【2024年8月20日】ジンタス錠50mg(ヒスチジン亜鉛水和物)の特徴・作用機序

開発の経緯について
ジンタス錠(以下、「本剤」)は、ヒスチジン亜鉛水和物の錠剤である。ヒスチジン亜鉛水和物は、ヒスチジンとの亜鉛錯体であり、活性本体は既承認の酢酸亜鉛水和物製剤であるノベルジン錠/ノベルジン顆粒(以下、「ノベルジン製剤」)と同じ亜鉛である。
亜鉛は生体内の必須微量元素として、生体維持に欠かせない多くの酵素に含まれ、様々な病態や状態に応じて種々の役割を果たす。低亜鉛血症は血清亜鉛濃度が低下した状態であり、亜鉛が欠乏すると味覚異常、皮膚炎、脱毛、貧血、口内炎、性腺機能不全、易感染性、褥瘡、食欲低下、発育障害(小児)など多彩な症状を発症する。本剤の製造販売承認申請時の2023年3月において、国内で低亜鉛血症の効能・効果を持つ薬剤は、ノベルジン製剤のみであった。
ヒスチジンを含むアミノ酸などの低分子は亜鉛イオンと錯体化することで亜鉛の吸収を向上させることが報告されており、ヒスチジン亜鉛水和物は比較的安定な錯体構造であるため、消化管で解離する亜鉛イオンは無機亜鉛塩よりも少なく、亜鉛イオンによる直接的な副作用(悪心、嘔吐等)が低減すると考えられている。ドイツでは「食生活の変更では改善できない場合の臨床的に証明された亜鉛欠乏症」の効能又は効果でヒスチジン亜鉛水和物を他社※が承認・販売している。
一方、国内において低亜鉛血症の効能又は効果を持つ薬剤であるノベルジン製剤は、主な副作用である悪心・嘔吐などの消化器系副作用に配慮して、開始用法は1日2回投与とし、1回あたりの投与量を少なくすることで開発が行われた。本剤は、ノベルジン製剤の1日亜鉛投与量を1日1回で投与でき、服薬アドヒアランスの改善が期待できる薬剤として開発した。
ノーベルファーマ株式会社は、低亜鉛血症患者を対象にノベルジン錠を対照とした非盲検無作為化比較試験を実施し、本剤の有効性の非劣性の検証及び安全性の検討、長期投与時(1年間)の安全性及び有効性を確認した。
以上のことから、本剤は低亜鉛血症治療において新たな選択肢になりうると考え、ノーベルファーマ株式会社が2023年3月に製造販売承認申請を行い、2024年3月に「低亜鉛血症」の効能又は効果で承認された。
※販売名:Zinkamin-Falk、販売企業名:Dr.Falk Pharma GmbH

作用機序

本剤は、ヒスチジン亜鉛水和物の錠剤である。ヒスチジン亜鉛水和物は、ヒスチジンとの亜鉛錯体であり、亜鉛の補充効果を示す。

製品情報

商品名ジンタス錠50mg
一般名
(洋名)
ヒスチジン亜鉛水和物
(Zinc Histidine Hydrate)
承認年月日2024年3月26日
発売年月日2024年8月20日
メーカーノーベルファーマ(株)
名前の由来亜鉛(Zinc)と補充(足す)を組み合わせた。
ステム不明

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効能又は効果

低亜鉛血症

禁忌
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

用法及び用量

通常、成人及び体重30kg以上の小児では、亜鉛として、1回50~100mgを開始用量とし1日1回食後に経口投与する。
なお、血清亜鉛濃度や患者の状態により適宜増減するが、1日1回150mgを超えないこと。

注意
・本剤投与開始時及び用量変更時には、血清亜鉛濃度を確認すること。なお、血清亜鉛濃度を測定するための採血は本剤を服薬する前に行うことが望ましい。
・投与開始時の血清亜鉛濃度に応じて、以下の用量を目安に投与を開始すること。
50μg/dL以上→1日1回50mg、50μg/dL未満→1日1回100mg

代謝・代謝酵素について

資料無し。

吸収においては、人体内において、ZnT(SLC30Aファミリー)とZIP(SLC39Aファミリー)の2種類の亜鉛トランスポーターが細胞質内の亜鉛濃度を制御しているとされている。ZIPは細胞外及び細胞内小器官から細胞質への亜鉛輸送を司っており、ZnTは細胞質から細胞外及び細胞内小器官への亜鉛輸送を司っている。ZnTには9種類、ZIPには14種類が同定されている。これらの亜鉛トランスポーターが細胞質内メタロチオネインと協調して亜鉛の恒常性を維持している。

食事の影響

健康成人男性12例にヒスチジン亜鉛水和物(亜鉛として25mg、承認用量とは異なる)をクロスオーバー法により絶食時又は食後(高脂肪食)に単回経口投与したときの外因性血清亜鉛濃度(服用後の濃度から服用前の濃度を差し引いた濃度)のAUC0-24は、それぞれ569.88及び11.13μg・hr/dLであり、食事による吸収阻害の影響を強く受けた。

副作用(抜粋)

重大な副作用として銅欠乏症を起こすおそれがある。

主な副作用として貧血、浮動性めまい、下痢、悪心、腹部不快感、血中銅減少、リパーゼ増加、アミラーゼ増加、肝機能検査値異常等が報告されている。

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情報更新日:2024年9月

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