ウゴービ・ゼップバウンド・サノレックス|肥満症治療薬の適応条件・臨床データ【医療者向け解説】

目次

この記事でわかること

  • 日本で保険適用のある医療用肥満症治療薬3種の適応条件・用法・作用機序の違い
  • STEP試験・SURMOUNT試験など主要臨床試験の体重減少データ(日本人データあり)
  • ウゴービとゼップバウンドの直接比較試験(SURMOUNT-5試験)の結果
  • 処方施設要件・最適使用推進ガイドラインの概要
  • 薬剤師が調剤・服薬指導で押さえるべき実務ポイント
  • GLP-1系薬剤と体組成変化(筋肉量への影響)の最新データ
  • 患者さんへの説明に使えるQ&Aトーク例

医療用肥満症治療薬の現状

日本における肥満症の薬物療法は長年、マジンドール(サノレックス)一択でした。しかし2023年にセマグルチド(ウゴービ)、2025年にチルゼパチド(ゼップバウンド)が相次いで承認・発売され、治療選択肢が一気に広がっています。

3薬はいずれも「肥満症」の治療薬ですが、作用機序・適応範囲・使用制限が大きく異なります。薬剤師として処方箋受付時の疑義照会や服薬指導を適切に行うために、それぞれの特徴をしっかり整理しておきましょう。

「肥満症」と「肥満」は別物です。日本肥満学会の定義では、BMI 25以上が「肥満」、そこに高血圧・脂質異常症・2型糖尿病などの健康障害が加わり医学的な減量が必要な状態が「肥満症」。この区別、患者さんへの説明でも薬剤師として正確に伝えたいですね。

①ウゴービ皮下注(セマグルチド)

基本情報

項目内容
一般名セマグルチド(遺伝子組換え)
製造販売ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
薬効分類GLP-1受容体作動薬
承認日2023年3月27日
薬価収載2023年11月22日
発売日2024年2月22日
投与経路週1回皮下注射
規格0.25mg・0.5mg・1.0mg・1.7mg・2.4mg(SD製剤)/MD製剤(4回分充填)

作用機序

セマグルチドはヒトGLP-1と94%のアミノ酸配列相同性を持つGLP-1アナログです。GLP-1受容体は脳に広く分布しており、視床下部などの食欲調節中枢に作用して摂食量を抑制します。また胃排出を遅延させることで満腹感を延長します。半減期は約1週間(天然GLP-1は約2分)であり、アルブミン結合による修飾で長時間作用が可能となっています。

保険適用の適応条件(最適使用推進ガイドラインより)

以下をすべて満たすこと。

  • 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有する
  • 食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない
  • ①BMI 27 kg/m²以上かつ2つ以上の肥満関連健康障害を有する、または②BMI 35 kg/m²以上

処方可能施設:日本糖尿病学会・日本肥満学会等の教育研修施設に限定。一般の診療所・クリニックでは処方不可。

用法・用量

0.25mgから開始し、4週ごとに0.5mg→1.0mg→1.7mg→2.4mgの順に増量。維持用量は週1回2.4mg。患者の状態に応じて適宜減量可能。なお、同成分の糖尿病治療薬オゼンピックの最大用量は1.0mg/週であり、ウゴービはより高用量設計となっています。

STEP臨床試験プログラムの主要データ

過体重または肥満の成人約4,700例が参加した第III相臨床開発プログラムです。

試験名対象期間ウゴービ2.4mg群 体重変化率プラセボ群
STEP1(国際共同)非糖尿病の肥満成人68週−14.9%−2.4%
STEP2(糖尿病合併)2型糖尿病合併肥満成人68週−9.6%−3.4%
STEP6(東アジア・日本韓国)日本・韓国 401例68週−13.2%(2.4mg)/−9.6%(1.7mg)−2.1%

STEP6試験は日本・韓国28施設で実施された東アジア専用試験で、401例(セマグルチド2.4mg群199例・1.7mg群101例・プラセボ101例)が参加しました(Kadowaki et al., Lancet 2022)。68週後にウゴービ2.4mg群で平均13.2%の体重減少が確認されており、体重100kgの患者であれば約13kgの減量に相当します。欧米人が中心のSTEP1試験と同等以上の効果が示された点は、日本人への投与根拠として重要なデータです。

主な副作用は悪心・下痢・便秘などの消化器症状。STEP6試験ではウゴービ2.4mg群の59%に胃腸障害が認められました。増量を慎重に行うことで軽減できる場合が多く、多くは継続とともに改善します。

