治験薬(抗アミロイドβオウロトフィブリル抗体;BAN2401)に有意な結果

2018年7月6日、エーザイ株式会社とバイオジェン・インクは、抗アミロイドβプロトフィブリル抗体、BAN2401の早期アルツハイマー病患者を対象とした臨床第Ⅱ相試験(201試験)において、事前設定した重要なエンドポイント(エーザイが独自に設定した評価指標)を達成したと発表しました。
本結果は、アルツハイマー病の発症の仮説の一つである、アミロイド仮説を実証する画期的な結果となりうるとされています。

以下、エーザイの発表文書を引用

201試験(ClinicalTrials.gov identifier NCT01767311)は、アミロイドの脳内蓄積が確認されている、プロドローマルおよび軽度アルツハイマー病(総称して早期アルツハイマー病)患者様856人を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化臨床第Ⅱ相試験です。18カ月時点の有効性は早期アルツハイマー病の臨床症状の変化を感度よく検出することを目的として、ADAS-cog、CDR-SB、MMSEの3つの臨床評価尺度を組み合わせた評価指標であるADCOMSを用い、事前設定した伝統的統計手法により評価されました。本試験では、被験者はプラセボ群および実薬群として2.5 mg/kgバイウィークリー(2週間に1回)、5 mg/kgマンスリー(月1回)、5 mg/kgバイウィークリー、10 mg/kgマンスリー、10 mg/kgバイウィークリーの5用量5群に割り付けられています。

本試験の結果、18カ月時点において、重要な臨床エンドポイントであるADCOMSについて、BAN2401最高用量投与群(10㎎/㎏バイウィークリー投与)は、プラセボ群に比較して統計学的に有意な症状の進行抑制を示しました。重要なバイオマーカーエンドポイントである18カ月時点のアミロイドPET解析の結果、同じくBAN2401最高用量投与群は、アミロイドPETでの脳内アミロイド蓄積量の減少およびアミロイドPETイメージ読影診断での陽性から陰性へのコンバージョンについて、プラセボ群に比較して統計学的に有意な改善を示しました。

また、臨床エンドポイントおよびアミロイドPETの結果に関しては、全体を通してベースラインからの用量依存的な変化が確認されました。さらに、BAN2401最高用量投与群におけるADCOMSによる統計学的に有意な臨床的な改善は投与後6カ月の段階から示され、投与後12カ月時点においても認められました。

引用:エーザイ ニュースリリース 2018年 7月6日

 

エーザイは2017年12月に、12カ月時点において、より早期に臨床第Ⅲ相試験の開始を可能とするために設定したベイジアン解析に基づく成功基準である主要評価項目は満たさなかったことを公表していました。

しかし、今回の最終解析により統計的に有意な差が得られていることがわかりました。

投与後 12 カ月時点の解析では、ADCOMS によるベースラインからの変化を評価していました。
そして、今回の投与後 18 カ月時点の最終解析では、ADCOMS に加えて CDR-SB のベースラインからの変化、アミロイド PET で測定した脳におけるアミロイド蓄積量や vMRI で測定した総海馬体積の変化などを包括的に評価していました。

様々な解析のもと、18カ月の薬物投与により影響が確認されたわけです。

本試験は、本薬剤の有効性ならびに最適投与レジメンをより効率的に見出すことが目的であり、アルツハイマー病の治療薬に繋がる新たな知見が得られる結果となっていると思われます。

 

ただ、以前に、イーライリリー社が開発をめざしていた抗アミロイドβ抗体薬の「ソラネズマブ(solanezumab)」も認知機能の低下の有意な抑制は示されなかったとする臨床試験(Phase III:EXPEDITION3試験)の結果が2016年に発表されています。

アミロイドβの減少と治療効果には相関性はないと考えられていました。

 

そして、アルツハイマー病の発症にはアミロイド仮説の他にも、タウ仮説も有力です。

 

しかし、エーザイは、今回の抗体治験薬以外にも、アミロイドβの増加を抑える薬剤に経口のBASE阻害薬というタイプの薬剤の治験も行っています。

様々な仮説があるため、アルツハイマー病の発症は非常に複雑であると想像できますが、エーザイはアミロイド仮説が原因の一つであることを証明する大事な試験を行っているのは間違いありませんね。

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