エンレスト錠(サクビトリルバルサルタン)の特徴

開発の経緯について
 エンレスト(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)は、Novartis 社(スイス)が創製した「アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)」に分類される薬剤であり、1 剤でネプリライシン(NEP)阻害作用とアンジオテンシンⅡタイプ 1(AT1)受容体拮抗作用の2 つの薬理作用を発揮する。サクビトリルバルサルタンは、サクビトリル及びバルサルタンに解離して、それぞれ NEP 及び AT1 受容体を阻害する。
 NEP はナトリウム利尿ペプチドを分解する酵素として知られているが、サクビトリルの代謝物である sacubitrilat が NEP を阻害することにより、生理活性を有するナトリウム利尿ペプチドの循環血中濃度が上昇し、ナトリウム排泄作用、利尿作用、抗肥大作用、抗線維化作用、及び血管拡張作用などの多面的な作用を示す。また、バルサルタンは AT1 受容体を阻害し、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)による、血管収縮、腎ナトリウム・体液貯留、心筋肥大、及び心血管リモデリング異常に対する抑制作用をもたらす。
 心不全はすべての心疾患の終末的な病態で、慢性・進行性に経過して死に至る、難治性・致死性の疾患である。心不全患者の生命予後は不良で、致死的不整脈、突然死の頻度も高いとされている。また、呼吸困難・倦怠感や浮腫等の症状の出現により、生活の質(QOL)の低下が生じ、生活が著しく障害される疾患でもある。
 心不全の患者数は生活習慣病の増加を背景とした虚血性心疾患の増加とその急性期治療成績の向上、及び高齢化を主な理由として近年急速に増加しており、今後も増加が続くことが懸念され、医療資源及び医療財政上の大きな負担となっている。心不全患者の死亡率、入院率は依然として高く、生命予後改善、入院の負担が軽減でき、かつ忍容性に優れた新規作用機序を有する心不全治療薬が望まれてきた。

作用機序

 サクビトリルバルサルタンは、サクビトリル及びバルサルタンに解離して、それぞれネプリライシン(NEP)及びアンジオテンシンⅡタイプ 1(AT1)受容体を阻害する。サクビトリルは、エステラーゼにより NEP 阻害の活性体であるsacubitrilatに速やかに変換される。NEP阻害は、血管拡張作用、利尿作用、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)抑制作用、交感神経抑制作用、心肥大抑制作用、抗線維化作用、及びアルドステロン分泌抑制作用を有するナトリウム利尿ペプチド(NP)の作用亢進に寄与する。バルサルタンのAT1 受容体拮抗作用は、血管収縮、腎ナトリウム・体液貯留、心筋肥大、及び心血管リモデリング異常に対する抑制作用をもたらす

製品情報

商品名エンレスト錠
一般名
(洋名)
サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物
(Sacubitril Valsartan Sodium Hydrate)
発売年月日2020 年 8 月 26 日
メーカーノバルティス ファーマ株式会社
ステムendopeptidase inhibitors:-tril
angiotensin II receptor antagonists:-sartan

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効能又は効果

〈エンレスト錠50mg・100mg・200mg〉
慢性心不全
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

〈エンレスト錠100mg・200mg〉
高血圧症

禁忌
禁忌(次の患者には投与しないこと)
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
・アンジオテンシン変換酵素阻害薬(アラセプリル、イミダプリル塩酸塩、エナラプリルマレイン酸塩、カプトプリル、キナプリル塩酸塩、シラザプリル水和物、テモカプリル塩酸塩、デラプリル塩酸塩、トランドラプリル、ベナゼプリル塩酸塩、ペリンドプリルエルブミン、リシノプリル水和物)を投与中の患者、あるいは投与中止から36時間以内の患者
・血管浮腫の既往歴のある患者(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬又はアンジオテンシン変換酵素阻害薬による血管浮腫、遺伝性血管性浮腫、後天性血管浮腫、特発性血管浮腫等)
・アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者
・重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者
・妊婦又は妊娠している可能性のある女性

用法及び用量

〈慢性心不全〉
通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。1回投与量は50mg、100mg又は200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。

〈高血圧症〉
通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最大投与量は1回400mgを1日1回とする。

注意
・血管浮腫があらわれるおそれがあるため、本剤投与前にアンジオテンシン変換酵素阻害薬が投与されている場合は、少なくとも本剤投与開始36時間前に中止すること。また、本剤投与終了後にアンジオテンシン変換酵素阻害薬を投与する場合は、本剤の最終投与から36時間後までは投与しないこと。
・症候性低血圧があらわれるおそれがあるため、特に投与開始時及び増量時は患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。
・アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬投与中に肝炎等の重篤な肝障害があらわれたとの報告があるので、肝機能検査を実施するなど観察を十分に行うこと。
・脱水があらわれるおそれがあるため、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、本剤の減量、投与中止や補液等の適切な処置を行うこと。
・手術前24時間は投与しないことが望ましい。麻酔及び手術中にレニン-アンジオテンシン系の抑制作用による低血圧を起こす可能性がある。
・降圧作用に基づくめまい、ふらつきがあらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。

代謝・代謝酵素について

 健康成人男子にサクビトリル部位に14C標識したサクビトリルバルサルタン200mgを空腹時単回経口投与したとき、エステラーゼにより加水分解を受け、活性代謝物であるsacubitrilatが主に生成した。
 なお、健康成人男子に14C標識したバルサルタン80mgを空腹時単回経口投与したとき、投与8時間後の血漿中には、主として未変化体が存在し、その他に代謝物として4-ヒドロキシ体が認められた。In vitroの試験において主にCYP2C9の関与が示唆されている(外国人のデータ)。

食事の影響

 健康成人 36 例にサクビトリルバルサルタン 400mg 注)を低脂肪食又は高脂肪食の摂取後に単回経口投与したとき、sacubitrilat の Cmaxは空腹時投与に比べそれぞれ 19%及び 28%減少したが、AUC は、食事の種類及び食事の時期に関わらず、影響は認められなかった。Tmax は空腹時投与では 2 時間、食後投与では 4~6 時間であり、食事の種類に関わらず、いずれも延長する傾向がみられた。
 サクビトリルバルサルタン 400mg を低脂肪食の摂取後に単回経口投与したとき、バルサルタンの Cmax 及び AUC は、空腹時投与に比べそれぞれ 39%及び34%低下した。サクビトリルバルサルタン 400mg を高脂肪食の摂取後に単回経口投与したとき、バルサルタンの Cmax及び AUCは、空腹時投与に比べそれぞれ 40%及び 9%低下した。Tmax の中央値は空腹時投与の 1.75 時間、食後投与では 4 時間であり、高脂肪食又は低脂肪食摂取後にいずれでも延長する傾向がみられた。

副作用(抜粋)

重大な副作用

・血管浮腫(0.2%)
・腎機能障害(2.4%)、腎不全(0.7%)
低血圧(8.8%)
高カリウム血症(4.0%)
・ショック(0.1%未満)、失神(0.2%)、意識消失(0.1%未満)
・無顆粒球症(頻度不明)、白血球減少(0.1%未満)、血小板減少(頻度不明)
・間質性肺炎(0.1%未満)
・低血糖(頻度不明)
・横紋筋融解症(頻度不明)
・中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(いずれも頻度不明)
・天疱瘡、類天疱瘡(いずれも頻度不明)
・肝炎(頻度不明)

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