
『みなさん、こんにちは。今回は2025年3月に新たに発売された高カリウム血症治療薬「ビルタサ」について、簡単にまとめました。』
はじめに:ビルタサとは
ビルタサ懸濁用散分包8.4g(一般名:パチロマーソルビテクスカルシウム)は、2025年3月17日にゼリア新薬工業株式会社から発売された高カリウム血症改善薬です。
高カリウム血症とは、血清カリウム濃度が5.0mmol/Lを超える状態を指し、慢性腎臓病(CKD)や糖尿病、心不全患者に多く見られます。特にレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬などの薬剤を使用している患者においては発症リスクが高く、進行すると致死的な不整脈を引き起こす危険もあります。
製品概要
- 商品名:ビルタサ懸濁用散分包8.4g
- 一般名:パチロマーソルビテクスカルシウム
- 薬効分類:その他の循環器官用薬(219)
- 製造販売元:ゼリア新薬工業株式会社
- 承認日:2024年9月24日
- 薬価基準収載日:2024年11月20日
- 発売日:2025年3月17日
作用機序と特徴
ビルタサは、カルシウム塩とD-ソルビトールを含む非吸収性の陽イオン吸着ポリマーであり、消化管内腔に存在するカリウムと結合し、糞中カリウム排泄量を増加させることによって、血清カリウム濃度を低下させます。
ナトリウムを含まない設計となっているため、従来のカリウム吸着薬に見られるようなナトリウム負荷による浮腫や心不全増悪のリスクが低い点が特徴です。また、腸管吸収されず代謝も受けないため、全身への影響が極めて少ないのも利点です。
効能・効果・適応症
高カリウム血症の改善。
※ただし、緊急治療を要する高カリウム血症には使用不可(効果発現が緩徐であるため)
用法・用量と投与時の注意点
通常、成人にはパチロマーとして8.4gを開始用量とし、水に懸濁して1日1回経口投与します。必要に応じて増減し、最大25.2g/日まで投与可能です。
投与開始時および用量調整時には、1週間後を目安に血清カリウム値の測定が必要です。その後も定期的にモニタリングを行い、カリウム値が3.5mmol/L未満に低下した場合は減量または中止を検討します。
相互作用・代謝経路
本剤は消化管内で他薬とキレートを形成し、吸収を阻害する可能性があります。
特に注意が必要な薬剤:
- ニューキノロン系抗菌薬(例:シプロフロキサシン)
- 甲状腺ホルモン製剤(例:レボチロキシン)
- メトホルミン
上記の薬剤は3時間以上間隔を空けて投与する必要があります。
本剤は消化管で代謝を受けず、吸収もされず、糞中に排泄されます。
食事の影響について
食事による影響は大きくありませんが、服薬後は十分に懸濁し、沈殿を避けて速やかに服用することが重要です。服用時に残渣があれば水を追加して飲み切るよう指導が必要です。
主な副作用と安全性情報
- 便秘:最も多く報告された副作用(14.5%)
- 下痢、腹部膨満、鼓腸、悪心:各2~3%
- 低カリウム血症:重大な副作用として注意(発現頻度 4.6%)
- 腸管穿孔・腸閉塞:頻度不明だが重篤な消化器症状に注意
処方時のチェックリスト(医師向け)
- 緊急治療が必要な高カリウム血症では使用しない
- 定期的な血清カリウム値のモニタリングを実施
- 便秘、腹痛、嘔吐などの消化器症状があれば中止を検討
- 併用薬との時間的分離(3時間以上)を検討
- 腸閉塞の既往がある患者には禁忌
服薬指導のポイント(薬剤師向け)
- 水でよく懸濁し、沈殿しないうちにすぐに服用するよう説明
- 服用を忘れても2回分を一度に服用しない
- 残薬が容器に残らないよう再度懸濁して飲み切る
- 便秘・腹痛・嘔吐などの症状に注意し、早めの受診を勧める
- 服薬後に保管せず、残った懸濁液は廃棄
ケアポイント(看護師向け)
- 服薬状況と便通のモニタリングを行う
- 腹部症状(痛み、張り、嘔気など)に注意する
- 水分摂取量と浮腫の有無を日々確認
- 薬剤併用時のタイミングを医師・薬剤師と連携
- 患者が自宅で保存する場合の保存期限(室温3ヶ月)に注意喚起
まとめ

『ビルタサは、高カリウム血症の慢性管理における新たな選択肢として、腎疾患や心不全を合併する患者さんにも使いやすいお薬やね。便秘や併用薬に気をつけながら、しっかりモニタリングして使っていってな〜。』