「悪性リンパ腫」という言葉、時々耳にすることはありませんか?高齢化に伴い、患者数が増えており、抗がん剤の服薬指導や副作用モニタリングで関わる機会も増えてきた疾患です。ホジキンリンパ腫にはA-AVDが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)にはPola-R-CHPが登場し、標準治療が大きく変わってきています。今回は薬剤師として知っておきたい基礎知識から、各レジメンの副作用の違いまでしっかりまとめましたのでご参考にしてください。
この記事でわかること
- ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の違い(症状・疫学・分類)
- ABVDの基本と「なぜブレオマイシンが問題なのか」
- A-AVDがホジキンリンパ腫の主流になってきた理由(ECHELON-1試験)
- 非ホジキンリンパ腫の標準治療R-CHOPの概要と副作用
- Pola-R-CHPの成績と注目される理由(POLARIX試験)
- 4レジメンの副作用プロファイル比較
- 患者さんへの説明トーク例
悪性リンパ腫とは?ホジキンvs非ホジキンの基礎知識
悪性リンパ腫はリンパ球ががん化し、リンパ節やリンパ組織(扁桃・脾臓など)に腫瘤を形成する疾患です。大きく「ホジキンリンパ腫(HL)」と「非ホジキンリンパ腫(NHL)」の2種類に分類されます。
ホジキンリンパ腫(HL)
ホジキンリンパ腫は、病理組織上にリード・シュテルンベルク(RS)細胞という特徴的な巨細胞が認められるリンパ腫です。日本の悪性リンパ腫全体の約10%未満と比較的まれですが、若年成人(20〜30代)と60歳以降の2峰性の年齢分布をもつのが特徴です。ほとんどは古典的ホジキンリンパ腫(CHL)で、RS細胞はCD30を高発現しており、これが後述するブレンツキシマブ ベドチン(BV)の標的となります。

ホジキンリンパ腫のRS細胞がCD30陽性というのは超重要ポイント!後で出てくるブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス®)の標的がまさにこのCD30なんです。薬の作用機序と疾患の特徴がつながるとスッキリしますよね。
非ホジキンリンパ腫(NHL)
非ホジキンリンパ腫は、RS細胞を認めないリンパ腫すべてを含む多様なグループです。日本では悪性リンパ腫の90%以上を占め、そのうち約70%がB細胞由来です。50種類以上の病型があり、進行速度によって低悪性度・中悪性度・高悪性度に分類されます。なかでも最多はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)で、非ホジキンリンパ腫の約30〜40%を占めます。
| 項目 | ホジキンリンパ腫(HL) | 非ホジキンリンパ腫(NHL) |
|---|---|---|
| 日本での割合 | 悪性リンパ腫の約10%未満 | 悪性リンパ腫の90%以上 |
| 好発年齢 | 20〜30代・60歳以降(2峰性) | 中高年(加齢とともに増加) |
| 腫瘍細胞の特徴 | RS細胞(CD30陽性) | B細胞・T細胞・NK細胞由来など多様 |
| 進行パターン | 隣接リンパ節に順序よく進展 | 非連続性に広がりやすい |
| 主な代表病型 | 古典的ホジキンリンパ腫(CHL) | DLBCL、濾胞性リンパ腫など |
| 代表的な治療レジメン | ABVD、A-AVD | R-CHOP、Pola-R-CHP |
主な症状と診断のポイント
共通症状
両者に共通する主な症状は以下のとおりです。
- 無痛性のリンパ節腫脹(頸部・鎖骨上窩・腋窩・鼠径部など)
- B症状:発熱(38℃以上)・寝汗(夜間の大量発汗)・体重減少(6ヶ月以内に10%以上)
- 疲労感・倦怠感
- 縦隔腫瘤による咳嗽・呼吸困難(特にホジキンリンパ腫で多い)
- 脾腫・肝腫大(病変が広がった場合)
ホジキンリンパ腫に比較的特徴的な症状
- 頸部〜縦隔リンパ節腫脹が初発として多い
- 飲酒後の腫瘍部位の疼痛(アルコール誘発性疼痛)
- 掻痒感(全身性)
診断の流れ
問診・身体診察→血液検査(LDH、フェリチン、β2ミクログロブリン等)→CT/FDG-PET検査→リンパ節生検による病理組織診断(確定診断に必須)という流れが基本です。フローサイトメトリーや免疫染色、遺伝子検査も病型分類に重要な役割を果たします。

