こんにちは、薬剤師みかんです。
歯科の処方箋で「ロキソプロフェン錠60mg 1回2錠 疼痛時」という記載、調剤薬局ではおなじみですよね。一方で、内科や整形外科の処方ではほとんど「1回1錠」しか見かけません。「歯科の1回2錠って過量じゃないんですか?」と質問されることもあるのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、頓用1回2錠(120mg)は添付文書に明記された正式な用量であり、疑義照会の対象ではありません。この記事では、添付文書の記載を正確に読み解きながら、なぜ歯科で2錠処方が多いのか、監査で本当に注意すべきポイントはどこか、を整理します。
この記事でわかること
- ロキソプロフェンの添付文書における「頓用1回60〜120mg」の正確な位置づけ
- 「1日最大180mg」の記載が適用される効能・効果の範囲(意外と誤解が多いポイント)
- 歯科で1回2錠処方が多い臨床的な理由と、抜歯後疼痛の二重盲検試験データ
- 医科で1回1錠が主流である理由(処方の「枠」の違い)
- 疑義照会が必要なケース・不要なケースの判断基準
- 「他の消炎鎮痛剤との併用は避けることが望ましい」の射程とアセトアミノフェン併用の考え方
- OTCのロキソニンSとの用量の違いと患者説明のポイント
基礎解説:添付文書の用法・用量を正確に読む
まず、ロキソニン錠60mg(ロキソプロフェンナトリウム水和物)の電子添文における用法・用量を、効能・効果ごとに整理してみましょう。ここが今回のテーマの土台になります。
効能・効果ごとに用法・用量が分かれている
| 効能・効果 | 用法・用量 | 1日上限の明記 |
|---|---|---|
| 関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛の消炎・鎮痛/手術後、外傷後並びに抜歯後の鎮痛・消炎 | 1回60mgを1日3回経口投与。頓用の場合は1回60〜120mgを経口投与。年齢、症状により適宜増減 | 用法・用量の項には明記なし(薬物動態の項の注記に「承認最大用量は180mg」の記載あり) |
| 急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)の解熱・鎮痛 | 1回60mgを頓用。原則として1日2回まで、1日最大180mgを限度 | 180mgと明記 |
ポイントは2つあります。
1つ目は、歯痛・抜歯後の鎮痛には「頓用の場合は1回60〜120mg」という規定があること。つまり1回2錠(120mg)は添付文書の範囲内の正式な用量です。
2つ目は、「1日最大180mgを限度とする」という明文の上限は、用法・用量の項では急性上気道炎にのみ記載されていることです。歯痛・抜歯後を含む消炎・鎮痛の効能では、通常投与の1回60mg・1日3回(計180mg)が標準用量であり、頓用時の1日総量の上限は用法・用量の項には明記されていません。ただし、添付文書の薬物動態の項(16.5)の注記に「本剤の承認最大用量は180mgである」との記載があり、実務上180mg/日を上限とする運用はここに典拠を求めることができます。「用法・用量に180mg上限と書いてあるのは風邪の解熱のほう」「承認最大用量180mgの記載は薬物動態の項の注記にある」という2段構えの理解は、監査や疑義照会の根拠を説明するうえで正確に押さえておきたいところです。

私も新人の頃、「ロキソニンは1日180mgまで」とざっくり覚えていて、添付文書を読み直したときに「あれ、180mg上限って上気道炎の項にしか書いてない…!」と気づいた経験があります。丸暗記ではなく、効能ごとに用法・用量が分かれている構造を理解しておくと、監査の精度がぐっと上がりますよ。
頓用120mgの根拠となる臨床試験データ
添付文書の臨床成績の項には、まさに抜歯後疼痛を対象とした二重盲検試験が記載されています。
| 投与群 | 有効以上 | やや有効以上 |
|---|---|---|
