先生(上司)の前で研究発表をしろと言われた!学会発表が近い!
パワーポイントを使ったスライドってどうやって作るの!?
という場面に多くの人が直面します。
そこで本記事では、研究室や所属の機関などでの進捗報告や学会発表(研究発表)でのプレゼンテーション発表のために、守ったほうがいい、やったほうがいい、と思われるスライドのルール、発表のルールをまとめています。
薬学の学位 (Ph.D) を取得している薬剤師かつ、学会の優秀発表賞を頂いたことがある筆者が、初めて発表する人だけでなく、発表経験のある人のためにも、良い発表をするための心構えや発表の準備について記載しましたのでご参考ください。
プレゼンテーションにおいて、スライドのデザイン次第で相手への伝わり方が変わります。
スライドのデザインで発表の印象の80%近くが決まってしまうと言われています。
どんなに喋りが上手でも、スライドが上手くできていない、まとまっていないと、聴衆には伝わりません。
そのため、プレゼンを通して相手に伝える、という意味を考えてスライド作成に挑みましょう。
※本記事はMicrosoft PowerPointのスライド作成について記載しています。他のプレゼンテーションソフトについては一切記していませんのでご了承ください。
研究発表の準備をする前に
☆発表の意図を確認しよう
学会・学術発表などでは発表の意図はもちろんわかっていると思います。
研究室での研究発表の際は、発表の目的が研究のまとめを発表するのか、最近の進捗を報告するのか、しっかり確認しましょう。
身内での発表会の際によくボス・上司に怒られている人は、ここがうまくできていないことが多い気がします。
☆聴衆相手が誰なのかを確認しよう
研究発表をする学会、場所、場面に合った発表をするために、聴く相手が自分の分野の専門家なのか、専門外の同職種なのか、同じ研究グループなのか、全くの素人なのか、聴衆予定者を確認しましょう。
同じ題目で発表する場合でも、聴衆が異なれば発表の内容ややり方は適宜変えなければいけません。
簡単なようですが、ここはとても重要なポイントで、できていない人が多くいます。
ここを気にすることができるようになれば、あなたの発表レベルがぐーっとアップします。
☆何を伝えたいか、主張したいかをはっきりさせよう
良いプレゼンテーションとは、相手に自分の成果や意見、提案が伝わり、それを聞いて相手が理解や納得をすることです。
つまり、相手に対して「主張したい内容」をはっきりさせておく必要があります。
あなたがこれから行う発表は、頑張りをアピールする場ではありませんよね?
あなたが主張したいこと、さらには相手が知りたいこと、この2つを意識しましょう。
あなたは「誰に」「何を」伝えたいのでしょうか。
これを曖昧にせず、はっきりと形作ることがわかりやすい発表に繋がります。
☆発表時間、順番を確認しよう
研究発表には一般的に持ち時間があります。学会の進行を守ることだけでなく、相手の時間を使っていることを念頭に置いて発表しましょう。
内容が多いゆえに詰め込みすぎてしまい、発表時間内に終わったものの早口になってしまっている人を多々見受けます。しかし、それではなかなか内容は伝わりません。雰囲気だけしか伝わらないのはもったいないですよね。
相手が存在していての発表ですので、ゆとりをもって話し、相手にわかってもらうことを意識しましょう。
パワーポイント(パワポ)のスライド設定
☆スライドサイズは、特別な指定がない限り、4:3にしよう
PowerPoint 2013以降から、デフォルト設定(初期設定)ではスライドサイズがワイドになっています。
PCモニターの主流がワイド型になったためか、デフォルトで既にワイドに変わってしまいました。
しかし、発表のプロジェクターでは、ワイドで作ってしまうと画面が小さくなってしまい、見えにくくなってしまう場合があります。
そのため、指定がない限り、4:3で行うのが原則です。ワイド画面での発表というだけで、伝える気があまりないのかなと感じさせてしまいますので気を付けましょう。
※最近になり、ワイド型のスクリーンに対応した会場も増えてきており、最近参加したアメリカの学会では全てワイド画面でした。もしかすると海外ではワイドが一般的になっているのかもしれません。学会発表の規定をしっかり確認しておきましょう。
☆派手なデザインは避けよう
PowerPointにはかわいらしいテーマのデザインが入っています。
せっかくの研究発表なのでデザインに凝ることは良いことです。
しかし、発表の中身以上に目立ってしまうデザインや文字や図と被っていて見栄えが悪くなってしまうもの、気をつかって場所をとってしまうようなデザインは避けた方がよいでしょう。