患者さんが「リンパ節を取る検査をした」とおっしゃっていたら、それがリンパ節生検です。「どんな種類のリンパ腫か調べるための大切な検査なんですよ」と説明できると患者さんも安心してくれますよ。
病期分類(アン・アーバー分類)
悪性リンパ腫の病期はアン・アーバー分類(Lugano改訂版)が用いられます。
| 病期 | 病変の範囲 |
|---|---|
| Ⅰ期 | 1つのリンパ節領域、または1つのリンパ節外臓器に限局 |
| Ⅱ期 | 横隔膜の同側に2つ以上のリンパ節領域(±限定的なリンパ節外病変) |
| Ⅲ期 | 横隔膜の両側にリンパ節病変 |
| Ⅳ期 | リンパ節外臓器(骨髄・肝臓・肺など)への広範な浸潤 |
ⅠII・Ⅳ期を「進行期」と呼び、治療選択に大きく影響します。B症状があれば病期にBを付記(例:ⅢB)します。
ホジキンリンパ腫の治療①:ABVD療法
レジメン構成
ABVDは長年にわたりホジキンリンパ腫の標準一次治療として使用されてきたレジメンで、4剤の頭文字をとっています。
- A:ドキソルビシン(アドリアシン®)
- B:ブレオマイシン(ブレオ®)
- V:ビンブラスチン(エクザール®)
- D:ダカルバジン(ダカルバジン®)
Day1・15に投与し、28日を1サイクルとして6〜8サイクル繰り返します。限局期では放射線療法との併用(CMT)も行われます。
ABVDの主な副作用
- 悪心・嘔吐(ダカルバジンの催吐性が高い)
- 骨髄抑制(白血球・好中球減少)
- 脱毛
- 末梢神経障害(ビンブラスチン)
- ブレオマイシン肺毒性(間質性肺炎・肺線維症):累積投与量300mgが上限
- ドキソルビシンの心毒性(累積投与量500mg/m²が上限)

ABVDで最も注意すべきはブレオマイシンによる肺毒性です!間質性肺炎は重篤化すると命にかかわります。乾性咳嗽・労作時息切れが出たらすぐに報告してもらうよう患者さんに伝えることが大切。また高濃度酸素の投与でブレオマイシン肺毒性が増悪するため、術中管理でも注意が必要です。
ホジキンリンパ腫の治療②:A-AVD療法がなぜ主流になってきたのか
レジメン構成
A-AVD(BV+AVD)は、ABVDのブレオマイシンを抗CD30抗体薬物複合体(ADC)のブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス®)に置き換えたレジメンです。
- A(BV):ブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス®)1.2mg/kg
- A:ドキソルビシン
- V:ビンブラスチン
- D:ダカルバジン
ECHELON-1試験:A-AVDが主流になってきた理由
未治療のStageIII/IV古典的ホジキンリンパ腫患者1,334例を対象とした第III相ランダム化試験(ECHELON-1試験)で、A-AVDとABVDが比較されました。
追跡期間中央値73ヶ月(約6年)の最終解析において、以下の結果が示されました。
- 6年全生存率(OS):A-AVD群93.9% vs ABVD群89.4%(ハザード比0.59、p=0.009)
- 6年無増悪生存率(PFS):A-AVD群82.3% vs ABVD群74.5%(ハザード比0.68)
- 二次悪性腫瘍の発生:A-AVD群23件 vs ABVD群32件
- 移植を含む二次治療を受けた患者もA-AVD群で少なかった
進行期ホジキンリンパ腫において、A-AVDがABVDに対してOSの優位性を初めて示した試験として注目されています。造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)においても、進行期古典的ホジキンリンパ腫の治療選択肢としてA-AVDが位置づけられています。
A-AVDの副作用プロファイル:ABVDとの違い
A-AVDへの切り替えで最大のポイントは「ブレオマイシン肺毒性がなくなる」ことです。一方で、ブレンツキシマブ ベドチン特有の副作用が加わります。
| 副作用 | A-AVD | ABVD |
|---|---|---|
| 肺毒性 | 約2%(大幅に減少) | 約7%(重篤例も) |
| 末梢性感覚ニューロパチー | 67%(中央値8週で発現) | 43% |
| 好中球減少症(Grade3以上) | 54% | 39% |
| 発熱性好中球減少症(FN) | 19%(G-CSF予防投与なし時21%) | 8% |
| 悪心 | 48% | 52% |
| 便秘 | 33% | 25% |

