速やかに受診」 と明記されています。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • gMGであり、既存の免疫抑制治療で十分な効果が得られていないか
  • 成人または12歳以上であるか
  • IgG低下による感染リスクについて説明し、同意を得ているか
  • ワクチン接種計画(生ワクチン回避など)を確認したか
  • IVIg・PE/IAなど急性治療とのスケジュール調整を行ったか
  • 投与前にIgG・白血球・CRP・肝腎機能などの検査を実施したか
  • 投与中も適切なタイミングで血液検査を行う計画を立てたか
  • 感染兆候(発熱、咳、化膿など)への初期対応の指示を患者へ行ったか
  • 2週間隔の点滴通院が可能か確認したか

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • IgG低下→感染しやすくなる点を丁寧に説明
  • 発熱・咳・喉の痛み・傷の悪化などあれば早期受診を促す
  • ワクチン接種(特に生ワクチン)に関して医師へ必ず確認させる
  • IVIg併用やPEなどとスケジュールが重ならないよう注意喚起
  • 通院間隔が2週間であること、点滴時間がある程度かかることを説明

ケアポイント(看護師向け)

  • 投与前後のバイタル・症状(感染徴候)の観察
  • 点滴中のアレルギー反応、血管痛、血圧低下などに注意
  • 治療後のIgG低下に伴う感染管理(手洗い・マスクなど)を指導
  • 体調変化(倦怠感、悪心、微熱、咳)を見逃さないよう声かけ
  • 2週間隔の受診スケジュールを共有し、通院支援が必要か確認
  • IVIg・PEなど別治療の計画と重複しないよう部門間で情報共有

まとめ

『アイマービーは、重症筋無力症でお悩みの方に、新しい治療の選択肢を提供してくれるお薬なんですね。感染症にはちょっと気をつけないといけませんが、一人ひとりの症状に寄り添いながら、より安心して過ごせる毎日につないでいけたら…そんなふうに思います。』

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【2025年11月12日発売】イブトロジーカプセル200mg(タレトレクチニブアジピン酸塩)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1442https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1442#respondWed, 12 Nov 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1442

『みなさん、こんにちは。今回は2025年11月に新たに発売されたROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん治療薬「イブトロジー」について、簡単にまとめました。』

はじめに:イブトロジーカプセル200mgとは

イブトロジーカプセル200mg(一般名:タレトレクチニブアジピン酸塩)は、ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした経口のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)です。ROS1融合遺伝子はNSCLC全体の約1〜2%で認められる比較的稀なドライバー変異ですが、若年、非喫煙者、腺がんに多く、進行期では脳転移と関連し予後不良であることが知られています。

肺癌診療ガイドラインでは、ROS1融合遺伝子陽性IV期NSCLCの一次治療としてROS1-TKI単剤療法が推奨されており、既にクリゾチニブやエヌトレクチニブなどが使用されています。一方で、これらのROS1-TKIに対する耐性獲得や、G2032R変異を代表とする耐性変異、さらには中枢神経系(CNS)転移への十分な効果が課題として挙げられてきました。

イブトロジーは、ROS1融合タンパクを標的としつつ、代表的な耐性変異にも活性を持ち、中枢神経系への移行性も期待される新しいROS1-TKIです。コンパニオン診断として「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」が承認されており、分子プロファイリングに基づいた精密医療の一翼を担う薬剤として位置づけられています。

製品概要

  • 商品名:イブトロジーカプセル200mg
  • 一般名:タレトレクチニブアジピン酸塩
  • 薬効分類:抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤
  • 製剤・規格:1カプセル中タレトレクチニブ200mg含有カプセル剤
  • 製造販売元:日本化薬株式会社
  • 効能・効果:ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
  • 製造販売承認取得日:2025年9月19日
  • 薬価基準収載日:2025年11月12日
  • 発売日:2025年11月12日
  • コンパニオン診断:AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル

