みなさんは献血をしていますか?
私は血液製剤の安定的な供給の重要性を感じており、現在は2,3カ月に1回は献血ルームへ行っています。
健康なときにはあまり気にしたことがない人も多いと思いますが、飲んでいる薬によって献血ができなくなってしまうことがあることをご存知でしょうか。
痛み止めのロキソニン(ロキソプロフェン)錠は、症状にもよりますが、当日に服用していなければ大丈夫です。
一方で、抗生物質などの服用後3日経っていなければならない薬もあれば、ビタミン剤や漢方薬などで当日服用していても大丈夫な薬もあります。
薬の種類は多数あるので、「この薬飲んでいるけど、献血しても大丈夫なの?」という疑問が出ることも多いと思います。
そこで今回は献血についての最新の情報と、献血できない薬のリスト、ワクチン(予防接種)後に献血できない期間などをお伝えします。
献血とは
献血の方法は、大きく成分献血と全血献血に分けられます。
さらに、成分献血は、血漿成分献血と血小板成分献血に、全血献血は献血量によって200 mLと400 mLに分けられます。
よく町で目にするのは400 mLの全血献血ですね。成分献血は基本的に血液センターや献血ルームに行かないとできません。
採血基準
400 mLの全血献血
最高血圧:90 mmHg以上
年齢:男性17~69歳、女性18~69歳
体重:男女とも50 ㎏以上
血色素量:男性13.0 g/dL 以上、女性12.5 g/dL以上
年間献血回数(年間総献血量):男性3回以内(1200 mL)、女性2回以内(800 mL)
成分献血(血漿成分、血小板成分)
最高血圧:90 mmHg以上
年齢:男性18~69歳、女性18~69歳(血小板成分の場合は女性18~54歳)
体重:男性45 ㎏以上、女性40kg以上
血色素量:男女とも12.0 g/dL 以上(血漿成分の場合、赤血球指数が標準域にある女性は11.5g/dL以上)
血漿成分の場合は血小板数:男女とも15万/µL~60万/µL
年間献血回数:男女とも血小板成分献血1回を2回分に換算して血漿成分献血と合計で24回以内
献血の間隔
前回400mL全血献血をした場合
次回の200mL、400mLの全血献血は男性:12週間後、 女性:16週間後の同じ曜日から
次回の血漿成分、血小板成分献血は、8週間後の同じ曜日から
前回成分献血をした場合
次回の全血献血、成分献血ともに2週間後の同じ曜日から
※一部例外もありますが、おおまかに上記の表の通りです(年間上限あり)。
確実な次回の献血可能日は、献血カードもしくは次に説明するラブラッドで確認することができます。
複数回献血クラブ「ラブラッド」
平成30年10月から新たに、ネット会員として複数回献血クラブ「ラブラッド」が開始しました。
会員になると下記の特典があります。
- 全国すべての献血ルーム(常設施設)の予約が可能
- ポイントを貯めて記念品と交換できる
- 血液の検査結果等を含む献血記録がいち早くわかる
- 過去の献血記録が確認できる(平成17年4月以降)
- 会員限定オリジナルデザインの献血カードに交換できる(画像)
- メールやLINEで会員限定のお知らせやご案内、献血の依頼等が届く(次回献血可能日、イベント、キャンペーン情報、「献血のお願い」など
ラブラッドが始まり予約が一般的になっていますので、献血ルームへ行く際には予約を推奨します。
こちらがラブラッドのメインページになります。
こういったように過去の血液データも確認でき、直近3回分をグラフとしてみることもできます。
献血時に調べてくれる血液検査値
成分献血、200 mL、400 mLの全血献血を行うことで、下記の血液検査成績が献血後2週間前後でハガキで送られてきます(現在はラブラッド登録によりハガキ通知をオフにできます)。
一方で、ラブラッドに登録していると、 献血後数日で結果更新のメールが届き、過去のものや採血時の血圧や脈拍も併せて確認することができます。
- ALT(GPT)
- γ-GTP
- 総蛋白 (TP)
- アルブミン (ALB)
- アルブミン対グロブリン比 (A/G)
- コレステロール (Chol)
- グリコアルブミン (GA)
- 赤血球数 (RBC)
- ヘモグロビン量 (Hb)
- ヘマトクリット値 (Ht)
- 平均赤血球容積 (MCV)
- 平均赤血球ヘモグロビン量 (MCH)
- 平均赤血球ヘモグロビン濃度 (MCHC)
- 白血球数 (WBC)
- 血小板数 (PLT)
※ALTの測定値が101 IU/L以上の場合は品質判定で不可としており、輸血用血液製剤には用いられないそうです(ラブラッドの血液検査ページの注意書きに記載あり)。
また、検査値下記のように基準値が設定されていますが、項目によっては受診勧奨値も設定されているようです(血液事業 第40巻 第1号 2017.5, 40:95-96より)。
献血時に行っている病原体の検査
日本赤十字社では、輸血用血液製剤の安全性を確保するために、下記の病原体の検査を実施しています。
