医師・薬剤師・看護師のためのおくすり情報サイト https://gorokichi.com/okusuri-jouhou薬に携わるものたちのためのサイトMon, 28 Jul 2025 14:39:10 +0000jahourly1【2025年7月16日発売】バルバーサ錠(エルダフィチニブ)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1349https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1349#respondWed, 16 Jul 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1349

『みなさん、こんにちは。今回は2025年7月に新たに発売された尿路上皮がん治療薬「バルバーサ」について、簡単にまとめました。』

はじめに:バルバーサとは

バルバーサ錠(一般名:エルダフィチニブ)は、FGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を有する根治切除不能な尿路上皮がんの治療薬です。尿路上皮がんは膀胱に多く発生し、進行すると治療が難しくなるがんです。膀胱がんの国内新規診断者数は年間約23,000人、死亡者数は約9,600人と報告されています。転移例では5年生存率が20%以下と予後不良ですが、尿路上皮がん患者の約20%にFGFR遺伝子異常が見られることが分かっています。従来治療が効かなくなった場合の新たな選択肢として、FGFR阻害剤による個別化治療が注目されています。

製品概要

  • 商品名:バルバーサ錠3mg・4mg・5mg
  • 一般名:エルダフィチニブ
  • 製造販売元:ヤンセンファーマ(株)
  • 薬効分類:その他の腫瘍用薬
  • 効能・効果:がん化学療法後に増悪したFGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を有する根治切除不能な尿路上皮癌
  • 承認日:2024年12月27日 発売日:2025年7月16日
  • 包装:28錠(PTPシート)

作用機序と特徴

バルバーサは、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害します。特にFGFR3変異やFGFR融合タンパクのリン酸化を抑制し、腫瘍細胞の増殖シグナル伝達を遮断することで、腫瘍の進行を抑制します。

効能・効果・適応症

がん化学療法後に増悪したFGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を有する根治切除不能な尿路上皮癌
(FGFR異常は承認済み体外診断薬で確認が必要)

用法・用量と投与時の注意点

・通常、成人にはエルダフィチニブとして1日1回8mgを2週間経口投与し、その後は1日1回9mgを継続投与します。
・血清リン濃度や副作用発現時に応じて減量・休薬等を行います(最小4mgまで段階的減量可)。
・眼科的副作用のため定期的な眼科検査が必要です。
・PTPシートは必ず取り出して服用を指導してください。

相互作用・代謝経路

  • CYP2C9およびCYP3A4で主に代謝される。
  • 強いCYP3A・CYP2C9阻害剤・誘導剤との併用で血中濃度変化のリスクあり(例:イトラコナゾール、フルコナゾール、カルバマゼピン等)。
  • P-gp阻害によるジゴキシン等の血中濃度上昇リスクあり。

食事の影響について

食事の影響は軽微であり、空腹時・食後どちらでも服用可能です。

主な副作用と安全性情報

  • 高頻度:高リン血症(78.5%)、下痢(54.8%)、口内炎(45.9%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群(30.4%)など
  • 重篤な副作用:網膜剥離(12.6%)、角膜障害(5.2%)、急性腎障害(3.0%)、重度の爪障害、手足症候群等
  • その他:味覚異常、脱毛、肝機能異常、貧血、口腔内乾燥、発疹、疲労感など

異常があれば速やかに休薬・中止・適切な処置を行います。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • FGFR3遺伝子変異/融合遺伝子の確認と記録
  • 前治療歴(化学療法、PD-1/PD-L1阻害剤)確認
  • 眼科的副作用・腎障害・高リン血症への対応体制
  • 定期的な眼科・腎機能・血清リン・カルシウム検査
  • 患者・家族への説明と同意取得

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • PTPシートから取り出して服用指導
  • 副作用(視覚異常、口内炎、下痢、皮膚症状など)の早期対応
  • 他剤併用(CYP阻害・誘導薬、P-gp基質薬等)の確認
  • 定期受診・検査の重要性指導

ケアポイント(看護師向け)

  • 服薬管理と服用状況の確認
  • 視覚異常・手足症候群・腎機能低下・皮膚症状などのモニタリング
  • 日常生活指導(口腔・皮膚・爪のケア、高リン血症の食事制限等)
  • 家族・多職種連携でQOL支援

まとめ

『バルバーサは、従来治療が難しい尿路上皮がんに対する新たな経口FGFR阻害剤です。個別化治療の選択肢として、チーム医療で患者さんをサポートしていきましょう。』

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【2025年7月1日発売】テビムブラ点滴静注100mg(チスレリズマブ)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1347https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1347#respondTue, 01 Jul 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1347

『みなさん、こんにちは。今回は2025年7月に新たに発売された食道がん治療薬「テビムブラ」について、簡単にまとめました。』

はじめに:テビムブラとは

テビムブラ点滴静注100mg(一般名:チスレリズマブ)は、根治切除不能な進行・再発の食道がんの治療に用いられるヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体製剤です。食道がんは国内でも罹患率・死亡率ともに高く、特に男性に多い傾向があります。主に扁平上皮がんが大多数を占めており、進行・再発例では治療選択肢が限られていました。近年、免疫チェックポイント阻害薬の導入によって、生存期間延長やQOL向上が期待されるようになりました。

テビムブラは、フルオロウラシル・シスプラチンとの併用または単剤投与が可能で、複数の国際共同試験で生存期間の延長効果が示されています。PD-1阻害剤による免疫療法の新たな選択肢として注目されています。

製品概要

  • 商品名:テビムブラ点滴静注100mg
  • 一般名:チスレリズマブ(遺伝子組換え)
  • 製造販売元:ビーワン・メディシンズ合同会社
  • 薬効分類:その他の腫瘍用薬
  • 効能・効果:根治切除不能な進行・再発の食道癌
  • 承認日:2025年3月27日 発売日:2025年7月1日
  • 包装:10mL[1バイアル]

作用機序と特徴

テビムブラ(チスレリズマブ)は、ヒトPD-1に対するモノクローナル抗体で、PD-1とそのリガンド(PD-L1、PD-L2)との結合を阻害します。これにより、がん抗原特異的T細胞の増殖・活性化・腫瘍細胞への傷害活性を高め、腫瘍増殖を抑制すると考えられています。