作用機序と特徴

タレトレクチニブは、ROS1などを標的とするチロシンキナーゼ阻害薬です。ROS1融合遺伝子陽性腫瘍では、ROS1融合タンパクのキナーゼ活性が恒常的に亢進し、その下流のシグナル(MAPK/ERK経路やPI3K/AKT経路など)を介して腫瘍細胞の増殖・生存が促進されます。本剤はこのROS1キナーゼを阻害することで、ROS1融合タンパクのリン酸化を抑制し、腫瘍増殖抑制作用を発揮すると考えられています。

特徴として、以下の点が挙げられます。

  • ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発NSCLCを対象とした経口ROS1-TKIであること
  • 代表的な耐性変異であるG2032R変異を含む複数のROS1耐性変異に対しても活性を有することが期待されていること
  • CNS活性が報告されており、脳転移症例に対しても治療選択肢となり得ること
  • 間質性肺疾患、肝機能障害、QT間隔延長などの重篤な有害事象が重要なリスクとして位置づけられていること

効能・効果・適応症

効能・効果(添付文書記載):
ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌

用法・用量と投与時の注意点

用法・用量(添付文書記載):
通常、成人にはタレトレクチニブとして1日1回600mgを空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

イブトロジーカプセル200mgを用いる場合、通常は1回600mg=200mgカプセル3カプセルを1日1回内服します。

減量レベルの目安:

  • 通常投与量:600mg 1日1回
  • 1段階減量:400mg 1日1回
  • 2段階減量:200mg 1日1回
  • 200mgでも忍容不能な場合:投与中止

用法・用量に関連する主な注意点:

  • 食後投与ではCmaxおよびAUCが上昇するため、食事の前後2時間の服用は避け、空腹時に投与する。
  • 肝不全・肝機能障害があらわれることがあるため、投与開始前および投与中は定期的に肝機能検査を行う。
  • QT間隔延長があらわれることがあるため、心電図および電解質(K、Mg、Caなど)を定期的に評価する。
  • 間質性肺疾患のリスクがあるため、呼吸困難、咳嗽、発熱などの初期症状に注意し、必要に応じて胸部CT検査などを行う。
  • 間質性肺疾患が疑われる場合には投与を中止し、適切な治療を行う。

相互作用・代謝経路

代謝の概要:
タレトレクチニブは主にCYP3Aで代謝されるとともに、

  • CYP1A2に対して:誘導作用
  • CYP2D6に対して:阻害作用
  • BCRP、MATE1、MATE2-Kに対して:阻害作用

を示すことが報告されています。このため、本剤は「他剤から影響を受ける」と同時に、「他剤の血中濃度にも影響し得る」薬剤です。

1. 本剤の血中濃度を変化させる薬剤

  • 強い/中等度のCYP3A阻害薬
    例:イトラコナゾール、エリスロマイシン、フルコナゾール、グレープフルーツジュース など
    → CYP3A阻害によりタレトレクチニブの血中濃度が上昇し、副作用が増強するおそれがあります。
    対処:可能な限り併用を避け、やむを得ず併用する場合は本剤の減量を検討しつつ、肝機能異常、QT延長、消化器症状などの出現に注意深くモニタリングします。
  • CYP3A誘導薬
    例:リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン など
    → CYP3A誘導により本剤の血中濃度が低下し、有効性が減弱するおそれがあります。
    対処:可能な限り併用を避け、CYP3A誘導作用のない薬剤への切り替えを検討します。
  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)
    例:オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウム など
    H2受容体拮抗薬
    例:ファモチジン、シメチジン など
    → 胃内pH上昇によりイブトロジーの吸収が低下し、血中濃度が低下する可能性があります。
    対処:原則として併用を可能な限り避け、やむを得ず使用する場合は、有効性低下の有無を慎重に評価します。
  • 制酸剤
    例:炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム 等
    → 同様に胃内pHを上昇させることで本剤の吸収を低下させるおそれがあります。
    対処:併用する場合は、本剤との投与間隔を2時間以上あけるようにします。