スライドで伝えたいのはデザインの良さではないですよね。大事なのは中身です。
☆フォントは統一、文字は大きくしよう
スライドによってフォントがバラバラだと、聴衆にスライドを見せようとしていないのかと思われるだけでなく、コピペで拾ってきた文章なのかなとも思われてしまいます。
また、文字サイズが小さいと、聴衆は何も見えません。
それはすごくもったいないことです。
文字のサイズは最低でも20~24 pt程度にし、文字の量を減らして大きく書くことを心がけましょう。
フォントは日本語はMS Pゴシックやメイリオ、英語はCalibriやArialにする人が多いように感じますが、フォントは統一さえすれば好みでいいと思います。さすがに読みにくいフォントは選ばないと思いますので。
指導者や先輩に聞いて、特に指定が無ければ自分好みのフォントを選ぶのでも良いでしょう。
フォントの変更は、スライド毎にしないといけないので、各スライドで全選択→フォント変更の操作が必要です。
研究発表用のスライド構成と作り方
☆タイトル
1枚目にもってくるのはタイトルだと思います。
研究発表の中身を簡潔に表すタイトルと発表者の名前、発表者の所属をしっかりと書きましょう。
イラストや画像などを貼ってもよいですが、バランスに注意しましょう。
〇〇における△△について発表します。もしくは、発表いたします。と言って始めます。
※発表させていただきます。という方もいますがこれは謙譲語になりますので不適切です。
お偉いさんの前で発表するときは許可の意味もかねて使っている場も多いですけどね
☆研究の背景と目的
自分が取り組み、発表しようと思っている研究にまつわる事情、現状を説明します。
聴衆がどういう人なのかを踏まえて、できる限り分かりやすく、かつ興味を持ってもらえるようにしましょう。
また、原則入りは広く(一般論)、どんどん狭めていく(研究内容に)、逆三角形のストーリーで話していくのが良いでしょう。
(例)
現在日本は、極度の少子高齢化を迎えようとしており、今までの法律や制度では対応できないものがあります。
その中に、医療保険制度があります。
医療保険制度は日本に特徴的な保険制度で、皆保険で、医療機関を自由に選べ、さらには安い医療費で高度な医療を受けられます。
しかし、医療の発展と同時に高齢化かつ平均寿命の上昇により、国の医療費の負担が増加しています。
そのため、国は医療費を減らすためにセルフメディケーションを推進しようとしています。
今回は、このセルフメディケーションの推進について〇〇という目的で研究を行いました。
もしくは、こういった課題があるので△△を詳しく調べました。など。
☆目次や小括
発表時間が短時間であれば、目次や小括は必要ありませんが、発表が長くなる場合は使ったほうが良いです。
聴衆者の大半は、初見の発表となると思います。
そのため、発表内容についてこれてないということが多々起こりえます。
そういったことが起こらないように、最初に目次を用意し、今何について話しているのかを視覚的にも伝えましょう。文字の色を変えたりして伝えるのも良いでしょう。
また、聴衆者に頭を整理してもらうために、小括などの一区切りは大事になります。うまく活用していきましょう。
内容にもよりますが、7分を超える発表であれば、小括入れたほうがまとまる印象がありますね。
☆最後にはまとめ、総括
研究発表のスライドの最後は、まとめのスライドにしましょう。
まとめのスライドを見れば、発表の全体像がわかるようにすれば素晴らしいです。
イメージ図などがあればさらにわかりやすくなると思います。
さらに、最後のスライドをしっかりしておくことで、良い質問もされやすくなる印象があります。
”ご清聴ありがとうございました。” のスライドを用意する人もいますが、基本的には不要です。
写真などとともに載せる場合もあり、出すのは構いませんが、言い終わって質疑応答になったらまとめのスライドに戻したほうが良いでしょう。
その他スライドを作るにあたっての注意点
☆KISSの原則を念頭に。長文で書かず、簡潔・箇条書きで書く
KISSの原則と呼ばれるプレゼンなどの説明や執筆、プログラミングなどで常に心にとめておかなければならないルールがありますが、これを意識しておきましょう。
Keep it short and simple. (短く、単純に)
Keep it simple, stupid. (単純にしておけ!この間抜け)
など、この言葉の由来や表現はいくつもありますが、この原則を守り、「短く、簡潔に、単純に」伝えられるように心掛けましょう。
というのも、聞き手の集中力は、あまり長く持続しないのが普通です。
あなたも他の人の発表をずっと集中して聞けていますか?