・梅毒トレポネーマ検査
(TP抗体検査)
・B型肝炎ウイルス(HBV)検査
(HBs抗原検査、HBc抗体検査、HBs抗体検査、HBV-DNA検査)
・C型肝炎ウイルス(HCV)検査
(HCV抗体検査、HCV-RNA検査)
・エイズウイルス(HIV)検査
(HIV抗体検査、HIV-RNA検査)
・ヒトT細胞白血病ウイルス-1型(HTLV-1)検査
(HTLV-1抗体検査)
・ヒトパルボウイルスB19検査
(PV-B19抗原検査)
血液の提供者への万が一の感染を防ぐために、B型肝炎ウイルスの抗体(HBc抗体)陽性の方は献血ができません。
B型肝炎ウイルス(HBV)検査の他、C型肝炎ウイルス(HCV)検査、梅毒トレポネーマ検査、ヒトT細胞白血病ウイルス-1型(HTLV-1)検査結果につきまして、異常が認められた場合、通知を希望された方には親展郵便によりお知らせすることとなっています。※エイズウイルス(HIV)の検査結果はお知らせされません。
なお、検査目的の献血は絶対に止めましょう。
検査を目的とした機関が存在しますので、そちらを利用してください。
献血できない薬、確認・注意しなければいけない薬 一覧
・・各地の日本赤十字社のホームページを参照にしています・・
※献血時のエリア、先生によって判断が違う場合がありますので、献血場所の指示に従ってください。
また、献血時の問診では飲んでいる(いた)薬を嘘偽りなく伝えましょう。
献血される方の体調や服薬目的、症状等を考慮して、検診医が最終的な判断を行います。
詳細はこちらをご参照ください:日本赤十字社 検査基準の変更(平成24年8月)
献血の当日に服用してはいけない薬
・睡眠薬(当日の体調によりできない場合あり)
→ルネスタ(エスゾピクロン)、マイスリー(ゾルピデム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、睡眠改善薬のドリエル(ジフェンヒドラミン塩酸塩)など
※向精神薬(3日以内)に分類される薬を含む可能性あり
・高尿酸血症治療薬
→ユリノーム(ベンズブロマロン)、ザイロリック(アロプリノール)、フェブリク(フェブキソスタット)など
・内服用筋弛緩薬
→テルネリン(チザニジン)、ミオナール(エペリゾン)など
・抗不安薬(当日の体調によりできない場合あり)
→デパス(エチゾラム)、リーゼ(クロチアゼパム)、ワイパックス(ロラゼパム)など
※向精神薬(3日以内)に分類される薬を含む可能性あり
・マイナートランキライザー(当日の体調によりできない場合あり)
→デパス(エチゾラム)、リーゼ(クロチアゼパム)、ワイパックス(ロラゼパム)など
※向精神薬(3日以内)に分類される薬を含む可能性あり
・前立腺肥大症治療薬(アボダート・プロスカー・プロペシアを除く)
→ハルナール(タムスロシン)、フリバス(ナフトピジル)、ユリーフ(シロドシン)など
・利胆薬
→ウルソ(ウルソデオキシコール酸)など
献血の前日までの服用で当日の問診が必要な薬
・消炎酵素剤
→プロナーゼなど
服用中止から3日間たっており、当日の問診が必要な薬
・風邪薬(市販薬含む)※
→パブロン、ルル、ベンザブロックなど
・消炎鎮痛剤(市販薬含む)※
→カロナール(アセトアミノフェン)など
・非ステロイド系抗炎症薬 ※
→ロキソニン(ロキソプロフェン)、イブプロフェン、バファリン(アスピリン)など
・向精神薬(抗不安薬・マイナートランキライザーを除く)
→サイレース(フルニトラゼパム)、ロヒプノール(フルニトラゼパム)など
・抗菌薬 [抗生物質、合成抗菌薬など](当日に症状がない場合に限る)
→フロモックス(セフカペンピボキシル塩酸)、メイアクト(セフジトレンピボキシル)、クラリス(クラリスロマイシン)、クラビット(レボフロキサシン)など
・抗真菌薬
・抗結核薬
・抗ウイルス薬
・止痢薬
・痛風発作治療薬(コルヒチン)
・喘息治療薬
・事後に服用する緊急ピル(中用量ピルを含む)、他
※症状がない場合や軽い頭痛、生理痛等に頓用した場合は、当日に服用されなければ献血をお願いできます。ただし、血小板成分献血をご希望の場合は、服用後3日間はあけていただかなければいけません。
原則として服用していると献血ができない薬
・糖尿病治療薬(インスリン、経口血糖降下剤)
→アマリール(グリメピリド)、アクトス(ピオグリタゾン)、メトグルコ(メトホルミン)、グルコバイ(アカルボース)、ベイスン(ボグリボース)など全般
・抗血栓薬
→バイアスピリン、プラビックス(クロピドグレル)、エパデール(イコサペント酸エチル)、エフィエント(プラスグレル)、ワーファリン(ワルファリン)、イグザレルト(リバーロキサバン)、リクシアナ(エドキサバン)、エリキュース(アピキサバン)、プラザキサ(ダビガトラン)など
・抗けいれん薬
・抗甲状腺薬
・治療用ホルモン薬(ステロイドなど):1ヶ月間献血延期
・免疫抑制剤:1ヶ月間献血延期