| ロキソプロフェン60mg/日 | 88.2%(75/85例) | 98.8%(84/85例) |
| ロキソプロフェン120mg/日 | 91.4%(85/93例) | 95.7%(89/93例) |
抜歯後に疼痛が発現した患者を対象に、メフェナム酸500mg/日を対照薬とした二重盲検試験で、60mg群・120mg群ともに高い有効性が確認されています。副作用の発現は本剤群で3.9%(7/179例)、主なものは眠気1.6%でした。つまり、120mgという用量は抜歯後疼痛そのもので検証された用量なのです。歯科医師が2錠処方を選ぶ背景には、この開発時のエビデンスがあります。
なぜ歯科では1回2錠、医科では1回1錠なのか
歯科:急性の炎症性疼痛に「頓用」の枠で対応する
抜歯後疼痛は、組織侵襲によりプロスタグランジンが大量に産生される典型的な急性炎症性疼痛です。痛みのピークは処置後数時間〜翌日に集中し、その後は日ごとに軽快していく経過をたどります。
この「短期間・高強度」という疼痛パターンには、定期内服よりも頓用がフィットします。そして頓用の規定は「1回60〜120mg」。初回からしっかり効かせて鎮痛の立ち上がりを確保する、という発想で120mgが選択されるわけです。効果不十分で追加服用を繰り返すより、初回で確実に抑えたほうが患者満足度も高く、結果的に総服用量を抑えられるという考え方ですね。
なお、抜歯後疼痛は鎮痛薬の臨床試験で古くから使われてきた代表的な急性疼痛モデルでもあります。痛みの発現時期と強度が比較的均一で、薬効評価がしやすいためです。それだけ「しっかり痛い」疼痛だということでもあります。
医科:慢性疾患の定期内服の枠で処方される
一方、内科や整形外科でロキソプロフェンが処方される場面の多くは、腰痛症や変形性関節症などの慢性疾患です。この場合は「1回60mgを1日3回」という定期内服の枠が適用されるため、1回1錠が標準になります。
つまり、歯科医師と医科の医師で判断基準が違うのではなく、疼痛の性質に応じて添付文書内の異なる「枠」を使い分けているだけなのです。
| 項目 | 歯科(抜歯後など) | 医科(整形領域など) |
|---|---|---|
| 疼痛の性質 | 急性・短期間・高強度 | 慢性・持続性 |
| 適用される用法の枠 | 頓用:1回60〜120mg | 定期:1回60mg 1日3回 |
| 典型的な処方 | 1回2錠 疼痛時 5回分など | 1回1錠 1日3回 毎食後 |
海外ガイドラインでもNSAIDsは歯科急性疼痛の第一選択
参考までに、米国歯科医師会(ADA)が2024年2月にJADA誌で公表した急性歯性疼痛の薬物療法ガイドライン(青少年・成人・高齢者対象)では、抜歯後疼痛および歯痛の一時的管理において、NSAIDs単独またはアセトアミノフェンとの併用が第一選択と明確に推奨されています。82件のRCTに基づき、NSAIDs(±アセトアミノフェン)はオピオイドよりも術後疼痛の軽減効果が高く、安全性プロファイルも良好と結論づけられました。
日本の歯科でロキソプロフェンが頻用される現状は、国際的な推奨とも整合していると言えます。
「他の消炎鎮痛剤との併用は避けることが望ましい」をどう読むか
併用の話に進む前に、添付文書の「7. 用法及び用量に関連する注意」を確認しておきましょう。ここには「他の消炎鎮痛剤との併用は避けることが望ましい」という一文だけが記載されています。この一文の射程をどう読むかは、薬剤師が窓口で判断を求められる場面が多いポイントです。
まず明確なのは、NSAIDs同士の併用がこの注意の中心にあるということ。COX阻害作用が重複しても鎮痛効果は上乗せされにくい一方で、消化管障害・腎障害・血小板機能抑制といった副作用リスクは確実に加算されます。歯科の頓用ロキソプロフェンと整形外科のセレコキシブ定期内服、歯科のロキソプロフェンと市販のイブプロフェン配合かぜ薬といった組み合わせは、効果の面でもリスクの面でも避けたい重複です。外用NSAIDsとの併用についても、経皮吸収による全身移行があるため、広範囲・長期使用例では注意が必要になります。
