開発の経緯について
アトピー性皮膚炎は強い痒みを伴う,慢性,再発性,炎症性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎の治療目標は,症状が認められない,あるいは症状があっても軽微であり,かつ,日常生活に支障がない長期に亘る寛解状態への導入及びその維持である。寛解導入療法として,外用副腎皮質ステロイド,タクロリムス軟膏,デルゴシチニブ軟膏などが用いられるが,治療の主体である外用副腎皮質ステロイドは特有の副作用が認められることがある。その他の外用剤も対象患者,塗布部位もしくは塗布量の制限があり,局所の副作用の発現などに注意が必要とされる。高い有効性があり,治療期間に制限がなく広範な皮疹への適用が可能で,許容可能な安全性プロファイルを持つ外用剤の開発が望まれている。
尋常性乾癬は,遺伝的,環境的及び免疫学的要因など複数の原因によって発症する,慢性の皮膚疾患である。国内における尋常性乾癬の治療としては,主に外用副腎皮質ステロイド(外用ビタミン D3 の配合剤を含む)が用いられているが,局所の副作用の発現などに注意が必要とされる。アトピー性皮膚炎と同様,高い有効性があり,治療期間に制限がなく広範な皮疹への適用が可能で,許容可能な安全性プロファイルを持つ外用剤の開発が望まれている。
ブイタマー®クリーム(以下,本剤)は,日本たばこ産業株式会社が Dermavant 社から国内での開発権を得て開発した,非ステロイド性,低分子の芳香族炭化水素受容体調節薬[therapeutic AhR modulating agent:TAMA]であり,リガンド依存性転写因子である AhR の活性化を介して,種々の遺伝子発現を調節する。本作用機序に基づき,炎症性サイトカインを低下させ,抗酸化分子の発現を誘導して,アトピー性皮膚炎及び尋常性乾癬における皮膚の炎症を抑制することが示唆されている。さらに,皮膚バリア機能関連蛋白質の発現を誘導して,アトピー性皮膚炎において皮膚バリア機能を改善することが示唆されている。本剤は既存薬とは異なる作用機序を有する,アトピー性皮膚炎及び尋常性乾癬の新規治療薬である。
今般,アトピー性皮膚炎患者及び尋常性乾癬を対象とした臨床試験で,本剤の有効性及び安全性が確認されたことから,「アトピー性皮膚炎」及び「尋常性乾癬」を効能又は効果として,2024年 6月に製造販売承認を取得した。
作用機序
タピナロフは,リガンド依存的な転写因子である AhR を活性化することにより,種々の遺伝子発現を調節する。本作用機序に基づき,炎症性サイトカインを低下させ,抗酸化分子の発現を誘導して,アトピー性皮膚炎及び尋常性乾癬における皮膚の炎症を抑制するとともに,皮膚バリア機能を改善する。
製品情報
商品名 | ブイタマークリーム1% |
一般名 (洋名) | タピナロフ (Tapinarof) |
承認年月日 | 2024 年 6 月 24 日 |
発売年月日 | 2024 年 10 月 29 日 |
メーカー | 製造販売元(輸入元):日本たばこ産業株式会社 販 売 元:鳥居薬品株式会 社 |
名前の由来 | 海外における商品名「VTAMA」の表音から命名した。 |
ステム | 該当しない |
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効能又は効果
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬
禁忌
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
用法及び用量
〈アトピー性皮膚炎〉
通常,成人及び12歳以上の小児には,1日1回,適量を患部に塗布する。
〈尋常性乾癬〉
通常,成人には,1日1回,適量を患部に塗布する。
注意
〈アトピー性皮膚炎〉
治療開始8週間以内に症状の改善が認められない場合は,使用を中止すること。
〈尋常性乾癬〉
治療開始12週間以内に症状の改善が認められない場合は,使用を中止すること。
代謝・代謝酵素について
タピナロフは,ヒト皮膚ミクロソームでは代謝されなかった。タピナロフの肝代謝には,CYP1A2及びCYP3A4による酸化,UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)1A9によるグルクロン酸抱合及び硫酸転移酵素(SULT)1A1,SULT1A3及びSULT1E1による硫酸抱合が寄与する(in vitro)。
食事の影響
該当資料なし
副作用(抜粋)
臨床試験での主な副作用は,適用部位毛包炎が 58 例(19.0%),接触皮膚炎が 44 例(14.4%),乾癬が 30 例(9.8%),毛包炎が 17 例(5.6%),ざ瘡及び適用部位そう痒感が各12例(3.9%),頭痛が8例(2.6%),適用部位ざ瘡が7例(2.3%)であった。
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情報更新日:2024年11月