STEP6試験は「日本人にも効くのか?」という患者さんへの説明で使える重要なエビデンスです。「欧米のデータだけでなく、日本人での試験でも同じくらい効果が確認されていますよ」と伝えると安心してもらえます。

②ゼップバウンド皮下注(チルゼパチド)

基本情報

項目内容
一般名チルゼパチド
製造販売日本イーライリリー株式会社/田辺三菱製薬株式会社
薬効分類GIP/GLP-1両受容体作動薬
承認日2024年12月27日
薬価収載2025年3月19日
発売日2025年4月
投与経路週1回皮下注射
規格2.5mg・5mg・7.5mg・10mg・12.5mg・15mg(アテオス製剤)

作用機序

チルゼパチドはGLP-1受容体に加え、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体にも同時に作用する「GIP/GLP-1両受容体作動薬」です。GIPは食後のインスリン分泌促進のほか、脂肪組織でのエネルギー代謝にも関与するとされており、2つのホルモン経路を同時に活性化することでGLP-1単独作用薬を上回る体重減少効果が期待されます。同一成分の糖尿病治療薬マンジャロとは適応症と薬価が異なりますが、規格・用量は同一です。

保険適用の適応条件

ウゴービと同様の条件に加え、ゼップバウンドでは食事・運動療法を6ヵ月以上実施し、その間に管理栄養士による栄養指導を2ヵ月に1回以上受けていることが要件となっています。

  • 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有する
  • 食事療法・運動療法を6ヵ月以上行っても十分な効果が得られない
  • 管理栄養士による栄養指導を2ヵ月に1回以上受けていること
  • ①BMI 27 kg/m²以上かつ2つ以上の肥満関連健康障害、または②BMI 35 kg/m²以上

処方可能施設:ウゴービと同様、最適使用推進ガイドラインを満たす専門施設に限定。

用法・用量

2.5mgから開始し、4週ごとに2.5mgずつ増量。維持用量は週1回10mg。患者の状態に応じて5〜15mgの範囲で調整可能(最大15mg/週)。

SURMOUNT臨床試験プログラムの主要データ

試験名対象期間チルゼパチド群 体重減少率プラセボ群
SURMOUNT-1(国際共同)非糖尿病の肥満成人2,500例超72週5mg: 約15%/10mg: 約19%/15mg: 約21%約3%
SURMOUNT-J(日本人対象)日本人肥満症患者72週10mg: −17.8%/15mg: −22.7%−1.7%
SURMOUNT-5(ウゴービとの直接比較)非糖尿病の肥満成人751例72週平均−20.2%(約22.8kg)ウゴービ群:−13.7%(約15.0kg)

SURMOUNT-J試験では72週後、体重が5%以上減少した患者の割合が15mg群で96.1%(10mg群94.4%、プラセボ群20.0%)、20%以上減少した割合が15mg群で64.5%(10mg群39.4%、プラセボ群0.0%)に達しました。出典:日本イーライリリー SURMOUNT-J試験データ・田辺三菱製薬プレスリリース

SURMOUNT-5試験(2025年5月発表)はウゴービとの頭対頭(head-to-head)直接比較試験で、最大推奨用量同士を72週間比較した結果、ゼップバウンド群がウゴービ群を有意に上回りました。ただし試験設計や患者背景の違いがあるため、「GIP/GLP-1二重作用のエビデンス」として捉えることが適切です。

SURMOUNT-5はインパクトのあるデータですが、「どちらの薬が優れているか」という話より「なぜ効果の差があるのか(GIPの上乗せ効果)」という作用機序の観点で説明する方が、患者さんにも医療者にも納得してもらいやすいです。

③サノレックス錠(マジンドール)

基本情報

項目内容
一般名マジンドール
製造販売あすか製薬株式会社
薬効分類食欲抑制剤(アドレナリン作動薬系)
承認1992年(国内初の保険適用肥満症治療薬)
規制区分劇薬・向精神薬(第三種)・習慣性医薬品
投与経路経口(昼食前)

作用機序

視床下部の摂食中枢に作用してノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンの再取り込みを阻害し、食欲を抑制します。化学構造がアンフェタミン系化合物に類似しており、依存性リスクがあります。このため欧米主要国では1980年代以降に販売中止となっていますが、日本では現在も使用可能です。

適応条件と処方制限(添付文書より)

  • 肥満度+70%以上またはBMI 35 kg/m²以上の高度肥満症のみが対象
  • 食事療法・運動療法の効果が不十分な場合の補助療法
  • 投与期間は最長3ヵ月(肺高血圧症リスクのため長期投与禁止)
  • 1ヵ月以内に効果がみられない場合は中止
  • 薬物・アルコール依存の既往がある患者は禁忌

