開発の経緯について
サフネロー点滴静注300 mg [一般名:アニフロルマブ (遺伝子組換え) ] はI型インターフェロンα受容体のサブユニット1 (IFNAR1) に結合するヒト免疫グロブリンG1κ (IgG1κ) モノクローナル抗体である。
全身性エリテマトーデス (以下、SLE) は多臓器障害を引き起こす慢性の自己免疫性リウマチ性疾患であり、SLEで認められる皮膚症状、炎症性関節炎、腎病変、中枢神経症状などの全身に及ぶ症状は、患者の身体機能を低下させるだけでなく、雇用の喪失、健康関連の生活の質 (QOL) の著しい低下、頻回な入院、蓄積性で不可逆的な臓器障害につながる可能性が指摘されている。また、SLEの治療の中心は強力な抗炎症作用を有するグルココルチコイド (GC) であるが、疾患非特異的であり広範な経路を阻害するといわれている。実際の臨床現場では、SLEの疾患特異的な作用機序を有し、疾患活動性の低下及
び併用薬の減量を達成でき、疾患活動性の再燃 (フレア) 、合併症及び長期的な臓器障害リスクも軽減することができる新規治療薬が依然として求められており、SLEはアンメットメディカルニーズが高い疾患であるといえる。
様々なエビデンスにより、SLEの発症においてI型インターフェロン (IFN) が中心的な役割を果たすことが明らかになってきた。I型IFNは、樹状細胞成熟、自己抗体産生、免疫複合体の形成、臓器炎症を促進するとともに、自己免疫を促すさらなるI型IFNの産生を促進する。SLE患者の多くはI型IFNシグナル伝達が抑制されずに持続し、IFN誘導性の遺伝子が過剰発現しており、SLE患者の病態へのI型IFNの関与も示唆されている。ヒトI型IFN受容体を通じたI型IFNのシグナル伝達を遮断するサフネローは、2004年にメダレックス社より導入後、新たな作用機序を有するSLE治療薬として期待され、MedImmune社 (現:アストラゼネカ社のバイオ医薬品研究開発部門) で開発が進められてきた。
2012年より第II相国際共同試験 (MUSE試験) 及び国内第II相試験 (02試験) 、2015年からは第III相国際共同試験 (TULIP-1試験、TULIP-2試験) がアストラゼネカ社により実施され、標準治療を受けている中等症から重症のSLE患者に対するサフネローの有効性及び安全性が確認されたことから、「既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス」を効能又は効果として2021年9月に製造販売承認を取得した。
作用機序
本剤は、I型IFNAR1に結合するヒトIgG1κモノクローナル抗体である。
本剤は、IFNAR1の細胞内移⾏を誘導し、細胞表⾯のIFNAR1の発現レベルを低下させる。 IFNARを介したI型IFNシグナル伝達を阻害し、⾃然免疫及び獲得免疫においてIFN応答性の遺伝子(IFN誘導遺伝子) の発現が抑制され、下流の炎症及び免疫プロセスが阻害される。
I型IFNはSLEの発症機序に重要な役割を果たす。I型IFN誘導性遺伝子発現の上昇は、成人SLE患者の大部分 (約60~80%) に認められ、SLEの疾患活動性及び重症度と相関している。
製品情報
商品名 | サフネロー点滴静注300mg |
一般名 (洋名) | アニフロルマブ (Anifrolumab) |
発売年月日 | 2021年11月25日 |
メーカー | アストラゼネカ株式会社 |
名前の由来 | Sapience for the new line of therapy:新しい治療法 (New Line Of therapy) のための英知 (SAPience) から“Saphnelo”とした。 |
ステム | モノクローナル抗体:-mab 免疫調節作用を有するヒト型モノクローナル抗体:-lumab |
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効能又は効果
既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス
警告
・本剤は、肺炎、敗血症、結核等の感染症を含む緊急時に十分に措置できる医療施設において、本剤についての十分な知識と全身性エリテマトーデス治療の十分な知識・経験をもつ医師のもとで、本剤による治療の有益性が危険性を上回ると判断される症例のみに使用すること。本剤は呼吸器感染や帯状疱疹(播種性帯状疱疹を含む)等の感染症のリスクを増大させる可能性があり、また結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性がある(潜在性結核を含む)。また、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現も報告されている。治療開始に先立ち、本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、本剤の有効性及び危険性を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療を開始すること。
・致死的な肺炎を含む感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発現に注意し、本剤投与後に感染症の徴候又は症状があらわれた場合には、速やかに担当医に連絡するよう患者を指導すること。
・全身性エリテマトーデス患者では、本剤の治療を行う前に、ステロイド、免疫抑制薬等の全身性エリテマトーデス治療薬の使用を十分勘案すること。
禁忌
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
・重篤な感染症の患者[症状を悪化させるおそれがある。]
・活動性結核の患者[症状を悪化させるおそれがある。]
用法及び用量
通常、成人にはアニフロルマブ(遺伝子組換え)として、300mgを4週間ごとに30分以上かけて点滴静注する。
注意
過去の治療において、ステロイド、免疫抑制薬等による全身性エリテマトーデスに対する適切な治療を行っても、疾患活動性を有する場合に、本剤を上乗せして投与すること。
抗核抗体、抗dsDNA抗体等の自己抗体が陽性であることが確認された全身性エリテマトーデス患者に使用すること。
代謝・代謝酵素について
本剤は標的部位であるI型インターフェロンα受容体(IFNAR)及び細網内皮系による消失を受け、広く生体に存在するタンパク質分解酵素により小ペプチドあるいはアミノ酸に分解されると推定される。
食事の影響
該当データなし
副作用(抜粋)
重大な副作用としてアナフィラキシー (頻度不明) 及び重篤な感染症 (1.7%) 、主な副作用として上気道感染 (上気道感染、上咽頭炎、咽頭炎:発現頻度10%以上) 、注入に伴う反応 (10%以上) 、気管支炎 (1~10%未満) 、帯状疱疹 (1~10%未満) 、過敏症 (1~10%未満) 及び気道感染 (1%未満) 等が報告されている。
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