効能・効果・適応症

根治切除不能な進行・再発の食道癌
(手術の補助療法としての有効性・安全性は確立していません)

用法・用量と投与時の注意点

・通常、成人にはチスレリズマブ200mgを3週間間隔で60分かけて点滴静注します。
・フルオロウラシルおよびシスプラチンとの併用療法が標準ですが、化学療法後に増悪した場合は単剤投与も可能です。
・初回投与で忍容性良好なら2回目以降は30分まで投与時間短縮可能。
・重篤な副作用発現時には投与中止・休薬等を適宜検討します。

相互作用・代謝経路

特記すべき薬物相互作用はありませんが、他の抗腫瘍薬等との同時混注は避けてください。
生物学的製剤につき投与後も副作用管理・観察が必要です。

食事の影響について

食事による影響は特にありません。

主な副作用と安全性情報

  • 主な副作用:貧血、好中球減少、食欲減退、悪心、AST/ALT増加、下痢、発疹、疲労など
  • 重大な副作用:間質性肺疾患、肝機能障害、皮膚障害(SJS/TEN)、内分泌障害(甲状腺、副腎、下垂体)、1型糖尿病、腎障害、心筋炎、神経障害、血液障害、静脈血栓塞栓症、Infusion reaction、結核 など

副作用が発現した場合は、グレード等に応じて速やかに休薬・中止・適切な処置を行います。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 進行・再発食道がん(ESCC等)で切除不能例か確認
  • 自己免疫疾患・間質性肺疾患・臓器移植・結核等の既往有無
  • 重篤な副作用発現時の対応体制(特に間質性肺疾患、肝障害、内分泌障害など)
  • 定期的な胸部画像・肝腎機能・内分泌機能のモニタリング
  • 家族への治療説明・同意取得

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 投与間隔や治療期間の説明
  • 投与時・投与後の体調変化(息切れ、発熱、下痢、皮疹など)は速やかに医療機関へ連絡
  • 自己免疫関連副作用や感染症兆候について説明

ケアポイント(看護師向け)

  • 投与時のバイタルチェック・Infusion reaction対策
  • 間質性肺疾患・肝機能障害・内分泌障害等の早期発見・症状観察
  • 点滴部位や全身症状の観察と記録
  • 治療継続の心理的サポート・家族支援

まとめ

『テビムブラは、進行・再発食道がんの治療選択肢を広げる新しい免疫チェックポイント阻害剤です。多職種連携で患者さんのQOL向上を目指しましょう。』

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【2025年6月12日発売】リブマーリ内用液10mg/mL(マラリキシバット塩化物)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1345https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1345#respondThu, 12 Jun 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1345

『みなさん、こんにちは。今回は2025年6月に新たに発売されたアラジール症候群・進行性家族性肝内胆汁うっ滞症治療薬「リブマーリ」について、簡単にまとめました。』

はじめに:リブマーリとは

リブマーリ内用液10mg/mL(一般名:マラリキシバット塩化物)は、アラジール症候群(ALGS)および進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)に伴う胆汁うっ滞性そう痒の治療に用いる、国内初の回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤です。

ALGSは小葉間胆管減少症を伴うまれな遺伝性疾患で、重度のそう痒や黄疸、成長障害などが現れ、60~75%の患者が成人前に肝移植が必要になることがあります。PFICは乳児期から進行性の肝機能障害や強いそう痒を呈し、いずれも患者・家族の生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。

従来は利胆剤やかゆみ止め、ビタミン補充など対症療法が中心でしたが、リブマーリは胆汁酸の腸肝循環を遮断し、血清胆汁酸を低下させることで、根本的なそう痒軽減が期待できる新規経口薬です。

製品概要

  • 商品名:リブマーリ内用液10mg/mL
  • 一般名:マラリキシバット塩化物
  • 製造販売元:武田薬品工業株式会社
  • 薬効分類:肝臓疾患用剤
  • 効能・効果:アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症における胆汁うっ滞に伴うそう痒
  • 承認日:2025年3月27日 発売日:2025年6月12日
  • 包装:30mL(1瓶)

作用機序と特徴

マラリキシバットは、回腸末端部の腸管上皮細胞に発現する回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)を選択的かつ可逆的に阻害し、胆汁酸の腸肝循環を遮断します。これにより、胆汁酸が糞便中に排泄されやすくなり、血清胆汁酸濃度が低下し、そう痒の軽減効果が期待できます。体内吸収はわずかで、主に腸管内で作用します。

効能・効果・適応症

次の疾患における胆汁うっ滞に伴うそう痒
・アラジール症候群(ALGS)
・進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)
※PFICのうち、BSEP完全欠損変異例では効果が期待できません。

用法・用量と投与時の注意点

【アラジール症候群】
通常、マラリキシバット塩化物として200μg/kgを1日1回食前に経口投与し、1週間後に400μg/kg 1日1回へ増量します。
【進行性家族性肝内胆汁うっ滞症】
通常、300μg/kgを1日1回食前に経口投与、1週間後から300μg/kgを1日2回、さらに1週間後から600μg/kgを1日2回に増量します。
※体重別投与量表に基づき、ディスペンサーで計量し投与。
※3ヵ月間投与しても効果がない場合は継続可否を検討。
※副作用や肝機能、脂溶性ビタミン低下、脱水・下痢等に注意し、定期的にモニタリングを行います。

相互作用・代謝経路

主に未変化体で糞中に排泄されます。OATP2B1阻害作用があるため、併用薬には注意が必要です。
生ワクチン等の薬効へ影響する可能性や、胆汁酸排泄増加による脂溶性ビタミン(A, D, E, K)低下に留意します。

食事の影響について

高脂肪食摂取後の投与では血中濃度が大幅に減少します。必ず空腹時(食前)に投与してください。

主な副作用と安全性情報

  • 下痢(20~23%)、腹痛(6~13%)、便意切迫、皮膚炎、血中ビリルビン増加など
  • 重大な副作用:脱水、高度な下痢、肝機能障害、ビタミン欠乏、アナフィラキシーなど

