
『みなさん、こんにちは。今回は2025年3月に新たに発売された先天性血友病治療薬「ヒムペブジ皮下注150mgペン」について、簡単にまとめました。』
はじめに:ヒムペブジとは
ヒムペブジ(一般名:マルスタシマブ(遺伝子組換え))は、ファイザー株式会社より2025年3月24日に新発売された、インヒビターを保有しない先天性血友病AまたはB患者の定期投与に用いられる抗TFPIモノクローナル抗体製剤です。先天性血友病は、血液凝固第VIII因子(A型)または第IX因子(B型)の欠乏による出血性疾患であり、従来は主に凝固因子製剤の補充療法が中心でした。投与頻度や投与法による患者負担軽減、QOL向上のため新しい治療選択肢が求められていました。
製品概要
- 商品名:ヒムペブジ皮下注150mgペン
- 一般名:マルスタシマブ(遺伝子組換え)
- 製造販売元:ファイザー株式会社
- 薬効分類:血液製剤類(抗TFPIモノクローナル抗体)
- 効能・効果:インヒビターを保有しない先天性血友病患者における出血傾向の抑制
- 承認日:2024年12月27日
- 発売日:2025年3月24日
- 包装:1mL×1本(プレフィルドペン型注入器)
作用機序と特徴
ヒムペブジは、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2を標的とするヒトモノクローナルIgG1抗体です。TFPIの抗凝固作用を阻害し、外因系凝固経路を増強することで、血液凝固バランスを回復し止血効果を発揮します。血液凝固因子の種類によらず効果が期待でき、週1回の皮下投与で体重換算不要の固定用量で投与可能です。
効能・効果・適応症
血液凝固第VIII因子または第IX因子に対するインヒビターを保有しない先天性血友病患者における出血傾向の抑制に使用されます。
用法・用量と投与時の注意点
通常、12歳以上かつ体重35kg以上の患者には、初回に300mgを皮下投与し、以降は1週間隔で1回150mgを皮下投与します。体重50kg以上で効果不十分な場合は1回300mgに増量可能です。週1回、プレフィルドペンによる自己投与が可能で、投与忘れがないよう指導が重要です。出血抑制目的の定期投与のみ行い、出血時補充目的では使用しません。投与忘れの場合は速やかに再開し、最終投与日から14日目以降なら再度300mgを投与します。
相互作用・代謝経路
主に分解・排泄され、詳細なCYP等の代謝酵素への影響は記載されていません。他剤との混合や同部位投与は避けること。生ワクチン等との併用や重篤な血栓塞栓性事象のリスク因子への注意が必要です。
食事の影響について
皮下注射製剤のため、食事の影響はありません。
主な副作用と安全性情報
- 血栓塞栓性事象(頻度不明)
- ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
- 注射部位反応(紅斑・そう痒感・腫脹等)11.2%
- そう痒症、発疹、頭痛、痔核、関節痛、挫傷、疲労、末梢腫脹
- 過敏症反応、プロトロンビンフラグメント1・2増加、フィブリンDダイマー増加
重篤な副作用出現時は速やかに投与中止・適切な対応が必要です。
処方時のチェックリスト(医師向け)
- 血栓塞栓性事象のリスク・既往の有無を事前確認
- 患者・家族へ副作用・投与リスクの十分な説明・同意取得
- 投与開始は血友病治療経験医が対応し、緊急時体制の整った医療機関で行う
- 投与前製剤(凝固因子製剤等)の半減期・休薬期間を考慮した切替
- 自己注射法の教育・訓練・継続可否の確認
- 大手術予定時は一時的に投与中止し、標準治療へ切替
- 12歳未満、小児、妊婦・授乳婦への投与は慎重に判断
服薬指導のポイント(薬剤師向け)
- 投与前に副作用(血栓塞栓症、過敏症、注射部位反応等)の説明
- 投与忘れや自己注射継続困難時の対応法を指導
- 注射前の薬剤保存方法・温度管理・取扱注意点を徹底指導
- 出血時には必要に応じて凝固因子製剤併用が可能なこと、止血目的の追加投与不可であることを説明
- 妊娠・授乳・生殖能を有する女性への避妊指導・授乳可否の説明
ケアポイント(看護師向け)
- 投与部位・全身状態(出血・血栓症状、過敏症状)の観察
- 自己注射時のサポートと投与ミス・異常時のフォロー
- 副作用出現時の迅速な報告・受診勧奨
- 患者・家族への投与日管理や生活指導、心理的サポート
まとめ

『ヒムペブジは、血友病患者さんのQOL向上と出血予防に貢献する新しい抗体薬です。自己注射による利便性と、副作用管理・指導の徹底で、より安心して治療が継続できるようサポートしていきたいですね。』