・乾癬治療薬(a.チガソン):無期献血延期 (b.ソリアタン):3年間献血延期
・前立腺肥大症治療薬(アボダート)6ヶ月間献血延期
・狭心症治療薬
・抗不整脈薬
・抗腫瘍薬、他
※皆様の健康(原疾患など)を総合的に医師が判断し、献血をお願いできない場合があります。
献血する際に服用していてもよい薬一覧
※献血時のエリア、先生によって判断が違う場合がありますので、献血場所の指示に従ってください。
・局所投与の薬物
→点鼻薬、点眼薬、吸入、外用薬(塗り薬、貼り薬)など
・漢方薬(肝疾患、感冒、喘息等のために服薬している場合を除く)
→半夏厚朴湯、防風通聖散、芍薬甘草湯、ナイシトールZなど
・ビタミン剤(貧血治療薬を除く)
→ハイチオールC、チョコラBB、アリナミンなど
・ミネラル剤(貧血治療薬を除く)
→カルシウム、亜鉛、マグネシウムなど
・健胃剤
→エビオス錠、太田胃散、ガスター10など
・整腸剤などの保健薬(感染性下痢症のある場合を除く)
→ミヤリサン、ビオフェルミンなど
・高脂血症治療薬(エパデールと類似薬、レパーサを除く)
→メバロチン(プラバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、クレストール(ロスバスタチン)、ユベラN(トコフェロールニコチン酸)など
・花粉症薬(ステロイド剤を含むセレスタミンなどを除く)
→アレグラ(フェキソフェナジン)、アレロック(オロパタジン)、クラリチン(ロラタジン)、アレジオン(エピナスチン)、ジルテック(セチリジン)、ザイザル(レボセチリジン)、タリオン(ベポタスチン)、デザレックス(デスロラタジン)、ビラノア(ビラスチン)、ルパフィン(ルパタジン)など
・緩下剤
→アローゼン、センナ、セレミンソフト、プルゼニド、ひまし油など
・高尿酸血症治療薬(一部除く)
・更年期障害治療剤
・高血圧治療薬※ 他
※高血圧治療薬については、血圧が正常域にコントロールされ、心、腎、血管系に合併症がない場合は献血可能です。ただし、服用開始直後や、服用量を変更した直後は、ご遠慮いただくことがあります。
薬以外で献血ができない可能性があるパターン
・体調不良の方
・極度の空腹や睡眠不足の方
・当日飲酒をされている方
・3日以内に出血を伴う歯科治療を受けた方
・切り傷やひっかき傷などの外傷のある方
・骨折(人工物を入れた場合は6ヵ月間)が完治されていない方
・既往歴や海外渡航歴がある方(渡航場所によって年数が違う)、など
献血前の問診で、医師の判断により献血をご遠慮される場合があります。
予防接種(ワクチン)後も一定期間は献血できない
接種後24時間は献血できないワクチン
・インフルエンザ
・日本脳炎
・コレラ
・A型肝炎
・肺炎球菌
・百日ぜき
・破傷風
等の不活化ワクチンおよびトキソイド
接種後4週間は献血できないワクチン
・おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
・麻疹(はしか)
・風疹
・BCG(結核)
等の弱毒生ワクチン
・B型肝炎ワクチン
接種後2か月は献血できないワクチン
・天然痘ワクチン
接種後6か月は献血できないワクチン
・抗HBs人免疫グロブリンを単独または併用
接種後1年間は献血できないワクチン
・狂犬病ワクチン(動物にかまれた後)
おまけ:輸血の単位について
献血した血液は臨床現場で主に輸血として使用されています。
輸血の量は、一般的にmLではなく単位として扱われているのはご存じでしょうか。
ちなみに輸血の1単位とは、200mLの献血から作られる量で表されます。
さいごに
昔教わった先生が授業中に言っていました。
「君たち、普段あんまり社会貢献していないんだから、こういうとき(献血時)くらい社会貢献したらどうなんだい」
確かに・・。
教室で笑いと驚きが起こりました。
献血をすることは社会貢献の一つです。
1日平均、約3000人の方が輸血を必要としているといいます。
血液には有効期間があります。
そのため、継続的な献血が必要です。
献血後には血液検査値も知ることができます。
献血を定期的にすることで、血液データをモニタリングすることができます。
一人暮らしの方は食生活も偏りがちなので、献血を受けることもいいのではないでしょうか。
大体のエリアでどの血液型の血液も募集しています。
みなさまの健康が許す限り、献血のお協力をお願い申し上げます。
本記事は各地の日本赤十字社のホームページなど参照にしていますが、内容の変更、誤りがある可能性がありますので、気になる方は献血時の問診、血液センターにお問い合わせください。
もし、誤りに気付かれた方はお手数ですがご連絡ください。
また、献血時のエリア、先生によって判断が違う場合、例外がありますので、献血場所の指示に従ってください。
献血時の問診では飲んでいる(いた)薬を嘘偽りなく伝えましょう。
献血される方の体調や服薬目的、症状等を考慮して、検診医が最終的な判断を行います。