副作用発現時は速やかに減量・休薬や適切な処置を行い、定期的な肝機能・ビタミン測定を実施します。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • ALGS/PFICの診断、BSEP完全欠損ではないことを確認
  • 体重、肝機能、ビタミンA/D/E/K、PT-INR測定の体制
  • ディスペンサー使用説明、服用指導の実施
  • 3ヵ月後の効果判定・継続可否評価
  • 下痢・腹痛・脱水症状等の副作用説明と家族への指導

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 必ず食前に服用すること、ディスペンサーで計量すること
  • 開封後130日以内の使用・保管・廃棄方法
  • 副作用(下痢、脱水等)時の受診目安説明
  • ビタミン補給の重要性や、継続的な検査の必要性

ケアポイント(看護師向け)

  • 副作用(下痢、脱水、皮膚炎など)・肝機能障害の観察
  • 投与量・投与法の説明サポートと家族への指導
  • 服用・ディスペンサー管理の確認
  • ビタミン低下や栄養障害・発育不良の早期発見

まとめ

『リブマーリは、ALGS・PFICに伴うそう痒を根本から軽減できる新しい経口治療薬です。家族との協力や多職種連携で、安心して治療を続けていきましょう。』

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【2025年6月12日発売】ハイキュービア10%皮下注セット(pH4処理酸性人免疫グロブリン/ボルヒアルロニダーゼ アルファ)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1343https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1343#respondThu, 12 Jun 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1343

『みなさん、こんにちは。今回は2025年6月に新たに発売された無または低ガンマグロブリン血症治療薬「ハイキュービア」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ハイキュービアとは

ハイキュービアは、免疫グロブリンG(IgG)補充療法が必要な無または低ガンマグロブリン血症の患者さんに対して使用される、国内初の促進型皮下注用免疫グロブリン製剤です。原発性免疫不全症候群(PID)や続発性免疫不全症候群(SID)など、抗体産生不全による免疫不全により、易感染性や重篤な感染症を繰り返す患者さんの治療選択肢として位置づけられています。

従来のIgG補充療法は静脈投与が中心でしたが、ハイキュービアはボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)と併用することで、皮下への大量IgG投与が可能となり、静脈路の確保が困難な場合や外来での長期治療の利便性向上にも寄与します。

製品概要

  • 商品名:ハイキュービア10%皮下注セット5g/50mL・10g/100mL・20g/200mL
  • 一般名:pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)/ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)
  • 製造販売元:武田薬品工業株式会社
  • 薬効分類:血漿分画製剤・皮下注用人免疫グロブリン製剤
  • 効能・効果:無または低ガンマグロブリン血症
  • 承認日:2024年12月27日 発売日:2025年6月12日
  • 包装:5g/50mL、10g/100mL、20g/200mL 各セット

作用機序と特徴

ハイキュービアは、まずボルヒアルロニダーゼ アルファ(rHuPH20)を皮下注射し、局所的かつ一時的に皮下組織の透過性を高めます。その直後、同じ部位に人免疫グロブリン製剤(IgG)を皮下注射することで、IgGの拡散・吸収が促進され、一度に大量のIgGを投与できます。これにより、3~4週間ごとという長い間隔で皮下投与が可能となり、静脈確保が難しい患者や外来患者に適しています。

効能・効果・適応症

無または低ガンマグロブリン血症の治療
(他に慢性炎症性脱髄性多発根神経炎や多巣性運動ニューロパチーの進行抑制にも適応あり)

用法・用量と投与時の注意点

・まずボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)を皮下投与し、約10分以内に同じ部位へ人免疫グロブリンGを皮下投与します。
・通常、IgGとして150~600mg/kg体重を3週間に1回、または200~800mg/kg体重を4週間に1回投与。
・投与は用量の1/3または1/4から開始し、漸増します。
・投与間隔や投与量は患者の状態により調整。
・1日に投与できる最大量や投与速度、複数部位投与の基準にも留意が必要です。
・必ずボルヒアルロニダーゼ アルファを先に投与し、2つの薬剤を混合しないこと。

相互作用・代謝経路

本剤投与中・投与後は生ワクチンの効果が得られない場合があり、生ワクチン接種は本剤投与後3カ月以上空ける必要があります。
また、血漿由来製剤のためウイルス感染症等の伝播リスクについても説明が必要です。

食事の影響について

食事の影響は特にありません。

主な副作用と安全性情報

  • 注射部位反応(疼痛、紅斑、そう痒感、腫脹、漏出など)
  • 頭痛、発熱、悪心、筋肉痛、関節痛、発疹、倦怠感
  • 重大な副作用:アナフィラキシー反応、無菌性髄膜炎症候群、急性腎障害、血栓塞栓症、肝機能障害、溶血性貧血、血小板減少など

副作用の発現時は速やかに医療機関へ相談し、定期的な血液検査、腎機能・肝機能のモニタリングが推奨されます。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • IgG補充療法が必要な無または低ガンマグロブリン血症患者か
  • 本剤の成分に対する過敏症・ショックの既往歴有無
  • 感染症リスク、ウイルス伝播リスク、溶血性貧血等の合併症リスクの確認
  • 投与スケジュール、最大投与量、漸増投与の管理

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 投与方法(必ずボルヒアルロニダーゼ アルファを先に、混合しない等)
  • 副作用・体調変化時の連絡先案内
  • 生ワクチン接種時期・感染症リスクの説明

ケアポイント(看護師向け)

  • 注射部位の観察とケア
  • 体調変化・副作用早期発見のための声かけ
  • 定期通院や検査受診のフォロー

まとめ

『ハイキュービアは、無または低ガンマグロブリン血症の新しい皮下注用IgG補充療法として、患者さんの日常生活や治療継続の負担軽減に貢献するお薬です。』

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【2025年6月2日発売】ティブソボ錠250mg(イボシデニブ)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1337https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1337#respondMon, 02 Jun 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1337

『みなさん、こんにちは。今回は2025年6月に新たに発売された急性骨髄性白血病治療薬「ティブソボ」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ティブソボとは

ティブソボ(一般名:イボシデニブ)は、2025年6月2日に日本セルヴィエ株式会社から新発売された、IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病(AML)に用いるファーストインクラスの経口IDH1阻害剤です。AMLは年間約13,000人の新規患者が発生する進行性の造血器腫瘍であり、感染症や出血による致死的合併症が少なくありません。IDH1遺伝子変異は日本人AML患者の約10%に認められ、特に高齢や寛解導入療法不適応例では治療選択肢が限られていました。

