【最終更新日 2017/10/28

ニュースなどで目にした人もいるとは思いますが、皮膚への貼り薬で脂肪が溶けるという夢のような治療法が開発されています。
今回の論文紹介は、米コロンビア大学メディカルセンターの研究チームがマウスの実験で成功、米国化学会の学術誌「ACS Nano」(電子版)の2017年9月15日号に発表したものです。

Locally Induced Adipose Tissue Browning by Microneedle Patch for Obesity Treatment

Yuqi Zhang, Qiongming Liu, Jicheng Yu, Shuangjiang Yu, Jinqiang Wang, Li Qiang, and Zhen Gu

ACS Nano, 2017, 11 (9), pp 9223–9230

http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsnano.7b04348

Abstract

Obesity is one of the most serious public health problems in the 21st century that may lead to many comorbidities such as type-2 diabetes, cardiovascular diseases, and cancer. Current treatments toward obesity including diet, physical exercise, pharmacological therapy, as well as surgeries are always associated with low effectiveness or undesired systematical side effects. In order to enhance treatment efficiency with minimized side effects, we developed a transcutaneous browning agent patch to locally induce adipose tissue transformation. This microneedle-based patch can effectively deliver browning agents to the subcutaneous adipocytes in a sustained manner and switch on the “browning” at the targeted region. It is demonstrated that this patch reduces treated fat pad size, increases whole body energy expenditure, and improves type-2 diabetes in vivo in a diet-induced obesity mouse model.

肥満は21世紀の最も深刻な公衆衛生問題の一つであり、2型糖尿病や心臓血管疾患、がんのような多くの共存症(同時に2つ以上の疾患を有している状態)につながりうる。食事、運動、薬物治療、手術を含んだ肥満への現在の治療は、通常、低い有効性や望まない系統的な副作用に関係している。最小限の副作用で治療効果を高めるために、私たちは、局所的に白色脂肪組織を褐色脂肪細胞に変化させる経皮的に吸収させるパッチ薬を開発した。このマイクロニードルベースのパッチ薬は、有効的に薬を皮下の脂肪細胞に持続的に届けることができ、ターゲットした領域で褐色化を促すことができる。このパッチは、処理した脂肪体のサイズの減少、全身のエネルギー消費の増加、そして食事誘発肥満マウスモデルのin vivo実験における2型糖尿病の改善を示した。

イメージ映像がこちらのYoutube(1分19秒)にあがっていますので興味があれば御覧ください。

Introduction

肥満は、2013年にAMAにより病気として分類され、急速な地球規模の経済発展に関係した21世紀の深刻な公衆衛生問題の一つとして認識された。肥満に関係する、2型糖尿病や心臓血管疾患、がんのような疾患は人類の健康における世界的脅威になっている。特にアメリカでは。成人の3人に1人以上は肥満であり、その有病率は今後10年においても急増する予定である。肥満に向けた現在の治療は、食事プログラムによるカロリー摂取の制限や運動を通したエネルギー消費の促進、薬物治療、肥満症治療手術、脂肪吸引術がある。しかし、多くの治療は、胃腸や肝臓、腎臓のようなヒトの組織に望まない副作用をきたし、手術は高いリスクをもつ。それ故、肥満に対する有効的な治療を開発することは、緊急で必要である。
最近の研究において、動物中のエネルギー支出における、最初に熱産生を担う組織である褐色脂肪細胞(BAT)の重要な役割が明らかとなった。白色脂肪細胞(WAT)は、過剰なエネルギーをトリグリセリドとして蓄え、体重増加へとつながることが知られている。一方で、BATは熱産生により代謝亢進を通して、エネルギーを浪費し、肥満の抑制を促しうる。WATのBATへの転換は、肥満や関連した代謝異常の治療の代替的アプローチであり、それらは、過去10年の間に注目を集めた。肥満細胞の分化を制御する様々な遺伝子や経路が発見された。しかし、多くの褐色化させる薬は臨床適用時に、広い範囲のターゲティングにより、ほかの組織に望まない副作用を及ぼした。
ここに、私たちは、薬物が注入されたナノ粒子と架橋したマトリックスで構成された分解可能なマイクロニードルパッチに基づいた局所的に褐色化を誘導する技術を報告する。Rosiglitazone (*1)もしくはCL316243 (*2)が注入されたナノ粒子を褐色化する試薬として用いた。そのナノ粒子は、皮下の脂肪組織に持続的に薬を届ける経皮性のデバイスを基礎にしたマイクロニードルアレイに注入した。そのマイクロニードルパッチは、局所的で使いやすく、痛みがない投与方法である。マウスモデルでは、私たちは、このマイクロニードルパッチが、褐色化の薬剤が安全に局所に運べることができ、肥満組織の肥大の抑制の効果とその結果代謝が良くなることを実証した。