2. 本剤が他剤の血中濃度に影響する相互作用

  • CYP1A2基質薬
    例:カフェイン、テオフィリン、チザニジン など
    → タレトレクチニブはCYP1A2を誘導するため、これらの薬剤の血中濃度が低下し、有効性が減弱する可能性があります。
  • CYP2D6基質薬
    例:デキストロメトルファン、イミプラミン、アミトリプチリン など
    → CYP2D6阻害により、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、副作用(中枢神経症状、心毒性など)が増強するおそれがあります。
  • BCRP基質薬
    例:ロスバスタチン、サラゾスルファピリジン、イマチニブ など
    → BCRP阻害により、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、筋障害(ロスバスタチン)、骨髄抑制(イマチニブ)などのリスクが増加する可能性があります。
  • MATE1/MATE2-K基質薬
    例:メトホルミン、プロカインアミド、シメチジン など
    → MATE1/2-K阻害により、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、乳酸アシドーシス(メトホルミン)、不整脈(プロカインアミド)等のリスクが高まる可能性があります。
  • QT延長作用を有する薬剤
    例:クラリスロマイシン、ハロペリドール、メサドン など
    → いずれもQT延長作用を持つため、併用によりQT間隔延長が増悪するおそれがあります。心電図モニタリングを行い、必要に応じて併用薬の変更を検討します。

ROS1-TKIは多剤併用下で使用されることが多く、相互作用の把握は安全な治療の鍵となります。実際の処方時には、添付文書の相互作用欄を確認しつつ、薬剤師を含むチームでレジメン設計を行うことが重要です。

食事の影響について

イブトロジーを食後に投与するとCmax・AUCが上昇することが報告されています。そのため、添付文書では「食事の影響を避けるため、食事の前後2時間の服用は避けること」とされています。

実臨床では、

  • 「朝食の2時間以上前」あるいは「就寝前(夕食から2時間以上あけて)」など、空腹時となる時間帯に服用する
  • 毎日ほぼ同じ時間帯に内服するようスケジュールを固定し、アドヒアランスを高める

といった工夫が現実的です。

主な副作用と安全性情報

イブトロジーで注意すべき主な副作用は以下の通りです。

  • 肝不全・肝機能障害:トランスアミナーゼ上昇、ビリルビン上昇など。重度の場合は肝不全に至ることがあるため、定期的な肝機能モニタリングが必須です。
  • 間質性肺疾患(ILD):呼吸困難、咳嗽、発熱などの初期症状に注意し、画像検査で確認が必要です。発現時は速やかに中止・治療介入が必要となります。
  • QT間隔延長:心電図上のQT延長が高頻度で認められており、電解質異常やQT延長薬併用時には特に注意が必要です。
  • 消化器症状:下痢、悪心、嘔吐、便秘、腹痛などが高頻度にみられます。
  • 代謝異常:食欲減退、高コレステロール血症、高尿酸血症、高トリグリセリド血症など。
  • 神経系:末梢性ニューロパチー、味覚異常、めまい、頭痛など。
  • 皮膚・付属器:発疹、皮膚乾燥、そう痒、光線過敏反応、脱毛症、手足症候群様症状、爪の障害など。

これら重大な副作用や頻度の高い有害事象は、RMP上も重要な安全性検討事項として位置づけられており、治療開始前から十分な説明とモニタリング計画が求められます。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • ROS1融合遺伝子陽性であることを、承認されたコンパニオン診断(AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル)で確認したか。
  • 切除不能な進行・再発NSCLCであり、本剤適応に合致しているか。
  • 間質性肺疾患、肝機能障害、QT延長などの重篤なリスクについて、患者・家族へ十分に説明し、同意を得ているか。
  • 投与開始前に、肝機能検査、血液検査、心電図、電解質、胸部画像検査を実施しているか。
  • QT延長や既存の間質性肺疾患など、本剤により悪化し得る基礎疾患・リスク因子を把握しているか。
  • 強い/中等度CYP3A阻害薬・誘導薬、PPI、H2ブロッカー、制酸剤、QT延長薬などの併用薬を確認し、必要に応じて変更・用量調整を行っているか。
  • メトホルミン、ロスバスタチン、テオフィリン、三環系抗うつ薬など、本剤の影響を受けやすい薬剤の併用状況を把握しているか。
  • 空腹時投与(食事前後2時間の服用回避)が可能な生活パターンかを確認し、服用時間帯を患者と相談して決めているか。
  • 重篤な有害事象発現時の休薬・減量・中止の基準を把握し、施設内で共有しているか。
  • 定期フォローの頻度(検査スケジュール・診察間隔)を明確にし、多職種チームと共有しているか。

