タクザイロ皮下注(ラナデルマブ )の特徴・作用機序

開発の経緯について

 タクザイロ皮下注 300mg シリンジ(以下、本剤)は、完全ヒト型抗ヒト血漿カリクレインモノクローナル抗体であるラナデルマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする遺伝性血管性浮腫(HereditaryAngioedema:HAE)の急性発作の発症抑制薬である。HAE は、C1 インヒビター(C1-INH)の欠損/機能障害により、顔面、口唇、手足、上気道(喉頭)、消化管などさまざまな部位に急性に浮腫が生じる常染色体顕性(優性)遺伝疾患である。浮腫をもたらす主要なメディエーターは、C1-INH の欠損/機能障害のため過剰濃度となったブラジキニンとされており、過剰のブラジキニンがブラジキニン B2 受容体と結合し、血管拡張や血管透過性亢進を引き起こすことで、血管性浮腫が生じると考えられている。
 HAE の薬物療法の重要な標的は血漿カリクレインを阻害することによるブラジキニンの産生抑制であり、ラナデルマブは循環血中で認められる不活性前駆体であるプレカリクレインに結合することなく、活性型血漿カリクレインの蛋白質分解活性を阻害する。また、血漿カリクレイン活性を持続的に制御することにより、C1-INH 欠損に起因するブラジキニン産生を抑制し、HAE 発作の発現抑制及び症状のコントロールに寄与することが期待される。
 海外では、Dyax Corp.(旧:Shire plc., 現:Takeda)が臨床試験を開始し、米国では 2018 年 8 月に「12 歳以上の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者の発作抑制」を適応として承認された。また、欧州でも 2018 年 11 月に「12 歳以上の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者における再発性発作の日常的な抑制」を適応として承認された(いずれも希少疾病医薬品の指定を受けている)。米国及びカナダのガイドライン では、HAE の発作発現を抑制することを目的として、本剤が C1-INH 製剤とともに長期予防の第一選択薬として推奨されている。
 国内では、HAE Ⅰ型及びⅡ型患者を対象として第Ⅲ相臨床試験が開始された。本試験の結果、主要な海外第Ⅲ相臨床試験(DX-2930-03 試験)とほぼ同様の血漿中ラナデルマブ濃度推移及び切断型高分子キニノーゲン(cHMWK)値が得られ、また HAE 発作に対する有効性並びに本剤を 2 週に 1 回投与したときの本剤の安全性も確認されたことから、2021 年 3 月に医薬品製造販売承認申請を行い、2022 年 3 月に「遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」を効能又は効果として承認された。
 本剤は 12 歳以上の HAE 患者における血管性浮腫発作発現の抑制薬として、50 以上の国又は地域で承認されている(2022 年 3 月現在)。また、本邦では、2020 年 6 月に希少疾病医薬品の指定を受けている。

作用機序

 C1-INH の欠損/機能障害による血漿カリクレイン(pKal)活性の調節不全は、遺伝性血管性浮腫(HAE)患者の血管性浮腫発作の発症に関与する主要な病態生理学的要因であると考えられている。
 Ⅰ型又はⅡ型 HAE 患者では、C1-INH の欠損/機能障害により、pKal 活性を制御できないため、ブラジキニン濃度が異常に上昇し、ブラジキニンが内皮細胞及び平滑筋細胞の表面のブラジキニン B2 受容体へ結合することにより血管性浮腫が発現する。
 ラナデルマブはプレカリクレインや他のセリンプロテアーゼには結合せず、活性化された pKalの基質切断活性を特異的に阻害することで、HAE の急性発作の原因となるブラジキニンの過剰な放出を抑制する。

製品情報

商品名タクザイロ皮下注300mgシリンジ
一般名
(洋名)
ラナデルマブ
(Lanadelumab)
承認年月日2022 年 3 月 28 日
発売年月日2022 年 5 月 30 日
メーカー武田薬品工業株式会社
名前の由来海外に準じた
ステムヒト化モノクローナル抗体:-umab

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効能又は効果

遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制

禁忌

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

用法及び用量

 通常、成人及び12歳以上の小児には、ラナデルマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを2週間隔で皮下注射する。なお、継続的に発作が観察されず、症状が安定している場合には、1回300mgを4週間隔で皮下注射することもできる。

注意

急性発作の治療を目的に本剤を使用しないことを患者又はその家族に十分に説明し、理解を得た上で使用すること

代謝・代謝酵素について

ラナデルマブは IgG1 モノクローナル抗体であり、他の内因性抗体と同様に、肝及び網内系による蛋白分解、標的介在性の消失、非特異的エンドサイトーシスなどを介して代謝されるものと考えられた。

食事の影響

注射薬でありデータなし

副作用(抜粋)

 重大な副作用としてアナフィラキシー(頻度不明)が報告されている。
 その他の頻度の多い副作用として、注射部位反応(疼痛、紅斑、内出血、不快感、血腫、出血、そう痒感、腫脹、硬結、異常感覚、反応、熱感、浮腫、発疹)(52.4%)、浮動性めまい(5~10%未満)が報告されている。

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情報更新日:2022年10月

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