2018年5月22日、生化学工業株式会社と科研製薬株式会社は、腰椎椎間板ヘルニア治療剤「ヘルニコア®椎間板注用1.25単位」(一般名:コンドリアーゼ 、治験薬名:SI-6603 )が、薬価基準に収載されたことを発表(承認は2018年3月28日)し、2018年8月から学会認定医のいる病院、専門クリニックで治療が受けられることが決まりました。
以下、 生化学工業のIRニュースから引用
本剤は、コンドリアーゼを有効成分とする新規の腰椎椎間板ヘルニア治療剤です。国内初となる椎間板内に直接注射する治療剤であり、全身麻酔の必要もなく、手術療法と比較して患者の方々への身体的侵襲が小さいという特徴を有しています。国内においては、2018年3月23日に生化学工業が製造販売承認を取得し、科研製薬が販売します。本剤1回の投与により後縦靱帯下脱出型*の腰椎椎間板ヘルニアの症状改善効果が期待できることから、治療の新たな選択肢として、患者の方々の生活の質の向上に貢献できると考えます。
*後縦靱帯下脱出型:ヘルニアが線維輪の最外層を超えるが、後縦靭帯で覆われるタイプ<製 品 概 要>
製 品 名:ヘルニコア®椎間板注用1.25単位
英 名:HERNICORE® 1.25units for intradiscal inj.
一 般 名:コンドリアーゼ
効 能・効 果:保存療法で十分な改善が得られない後縦靱帯下脱出型の腰椎椎間板ヘルニア
用 法・用 量:通常、成人にはコンドリアーゼとして1.25単位を症状の原因である高位の椎間
板内に単回投与する。
薬 価:81,676円(1.25単位1瓶)
製造販売承認日:2018年3月23日
薬価基準収載日:2018年5月22日
発 売 時 期:2018年8月(予定)
製 造 販 売 元:生化学工業株式会社
発 売 元:科研製薬株式会社
作 用 機 序:コンドリアーゼは、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン及びヒアルロン酸の
分解作用を示し、椎間板髄核中におけるグリコサミノグリカン*を分解して髄
核の保水能を低下させ、椎間板内圧を低下させることによりヘルニアの臨床症
状を改善すると考えられている。
* グリコサミノグリカン(GAG):複合糖質の主要成分の1つ。コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸等引用:生化学工業:腰椎椎間板ヘルニア治療剤「ヘルニコア椎間板注用1.25単位」の国内における薬価基準収載及び発売時期に関するお知らせ (2018年5月22日)
Phase IIIの論文は、Condoliase for the Treatment of Lumbar Disc Herniation: A Randomized Controlled TrialというタイトルでAugust 1, 2018 – Volume 43 – Issue 15 – p E869-E876にSpineという雑誌(Impact factor:2.792 本記事執筆時)に掲載されていました。
要約すると、
治験(治験薬名:SI-6603)の参加者は20代から70代を対象に、投薬群82名、対照群81名で、13週目までの評価と52週目までの評価を行った。
結果として、2週目から椎間板ヘルニアによる脚の痛みは有意に改善されており、それは52週までのすべての評価ポイントまで対照群と比べて差があった。
腰痛に関しても、13週目では有意差はつかないものの減少傾向(p=0.08)であり、52週目では有意な減少(P=0.02)が確認されていた。
副作用に関しては、腰痛が30名(36.6%)にみられ、ほとんどが注射後1週間以内にみられるものだった。
また、投薬群の4人(4.9%)にアレルギー様症状が見られ、すべてが投与後1日以内に起こったものだった。
それ以外は特に目立った副作用はなかった。
これまで椎間板ヘルニアの多くは、鎮痛剤や神経ブロック治療による保存療法で回復させるのが一般的でした。
自然治癒を期待しますが、数か月たっても治らない場合は、手術によりヘルニアの塊(?)を取り除く必要がありました。
しかし今回のこの薬は、酵素製剤であり、髄核内の多糖類を分解することで髄核の保水力を減らし、椎間板の内圧を下げてヘルニアを収縮するものです。
一度の注射で二週間以内に効き始め、一年以上の効果が得られるという本薬剤は、画期的な薬となりそうですね。
治験においては1年間の有効性しか見ておりませんでしたが、どれだけ効果が続くのかは非常に期待するところです。
ただ、ヘルニアが癖になってしまっているような人の場合は、髄核が飛び出す度に注射が必要なのでしょうかね・・?
酵素がずっとその部位に残っているとは思えないので…
現在アメリカにおいても第III相試験実施中のようです。