【2025年9月12日発売】ベルスピティ錠2mg(エトラシモドL-アルギニン)の特徴、作用機序

『みなさん、こんにちは。今回は2025年9月に新たに発売された潰瘍性大腸炎治療薬「ベルスピティ錠2mg」について、簡単にまとめました。』

はじめに: ベルスピティとは

ベルスピティ錠2mg(一般名:エトラシモドL-アルギニン)は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎(UC)に対する経口治療薬です。
UCは指定難病に分類され、2023年度には約14万6,700人が特定医療費受給者証を所持しています。主な症状は血性下痢(粘血便)、下痢、腹部痛、直腸出血などで、寛解と再燃を繰り返すのが特徴です。
これまでの治療では5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤やステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤、JAK阻害剤などが用いられてきましたが、効果不十分な症例も多く、新規作用機序を有する治療薬へのニーズが高まっていました。
ベルスピティは1日1回経口投与可能なS1P受容体調節薬で、利便性と有効性を兼ね備えた新しい治療選択肢として注目されています。

製品概要

  • 商品名: ベルスピティ錠2mg
  • 一般名: エトラシモドL-アルギニン
  • 薬効分類: スフィンゴシン1-リン酸受容体(S1P1,4,5)調節薬
  • 製造販売元: ファイザー(株)
  • 承認日: 2025年6月24日
  • 薬価収載日: 2025年8月14日
  • 発売日: 2025年9月12日

作用機序と特徴

ベルスピティはS1P受容体(特にS1P1,4,5)に高親和性で結合し、リンパ器官からのリンパ球移出を抑制することで血中リンパ球数を減少させます。その結果、炎症部位に集積するリンパ球が減少し、炎症性サイトカインの産生が抑制されます。
この作用により、UC患者の腸管粘膜の炎症をコントロールし、症状の改善と寛解維持に寄与します。
1日1回経口投与が可能で利便性が高い一方、投与初期の徐脈や房室伝導遅延、眼疾患(黄斑浮腫)などのリスクがあるため、循環器・眼科との連携管理が必要です。

効能・効果・適応症

中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)

用法・用量と投与時の注意点

  • 通常、成人にはエトラシモドとして2mgを1日1回経口投与
  • 治療開始後12週で効果が得られない場合は中止を検討
  • 初回投与時は心拍数・心電図をモニタリング(少なくとも4時間)
  • 眼底検査を含む定期的な眼科検査を実施
  • 感染症や肝機能障害の有無を事前に確認し、定期的な検査を行う

相互作用・代謝経路

代謝は主にCYP2C8(38%)、CYP2C9(37%)、CYP3A4(22%)で行われます。

  • 併用禁忌:生ワクチン(投与中〜終了後2週間は接種不可)
  • 併用注意:CYP阻害薬(フルコナゾール、イトラコナゾール等)で曝露量↑、CYP誘導薬(リファンピシン等)で曝露量↓
  • 心拍数低下薬(β遮断薬、Ca拮抗薬)やQT延長薬との併用は注意

食事の影響について

高脂肪食によりTmaxは約2時間遅延するものの、Cmax・AUCに影響はなく、臨床上問題ありません。

主な副作用と安全性情報

  • 重大な副作用: 徐脈・房室ブロック、感染症(0.9%)、肝機能障害(0.7%)、黄斑浮腫(0.1%)、進行性多巣性白質脳症(頻度不明)など
  • その他: 浮動性めまい、頭痛、高血圧、悪心、肝酵素上昇など

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 既存治療で効果不十分なUC患者かを確認
  • 初回投与時は循環器モニタリング(心拍数・心電図)を必須
  • 眼底検査を含む眼科管理体制を整備
  • 定期的な肝機能・血球数検査を実施
  • 生ワクチン接種歴を確認し、併用を避ける
  • 妊婦・妊娠可能女性への投与は禁忌

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 1日1回、必ず決められたタイミングで服用するよう説明
  • 初回投与後は失神や動悸があればすぐ医師に連絡するよう指導
  • 視力異常・かすみ目が出たら眼科受診を促す
  • 風邪症状や発熱が続いた場合は免疫抑制による感染症を疑うよう指導
  • 患者に「完治薬ではなく炎症コントロール薬」であることを説明

ケアポイント(看護師向け)

  • 投与初期はバイタル(脈拍・血圧・心電図)を重点的に観察
  • めまい・失神・息切れなどの有無をモニタリング
  • 眼症状(視力低下、かすみ目)の聴取と記録
  • 感染兆候(発熱、咳、倦怠感)の早期発見に努める

まとめ

『ベルスピティは、潰瘍性大腸炎に対する新しい飲み薬です。効果と安全性をしっかり見極めながら、患者さんのQOL改善に役立つといいですね。』

執筆者:薬剤師[博士(薬学)]
参考・引用資料:添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイド、メーカープレスリリース資料など
※掲載内容には細心の注意を払っておりますが、古い情報や誤りを含む場合があります。最新の添付文書などをご確認ください。
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