(*1) Rosiglitazone:ロシグリタゾンはピオグリタゾンを含むチアゾリジン系糖尿病薬で、脂肪細胞のPPAR受容体に結合してインスリン抵抗性を改善する。※日本では未承認。

(*2) CL316243:強力かつ高選択性のβ3アドレナリンレセプターアゴニストで、褐色脂肪細胞における熱産生および代謝率を増加させ、血中インスリンおよびグルコースレベルを減少させる。Rosiglitazoneとは違う熱発生のメカニズムを有する、positive controlに使用されている。

Conclusion

結論として、私たちは、局所的にWATを褐色化することが可能であるナノ粒子を結合したマイクロニードルパッチに基づいた技術を開発した。その分解可能なナノ粒子は、褐色化する薬剤をグルコースが存在する皮下の部分に放出し、WATを褐色様の脂肪組織への変換を促進した。さらに重要なことに、マイクロニードルはテストした部位の褐色化の薬剤を限局的にするため、褐色化薬剤の他の組織への潜在的な副作用も最小限であると予想される。私たちのin vivo研究は、食事誘発肥満マウスにおいてエネルギー支出と脂質酸化の増加し、効果的な体重コントロールを実証した。これらをもとに、私たちの研究は、潜在的な肥満の治療法としてマイクロニードルを介した薬の投与という代替的な戦略を与え、それらは2型糖尿病のような共存症に適用できることを示した。

論文のまとめ

複雑な研究も多いため、詳しくは記載しませんが、3T3-L1細胞という脂肪細胞に分化するマウス線維芽細胞株を使った実験、C57BJマウス、C57BLマウスを用いて効果を確認しています。

本研究では、上記のようなナノパーティクルの中に糖尿病薬のロシグリタゾンとカタラーゼ、グルコースオキシダーゼを組み合わせて包みこみ、グルコース依存的にロシグリタゾンが放出するように作ったものをさらにニードルにくっつけて肥満抑制効果を確認しています。

この研究の魅力は、ニードルがついたパッチを直接肥満部位に貼ることで効果が得られることです。

未だマウスを使った実験結果で、用いたマウスの数も多くなかったですが、このパッチを用いることで薬剤が細胞へ届くことは確実で、白色脂肪細胞の褐色化へさせることに成功しています。

ロシグリタゾンを含むチアゾリジン系は効果が認められるものの副作用が多くて難しいため、多くの国で慎重になっています。
今回のパッチ薬による投与では、局所的効果のために副作用が少なく済むならば、非常に有効な肥満制御になるのではないかと考えられます。

おまけ:話題のダイエットグッズ「脂肪燃焼ダイエットパッチ」

こちらは美容大国、韓国のメーカーが開発した製品です。

着用後すぐに発熱感(約42℃)がはじまり、およそ8時間ほど温熱感が持続し腹部の健康管理を助けます。

効果1  唐辛子に含まれるカプサイシンやコーヒーに含まれるカフェインなどの食品に含まれる成分などを使って身体を温めます。さらに、遠赤外線効果も狙っています。

効果2  パッチに使用されているゲルにより温湿効果で肌を潤わせます。

効果3  おへそ周辺にあるつぼを刺激します。

などの効果でダイエット効果を促します。

つまり、今回の論文で紹介したような製品とは全く違い、貼った成分による温熱効果で脂肪燃焼を促すようですね。
脂肪細胞がどうなる、中性脂肪がどうなる、などの効果は示されていません。

 

製品についてはこちらから詳細をご確認ください

ヒートスリム 42 ダイエットパッチ ダイエット 温感シート 貼るダイエット 温活パッチ

似たような製品に、こういったものもあります。

話題沸騰中の脂肪燃焼ダイエットパッチ;スパゲルパッチ42℃ (コルセットタイプ)

 

商品のレビューや使用者体験ブログなどを読むと、効果がありそうな人も結構いました。

ただ、食品由来とは言え、成分をいくつか含んでいるため、肌に合わない人も多いようです。

美容大国、韓国ならではの製品ですね。

 



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