【2025年5月21日発売】ビヨントラ錠400mg(アコラミジス塩酸塩)の特徴、作用機序

『みなさん、こんにちは。今回は2025年5月に新たに発売されたトランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬「ビヨントラ錠」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ビヨントラとは

ビヨントラ(一般名:アコラミジス塩酸塩)は、アレクシオンファーマ合同会社より2025年5月21日に新発売された、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM、野生型および変異型)に対する経口治療薬です。

ATTR-CMは、トランスサイレチン(TTR)四量体の構造不安定化・解離により変性TTRがアミロイド線維となって主に心筋に沈着することで発症する、進行性・致死的な希少疾患です。従来、全身性アミロイドーシスの中でも心臓障害が主座となる型であり、国内患者数は少ないものの指定難病として登録されています。

主な臨床症状は心不全(呼吸困難、息切れ、体液貯留、起立性低血圧、失神など)や伝導障害、不整脈(房室ブロック・心房細動等)であり、診断時には進行例が多く、無治療の場合は診断から3~5年での死亡例が多数を占めます。確定診断には心エコーやMRI所見に加え、核医学検査や心筋生検、TTR遺伝子解析などが必要となります。

ATTR-CMは、野生型(加齢性)と変異型(遺伝性)の2つに大別されます。従来の治療選択肢は極めて限られており、薬物療法としてはタファミジスが唯一の承認薬でしたが、それでも治療抵抗例や副作用により継続困難な例も報告されていました。また、心臓移植や肝移植は適応が限定されることから、より幅広い患者に使える新規薬剤の登場が期待されていました。

このビヨントラは、TTR四量体を安定化させて病態進行の中心であるアミロイド線維形成そのものを抑制するという新しい作用機序を持っています。これにより心機能の維持やQOL向上、生存期間延長への寄与が期待されており、ATTR-CM治療における新たな経口治療の選択肢となります。

製品概要

  • 商品名:ビヨントラ錠400mg
  • 一般名:アコラミジス塩酸塩
  • 製造販売元:アレクシオンファーマ合同会社
  • 薬効分類:その他の循環器官用薬
  • 効能・効果:トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型および変異型)
  • 承認日:2025年3月27日 発売日:2025年5月21日
  • 包装:56錠(4錠PTP×14)

作用機序と特徴

アコラミジスはTTR四量体のサイロキシン結合部位に選択的に結合し、四量体を安定化、単量体への解離を抑制して新たなアミロイド線維形成を防ぎます。これにより心筋へのアミロイド沈着進行を抑え、心機能維持に寄与します。

効能・効果・適応症

トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型・変異型)
※心アミロイドーシスの確定診断例が適応。NYHA分類I~IIIの心不全患者に使用。IV度や肝移植後は安全性・有効性未確立。

用法・用量と投与時の注意点

通常、成人には1回800mg(400mg錠2錠)を1日2回、朝夕に経口投与します。PTPシートから取り出して服用。腎機能障害例(特にeGFR低値)や高齢者は経過観察を十分に。初期にeGFR低下がみられることがあるため定期的な腎機能検査を行います。
食事によるAUC低下はないものの、Cmaxは約22%低下しますが、臨床的な影響はありません。

相互作用・代謝経路

主にUGT1A1, UGT1A4, UGT1A9, UGT2B7によるグルクロン酸抱合で代謝され、主に尿中と糞中に排泄されます。CYP2C8、CYP2C9、OATP1B1阻害作用あり。アデホビルやオセルタミビルと併用時に血中濃度の軽度変動あり。併用薬の確認と注意が必要です。

食事の影響について

高脂肪食でCmaxは約22%低下するもののAUCへの影響はありません。食事の有無にかかわらず服用可能です。

主な副作用と安全性情報

  • 主な副作用:悪心、下痢、腹部不快感、上腹部痛、血中クレアチニン増加、腎機能障害、発疹、便秘
  • 重大な副作用:腎機能障害(特にeGFR低下)、重度肝障害

副作用出現時は投与中止や適切な対応が必要です。PTP誤飲事故防止にも注意。
NYHA心機能分類ⅢではⅠ・Ⅱより有効性が低い傾向があるため、患者状態に応じて投与可否判断を。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • ATTR-CM確定診断(遺伝子・組織・核医学的検査等)
  • NYHA分類I~IIIの患者であること
  • 腎・肝機能・高齢者の経過観察
  • eGFR・AST/ALT/総ビリルビン等の定期検査
  • 併用薬(CYP2C8, 2C9, OATP1B1基質等)の管理
  • PTP誤飲防止指導
  • 妊婦・授乳婦・小児には原則慎重投与

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 1回2錠、1日2回の服薬遵守とPTPシートから取り出して服用指導
  • 腎・肝機能障害、発疹・消化器症状等異常時の早期受診指導
  • 他剤併用歴・妊娠授乳・小児投与歴の確認
  • 定期検査・受診継続の重要性説明

ケアポイント(看護師向け)

  • 副作用(腎・肝機能障害、消化器症状、発疹等)の観察・早期対応
  • 定期的な腎・肝機能・心機能モニタリング
  • 服薬状況・副作用の聴取・受診勧奨
  • 心理的サポート・QOL維持への援助

まとめ

『ビヨントラはATTR-CMに新しい経口治療の選択肢をもたらす薬剤です。副作用や腎機能管理に注意しつつ、患者さんのQOL向上をサポートしていきたいですね。』

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