2018年8月21日、厚生労働省はインフルエンザ治療薬であるタミフルについて、10代への投与を同日から再び認める通知を出しました。
タミフル服用後の異常行動が複数報告されたため、因果関係はずっと不明なままでありましたが、2007年から10代へのタミフル投与を原則控えるようにとしていました。
しかし、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会がタミフルと異常行動の因果関係は明確でないと判断し、添付文書の警告部分に記載されていた10代へのタミフル投与を原則差し控えるという文を削除しました。
以下、抗インフルエンザウイルス薬の「使用上の注意」の改訂についてのオセルタミビルリン酸塩の項から引用
【医薬品名】オセルタミビルリン酸塩
【措置内容】以下のように使用上の注意を改めること。[警告]の項の
「10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、①異常行動の発現のおそれがあること、②自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。」
を削除し、[重要な基本的注意]の項に
「抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、①異常行動の発現のおそれがあること、②自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うこと。なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いこと、が知られている。」
を追記し、[副作用]の「重大な副作用」の項の精神・神経症状に関する記載を
「精神・神経症状、異常行動:精神・神経症状(意識障害、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、症状に応じて適切な処置を行うこと。因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある。」
と改める。
なお、これに伴い、その他の抗インフルエンザ薬の使用上の注意も改定されました。
長い間時間を掛けたものの、結局因果関係を認めることも否定することも難しかったようですね。
また、この調査結果の中に、『抗インフルエンザウイルス薬の処方患者推計』も記載されておりましたので紹介します。
調査結果のリンクはこちら
2016/2017年シーズンにおいて、
タミフル(オセルタミビルリン酸)の推定処方患者約313万人のうち、10歳未満には約131万人(約42%)、10代には約10万人(約3%)。
リレンザ(ザナミビル水和物)の推定処方患者約197万人のうち、10歳未満には約56万人(約28%)、10代には約72万人(約37%)。
ラピアクタ(ペラミビル水和物)の推定処方患者約27万人のうち、10歳未満には約2万人(約7%)、10代には約3万人(約11%)。
イナビル(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)の推定処方患者約475万人のうち、10歳未満には約39万人(約8%)、10代には約138万人(約29%)。
の使用であり、タミフルの10代への処方は極端に少なくなっていました。
今年に入り、タミフルの後発品の参入、新規経口抗インフルエンザ薬であるゾフルーザ錠(バロキサビル マルボキシル)の発売がありました。
インフルエンザの治療の選択肢が増え、昨年までと処方される治療薬が大きく変化する一年になりそうですね。
これらのインフルエンザ薬にお世話にならないようにしたいのが本音ですが。