ティブソボは変異型IDH1酵素を選択的に阻害することで腫瘍細胞の分化障害を解除し、腫瘍増殖を抑制します。アザシチジンとの併用により、従来治療が困難であった症例にも新たな治療機会を提供する薬剤です。

製品概要

  • 商品名:ティブソボ錠250mg
  • 一般名:イボシデニブ
  • 製造販売元:日本セルヴィエ株式会社
  • 薬効分類:IDH1阻害剤(抗悪性腫瘍剤)
  • 効能・効果:IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病
  • 承認日:2025年3月27日 発売日:2025年6月2日
  • 包装:14錠(プラスチックボトル、乾燥剤入り)

作用機序と特徴

イボシデニブは、IDH1遺伝子変異型酵素を特異的に阻害する低分子薬です。変異型IDH1は2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)を産生し、細胞分化を阻害して腫瘍増殖を促進します。本剤は2-HGの産生を抑制することで、分化障害を解除し、白血病細胞の成熟と腫瘍増殖抑制を実現します。従来治療が難しかった高齢・不応例のAML患者にも、分化誘導療法という新たな治療戦略を提供します。

効能・効果・適応症

IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病

用法・用量と投与時の注意点

通常、成人にはイボシデニブとして1日1回500mgをアザシチジンとの併用で経口投与します。強いCYP3A阻害剤と併用する場合は1回250mgへ減量します。

高脂肪食摂取前後の投与は避けてください。QT延長や分化症候群、ギラン・バレー症候群など重篤な副作用に注意し、定期的な心電図・血液検査等による経過観察が重要です。

相互作用・代謝経路

本剤は主にCYP3Aで代謝されます。強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール等)、中程度阻害剤(エリスロマイシン等)、CYP3A誘導剤(リファンピシン等)、QT延長作用薬との併用に注意が必要です。P-gp、OAT3、OATP1B1の基質薬、グレープフルーツ含有食品も併用注意です。

食事の影響について

高脂肪食摂取後に本剤を投与するとAUCおよびCmaxが増加するため、高脂肪食の摂取前後での投与は避けてください。

主な副作用と安全性情報

  • 重大な副作用:分化症候群、QT間隔延長、ギラン・バレー症候群
  • その他の副作用:好中球減少、貧血、下痢、悪心、浮動性めまい、頭痛、発熱、皮疹、肝機能障害、感染症

副作用発現時には速やかな休薬、減量、中止など適切な対応が必要です。特に分化症候群・QT延長には注意し、発熱・皮疹・呼吸困難等を認めた際は速やかに対応してください。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • IDH1遺伝子変異陽性が確認された患者か
  • アザシチジンとの併用適応か(寛解導入療法不適応例)
  • 投与前・投与中の心電図、血液検査(白血球、電解質、腎機能等)管理
  • CYP3A阻害・誘導薬、QT延長薬等の併用有無
  • 副作用(分化症候群、QT延長、感染症等)のリスク説明・同意取得

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 用法・用量、服薬タイミング(高脂肪食を避ける)の説明
  • 副作用(発熱、皮疹、息切れ、動悸等)出現時の早期受診指導
  • 併用薬(CYP3A阻害・誘導薬、QT延長薬など)の確認
  • 乾燥剤入りボトルで保存・服用方法

ケアポイント(看護師向け)

  • バイタルサイン・自覚症状の観察、心電図管理
  • 分化症候群や感染兆候出現時の早期報告・連携
  • 服薬管理・保存指導、定期検査の受診勧奨
  • 心理的サポートと副作用・生活指導

まとめ

『ティブソボは、IDH1変異陽性の急性骨髄性白血病に対する初の経口分化誘導療法薬です。適切なモニタリングと多職種連携を意識し、患者さん一人ひとりに寄り添った治療を大切にしていきたいですね。』

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https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1337/feed0
【2025年5月21日発売】カムザイオスカプセル(マバカムテン)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1335https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1335#respondWed, 21 May 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1335

『みなさん、こんにちは。今回は2025年5月に新たに発売された閉塞性肥大型心筋症治療薬「カムザイオス」について、簡単にまとめました。』

はじめに:カムザイオスとは

カムザイオス(一般名:マバカムテン)は、2025年5月21日にブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社より発売された、国内初となる閉塞性肥大型心筋症(HOCM)治療薬です。HCMは心室壁肥大を特徴とする指定難病で、2023年度の特定医療費受給者証所持者数は約4,400人と報告されています。特に閉塞性HCM(HOCM)は、心室中隔の肥大により左室流出路(LVOT)が狭窄し、息切れや疲労、失神などの症状や、進行例では心不全や突然死のリスクも指摘されています。

従来はβ遮断薬やCa拮抗薬などが治療の中心でしたが、これらで効果不十分な場合、心筋ミオシン阻害薬が治療の選択肢となりました。カムザイオスはサルコメア異常による心筋の過収縮に直接作用することで、LVOT狭窄の改善や心機能維持に貢献しうる、期待の新薬です。

製品概要

  • 商品名:カムザイオスカプセル1mg、2.5mg、5mg
  • 一般名:マバカムテン
  • 製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社
  • 薬効分類:その他の循環器官用薬(選択的心筋ミオシン阻害剤)
  • 効能・効果:閉塞性肥大型心筋症
  • 承認日:2025年3月27日 
  • 発売日:2025年5月21日
  • 包装:1mg/2.5mg/5mg 各30カプセル(PTP)

作用機序と特徴

マバカムテンは、心筋ミオシンのATP加水分解サイクルを選択的かつ可逆的に阻害し、肥大型心筋症で過剰となったアクチン-ミオシン間のクロスブリッジ形成を抑制する作用を持ちます。これにより心筋の過収縮を抑え、エネルギー消費を減らし、左室流出路狭窄(LVOT狭窄)や拡張機能障害を改善します。従来治療で改善困難なHOCMに対し、根本的な病態修飾が期待できる国内初の経口薬です。

効能・効果・適応症

閉塞性肥大型心筋症(症候性HOCM患者への適応)

