アブリスボ(組換えRSウイルスワクチン)の特徴・作用機序

開発の経緯について
RS ウイルス(RSV)は、パラミクソウイルス科に属するRNA ウイルスであり、抗原性の違いから2 つのサブグループ(RSV-A 及びRSV-B)に分類される。RSV は、乳児及び高齢者の呼吸器感染症の主な原因であり、年長児や非高齢者成人に感染した場合には感冒様症状のみで自然軽快するが、生後数ヵ月までの乳児に感染した場合には基礎疾患の有無にかかわらず、概して重症化しやすく、細気管支炎や肺炎を引き起こし、入院や死亡といった重篤な転帰に至ることもある。ほぼすべての乳幼児が2 歳までにRSV に感染するとされている。
2023 年10 月時点で、本邦において、RSV 感染症の治療を目的として乳幼児に使用可能な医薬品は承認されておらず、乳幼児におけるRSV 感染症に対する治療としては、栄養や水分補給、酸素補充等の対症療法が主に行われている。RSV 感染による重篤な下気道疾患の発症を抑制する医薬品としてRSV F タンパク質を標的としたヒト化モノクローナル抗体であるパリビズマブが承認されており、投与対象者が早産児や先天性心疾患、免疫不全症等を有する新生児及び乳幼児といったRSV 感染症に罹患するリスクが高い新生児及び乳幼児とされている。
本剤は、膜融合前構造の三量体を形成するようにアミノ酸配列を改変し安定化させた、RSV-A 及びRSV-B に由来する2 種類の組換えRSV F タンパク質抗原を有効成分とする遺伝子組換えワクチンであり、妊婦を接種対象とし、本剤を接種した母親から生まれた乳児におけるRSV 疾患の予防及び60歳以上の者におけるRSV 疾患の予防を目的としてファイザー社により開発されている。
本邦では、C3671001 試験、C3671003 試験及びC3671008 試験[MATISSE 試験*]の成績を評価資料として2023 年2 月に承認申請を行い、2024 年1 月に「妊婦への能動免疫による新生児及び乳児におけるRS ウイルスを原因とする下気道疾患の予防」を効能又は効果として製造販売承認を取得した。本剤は2023 年11 月時点で、妊婦を接種対象とした適応及び60 歳以上の者を接種対象とした適応について米国、欧州及びアルゼンチンにおいて承認されている。
*:MATISSE:Maternal immunization study for safety and efficacy

作用機序

本剤に含まれるRSV の2 つの主要なサブグループであるRSV-A 及びRSV-B の安定化融合前F タンパク質を筋肉内接種することで、RSV の膜融合前構造のF タンパク質に対する免疫応答が誘導され、中和抗体が産生される。RSV の膜融合前構造のF タンパク質に対する中和抗体はRSV 感染阻害能を有する。妊婦における本剤の接種により産生された中和抗体は移行抗体として、新生児及び乳児のRSV による下気道疾患の予防に寄与する。

製品情報

商品名アブリスボ筋注用
一般名
(洋名)
組換えRSウイルスワクチン
(Recombinant Respiratory Syncytial Virus Vaccine)
承認年月日2024年1月18日
発売年月日
メーカーファイザー株式会社
名前の由来海外に準じた。
ステム該当しない

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効能又は効果

  •  妊婦への能動免疫による新生児及び乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防
  •  60歳以上の者におけるRSウイルスによる感染症の予防
接種不適当者(予防接種を受けることが適当でない者)
・明らかな発熱を呈している者
・重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
・本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
・上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

用法及び用量

  • 〈妊婦への能動免疫による新生児及び乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防〉抗原製剤を専用溶解用液全量で溶解後、妊娠24~36週の妊婦に、1回0.5mLを筋肉内に接種する。
  • 〈60歳以上の者におけるRSウイルスによる感染症の予防〉抗原製剤を専用溶解用液全量で溶解後、1回0.5mLを筋肉内に接種する。
注意
〈妊婦への能動免疫による新生児及び乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防〉
本剤は妊娠28~36週の間に接種することが望ましい。本剤の臨床試験において、妊娠28~36週に本剤を接種した場合に有効性がより高い傾向が認められている。
〈効能共通〉
・溶解後は溶液全量を採取し接種すること。
・医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。

代謝・代謝酵素について

該当資料なし

食事の影響

該当資料なし

副作用(抜粋)

重大な副反応としてショック、アナフィラキシーを注意喚起している。
その他、10%以上の頻度で報告された副作用には、疼痛(40.6%)、頭痛(31.0%)、筋肉痛(26.5%)がある。

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情報更新日:2024年05月

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