通常、最初の1、2分を除いて、時間が経つにつれて集中力は減っていくといわれています。
しかし、集中力が下がった状態でも、KISSの原則を守ることで理解を手助けしてくれます。
経験的に、スライドを作るのに慣れていない人はついつい長文で書いてしまい、さらに発表時はそれを読むだけになる場合が多いです。
文で書いてしまうと、聴衆は文字を読み、発表者の声はあまり聞いてくれません(その後集中力が下がり、最悪の場合は睡眠時間となってしまいます)。
そうならないためにも、重要なところだけを簡潔に箇条書きにするのが良いでしょう。
※箇条書きは原則左揃えです。短いキーワードを出すとき以外は中央揃えを避けましょう。
☆説明しないことは書かない 文字数は最小限に
聴衆はついついスライドに書いてあるものを読んでしまいます。
資料を作っていると、調べたことをついついスライドに書いてしまうことがありますよね。
しかし、文字で書いてある=説明する内容です。
説明しない内容であれば、最終的にそれは省きましょう。
文字数を減らすためには、重要なキーワードだけを書き、あとは口頭で補足するようにするなどが良いでしょう
☆各スライドには表題 and/or 結論を上部もしくは下部に書く
原則、一つのスライドで伝えたいことは一つにしましょう。
ついつい複数の内容を詰め込んでしまうことがありますが、表題 and/or 結論を書くことでそれを未然に防ぐことができます。
また、伝えたいことが複数あるならば、スライドは分けるべきです。
☆レイアウトは美しく
複数の図がずれている、文字のサイズが違う、グラフの軸が見えない、誤字脱字がある、色合いが悪い、などの気になるポイントがあると、どんなに発表の内容がよくても評価は下がってしまいます。
スライドのレイアウトで発表の印象を下げることを避けるために、レイアウトは美しくしましょう。
余白は広くても狭くてもデザインを微妙にさせてしまいます。絶妙な配置を心がけましょう。
パワーポイントには、オブジェクトの配置で選択した図形やテキストボックスを中央揃え、左揃え、等間隔に配置するなどの便利な設定がありますので、使えるようにしておきましょう(配置を行うには2パターンあります。下記図参照)。
目指せ!空間のコントロール!
☆スライドはシンプルに
一枚のスライドに伝えられる情報には限界があります。
また、うまく伝えるためには、1スライドに伝えたい情報は1つの方がよいでしょう。
スライドいっぱいに文字や図があれば非常に見ずらい、いわゆるビジーなスライドになってしまいます。
スライドがビジーであればあるほど、聴衆は発表者の話を聞いていないでしょう。
そのため、先ほど説明したKISSの原則を守り、スライドはシンプルに作りましょう。
☆不必要に英語を使わない
英語で文章や単語で書くとカッコよく見えますよね。
しかし、その発表は国際的な場や日本人以外の観衆がいますか?
学会や相手からの指定がある場合は別ですが、見栄えのために不必要に英語を入れる必要はありません。
その発表は、あなたの英語ができることをアピールする場ではなく、相手に理解してもらうことが大事ですよね?