用法・用量と投与時の注意点

通常、成人にはマバカムテンとして2.5mgを1日1回経口投与から開始し、患者の状態に応じて1mg~15mgの範囲で増減します。
投与開始前・開始後は心エコーによる左室駆出率(LVEF)・バルサルバLVOT圧較差の評価・モニタリングが必須です。LVEFが55%未満では投与不可、投与中に50%未満となった場合は休薬・減量を検討します。投与量調整は4~12週間ごと、維持期は12~24週間ごとに心エコー管理が必要です。
PTP包装剤はシートから取り出して水とともに服用させます。

相互作用・代謝経路

マバカムテンは主にCYP2C19およびCYP3A4で代謝されます。CYP3A4強力阻害薬(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)、CYP2C19阻害薬(フルコナゾール等)、CYP3A4誘導薬(リファンピシン等)との併用に注意が必要です。β遮断薬や非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、クラスⅠA抗不整脈薬との併用も、陰性変力作用の増強に注意して患者状態を慎重に観察します。

食事の影響について

高脂肪食摂取時はTmaxの遅延、Cmaxの低下(50%減)、AUC12%増が報告されていますが、臨床的な意義は限定的です。基本的には食事の影響は少なく、食前・食後どちらでも服用可能です。

主な副作用と安全性情報

  • 心不全(収縮機能障害に伴うNT-proBNP上昇、呼吸困難、浮腫、疲労、動悸等)
  • 浮動性めまい、頭痛、疲労、末梢性浮腫、心房細動、動悸
  • 筋力低下、労作性呼吸困難、不眠症
  • 駆出率減少

心機能悪化・LVEF低下があれば速やかに評価し、休薬・中止等の対応が必要です。重度肝機能障害例・妊婦・授乳婦・小児は原則禁忌です。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 閉塞性肥大型心筋症の診断と適応確認(LVEF・LVOT圧較差)
  • 投与開始前・投与中の定期的な心エコー管理
  • CYP3A4・2C19阻害薬/誘導薬、β遮断薬などの併用確認
  • 心不全兆候や副作用発現時の早期対応
  • 妊婦・授乳婦・小児・重度肝機能障害は投与不可

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 用法・用量、定期的な心エコーの重要性説明
  • 副作用(息切れ、むくみ、倦怠感等)出現時の医療機関受診指導
  • PTPシートから取り出して服用、噛まずに服用すること
  • 併用薬やサプリメントの申告、併用薬管理
  • 妊娠・授乳中、肝障害、持病のある方は必ず申告

ケアポイント(看護師向け)

  • バイタルサイン・心機能・自覚症状の観察
  • 定期心エコー・診察受診のアドヒアランス支援
  • 副作用や異変の早期把握と医師への報告
  • 薬の正しい服用方法説明、自己管理支援
  • 心理的サポートや生活指導

まとめ

『カムザイオスは、閉塞性肥大型心筋症に対して根本からアプローチする国内初の経口治療薬です。定期的な心エコー管理や多職種連携を大切に、患者さんのQOL向上に役立てていきたいですね。』

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【2025年5月21日発売】テブダック点滴静注用40mg(チソツマブ ベドチン)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1333https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1333#respondWed, 21 May 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1333

『みなさん、こんにちは。今回は2025年5月に新たに発売された子宮頸がん治療薬「テブダック点滴」について、簡単にまとめました。』

はじめに:テブダックとは

テブダック(一般名:チソツマブ ベドチン)は、2025年5月21日にジェンマブ株式会社から新発売された、進行または再発の子宮頸がんに対する抗悪性腫瘍剤です。がん化学療法後に増悪した症例を対象とするファースト・イン・クラスの抗体薬物複合体(ADC)で、腫瘍細胞に高発現する組織因子(TF)に対する抗体と微小管阻害薬MMAEを結合した構造が特徴です。

治療選択肢が限られる進行・再発例に新たな作用機序で有効性が示され、国際共同第Ⅲ相試験でも全生存期間の延長が確認されています。また、本剤投与にあたっては眼障害リスクがあるため、眼科管理や予防的点眼剤の併用が推奨されています。

製品概要

  • 商品名:テブダック点滴静注用40mg
  • 一般名:チソツマブ ベドチン(遺伝子組換え)
  • 製造販売元:ジェンマブ株式会社
  • 薬効分類:その他の腫瘍用薬(ADC)
  • 効能・効果:がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸癌
  • 承認日:2025年3月27日 発売日:2025年5月21日
  • 包装:1バイアル

作用機序と特徴

テブダックは、腫瘍細胞表面に高発現する組織因子(TF)を標的とした抗体薬物複合体(ADC)です。TFに結合した抗体が腫瘍細胞に取り込まれ、リンカーで結合した微小管阻害薬モノメチルアウリスタチンE(MMAE)を細胞内で遊離し、微小管重合阻害によってアポトーシスを誘導します。TFは子宮頸がんを含む多くの固形がんで高発現しており、本剤はTF発現腫瘍に対する高い抗腫瘍効果を示します。

効能・効果・適応症

がん化学療法後に増悪した進行または再発の子宮頸癌

用法・用量と投与時の注意点

通常、成人にはチソツマブ ベドチンとして1回2mg/kg(体重)を30分以上かけて、3週間間隔で点滴静注します(1回最大200mg)。患者の状態により減量可能です。眼障害対策として、副腎皮質ステロイド点眼剤を投与24時間前から4日間、血管収縮点眼剤(ブリモニジン酒石酸塩)を投与直前に1~3滴、ドライアイ治療用点眼剤を投与開始日から終了後30日まで使用します。投与前後の眼科的観察と早期副作用対応が必須です。

相互作用・代謝経路

MMAEは主にCYP3A4で代謝されます。CYP3A4阻害薬併用で本剤の血中濃度が上昇する可能性があり、注意が必要です。他の強力なCYP3A4誘導薬や肝機能障害を有する患者では投与に注意します。

食事の影響について

点滴静注製剤のため、食事の影響はありません。

主な副作用と安全性情報

  • 重篤な眼障害(角膜障害、視力低下、失明等)
  • 末梢神経障害(感覚異常、しびれなど)
  • 好中球減少、発熱性好中球減少
  • 疲労、悪心、下痢、食欲減退
  • 注射部位反応、皮膚障害、肝機能障害