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • イブトロジーは「1日1回、空腹時」に内服する薬であり、食事の前後2時間は服用しないことを具体的な時間帯で説明する。
  • 飲み忘れた場合の対応(気づいた時点でできるだけ早く1回分を服用し、2回分をまとめて服用しない 等)を医師の方針に沿って案内する。
  • PPI、H2ブロッカー、制酸剤の併用状況を確認し、必要に応じて「服用時間の間隔をあける」「代替薬を検討する」などを医師へ提案する。
  • 併用薬の中にCYP3A阻害薬・誘導薬、CYP1A2/2D6/BCRP/MATE基質薬、QT延長薬が含まれていないかをチェックし、リスクが高い組み合わせは疑義照会する。
  • 下痢、悪心、嘔吐などの消化器症状への対処(補液、食事内容の工夫、市販薬の自己使用の可否など)について、事前に説明しておく。
  • 息切れ・咳・発熱などの呼吸器症状、動悸・めまい・失神などの心症状が出た場合は、自己中断せず早急に受診するよう促す。
  • 日光や強い紫外線で皮膚障害が悪化する可能性があるため、帽子・日焼け止めなどの光線防御を勧める。
  • 多剤併用が多い患者では、お薬手帳や一覧表で「空腹時投与」「服用間隔」「注意すべき併用薬」を視覚的に整理して渡す。
  • 長期内服が前提となるため、飲み忘れ防止の工夫(タイマー、スマホアプリ、ピルケースなど)を患者と一緒に考える。

ケアポイント(看護師向け)

  • 初回投与前に、呼吸状態、心電図所見、肝機能、電解質、体重などのベースライン情報を記録しておく。
  • 診察ごとに、呼吸困難、咳嗽、発熱など間質性肺疾患を疑う症状の有無を系統的に聴取し、変化があれば医師に共有する。
  • めまい、動悸、失神などQT延長を疑う症状がないか、服薬後のタイミングも含めて観察する。
  • 下痢・悪心・食欲不振などにより水分・栄養摂取が不足していないか、体重変化も含めてフォローする。
  • 皮膚乾燥、発疹、光線過敏、手足症候群様症状など、皮膚・爪の変化をチェックし、早期にスキンケアや皮膚科紹介につなげる。
  • 患者が「食事の前後2時間は服用しない」というルールを理解できているか、生活パターンに即した服用時間が設定されているかを一緒に確認する。
  • 検査スケジュール(肝機能・血球数・電解質・心電図・画像検査)の予定を共有し、受診忘れがないよう声かけを行う。
  • 仕事や家事、介護などとの両立に関する不安、長期治療への心理的負担などにも目を向け、多職種と連携して支援する。
  • 副作用・症状・生活状況を含めた情報をカルテ・カンファレンスなどでこまめに共有し、チーム医療の中で治療方針の調整に役立てる。

まとめ

『イブトロジーは、ROS1融合遺伝子陽性の肺がんに対して、脳転移も含めた治療の幅を広げてくれるお薬ですね。相互作用や間質性肺疾患など、気をつけるポイントは多いんですけど、チームでしっかりフォローしながら使っていくことで、患者さんの日常生活に寄り添った治療につなげていけたらいいなって思います。』

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