
『みなさん、こんにちは。今回は2024年8月に新たに発売されたサイトメガロウイルス(CMV)感染症治療薬「リブテンシティ錠」について、簡単にまとめました。』
はじめに:リブテンシティとは
リブテンシティ錠(一般名:マリバビル)は、移植後に起こる難治性サイトメガロウイルス(CMV)感染症に対する経口治療薬です。CMVは造血幹細胞移植(HSCT)や固形臓器移植(SOT)後の患者に高頻度に発症する深刻なウイルス感染症であり、適切に管理されなければ二次感染や移植臓器の機能喪失など重大な合併症を引き起こす可能性があります。
これまでのCMV治療薬(ガンシクロビル、ホスカルネットなど)は、点滴投与や副作用のリスク(骨髄抑制、腎障害)などの課題があり、特に難治例に対する治療選択肢は限られていました。リブテンシティは、pUL97キナーゼを標的とする新規作用機序を有する経口抗CMV化学療法剤として、日本国内では2024年8月に発売されました。
製品概要
- 商品名:リブテンシティ錠200mg
- 一般名:マリバビル(maribavir)
- 製造販売元:武田薬品工業株式会社
- 製造販売承認日:2024年6月24日
- 発売日:2024年8月28日
- 薬効分類:抗サイトメガロウイルス化学療法剤
- 剤形:錠剤(200mg)
作用機序と特徴
リブテンシティは、CMVに特異的な酵素であるウイルスキナーゼ「pUL97」とその天然基質を阻害することにより、ウイルス複製を抑制します。pUL97はCMVのDNA複製やカプシド形成、核内輸送に重要な酵素であり、本剤はこれを直接阻害する初めての薬剤です。
従来のDNAポリメラーゼ阻害薬(ガンシクロビル系)とは異なる機序を持つため、既存薬に耐性を示す難治性CMV感染症にも効果が期待されます。また、骨髄抑制や腎毒性といった副作用が少ない点や、経口投与が可能である点も臨床上の大きな利点です。
効能・効果・適応症
臓器移植(造血幹細胞移植を含む)における既存の抗サイトメガロウイルス療法に難治性のサイトメガロウイルス感染症
用法・用量と投与時の注意点
用法・用量:
通常、成人にはマリバビルとして400mgを1回量とし、1日2回経口投与する。
注意点:
- 腎機能障害または肝機能障害のある患者に対する用量調節の必要性はないが、重度の肝機能障害患者に対しては慎重投与。
- CMV感染症のウイルス量や症状の経過を定期的にモニタリングすること。
相互作用・代謝経路
本剤は、主に薬物代謝酵素CYP3A4で代謝される。また、本剤はCYP3A4、P-糖蛋白(P-gp)及び乳癌耐性蛋白(BCRP)の阻害作用を有する。
禁忌:
リファンピシン(リファジン)、セイヨウオトギリソウ含有食品:併用により本剤の血中濃度が大幅に低下
ガンシクロビル(デノシン)、バルガンシクロビル(バリキサ):併用により、これらの薬剤の抗ウイルス作用が阻害されるおそれがある。
注意:イミュノサプレッサー(シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス)との併用時は、血中濃度変動に注意し、濃度モニタリングを実施
食事の影響について
食事の有無による吸収への影響はほとんどなく、食前・食後にかかわらず服用可能です。
主な副作用と安全性情報
国内外臨床試験において、以下のような副作用が報告されています。
- 味覚異常(最も頻度が高い)
- 悪心・下痢
- 疲労・頭痛
- 肝機能異常(AST・ALT上昇)
- 血小板減少、好中球減少(頻度は低い)
重篤な副作用:まれに肝障害や過敏症が報告されており、投与中は定期的な血液検査が推奨されます。
処方時のチェックリスト(医師向け)
- CMV感染症の診断・既存治療の難治性が確認されているか
- リファンピシンとの併用がないか確認
- 免疫抑制薬との併用時は血中濃度モニタリングの体制があるか
- 肝機能・ウイルス量などの定期的モニタリングを計画しているか
- 経口投与が可能な状態の患者か
服薬指導のポイント(薬剤師向け)
- 1日2回、12時間ごとに正確に服用するよう指導
- 服用時刻のずれに注意(再感染リスクあり)
- 味覚異常などの副作用について説明
- 免疫抑制薬を併用している場合は自己判断での中止を避けるよう説明
- 飲み忘れ時の対応についても事前に説明
ケアポイント(看護師向け)
- 服薬の自己管理状況を継続的に確認
- 副作用(味覚異常、悪心など)の訴えを拾い上げて医師に報告
- 体調不良時も服薬が継続できているかチェック
- ウイルス再活性化兆候(発熱、肝機能悪化)などの変化に注意
- 心理的ストレスの大きい移植後患者への声かけも重要
まとめ

『リブテンシティは、飲み薬でしっかりCMVに対応できるのが嬉しいポイントですね。CMV感染症は命に係わる合併症なので、治療抵抗性に対する新薬には期待ですね♪』