重篤な眼障害リスクが高いため、投与前後は必ず眼科診察を行い、副作用出現時は速やかに中止・適切な対応が必要です。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 進行・再発子宮頸がんに対し、既治療歴・病勢進行例か確認
  • 投与前に眼科医の診察実施と副作用リスク説明、同意取得
  • 点眼薬3種(副腎皮質ステロイド、血管収縮、ドライアイ治療)を指示
  • 投与中・後の眼障害、末梢神経障害、骨髄抑制、肝障害等のモニタリング
  • 妊婦・授乳婦・小児・肝障害患者は慎重投与

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 眼障害(視力低下・異物感・充血等)の早期受診指導
  • 点眼薬の使用方法・期間とその重要性を説明
  • 末梢神経障害や倦怠感、発熱、下痢など副作用発現時の医療機関受診を徹底
  • 併用薬(CYP3A4阻害・誘導薬など)の確認
  • 定期的な血液・肝機能検査の重要性

ケアポイント(看護師向け)

  • 投与時の全身状態・バイタルチェック
  • 眼障害や末梢神経障害の症状聴取・観察
  • 点眼薬の正しい使用指導、自己管理サポート
  • 副作用発現時の早期対応と眼科・医師への連携
  • 心理的サポートや療養指導

まとめ

『テブダックは治療選択肢が限られる進行・再発子宮頸がんに対し、新たな作用機序で期待される薬剤です。特に眼障害リスクの管理や多職種連携が重要となるため、チーム医療での活用を意識したいですね。』

 

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【2025年5月21日発売】ビヨントラ錠400mg(アコラミジス塩酸塩)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1316https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1316#respondWed, 21 May 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1316

『みなさん、こんにちは。今回は2025年5月に新たに発売されたトランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬「ビヨントラ錠」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ビヨントラとは

ビヨントラ(一般名:アコラミジス塩酸塩)は、アレクシオンファーマ合同会社より2025年5月21日に新発売された、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM、野生型および変異型)に対する経口治療薬です。

ATTR-CMは、トランスサイレチン(TTR)四量体の構造不安定化・解離により変性TTRがアミロイド線維となって主に心筋に沈着することで発症する、進行性・致死的な希少疾患です。従来、全身性アミロイドーシスの中でも心臓障害が主座となる型であり、国内患者数は少ないものの指定難病として登録されています。

主な臨床症状は心不全(呼吸困難、息切れ、体液貯留、起立性低血圧、失神など)や伝導障害、不整脈(房室ブロック・心房細動等)であり、診断時には進行例が多く、無治療の場合は診断から3~5年での死亡例が多数を占めます。確定診断には心エコーやMRI所見に加え、核医学検査や心筋生検、TTR遺伝子解析などが必要となります。

ATTR-CMは、野生型(加齢性)と変異型(遺伝性)の2つに大別されます。従来の治療選択肢は極めて限られており、薬物療法としてはタファミジスが唯一の承認薬でしたが、それでも治療抵抗例や副作用により継続困難な例も報告されていました。また、心臓移植や肝移植は適応が限定されることから、より幅広い患者に使える新規薬剤の登場が期待されていました。

このビヨントラは、TTR四量体を安定化させて病態進行の中心であるアミロイド線維形成そのものを抑制するという新しい作用機序を持っています。これにより心機能の維持やQOL向上、生存期間延長への寄与が期待されており、ATTR-CM治療における新たな経口治療の選択肢となります。

製品概要

  • 商品名:ビヨントラ錠400mg
  • 一般名:アコラミジス塩酸塩
  • 製造販売元:アレクシオンファーマ合同会社
  • 薬効分類:その他の循環器官用薬
  • 効能・効果:トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型および変異型)
  • 承認日:2025年3月27日 発売日:2025年5月21日
  • 包装:56錠(4錠PTP×14)

作用機序と特徴

アコラミジスはTTR四量体のサイロキシン結合部位に選択的に結合し、四量体を安定化、単量体への解離を抑制して新たなアミロイド線維形成を防ぎます。これにより心筋へのアミロイド沈着進行を抑え、心機能維持に寄与します。

効能・効果・適応症

トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型・変異型)
※心アミロイドーシスの確定診断例が適応。NYHA分類I~IIIの心不全患者に使用。IV度や肝移植後は安全性・有効性未確立。

用法・用量と投与時の注意点

通常、成人には1回800mg(400mg錠2錠)を1日2回、朝夕に経口投与します。PTPシートから取り出して服用。腎機能障害例(特にeGFR低値)や高齢者は経過観察を十分に。初期にeGFR低下がみられることがあるため定期的な腎機能検査を行います。
食事によるAUC低下はないものの、Cmaxは約22%低下しますが、臨床的な影響はありません。

相互作用・代謝経路

主にUGT1A1, UGT1A4, UGT1A9, UGT2B7によるグルクロン酸抱合で代謝され、主に尿中と糞中に排泄されます。CYP2C8、CYP2C9、OATP1B1阻害作用あり。アデホビルやオセルタミビルと併用時に血中濃度の軽度変動あり。併用薬の確認と注意が必要です。

食事の影響について

高脂肪食でCmaxは約22%低下するもののAUCへの影響はありません。食事の有無にかかわらず服用可能です。

主な副作用と安全性情報

  • 主な副作用:悪心、下痢、腹部不快感、上腹部痛、血中クレアチニン増加、腎機能障害、発疹、便秘
  • 重大な副作用:腎機能障害(特にeGFR低下)、重度肝障害

副作用出現時は投与中止や適切な対応が必要です。PTP誤飲事故防止にも注意。
NYHA心機能分類ⅢではⅠ・Ⅱより有効性が低い傾向があるため、患者状態に応じて投与可否判断を。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • ATTR-CM確定診断(遺伝子・組織・核医学的検査等)
  • NYHA分類I~IIIの患者であること
  • 腎・肝機能・高齢者の経過観察
  • eGFR・AST/ALT/総ビリルビン等の定期検査
  • 併用薬(CYP2C8, 2C9, OATP1B1基質等)の管理
  • PTP誤飲防止指導
  • 妊婦・授乳婦・小児には原則慎重投与

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 1回2錠、1日2回の服薬遵守とPTPシートから取り出して服用指導
  • 腎・肝機能障害、発疹・消化器症状等異常時の早期受診指導
  • 他剤併用歴・妊娠授乳・小児投与歴の確認
  • 定期検査・受診継続の重要性説明