日本人相手なら日本語で伝える方が伝わりやすいのは当たり前ですよね。
※一般的に英語表記されるもの、日本語訳と一致しないものは英語で構いません。
☆効果的にアニメーションを使う
せっかくプレゼンソフトを使っているのに、単に画面が出るだけでは聴衆が飽きてしまいます。
無駄なアクションはいりませんが、スライドの内容が伝わりやすくなるようにアニメーションを駆使するのはよいことでしょう。
聴衆の視線を誘導することができる力がアニメーションにはあります。
しかし、せっかく説明した文章やイラストの上に重ねるようなアニメーションはできるだけ避けましょう。
また、アニメーションの使いすぎにも注意してください。
(※指導教員によってはアニメーションを嫌う人もいますので事前に上司・先輩に聞いておきましょう)
☆数字と単位の間は半角あける
英語の論文やしっかりした書籍を見るとわかると思いますが、数字と単位の間は半角あけるのがルールです(%と°、℃などは除く)。
100mg/L ではなく、100 mg/Lのように書きます。 150 cmとか、1.0 mol/L NaCl。
25℃、20% 酸素条件下で50 min、20 mAの処理を行う。など。
これは絶対的ルールですので、早めに身に付けておきましょう。文書を書くときも基本的に同じになります。
※このルールは、所属機関によって多少異なりますので、上司・先輩に事前に確認しておきましょう。
発表本番に向けての準備
☆発表原稿を作成する
思い描いたストーリーに沿って適切な分量で、かつ説得力のある原稿を用意しましょう。
聴衆に理解してもらわなければ発表する意味がありません。
素晴らしいプレゼンを行うためには、原稿作りが必須です。
また、原稿を作成していくと同時にスライドの見直しも行いましょう。
プレゼンテーションのような誰かに何かを説明することは、一緒に階段を上がってもらうのと似ていると言われています。
わかりやすく納得できる説明をして、相手に階段を1段ずつ上がってもらい、最上階(=あなたが伝えたいこと)まで自然と辿り着けば、あなたの発表は大成功です。
目的地が見えない(目的や伝えたいことがわからない)
1つの段差が大きい(説明が理解できない)
段差の幅がバラバラ(論理的でない)
上がれない人がいる(周辺知識が乏しい人が理解できない)
といったストーリーはダメな例です。
☆何度も発表練習をする
発表練習を繰り返しましょう。
練習をするたびに、スライドがわかりにくかったり、情報不足であったりすることに気づきます。
発表に慣れてくると練習する作業を怠るようになる人がいますが、それはダメな例です。
練習をすればするほど、良い発表になるのは間違いありません。
どうしても原稿を覚えられない場合、時間がない場合を除いて、原稿を見ながら発表するのは邪道です。
原稿を見て発表すると、聴衆からは準備不足感を伝え、さらに早口になってしまい、相手にいいたいことが伝わらなくなってしまう場合があります。
多くの場合、原稿通りに間違えずに発表する必要はないと思います。
発表で大切なことは、相手に伝えるべき内容を伝えることです。
その目的が達成できるのであれば、言い忘れや言い回しが違っても気にする必要はありません。
☆発表態度を正す
発表中は背筋を伸ばし、ピシッと立ちましょう。
また、可能ならば群衆に視線を送ることで、相手が理解しているのかを確認することができます。
発表にふさわしい服装を心がけましょう。学生なら学生らしくで構いません。
☆ゆっくりと大きな声で
発表時は緊張のせいで練習のときよりも早口になってしまいがちです。
練習の時からゆっくりと大きな声で話すように心がけていきましょう。
重要なキーワード、結論を言うとき、または言った後に一息つくことで発表者の頭にも入りやすくなります。
早口だったのを落ち着かせることもできるので、間を取る練習も行っておきましょう。
☆ポインターの使い方
スライドを説明しているときにはポインターを使いましょう。
ポインターは、適切な場所で、適切なタイミングで使えるように練習しておきましょう。
ぐるぐる振り回すのはみっともないのでやめましょう。
手が震えてしまう人は、簡単に丸を描いてポインターを消し、なるべく震えを見せないようにしましょう。
ポインターを持つ腕の脇をしめたり、もう片方の手でポインターを持つ腕の手首を支えることで震えが目立たなくなります。
☆質疑応答の対策
質問を受けている間は質問者の発言を遮らず、スライドも動かさずにしっかり相手を見て話を聞きましょう。
質問を遮って説明に入る人や、質疑中にスライドのページを変えて説明の準備に入るひとがいますが、それは印象がよくありません。
質問の意図をしっかりと理解し、その答えを伝えましょう。
質問の意図がわからなければ、恥ずかしがらず聞き直しましょう。大抵の場合、わかりやすく言い直してくれます。
見当違いな回答をしてしまうのは避けましょう。
最悪答えに困ったときには…
そちらについては今後の検討課題であると考えています。
貴重なご意見ありがとうございます。
などを言えば大丈夫でしょう。
学会などでは発表のセクションが終わった後に質疑応答をしてくれた人へ感謝を伝えにいくと、有益な情報を得られたり良好な関係を築けたりする場合があります。
さいごに
人前で研究発表の機会を与えていただくことは、非常に貴重なことです。
その貴重な機会を生かすも殺すも自分の本番までの頑張り次第です。
しっかりと準備をして、最高のプレゼンテーションができるように心がけましょう。
発表の場では他の人の発表、発表スライドを見て勉強することも忘れないようにしましょう。