オルツビーオ(エフアネソクトコグアルファ)の特徴・作用機序

開発の経緯について
 血友病A(先天性血液凝固第VIII因子欠乏症)は、第VIII因子の量的低下又は質的異常によって引き起こされるⅩ染色体連鎖劣性遺伝性の凝固異常であり、主に男性に発症する。国内の令和4年度の血液凝固異常症全国調査では、5776人(男性:5682人、女性:94人)の血友病A患者が確認されている。
 血友病は、軟部組織や関節の自然出血又は外傷性出血を頻繁に繰り返し、関節障害、筋拘縮及び重度の身体障害を引き起こすほか、関節腫脹、関節痛、筋痛、粘膜出血及び胃腸出血などの症状が認められ、身体的並びに心理・社会的な健康状態、生活の質(QOL)に対して著しい影響を与えることが報告されている。第VIII因子製剤の定期的な投与は出血を未然に防ぎ、関節障害の発生を抑制し、血友病A患者の長期的な転帰を改善することが知られているが、投与回数を減らし、高い第VIII因子活性をより長く維持する、長時間作用を目的とした第VIII因子製剤の開発が求められてきた。
 従来の第VIII因子製剤は、内因性フォン・ヴィレブランド因子(VWF)との結合によって、第VIII因子が安定化され、クリアランスから保護される⼀⽅、VWFが介在するクリアランスを受けるため、その消失半減期は内因性VWFに依存する。
オルツビーオⓇ(一般名:エフアネソクトコグアルファ(遺伝子組換え))は、遺伝子組換え血液凝固第VIII因子Fc-フォン・ヴィレブランド因子-XTENポリペプチドの融合タンパク質(rFVIIIFc-VWF-XTEN)であり、内因性VWFに依存しない薬物動態プロファイルを有する第VIII因子補充療法薬である。オルツビーオⓇに含まれるVWFのD′D3ドメインによって分解から保護されて安定性が増し、内因性VWFの影響を受けないことにより、消失半減期が延長する。
 また、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)のFcドメインが胎児型Fc受容体と結合し、血液中の免疫グロブリンのように再利用されること、さらに、XTENポリペプチド部分により血中動態が変化することによって、第VIII因子活性が長時間維持される。
 オルツビーオⓇは血友病Aに対する治療薬として、欧州では2019年6月に、米国では2017年8月に希少疾病用医薬品に指定されており、さらに米国では2021年2月にファストトラック指定、2022年5月にブレークスルーセラピー指定、2022年8月に優先審査指定を取得し、2023年2月に承認されている。日本では、治療歴のある12歳以上の重症血友病A患者(日本人を含む)を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(EFC16293試験:XTEND-1試験)と、治療歴のある12歳未満の重症血友病A患者を対象とした海外第Ⅲ相試験(EFC16295試験:XTEND-Kids試験)の中間解析において、オルツビーオⓇの有効性、安全性が確認されたことから、2022年9月に、「血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」を効能又は効果として承認申請し、2023年9月に承認された。

作用機序

本剤は、内因性血液凝固第 VIII 因子と類似の機能的特性を有しており、血液凝固第 VIII 因子欠乏を一時的に補正し出血傾向を是正する。本剤に含まれる VWF の D′D3 領域により分解から保護され安定性が増し、内因性VWF の影響を受けず消失半減期が延長する。また本剤のヒト IgG1の Fc 領域により、胎児型 Fc 受容体と結合して血液中の免疫グロブリンのように再利用を受け、さらに XTEN ポリペプチド部分により血中動態が変化することで、血液凝固第 VIII 因子活性が長時間維持される。

製品情報

商品名オルツビーオ静注用250/オルツビーオ静注用500/オルツビーオ静注用1000/オルツビーオ静注用2000/オルツビーオ静注用3000/オルツビーオ静注用4000
一般名
(洋名)
エフアネソクトコグ アルファ
(Efanesoctocog Alfa)
承認年月日2023年9月25日
発売年月日
メーカーサノフィ株式会社
名前の由来ラテン語で高い・高いレベルでの維持を意味する「Altus」と血液凝固第 VIII 因子を意味する「VIII」、Zero Bleeding 達成の期待を込めた「O」を合わせて、オルツビーオⓇ(ALTUVIIIO)と命名した
ステム血液凝固因子:-cog
血液凝固第 VIII 因子:-octocog

[こちらも参照:ステムで薬の名前を暗記!【一覧リスト】薬が覚えられない人必見!]

効能又は効果

血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制

用法及び用量

本剤を添付の溶解液全量で溶解し、緩徐に静脈内に投与する。
出血時又は周術期に投与する場合、通常、1回体重1kg当たり50国際単位を投与する。なお、投与量は患者の状態に応じて適宜減量する。
定期的に投与する場合、通常、体重1kg当たり50国際単位を週1回投与する。

注意
・出血時又は周術期に投与する場合は、添付文書に記載された表を参考に投与量及び投与間隔を調節すること。なお、体重1kg当たり1国際単位の本剤を投与することにより、循環血漿中の血液凝固第VIII因子レベルが2%(2国際単位/dL)上昇することが見込まれる。
・成人又は12歳以上の小児では、1バイアル当たり1~2分以上かけて投与すること。
・12歳未満の小児では、体重20kg以上の場合は1バイアル当たり2~3分以上、体重20kg未満の場合は1バイアル当たり6分以上かけて投与すること。

代謝・代謝酵素について

本薬は高分子タンパク質であることから、非飽和性のタンパク異化
経路によって代謝されると予想される。

食事の影響

該当資料なし

副作用(抜粋)

重大な副作用として、ショック、アナフィラキシーがあらわれることがある。10%以上の副作用として、頭痛、関節痛が報告されている。

こちらのサイトは記載日時点の添付文書、インタビューフォームをまとめたものです。記載内容には十分な注意を払っておりますが、医療の情報は日々新しくなるため、誤り等がある場合がございます。参考にする場合は必ず最新の添付文書等をご確認ください。

情報更新日:2023年11月

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です