ケアポイント(看護師向け)

  • 副作用(腎・肝機能障害、消化器症状、発疹等)の観察・早期対応
  • 定期的な腎・肝機能・心機能モニタリング
  • 服薬状況・副作用の聴取・受診勧奨
  • 心理的サポート・QOL維持への援助

まとめ

『ビヨントラはATTR-CMに新しい経口治療の選択肢をもたらす薬剤です。副作用や腎機能管理に注意しつつ、患者さんのQOL向上をサポートしていきたいですね。』

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【2025年5月21日発売】トレムフィア点滴静注200mg/皮下注200mgシリンジ・ペン(グセルクマブ)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1314https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1314#respondWed, 21 May 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1314

『みなさん、こんにちは。今回は2025年5月に新たに発売された潰瘍性大腸炎治療薬「トレムフィア」について、簡単にまとめました。』

はじめに:トレムフィアとは

トレムフィア(一般名:グセルクマブ)は、2025年5月21日にヤンセンファーマ株式会社から新たに発売された、ヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤です。従来は乾癬や掌蹠膿疱症の治療薬として知られていましたが、今回新たに中等症から重症の潰瘍性大腸炎(UC)に対して、点滴静注製剤および皮下注射200mgの新剤型で適応が拡大されました。

潰瘍性大腸炎は大腸粘膜に慢性的な炎症が持続する疾患で、国内患者数は推定22万人にのぼり、指定難病にも登録されています。主な症状は、持続的または繰り返す下痢、血便、腹痛、体重減少、発熱、全身倦怠感などで、症状の程度や経過には個人差があります。UCは寛解と再燃を繰り返す病態であり、特に重症例や既存治療抵抗例ではQOL低下や長期的な合併症リスクが大きな問題となります。

UC治療の基本は、5-ASA製剤やステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤(抗TNFα抗体やJAK阻害薬等)ですが、これら従来治療でも十分な効果が得られないケースも少なくありません。また、長期ステロイド使用は副作用リスクも高く、できる限り早期に寛解導入と維持を実現し、ステロイドフリーを目指す治療戦略が求められています。

トレムフィアは、IL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、炎症性サイトカイン産生を抑制することで腸管炎症をコントロールします。新たな点滴静注剤による導入療法と、皮下注製剤による維持療法の両方に対応できるため、これまで選択肢が限られていた前治療抵抗例の患者にも、新しい治療の可能性を提供することが期待されています。また、自己注射製剤の導入により通院負担の軽減やアドヒアランス改善にも寄与することが見込まれます。

本剤の登場は、UC治療のパラダイムシフトの一つといえ、寛解導入から維持に至るまでの一貫した治療戦略の構築に貢献するものです。

製品概要

  • 商品名:トレムフィア点滴静注200mg、皮下注200mgシリンジ、皮下注200mgペン
  • 一般名:グセルクマブ(遺伝子組換え)
  • 製造販売元:ヤンセンファーマ株式会社
  • 効能・効果:中等症~重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)
  • 承認日:2025年3月27日 
  • 発売日:2025年5月21日

作用機序と特徴

グセルクマブはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、炎症関連サイトカイン(IL-17A、IL-22など)の産生を抑制します。腸管の炎症を抑え、寛解導入と維持療法の両方に対応できるのが特徴です。

効能・効果・適応症

・中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入(点滴静注200mg)
・中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(皮下注100mgまたは200mg)
(いずれも既存治療で効果不十分な場合に限る)

用法・用量と投与時の注意点

【点滴静注】1回200mgを初回、4週後、8週後に点滴静注(1時間以上)
【皮下注】点滴終了8週後から100mgを8週間隔、または200mgを4週間隔で皮下注。
自己注射も可能。点滴・皮下注とも無菌操作、投与間隔厳守。

相互作用・代謝経路

主なCYP酵素(CYP3A4など)への影響なし。
他の生物学的製剤、JAK阻害薬、S1P受容体調節薬との併用は避けること。

食事の影響について

食事の影響はありません。

主な副作用と安全性情報

  • 重篤な感染症(結核・敗血症・肺炎など)
  • 過敏症(アナフィラキシー等)
  • 注射部位反応、頭痛、関節痛、気道感染、好中球減少、肝機能障害
  • 悪性腫瘍(頻度は一般集団と同等)

副作用出現時や感染症症状発現時は直ちに医療機関を受診。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 既存治療(ステロイド、免疫調節剤等)で効果不十分な場合のみ適応
  • 感染症(結核など)の除外・管理
  • 生ワクチン投与不可
  • 自己注射指導・管理体制の確認
  • 併用薬(他の生物学的製剤・JAK阻害薬等)の有無確認

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 感染症症状や副作用の早期受診指導
  • 投与スケジュールと自己注射の方法説明
  • 注射部位管理と異常時の対応
  • 生ワクチン不可、併用薬の確認

ケアポイント(看護師向け)

  • 投与時の無菌操作、バイタルチェック
  • 皮下注部位・全身状態の観察
  • 感染症・過敏症の早期発見と報告
  • 自己注射継続のための支援と指導

まとめ

『トレムフィアは中等症~重症UCの新しい選択肢です。導入から維持まで幅広く使え、QOL向上に貢献できる薬剤です。副作用や感染症管理にも注意しながら現場で活用していきたいですね。』

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【2025年5月21日発売】ラズクルーズ錠(ラゼルチニブメシル酸塩水和物)の特徴、作用機序https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1312https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/1312#respondWed, 21 May 2025 03:00:00 +0000https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/?p=1312

『みなさん、こんにちは。今回は2025年5月に新たに発売されたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん治療薬「ラズクルーズ錠」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ラズクルーズとは

ラズクルーズ(一般名:ラゼルチニブメシル酸塩水和物)は、2025年5月21日にヤンセンファーマ株式会社から新たに発売された、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とする第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)です。非小細胞肺がんは全肺がんの約80~85%を占め、そのうち腺がんではアジア人を中心にEGFR遺伝子変異が約40〜50%の高頻度で認められています。特にEGFRエクソン19欠失変異やエクソン21 L858R変異は“ドライバー変異”として知られており、これらを標的としたEGFR-TKIが治療の中心となっています。