一方で、アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬に分類され、末梢での抗炎症作用はほとんど持ちません。作用機序がNSAIDsと異なるため、一般に7.1が主として想定しているNSAIDs同士の重複とは性質が異なるものとして扱われています。実際、前述のADAガイドラインではNSAIDsとアセトアミノフェンの併用が急性歯性疼痛の推奨選択肢に含まれており、急性期の短期間併用には相応の根拠があります。
ただし、添付文書に「アセトアミノフェンは除く」と明記されているわけではない点は、薬剤師として正確に押さえておきたいところです。したがって窓口では、患者さんの自己判断による併用は勧めず、処方医の指示のもとで行うという整理が妥当でしょう。歯科処方のロキソプロフェンで効果不十分という相談を受けた場合、薬局で市販のアセトアミノフェンを勧めるより、まず処方元に連絡して鎮痛戦略を相談していただくほうが安全です。

「NSAIDsとカロナールって一緒に飲んでいいの?」は患者さんからよく聞かれる質問です。作用機序が異なるため薬理学的には併用可能で、海外では急性疼痛への併用が標準戦略のひとつになっています。自己判断での併用は勧めず、処方医の指示のもとで、というスタンスで説明しています。
監査・疑義照会の実践ポイント
ここからは薬剤師の実務目線で整理します。用量そのものは添付文書の範囲内であることが確認できているので、監査の焦点は服用回数の指示・患者背景・他院処方との重複に移ります。処方元の歯科医院は内科の服用薬まで詳細に把握していないことも多く、ここは薬剤師が果たす役割が大きい領域です。「1回2錠だから疑義照会」ではなく、本当に確認すべきなのは次のようなケースです。
疑義照会が不要なケース
- 「1回2錠 疼痛時」の頓用処方(添付文書の頓用規定60〜120mgの範囲内)
- 頓用の回数指示が実質的に1日総量180mg程度に収まる処方
疑義照会を検討すべきケース
- 「1回2錠 1日3回 毎食後」の定期処方:1日360mgとなり、定期内服の標準用量(1回60mg)を大きく超えます。適宜増減の記載はありますが、意図の確認が必要です
- 頓用で1日回数の上限指示がない場合:「疼痛時 1回2錠」のみで回数指示がないと、患者さんが短時間に繰り返し服用するリスクがあります。1日何回まで・何時間以上あけるかの確認を
- 腎機能低下患者・高齢者:NSAIDsの腎血流低下作用を考慮し、eGFRや併用薬(RAS阻害薬+利尿薬との併用、いわゆるトリプルワーミー)を確認
- 消化性潰瘍の既往・抗血栓薬併用:頓用でも短期集中で服用するため、ハイリスク患者ではPPI併用の有無や代替薬(アセトアミノフェン)の検討余地を確認
- 他院からのNSAIDs定期処方との重複:整形外科でロキソプロフェン定期服用中の患者さんに歯科から頓用2錠が出るケースは実際によくあります。お薬手帳の確認が活きる場面です

歯科の処方箋で最優先でチェックするのは、実は用量よりも「他院NSAIDsとの重複」と「喘息の既往(アスピリン喘息)」です。歯科の問診では内科の服用薬まで詳細に把握されていないことがあり、薬局が最後の砦になります。
制度・報酬関連:頓服処方の取り扱い
- 薬剤調製料:頓服薬は1調剤につき21点(内服薬の1剤24点とは別区分)。剤数のカウント方法が内服と異なる点は算定時に注意しましょう
- 投与日数制限:ロキソプロフェンに処方日数制限はなく、頓用の場合は「○回分」の投与量指示となります
- OTCとの用量差:OTCのロキソニンS(第1類医薬品)は1回1錠、1日2回まで(再度症状があらわれた場合には3回目まで、服用間隔4時間以上)とされており、OTCでは1回2錠の服用は認められていません。医療用の頓用120mgとは規定が異なるため、セルフメディケーション相談時の説明では明確に区別が必要です
患者説明トーク(Q&A形式)
Q1. 歯医者さんで「1回2錠」と言われたけど、飲みすぎじゃないですか?
