【2025年11月6日発売】ヨビパス皮下注ペン(パロペグテリパラチド)の特徴、作用機序

『みなさん、こんにちは。今回は2025年11月に新たに発売された副甲状腺機能低下症治療薬「ヨビパス皮下注ペン」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ヨビパス皮下注ペンとは

副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモン(PTH)の欠乏によってカルシウム・リン代謝異常が生じる稀な疾患で、指定難病に分類されています。2023年度の特定医療費受給者証所持者数は330人とされており、患者数は極めて少ないものの、治療の難しさは大きく、生活の質に大きな影響を及ぼします。

低カルシウム血症により、手足のしびれ、テタニー、全身痙攣、喉頭痙攣などの神経筋症状、さらに白内障や抑うつ、不整脈など多彩な症状を呈する可能性があります。従来の治療は活性型ビタミンD製剤やカルシウム製剤を用いる補充療法が中心でしたが、適切な血中カルシウム濃度の維持が困難であったり、過量投与により高カルシウム血症や高カルシウム尿症、腎石灰化、尿路結石といった合併症を招く課題がありました。

ヨビパス(パロペグテリパラチド)は、日本で初めて承認されたPTH補充療法薬であり、PTHの生理的リズムに近い形で血中濃度を維持できる徐放性プロドラッグとして開発されました。1日1回の皮下投与により、24時間にわたり安定したPTH濃度を維持し、カルシウム・リン代謝をより生理的に調整できる新たな治療選択肢として期待されています。

製品概要

  • 商品名:ヨビパス皮下注168μg・294μg・420μgペン
  • 一般名:パロペグテリパラチド
  • 薬効分類:副甲状腺機能低下症治療剤
  • 製造販売元:帝人ファーマ株式会社
  • 効能・効果:副甲状腺機能低下症
  • 製造販売承認日:2025年8月25日
  • 薬価基準収載日:2025年11月5日(想定)
  • 発売日:2025年11月6日

作用機序と特徴

ヨビパス(パロペグテリパラチド)は、PTH(副甲状腺ホルモン)の徐放性プロドラッグです。投与後、皮下組織で徐放性に活性化され、PTH作用を24時間持続的に発揮します。

● 作用機序のポイント

  • PTH1受容体に作用し、カルシウム再吸収を促進
  • 腎臓でリン再吸収を抑制し、血中リン濃度を調整
  • 1α水酸化酵素を刺激し、活性型ビタミンD産生を促進
  • 結果として血中のカルシウム濃度を生理的レンジに維持

ヨビパスは、従来の「カルシウムとビタミンDを大量に補う治療」と異なり、PTHそのものを置換するため、より生理的に近い代謝調整が期待できます。

過去の治療の課題であった高カルシウム血症・高カルシウム尿症・腎合併症のリスクを低減し得る点も重要な利点です。

効能・効果・適応症

効能・効果:

副甲状腺機能低下症

用法・用量と投与時の注意点

用法・用量(添付文書の記載要約):
通常、成人にはパロペグテリパラチドとして適量を1日1回皮下投与する。

投与開始前の重要ポイント:

  • 患者の血清カルシウム値が「正常範囲内」または「軽度低値」であることを確認
  • ビタミンD欠乏が疑われる場合は、ビタミンD補充や栄養指導を先行

投与時の注意点(添付文書より):

  • 高カルシウム血症のリスクがあるため、定期的に血清カルシウムを測定する
  • めまい、立ちくらみ、起立性低血圧などが生じる可能性があるため、危険作業(運転・高所作業)に注意
  • 投与後は症状の変化(痺れ、筋肉のこわばりなど)を観察する

相互作用・代謝経路

ヨビパス(パロペグテリパラチド)は、PTH補充薬であり、添付文書上の相互作用記載は非常に限られています。

● 添付文書に記載されている主な相互作用:

  • 高カルシウム血症を増悪させる薬剤(サイアザイド系利尿薬など)
    カルシウム再吸収が増加するため、併用で高カルシウム血症リスクが上昇。
  • ビタミンD製剤・カルシウム製剤
    併用により血清カルシウム値が上昇しやすいため、用量調整が必要。

なお、本剤は生体内で徐放性に活性化され、作用機序はホルモン様反応によるため、主たる代謝酵素による薬物相互作用(CYP阻害/誘導など)の記載はありません。

食事の影響について

本剤は皮下注投与のため、食事の影響はありません。 ただし、患者教育として以下の点が重要です:

  • カルシウム摂取量が過剰にならないよう注意
  • ビタミンD不足は効果を低下させるため、バランスの良い食事を推奨

主な副作用と安全性情報

主な副作用:

  • 高カルシウム血症(最重要)
  • 悪心、腹痛
  • 注射部位反応(発赤・腫脹・疼痛)
  • 頭痛、めまい、倦怠感
  • 立ちくらみ、起立性低血圧

重大な副作用:

  • 明らかな高カルシウム血症(嘔気、便秘、筋力低下、脱水、意識障害など)
  • 過剰投与による低リン血症

投与中は定期的な血清カルシウム、リン、クレアチニン測定が推奨されます。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • ビタミンD欠乏は補正されているか
  • 血清カルシウム値が正常域または軽度低値であるか
  • 腎機能(高カルシウム尿症リスク)を把握しているか
  • サイアザイド系利尿薬、ビタミンD製剤、カルシウム製剤の併用状況を確認
  • PTH補充で高カルシウム血症が生じた際の対処計画を準備しているか
  • 患者が毎日自己注射できる状態か(手技理解、視力、指先能力、家族サポート)

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 毎日同じ時間帯に皮下注射する重要性を説明
  • ビタミンD・カルシウム製剤との併用量を確認し、過量にならないよう指導
  • 高カルシウム血症の初期症状(便秘、口渇、悪心、倦怠感)を説明
  • 冷蔵保存・使用期限・持続時間などの取り扱いを案内
  • 注射部位は毎回ローテーションするよう説明

ケアポイント(看護師向け)

  • 注射手技(針の刺入角度・皮膚つまみ・ローテーション)の確認
  • 投与後のめまい・立ちくらみに注意し、転倒防止を徹底
  • 患者が自宅で注射を継続できるよう、繰り返し手技確認を行う
  • 採血スケジュール(Ca、P、Cr)の管理サポート
  • 症状悪化(痺れ、筋硬直、動悸など)の早期発見に努める

まとめ

『ヨビパスは、今まで難しかったPTH不足の治療をぐっと身近にしてくれる新しいお薬やね。毎日の注射は大変やけど、症状の安定にもつながるから、一緒にうまく使いながら安心できる生活を目指していこな〜』

執筆者:薬剤師(大学病院)
参考・引用資料:添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイド、メーカープレスリリース資料など
※掲載内容には細心の注意を払っておりますが、古い情報や誤りを含む場合があります。最新の添付文書などをご確認ください。
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