しかし、EGFR-TKIによる初回治療後も、時間経過とともに薬剤耐性の出現は避けられず、特に第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブをはじめとした標準治療後の治療抵抗例への対応が喫緊の課題となっていました。治療経過中の再発・進行や薬剤耐性メカニズムは多岐にわたり、個々の症例に最適な分子標的治療の選択が求められています。

ラズクルーズは、EGFRエクソン19欠失変異やエクソン21 L858R変異のみならず、耐性変異T790Mにも変異選択的に強く結合・阻害できる設計となっており、野生型EGFRへの作用が比較的低いことからオフターゲットによる有害事象も抑制されています。本剤はEGFRの細胞内チロシンキナーゼ領域に結合し、腫瘍細胞増殖シグナルを強力に遮断することで抗腫瘍効果を発揮します。

加えて、EGFR/METの細胞外ドメインを標的とするアミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用により、2つの異なる機序でシグナル伝達を阻害する“デュアルブロック”治療が可能となりました。この併用療法により、EGFR-TKI単剤治療に比べて耐性出現リスクの低減や治療効果の持続が期待されています。また、深部静脈血栓症や肺塞栓症リスク対策として抗凝固薬(アピキサバン)の併用も推奨されており、治療全体を通じてきめ細かな安全管理が求められます。

このようにラズクルーズは、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する新しい治療オプションとして、臨床現場における個別化医療・チーム医療の発展にも寄与する薬剤です。今後は、適切な遺伝子診断や副作用管理、患者指導とあわせて、多様な治療戦略の中で幅広く活用されることが期待されます。

製品概要

  • 商品名:ラズクルーズ錠80mg、同錠240mg
  • 一般名:ラゼルチニブメシル酸塩水和物
  • 製造販売元:ヤンセンファーマ株式会社
  • 薬効分類:抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤
  • 効能・効果:EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌
  • 承認日:2025年3月27日
  • 発売日:2025年5月21日
  • 包装:80mg・240mg 各14錠(PTP)

作用機序と特徴

ラゼルチニブは、EGFRエクソン19欠失変異・エクソン21 L858R変異および耐性変異T790Mを含む活性型EGFRチロシンキナーゼを変異選択的に阻害します。EGFRの細胞内キナーゼドメインに結合し、EGFR遺伝子変異陽性腫瘍の増殖抑制作用を発揮します。アミバンタマブ(抗EGFR/MET抗体)との併用で、さらなる相加的抗腫瘍効果が期待されています。

効能・効果・適応症

EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌。

検査でEGFRエクソン19欠失変異またはエクソン21 L858R変異が確認された患者が対象です。

用法・用量と投与時の注意点

アミバンタマブ(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人にはラゼルチニブとして240mgを1日1回経口投与します。副作用が発現した場合は160mg→80mgへ段階的に減量し、重篤な場合は休薬・中止します。投与開始後4カ月間は静脈血栓塞栓症予防のため、アピキサバン2.5mgを1日2回投与します。PTPシートは必ず取り出して服用するよう指導が必要です。

相互作用・代謝経路

主にグルタチオン抱合およびCYP3A4で代謝されます。CYP3A阻害薬(イトラコナゾールなど)併用時は血中濃度上昇、副作用増強リスクがあるため減量を考慮。CYP3A誘導薬(リファンピシン、フェニトインなど)は有効性低下リスクがあるため、可能な限り併用を避けます。BCRP基質薬(ロスバスタチン等)との併用にも注意が必要です。グレープフルーツやセイヨウオトギリソウは摂取を避けます。

食事の影響について

高脂肪食摂取時でも血中濃度への大きな影響はありません。食事の有無に関係なく服用可能です。

主な副作用と安全性情報

  • 重篤な副作用:間質性肺疾患(1.2%)、肺炎(1.4%)、肺塞栓症(6.2%)、深部静脈血栓症(4.5%)、肝機能障害(31.8%)、重度の下痢(1.9%)、重度の皮膚障害(発疹17.1%、ざ瘡様皮膚炎8.3%)、心不全(1.0%)
  • その他の副作用:発疹(68.4%)、爪囲炎(65.1%)、口内炎(39.4%)、ざ瘡様皮膚炎(31.4%)、皮膚乾燥(22.8%)、そう痒症(20.4%)、疲労、食欲減退、下痢(22.6%)、悪心、便秘、嘔吐、錯感覚(27.3%)など

副作用出現時はNCI-CTCAE v5.0に基づき休薬・減量・中止を行います。間質性肺疾患や静脈血栓塞栓症のリスクが高いため、症状が出た場合は直ちに受診・相談するよう患者指導が重要です。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失・エクソン21 L858R)確認済みか
  • 間質性肺疾患・静脈血栓塞栓症・心不全・肝障害など既往の有無確認
  • 副作用発現時の減量・休薬・中止基準を確認
  • アピキサバン併用(初回4か月)指示・管理
  • 相互作用薬・併用薬(CYP3A/BCRP基質薬など)の確認
  • 妊婦・授乳婦・生殖年齢女性への避妊指導
  • PTPシートの誤飲防止指導

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 副作用(発疹・下痢・肝機能障害・間質性肺疾患・血栓症等)の説明
  • 異常時(呼吸困難、咳、発熱、皮膚異常、下肢浮腫・疼痛等)の早期受診指導
  • 併用薬(CYP3A4/BCRP基質薬・グレープフルーツ等)の確認
  • 食事の有無を問わず服用できること、PTPシートから取り出して服用
  • 妊娠・授乳・避妊指導
  • 定期的な肝機能・血液検査の重要性の説明

ケアポイント(看護師向け)

  • 投与前後の副作用症状観察(特に間質性肺疾患・静脈血栓塞栓症)
  • 皮膚・爪・口腔・消化器症状の観察とスキンケア
  • 投与開始初期は入院・準ずる管理下で安全確認
  • 定期的な検査(胸部画像・肝機能・凝固能等)の案内
  • 患者・家族への副作用・生活指導・心理的サポート

まとめ

『ラズクルーズは、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対し、新たな作用機序と併用療法で治療の幅を広げる薬剤です。副作用管理とチーム医療で患者さんのQOL向上を目指したいですね。』

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