用法・用量

通常1日1回0.5mgを昼食前に経口投与。最大1.5mg/日(3錠)、2〜3回に分けて食前投与。夕刻の投与は睡眠障害を起こすことがあるため避けること。

臨床データ

高度肥満症患者44例を対象とした国内臨床試験では、全般改善度が中等度改善以上43.2%、軽度改善以上75.0%と報告されています(添付文書より)。GLP-1受容体作動薬と比較した大規模な直接比較データはありません。

サノレックスは向精神薬です。第三種向精神薬ですが管理はしっかり。処方期間の上限は3ヵ月です。

3薬まとめ比較表

項目ウゴービ(セマグルチド)ゼップバウンド(チルゼパチド)サノレックス(マジンドール)
薬効分類GLP-1受容体作動薬GIP/GLP-1両受容体作動薬食欲抑制剤(アドレナリン系)
投与経路週1回皮下注射週1回皮下注射経口(昼食前)
保険適用BMI27以上(条件付き)または35以上27以上(条件付き)または35以上35以上(高度肥満症のみ)
合併症要件高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかなし
前治療期間要件食事・運動療法で効果不十分食事・運動療法を6ヵ月以上+栄養士指導食事・運動療法で効果不十分
投与期間制限なし(長期投与可)なし(最大投与期間72週の試験データあり)最長3ヵ月
最大用量週1回2.4mg週1回15mg1日1.5mg
主要試験での体重減少率−13.2%(STEP6・68週・日本人含む)10mg: −17.8%/15mg: −22.7%(SURMOUNT-J・72週・日本人)中等度改善以上43.2%(国内44例)
主な副作用悪心・下痢・便秘(消化器系)悪心・下痢・便秘(消化器系)不眠・口渇・動悸・依存性・肺高血圧症
規制区分処方箋医薬品処方箋医薬品処方箋医薬品・劇薬・向精神薬(第三種)
処方施設制限最適使用推進GL対象施設のみ最適使用推進GL対象施設のみなし

GLP-1系薬剤と体組成変化|「筋肉が落ちる」は本当か

GLP-1受容体作動薬による「筋肉量の低下」はSNSや患者さんからの質問でも話題になるテーマです。現時点のエビデンスを整理します。

臨床試験の体組成データ(DXAサブスタディ)

試験薬剤体重変化脂肪量変化除脂肪量変化減少体重に占める脂肪の割合
SURMOUNT-1サブスタディ(72週)チルゼパチド−21.3%−33.9%−10.9%約75%
STEP1サブスタディ(68週)セマグルチド約−15.0%−19.3%(脂肪量)−9.7%(除脂肪量)約60%(除脂肪量は約40%)

出典:Look M, et al. Diabetes Obes Metab. 2025(SURMOUNT-1体組成サブスタディ)

チルゼパチド(SURMOUNT-1)では減少体重の約75%が脂肪・約25%が除脂肪量である一方、セマグルチド(STEP1)では減少体重の約60%が脂肪・約40%が除脂肪量とされています。いずれもGLP-1系薬剤に特異的な「過剰な筋肉分解」を示すデータではありませんが、体組成の観点ではチルゼパチドのほうが脂肪優位に減少する傾向が示されている点は、薬剤選択の議論において重要な視点です。出典:Look M, et al. Diabetes Obes Metab. 2025(SURMOUNT-1)/STEP1 DXAサブスタディ(PMC掲載版)

現時点での限界と注意点

  • DXA法で評価された「除脂肪量」には骨・水分・内臓も含まれており、骨格筋のみの変化を正確に反映しない
  • 筋肉内脂肪(筋脂肪)の変化については報告が不十分(Lancet Diabetes Endocrinol. 2025より)
  • チルゼパチドはセマグルチドより総体重減少が大きい分、除脂肪量の絶対的な減少も大きい可能性を示唆するリアルワールドデータが2026年に報告されており、今後の比較データの蓄積が待たれる
  • 高齢者・サルコペニアリスクが高い患者では、除脂肪量の減少が機能低下に直結する可能性があり、個別評価が必要

薬剤師として伝えられること

欧州肥満学会(ECO 2025)で発表された研究では、適切な運動・タンパク質摂取・服薬遵守の指導を組み合わせることで除脂肪量の減少を最小限に抑えられる可能性が示されています。服薬指導では以下を伝えることが実践的です。

  • タンパク質摂取:体重1kgあたり1.2〜1.6g/日程度が減量中の筋肉維持に有効とされる(日本肥満学会ガイドライン参考)
  • レジスタンス運動:週2〜3回の筋力トレーニングが除脂肪量の保持に有用
  • 急激な減量を避ける:増量ペースが速すぎる場合は主治医と相談して減量速度の調整を検討

