オビザー(スソクトコグアルファ)の特徴・作用機序

開発の経緯について
後天性血友病 A は、正常な血液凝固第 VIII 因子遺伝子を有する患者に凝血促進作用の機能的欠損を引き起こす、ヒト血液凝固第 VIII 因子(hFVIII)に対するインヒビター(自己抗体)の発生に起因する難治性の出血性疾患である。多くの場合、自然発生的に又は軽微な外傷を契機に出血し、重篤な出血症状を呈する。
オビザー静注用 500(以下、本剤)は、後天性血友病 A 患者の出血事象の治療を目的として開発された B ドメイン欠損遺伝子組換え型ブタ血液凝固第 VIII 因子(rpFVIII)製剤であり、1448 個のアミノ酸をコードする DNA コンストラクトを有する遺伝子組換えベビーハムスター腎臓(BHK)細胞株により発現する。
本剤は hFVIII と類似した構造を有しており、止血に必要な内因性血液凝固第 VIII 因子が抑制されている場合、一時的にこれを代替することができる。一方で、hFVIII とは異なる構造も有するため、循環血中のインヒビターによる不活化は受けにくくなる。そのため、本剤は後天性血友病A による出血時に、血液凝固第 VIII 因子を補充することで血液凝固を促進し、出血抑制が期待できる。
さらに、臨床症状のみで出血事象に対する治療効果(出血抑制)を評価するしかなかった後天性血友病 A の治療において、本剤では臨床症状とともに一般的な血液凝固第 VIII 因子活性の測定値から血中の血液凝固第 VIII 因子活性を確認することで、治療効果を評価することが可能である。このような血液凝固第 VIII 因子活性のモニタリングは、治療効果の確認だけでなく、血液凝固第 VIII 因子活性の過度な上昇による血栓症の発現を回避するうえでも重要と考えられる。
海外では、外国人後天性血友病 A 患者を対象とした海外第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(OBI-1-301/301a 試験)の結果に基づき、「後天性血友病 A の成人患者における出血エピソードのオンデマンド治療薬及びコントロール薬」として、2014 年に米国にて製造販売承認を取得した。2023 年 11 月現在、「内因性血液凝固第 VIII 因子に対する自己抗体が出現した後天性血友病 A の成人患者における出血エピソードの治療薬」として、米国及び欧州を含む 30 以上の国又は地域で承認されている。
日本においては、国内外の臨床試験成績を踏まえて 2023 年 6 月に本剤の製造販売承認申請を行い、2024 年 3 月に「後天性血友病 A 患者における出血抑制」を効能又は効果として製造販売承認を取得した。

作用機序

 本剤は B ドメイン欠損遺伝子組換え型ブタ血液凝固第 VIII 因子(rpFVIII)であり、血液凝固第VIII 因子(FVIII)の欠乏を一時的に補正することにより、出血を抑制する。
 後天性血友病 A 患者は正常なヒト血液凝固第 VIII 因子(hFVIII)遺伝子を有しているが、hFVIIIに対するインヒビター(自己抗体)が発生し、これらが hFVIII を中和するため FVIII の凝血促進活性が阻害されている。
 生体内の血液凝固カスケードにおいては、FVIII が活性化血液凝固第 VIII 因子(FVIIIa)に変換されると、FVIIIa は活性化血液凝固第 IX 因子(FIXa)の補因子として働き、血液凝固第 X 因子(FX)から活性化血液凝固第 X 因子(FXa)への変換が促進される。FXa はカルシウムイオン、活性化血液凝固第 V 因子(FVa)及びリン脂質の存在下で、プロトロンビン(血液凝固第 II因子;FII)をトロンビン(活性化血液凝固第 II 因子;FIIa)に変換し、トロンビンの生成を増幅及び促進する。その後、トロンビンはフィブリノゲンを切断してフィブリン塊を形成する。
 本剤の全ドメイン配列は A1-A2-A3-C1-C2 であり、アミノ酸配列は B ドメイン欠損 hFVIII と86%の相同性を有している 。そのため、本剤はヒト血漿中のトロンビンにより活性化された FVIIIaと同様に下流の血液凝固カスケードの活性化を引き起こし、フィブリン凝固を誘導する。このように、止血を促進するという点で本剤は hFVIII と類似しているが、hFVIII と構造が異なるため、本剤は循環血中の hFVIII に対するインヒビターによる不活化を受けにくいという特徴を有している。

製品情報

商品名オビザー静注用500
一般名
(洋名)
スソクトコグ アルファ
(Susoctocog Alfa)
承認年月日2024 年 3 月 26 日
発売年月日
メーカー武田薬品工業株式会社
名前の由来海外に準じた
ステム

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効能又は効果

後天性血友病A患者における出血抑制

禁忌
・本剤の成分又はハムスター細胞由来タンパク質に対してアナフィラキシーの既往歴のある患者
・インヒビター保有先天性血友病A患者[既往免疫反応を起こすおそれがある。]

用法及び用量

本剤を添付の日本薬局方注射用水1mLで溶解し、緩徐に静脈内に注射する。
18歳以上の患者には、初回投与量は体重1kg当たり200単位とする。その後は、出血の程度に応じて、血液凝固第Ⅷ因子活性や患者の状態を確認しながら投与量と投与頻度を調節する。

注意
・初回投与後、血液凝固第Ⅷ因子活性や患者の状態を適宜モニタリングしながら、臨床判断に基づいて投与量、投与頻度及び投与期間を決定すること。
・本剤の投与前後に患者の血中に本剤に対するインヒビターが存在又は発生するおそれがあり、本剤の効果が得られない可能性がある。また、ヒト血液凝固第Ⅷ因子又は本剤に対するインヒビターの上昇に伴う既往免疫反応が報告されており、本剤の効果が減弱するおそれがある。本剤を投与しても血液凝固第Ⅷ因子活性の上昇がみられない場合、又は十分な止血効果が得られない場合には本剤に対するインヒビターの検査を行うなど注意深く対応し、他の治療法への切替えを考慮するなど、適切な処置を行うこと。

代謝・代謝酵素について

他の外因性タンパク質を投与した場合と同様に、本剤は最終的に各構成アミノ酸に代謝され、通常のタンパク質プールに取り込まれると考えられる。

食事の影響

該当資料なし

副作用(抜粋)

 重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー(頻度不明)を起こすおそれがあるため、観察を十分に行い、血管浮腫、胸部圧迫感、呼吸困難、低血圧、喘鳴、じん麻疹、そう痒症等の症状が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、深部静脈血栓症等の血栓塞栓症(頻度不明)を起こすことがある。
 主な副作用(発現頻度 5~10%未満)は、抗ブタ血液凝固第 VIII 因子抗体陽性であった。

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情報更新日:2024年04月

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