みなさんは勉強や読書、なにか作業をするときに音楽を聞きますか?
音楽を聞きながらやることで集中できる!って人もいるかと思います。
一方で、音楽がないほうが捗る!って人もいると思います。
しかし、勉強や作業中に音楽を流している人は多い気がします。
お気に入りの一曲を聞きながら作業をすれば、テンションが上がって効率よさそうな気がするものです。
また、できる人はクラシックを聞きながら作業をしている。と聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
誰もが当然のように音楽の効果を信じていますが、科学的に証明された事実なのでしょうか?
1900年代前半から議論がなされ、論文が発表されています。
今回はそういった論文を集めたメタアナリシスの論文を紹介します。
皆さんも名前は聞いたことがあると思う信憑性の高いとされるメタ解析です。
メタアナリシス(meta-analysis)とは、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことである。メタ分析、メタ解析とも言う。ランダム化比較試験のメタアナリシスは、根拠に基づく医療において、最も質の高い根拠とされる。 (Wikipediaから引用)
紹介論文
タイトル
The impact of background music on adult listeners: A meta-analysis
成人に対するBackground music (BGM)の影響:メタ解析
著者
Juliane Kämpfe, Peter Sedlmeier, and Frank Renkewitz
掲載雑誌情報
Psychology of Music, Vol 39, Issue 4, 2011
要約
Abstract
Background music has been found to have beneficial, detrimental, or no effect on a variety of behavioral and psychological outcome measures. This article reports a meta-analysis that attempts to summarize the impact of background music. A global analysis shows a null effect, but a detailed examination of the studies that allow the calculation of effects sizes reveals that this null effect is most probably due to averaging out specific effects. In our analysis, the probability of detecting such specific effects was not very high as a result of the scarcity of studies that allowed the calculation of respective effect sizes. Nonetheless, we could identify several such cases: a comparison of studies that examined background music compared to no music indicates that background music disturbs the reading process, has some small detrimental effects on memory, but has a positive impact on emotional reactions and improves achievements in sports. A comparison of different types of background music reveals that the tempo of the music influences the tempo of activities that are performed while being exposed to background music. It is suggested that effort should be made to develop more specific theories about the impact of background music and to increase the methodological quality of relevant studies.
Background music (BGM)は、さまざまな行動や精神的な効果の評価において、有益であったり、有害であったり、あまり効果がなかったりと報告されている。この論文では、BGMの影響についてまとめるために試みたメタアナリシスを報告する。全世界の解析で、全く効果がないことが示されたが、それらの研究の詳細な検討により、優劣の計算が効果がないことを特異的な効果を平均したせいで得られた可能性が高いと明らかにした。研究の不足が個々の優劣の計算を認めるため、私たちの解析では、そういった特異的な効果の検出の可能性は非常に低い。それにもかかわらず、私たちはこういった特異的ないくつかのケースを明らかにした。音楽なしと比較した対照研究では、BGMは、本を読む過程を邪魔することを示し、いくつかの記憶効果に有害作用を示したが、感情やスポーツの成績向上には良い結果を示した。異なった種類のBGMでの比較では、音楽の速度はBGMを聞いている間の活動の速度に影響することを示した。試みは、BGMの効果についてより特別な見解の発展と関係のある研究の実験的な質の向上のために行われるべきだと示された。
BGMに関する論文の出版数と相関関数の絶対値
これをみると、BGMに関する多くの論文が出版されていることがわかると思います。
BGMに関する論文のサンプルサイズと相関関数の関係
これより、r値の高いものはSample sizeが小さく、Sample sizeが大きいものはほとんどr値が0に近くなっています。
結局、勉強のときには音楽はダメ?
この論文によると、BGMは文章を読む過程をさまたげ、記憶力も下げてしまう。
つまり、知的な作業には悪影響しかもたらさず、気分を良くしたい時か、スポーツでテンションを上げたい時にしか効果を発揮しないとまとめられています。
勉強のときに音楽を流す人が多いのは、音楽で気分が改善したためでしょう。
音楽で気分が良くなった=作業効率が上がった、と勘違いしてしまっているようです。
つまり、音楽は息抜きのとき、または勉強前に聞くことがおすすめされます。
それでも周りがうるさいなど、音楽を聞きながら勉強をやる場合は、声の入っていない音楽を選びましょう。
楽器のみの音楽よりも声の入っている音楽の方がより文章を読む過程を妨げます。
また、クラシック音楽よりもジャズ音楽の方が妨げるとも記載されています。
おわりに
今回は、作業中の音楽についての効果の論文をメタ解析をしたものを紹介しました。
このメタ解析により、BGMは文章を読んだり記憶するような時には悪影響を示す一方で、気分を良くしたいときやスポーツでテンションを上げたいときなどの感情には効果があると結論付けられています。
ただ、評価の仕方が難しいということもあり、論文の筆者もまだまだ解析・評価法の改善が必要であることを課題にしています。
私もどちらかというと音楽を聞きながら勉強・作業をしてしまう傾向にあるので、知的な作業(謎)をするときには無音でやり、気分を上げたいときのみに音楽を聞くようにします。