「筋肉も落ちると聞いて怖い」という患者さんには、「減った体重のほとんどは脂肪ですが、筋肉も少し減ることがあります。だからこそ、タンパク質をしっかり食べて、できる範囲で筋トレをすることがとても大事なんですよ」と伝えるとイメージしてもらいやすいです。「薬を飲んでいる間が、生活習慣を変える絶好のチャンス」というフレームで話すと前向きに受け取ってもらえます。

薬剤師が押さえるべき服薬指導・調剤実務ポイント

ウゴービ・ゼップバウンド共通の注意点

  • 低血糖リスク:単剤では低血糖を起こしにくいが、SU薬・グリニド薬・インスリン製剤との併用時は低血糖リスクが増大する。処方確認と患者への説明が必須。
  • 急性膵炎:重大な副作用として添付文書に記載あり。腹痛・嘔吐が持続する場合はすぐに受診するよう指導する。
  • 甲状腺髄様がん・MEN2型の家族歴:米国では禁忌。日本の添付文書でも「安全性が確立していない」として注意が必要な患者として記載されている。
  • 自己注射指導:初回は医療機関で指導を受けることが前提。薬局でも注射部位のローテーション・保存方法(冷蔵保存)・打ち忘れ時の対応を確認する。
  • 中止後のリバウンド:SURMOUNT-4試験では中止後1年で多くの患者が体重を再増加。「やめると戻る」ことを最初から説明し、生活習慣改善の継続を促す。
  • 妊婦・授乳婦:いずれも有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ使用。挙児希望がある場合は主治医への確認を促す。

サノレックス固有の注意点

  • 向精神薬管理簿への記録:第三種向精神薬のため調剤ごとに記録が必要。
  • 投与期間の管理:3ヵ月を超えた処方は疑義照会の対象。保険請求上も原則1回限りとされている。
  • 就寝前の服用厳禁:睡眠障害を引き起こすため、夕刻以降の服用は避けるよう指導する。
  • 禁忌の確認:薬物・アルコール依存の既往、閉塞隅角緑内障、重症の心障害・膵障害、精神障害(統合失調症等)が禁忌。

ウゴービ・ゼップバウンドを扱う施設は専門病院が多いので、薬局への処方箋は「患者さんが初めて手にする」ケースも少なくありません。注射器の保管方法や打ち忘れ時の対応など、基本的な使い方の確認を丁寧に行いたいですね。

制度・適正使用の最新情報(2025年時点)

日本肥満学会(JASSO)は2025年4月10日に「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」を改訂しました。主なポイントは以下のとおりです。

  • 健康障害を伴わない肥満や美容・痩身・ダイエット目的での使用は不適切であることを明示
  • 糖尿病治療が行われている患者への処方は、糖尿病担当医との連携を求めている
  • 高齢者への過剰な体重減少、メンタルヘルスの変化(自殺念慮・自殺企図)にも注意が必要

また、ウゴービ・ゼップバウンドはいずれも厚生労働省の最適使用推進ガイドライン対象品目であり、処方可能な施設・医師・患者要件が定められています。薬局薬剤師には、処方箋受付時に施設要件を満たした医療機関からの処方であることの確認と、適正使用に向けた継続的な服薬フォローが求められます。

患者説明トーク(Q&A形式)

Q. 保険で使える肥満症の注射薬が増えたと聞きました。どんな条件で使えますか?

ウゴービとゼップバウンドという2種類の週1回注射薬が保険適用されています。どちらも、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかの診断があり、食事療法・運動療法を続けても十分に効果が出なかった方が対象です。BMIが27以上で健康障害が2つ以上ある方、またはBMIが35以上の方が条件に当てはまります。ただし処方できる医療機関が大学病院などの専門施設に限られているため、まずはかかりつけ医にご相談いただき、専門施設へのご紹介をお願いするのがよいと思います。

Q. ウゴービとゼップバウンドはどう違うのですか?

どちらも週1回の皮下注射で、食欲を抑えて体重を減らす薬です。ウゴービはGLP-1というホルモンだけに作用しますが、ゼップバウンドはGLP-1に加えてGIPというホルモンにも同時に作用する「二重作用型」です。臨床試験では全体的にゼップバウンドのほうが体重減少率が高い傾向がありますが、どちらが合うかは体質や合併症の状態によって異なりますので、主治医とよくご相談ください。