A. ご心配いりませんよ。ロキソニンは痛いときだけ飲む場合、1回1〜2錠まで使えることが正式に認められています。抜歯後の痛みは最初が一番強いので、しっかり効く量で処方されています。歯科医師の指示どおりに服用してくださいね。
Q2. 痛みが続くとき、次はどのくらい間隔をあければいいですか?
A. 目安として4〜6時間以上はあけてください。1日の合計は3錠程度までにとどめ、それでも痛みが治まらない場合は追加で飲み続けるのではなく、処方された歯科医院に連絡しましょう。感染など別の原因が隠れていることもあります。
Q3. 空腹時に飲んでもいいですか?
A. なるべく避けてください。胃に負担がかかりやすいお薬なので、食後、または軽く何か食べてから服用するのがおすすめです。処置後でお食事が難しいときは、ゼリーや牛乳などを少しとってからでも構いません。
Q4. 市販のロキソニンSを2錠飲めば同じですか?
A. いいえ、市販のロキソニンSは1回1錠までと決められています。医療用と成分は同じですが、市販薬は薬剤師や医師の管理外で使われることを前提に、より安全側の用法になっています。自己判断で2錠飲むことはしないでくださいね。
Q5. 普段、整形外科でもロキソニンをもらっています。一緒に飲んで大丈夫?
A. それは重複になるので要注意です。同じ成分を二重に飲むと胃や腎臓への負担が大きくなります。歯科の痛み止めを飲む日は整形外科の分をどうするか、必ず薬剤師か医師にご相談ください。お薬手帳を歯科にも見せていただけると安心です。
まとめ
- ロキソプロフェンの頓用1回2錠(120mg)は、歯痛・抜歯後の効能に対する添付文書上の正式な用量であり、疑義照会の対象ではない
- 「1日最大180mg」の明文規定は用法・用量の項では急性上気道炎のみ。ただし薬物動態の項の注記に「承認最大用量は180mg」の記載があり、180mg/日運用の典拠は添付文書内に存在する
- 120mgは抜歯後疼痛の二重盲検試験(有効以上91.4%)で検証された用量
- 歯科=頓用の枠、医科=定期内服の枠。処方の「枠」が違うだけで、どちらも添付文書どおり
- 監査で本当に見るべきは、定期1日3回×2錠(360mg/日)、回数指示のない頓用、腎機能・潰瘍リスク、他院NSAIDsとの重複
- 添付文書7.1の「他の消炎鎮痛剤との併用」はNSAIDs同士の重複が中心。アセトアミノフェン併用は機序が異なり急性期の選択肢になるが、自己判断ではなく処方医の指示のもとで
- OTCのロキソニンSは1回1錠まで。医療用の頓用規定とは異なることを患者説明で明確に
関連書籍
- 薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(児島悠史、羊土社):ロキソプロフェンとアセトアミノフェンの使い分けなど、窓口対応に直結する構成でおすすめです
参考情報
- ロキソニン錠60mg 電子添文(第一三共)
- ロキソニン錠60mg インタビューフォーム(第一三共)
- ロキソニンS 添付文書(第一三共ヘルスケア)
- American Dental Association: Evidence-based clinical practice guideline for the pharmacologic management of acute dental pain in adolescents, adults, and older adults. JADA. 2024;155(2)
- 令和6年度診療報酬改定 調剤報酬点数表(厚生労働省)