
『みなさん、こんにちは。今回は2025年3月に新たに発売された肺動脈性肺高血圧症治療薬「ウプトラビ錠小児用」について、簡単にまとめました。』
はじめに:ウプトラビ錠小児用とは
ウプトラビ錠小児用0.05mg(一般名:セレキシパグ)は、2025年3月19日に日本新薬株式会社より発売された、小児の肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する経口治療薬です。PAHは、心臓から肺へと血液を送る肺動脈の血圧が異常に高くなる難治性かつ予後不良な疾患で、特発性、遺伝性、先天性心疾患に伴うものなどがあります。
小児のPAHでは、作用機序の異なる薬剤の併用が標準治療とされていますが、これまでプロスタサイクリン系薬剤は注射剤のみで、経口製剤の選択肢が乏しい状況でした。本剤はこの課題に応えるもので、2歳以上、体重9kg以上の小児に使用可能な経口IP受容体作動薬です。
製品概要
- 商品名:ウプトラビ錠小児用0.05mg
- 一般名:セレキシパグ
- 薬効分類:その他の循環器官用薬(219)
- 製造販売元:日本新薬株式会社
- 承認日:2024年12月27日
- 発売日:2025年3月19日
- 剤形:直径約3mmのフィルムコーティング錠
- 包装:500錠/瓶包装
作用機序と特徴
本剤は、プロスタサイクリン(PGI₂)受容体(IP受容体)に選択的に作用し、血管平滑筋細胞におけるcAMP産生を促進することで、肺動脈の血管拡張および血管リモデリング抑制を引き起こします。主に活性代謝物であるMRE-269が薬効を示し、注射剤と同等の機序を経口で実現します。
さらに、小児が飲みやすい小型錠であり、1日2回食後投与という利便性も兼ね備えています。増量に応じて1回服用量が増える点に配慮し、1列に並べられる専用のおくすりケースも用意されています。
効能・効果・適応症
肺動脈性肺高血圧症(PAH)
※対象:特発性・遺伝性PAH、先天性心疾患に伴うPAH(いずれも小児)
※WHOクラスIおよびIVの有効性・安全性は確立されていません。
用法・用量と投与時の注意点
通常、2歳以上の幼児または小児に以下の体重別用量で開始し、忍容性を確認しながら7日以上の間隔で増量していきます。1日2回、必ず食後に経口投与します。
体重 | 開始用量(1回量) | 増量幅(1回量) | 最高用量(1回量) |
---|---|---|---|
9kg以上25kg未満 | 0.1mg | 0.1mg | 0.8mg |
25kg以上50kg未満 | 0.15mg | 0.15mg | 1.2mg |
50kg以上 | 0.2mg | 0.2mg | 1.6mg |
注意点:用量漸増時は副作用(頭痛、嘔吐、下痢など)に注意。3日以上中断した場合、再開時は低用量から始めること。中等度の肝障害がある場合は1日1回に減量開始。
相互作用・代謝経路
セレキシパグおよび活性代謝物MRE-269は、CYP2C8およびCYP3A4によって代謝され、UGT1A3・UGT2B7で抱合されます。
併用注意:
- 降圧薬(Ca拮抗薬、ARBなど):過度の低血圧に注意
- 抗凝固薬・抗血小板薬:出血リスク増加
- クロピドグレル・ロピナビル/リトナビルなど:血中濃度上昇の可能性 → 減量や投与間隔調整要
食事の影響について
本剤は必ず食後に服用します。空腹時と比較し、Cmax・AUCに変動があるため、吸収の安定性確保のためにも食後投与が推奨されます。
主な副作用と安全性情報
重大な副作用:
- 低血圧(3.6%)
- 出血(鼻出血1.6%、網膜出血0.3%など)
- 甲状腺機能異常(亢進・低下)
その他の副作用:
- 頭痛(58.3%)、下痢(37.9%)、嘔吐(15.0%)、顎痛(23.6%)など
- 小児試験では副作用発現率100%(6/6例)
処方時のチェックリスト(医師向け)
- 小児PAH治療経験のある医師が処方
- 対象疾患が特発性・遺伝性・先天性心疾患に限られているか確認
- 用量は体重別・服薬スケジュールに準拠
- 副作用(低血圧、出血)に留意しながら漸増
- 肝機能・甲状腺機能を定期モニタリング
服薬指導のポイント(薬剤師向け)
- 必ず食後、1日2回服用するよう説明
- 用量変更は医師指示のもと実施
- 専用の服薬ケース使用時の服薬管理支援
- 3日以上中断時の対応を指導
- 保存は高温・多湿を避ける
ケアポイント(看護師向け)
- 頭痛・嘔吐・下痢・顎痛など初期症状を観察
- 服薬スケジュールに応じた声かけ・励まし
- 家族への服薬支援やタイミング確認
- 浮腫・顔面蒼白・倦怠感などの訴えに注意
- 患者の心理的ケアも大切に
まとめ

『ウプトラビ錠小児用は、ちっちゃな患者さんにとって待ち望まれたお薬やね。おくすりケースもうまく使いながら、チームみんなで支えていこな〜』