Q. 注射をやめたらリバウンドしますか?

残念ながら、中止すると体重が戻りやすいことが臨床試験でも確認されています。薬が効いている間に食事や運動の習慣をしっかり整えることが、長期的な体重管理のために非常に大切です。「薬をやめても太らない体づくり」を並行して進めていくことを、ぜひ主治医や管理栄養士の先生と相談しながら続けてみてください。

Q. サノレックスという薬もあると聞きましたが、なぜあまり使われないのですか?

サノレックスは1992年から使われている食欲抑制剤で、BMIが35以上の高度肥満症の方だけが保険適用の対象です。また向精神薬の一種で依存性のリスクがあるため、投与期間が最長3ヵ月と厳しく制限されています。ウゴービやゼップバウンドが登場したことで、より広い範囲の患者さんに長期的に使える選択肢が増えた状況です。

Q. 副作用で気をつけることはありますか?(ウゴービ・ゼップバウンド)

最も多いのは吐き気・下痢・便秘などのお腹の症状です。特に投与開始時や増量直後に出やすいですが、多くの場合は時間とともに落ち着いてきます。それ以外に気をつけていただきたい重大な副作用として急性膵炎があります。強い腹痛や嘔吐が続く場合はすぐに医療機関を受診してください。糖尿病の薬(インスリンやSU薬)を一緒に使っている方は低血糖にも注意が必要です。

まとめ

  • 日本の保険適用医療用肥満症治療薬は現在3種:ウゴービ(セマグルチド)・ゼップバウンド(チルゼパチド)・サノレックス(マジンドール)
  • ウゴービはGLP-1受容体作動薬。STEP6試験(日本人含む東アジア人・68週)で平均−13.2%の体重減少を達成。2024年2月発売
  • ゼップバウンドはGIP/GLP-1両受容体作動薬。SURMOUNT-J試験(日本人・72週)で15mg群−22.7%。SURMOUNT-5試験でウゴービとの直接比較でも上回る結果。2025年4月発売
  • ゼップバウンドはウゴービより前治療要件が厳格(食事・運動療法6ヵ月以上+管理栄養士指導)
  • サノレックスはBMI 35以上の高度肥満症のみ・最長3ヵ月・向精神薬指定と制約が多い
  • ウゴービ・ゼップバウンドの処方は最適使用推進ガイドライン対象施設に限定。薬局薬剤師は適正使用支援の要として服薬指導・副作用モニタリングの役割を担う
  • GLP-1系薬剤による除脂肪量の減少はチルゼパチドで約25%・セマグルチドで約40%(減少体重比)と薬剤間で差があり、体組成の観点ではチルゼパチドが脂肪優位に減少する傾向。いずれもタンパク質摂取・レジスタンス運動の指導を服薬指導とセットで行うことが重要
  • 日本肥満学会は2025年4月のステートメントで適応外・美容目的使用を明確に否定。薬剤師としても適正使用の啓発に積極的に関わりたい

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参考情報

  • 厚生労働省 最適使用推進ガイドライン(セマグルチド・肥満症)令和5年11月21日 医薬薬審発1121第1号
  • 厚生労働省 最適使用推進ガイドライン(チルゼパチド・肥満症)令和7年
  • 日本肥満学会(JASSO)「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」改訂2025年4月10日
  • ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 ウゴービ皮下注 添付文書(最新版)
  • 日本イーライリリー株式会社/田辺三菱製薬株式会社 ゼップバウンド皮下注 添付文書(最新版)
  • あすか製薬株式会社 サノレックス錠0.5mg 添付文書
  • Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2021;384:989-1002.(STEP1試験)
  • Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2022;387:205-216.(SURMOUNT-1試験)
  • Kadowaki T, et al. Semaglutide once a week in adults with overweight or obesity, with or without type 2 diabetes in an east Asian population (STEP 6): a randomised, double-blind, double-dummy, placebo-controlled, phase 3a trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022;10(3):193-206.(STEP6試験)
  • Aronne LJ, et al. Tirzepatide as compared with semaglutide for the treatment of obesity. N Engl J Med. 2025;393(1):26-36.(SURMOUNT-5試験)
  • Look M, et al. Body composition changes during weight reduction with tirzepatide in the SURMOUNT-1 study. Diabetes Obes Metab. 2025.(SURMOUNT-1体組成サブスタディ)
  • Tirzepatide and muscle composition changes in people with type 2 diabetes. Lancet Diabetes Endocrinol. 2025.(筋脂肪変化に関するレビュー)
  • 日本イーライリリー株式会社 SURMOUNT-J試験結果データ(医療関係者向けサイト)
  • 田辺三菱製薬株式会社 SURMOUNT-J試験結果プレスリリース

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