
『みなさん、こんにちは。今回は2025年5月に新たに発売された潰瘍性大腸炎治療薬「トレムフィア」について、簡単にまとめました。』
はじめに:トレムフィアとは
トレムフィア(一般名:グセルクマブ)は、2025年5月21日にヤンセンファーマ株式会社から新たに発売された、ヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤です。従来は乾癬や掌蹠膿疱症の治療薬として知られていましたが、今回新たに中等症から重症の潰瘍性大腸炎(UC)に対して、点滴静注製剤および皮下注射200mgの新剤型で適応が拡大されました。
潰瘍性大腸炎は大腸粘膜に慢性的な炎症が持続する疾患で、国内患者数は推定22万人にのぼり、指定難病にも登録されています。主な症状は、持続的または繰り返す下痢、血便、腹痛、体重減少、発熱、全身倦怠感などで、症状の程度や経過には個人差があります。UCは寛解と再燃を繰り返す病態であり、特に重症例や既存治療抵抗例ではQOL低下や長期的な合併症リスクが大きな問題となります。
UC治療の基本は、5-ASA製剤やステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤(抗TNFα抗体やJAK阻害薬等)ですが、これら従来治療でも十分な効果が得られないケースも少なくありません。また、長期ステロイド使用は副作用リスクも高く、できる限り早期に寛解導入と維持を実現し、ステロイドフリーを目指す治療戦略が求められています。
トレムフィアは、IL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、炎症性サイトカイン産生を抑制することで腸管炎症をコントロールします。新たな点滴静注剤による導入療法と、皮下注製剤による維持療法の両方に対応できるため、これまで選択肢が限られていた前治療抵抗例の患者にも、新しい治療の可能性を提供することが期待されています。また、自己注射製剤の導入により通院負担の軽減やアドヒアランス改善にも寄与することが見込まれます。
本剤の登場は、UC治療のパラダイムシフトの一つといえ、寛解導入から維持に至るまでの一貫した治療戦略の構築に貢献するものです。
製品概要
- 商品名:トレムフィア点滴静注200mg、皮下注200mgシリンジ、皮下注200mgペン
- 一般名:グセルクマブ(遺伝子組換え)
- 製造販売元:ヤンセンファーマ株式会社
- 効能・効果:中等症~重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)
- 承認日:2025年3月27日
- 発売日:2025年5月21日
作用機序と特徴
グセルクマブはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、炎症関連サイトカイン(IL-17A、IL-22など)の産生を抑制します。腸管の炎症を抑え、寛解導入と維持療法の両方に対応できるのが特徴です。
効能・効果・適応症
・中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入(点滴静注200mg)
・中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(皮下注100mgまたは200mg)
(いずれも既存治療で効果不十分な場合に限る)
用法・用量と投与時の注意点
【点滴静注】1回200mgを初回、4週後、8週後に点滴静注(1時間以上)
【皮下注】点滴終了8週後から100mgを8週間隔、または200mgを4週間隔で皮下注。
自己注射も可能。点滴・皮下注とも無菌操作、投与間隔厳守。
相互作用・代謝経路
主なCYP酵素(CYP3A4など)への影響なし。
他の生物学的製剤、JAK阻害薬、S1P受容体調節薬との併用は避けること。
食事の影響について
食事の影響はありません。
主な副作用と安全性情報
- 重篤な感染症(結核・敗血症・肺炎など)
- 過敏症(アナフィラキシー等)
- 注射部位反応、頭痛、関節痛、気道感染、好中球減少、肝機能障害
- 悪性腫瘍(頻度は一般集団と同等)
副作用出現時や感染症症状発現時は直ちに医療機関を受診。
処方時のチェックリスト(医師向け)
- 既存治療(ステロイド、免疫調節剤等)で効果不十分な場合のみ適応
- 感染症(結核など)の除外・管理
- 生ワクチン投与不可
- 自己注射指導・管理体制の確認
- 併用薬(他の生物学的製剤・JAK阻害薬等)の有無確認
服薬指導のポイント(薬剤師向け)
- 感染症症状や副作用の早期受診指導
- 投与スケジュールと自己注射の方法説明
- 注射部位管理と異常時の対応
- 生ワクチン不可、併用薬の確認
ケアポイント(看護師向け)
- 投与時の無菌操作、バイタルチェック
- 皮下注部位・全身状態の観察
- 感染症・過敏症の早期発見と報告
- 自己注射継続のための支援と指導
まとめ

『トレムフィアは中等症~重症UCの新しい選択肢です。導入から維持まで幅広く使え、QOL向上に貢献できる薬剤です。副作用や感染症管理にも注意しながら現場で活用していきたいですね。』