A-AVDではG-CSF(フィルグラスチムなど)の予防投与が必須です!G-CSFを5日目までに投与しなかった場合、Grade3以上の好中球減少が70%・FNが21%と非常に高率になります。予防投与を行えばGrade3以上の好中球減少29%・FN11%まで抑えられます。服薬指導でG-CSF自己注射の患者さんを担当したら、投与タイミングをしっかり確認してくださいね。
また、末梢性神経障害はブレンツキシマブ ベドチンの主要副作用です。ただし長期フォローアップにより、A-AVD群の86%で神経障害が「完全に解消」または「改善」したと報告されており、長期的な安全性はABVDと同等と評価されています。
なぜブレオマイシンをなくすことが重要か
ブレオマイシンは有効な薬剤ですが、肺線維症・間質性肺炎という取り返しのつかない臓器障害のリスクを持ちます。高齢者・肺機能低下患者・喫煙者では特にリスクが高く、治療中止の原因にもなります。A-AVDはブレオマイシンをブレンツキシマブ ベドチンに置き換えることで肺毒性を大幅に低減しつつ、生存成績でも上回るという「一石二鳥」の結果を示したレジメンです。
非ホジキンリンパ腫の治療①:R-CHOP療法
レジメン構成
R-CHOPはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)をはじめとする中〜高悪性度B細胞リンパ腫の標準治療として長年君臨してきたレジメンです。
- R:リツキシマブ(リツキサン®)375mg/m²(抗CD20モノクローナル抗体)
- C:シクロホスファミド
- H:ドキソルビシン(アドリアシン®)
- O:ビンクリスチン(オンコビン®)
- P:プレドニゾロン
21日を1サイクルとして通常6〜8サイクル投与します。
R-CHOPの主な副作用
- 骨髄抑制(好中球減少・血小板減少)
- 悪心・嘔吐
- 脱毛
- 末梢神経障害(ビンクリスチンによる感覚・運動神経障害、便秘・排尿障害)
- リツキシマブ投与関連反応(初回投与時の発熱・悪寒・低血圧など)
- 感染症リスク(B型肝炎再活性化に要注意)
- ドキソルビシンの心毒性
- ステロイドによる高血糖・消化性潰瘍

R-CHOP開始前はHBs抗原・HBs抗体・HBc抗体の確認が必須です!リツキシマブはB型肝炎ウイルスの再活性化を起こすことがあり、劇症肝炎になると命に関わります。既往感染(HBc抗体陽性)の方にはエンテカビルなどの予防的抗ウイルス薬が投与されます。薬局でも処方の流れをチェックしておきましょう。
非ホジキンリンパ腫の治療②:Pola-R-CHP療法の成績
レジメン構成
Pola-R-CHPはR-CHOPのビンクリスチンを抗CD79b抗体薬物複合体(ADC)のポラツズマブ ベドチン(ポライビー®)に置き換えたレジメンです。
- Pola:ポラツズマブ ベドチン(ポライビー®)1.8mg/kg
- R:リツキシマブ 375mg/m²
- C:シクロホスファミド
- H:ドキソルビシン
- P:プレドニゾロン
21日を1サイクルとして6サイクル投与後、リツキシマブ単剤を2サイクル追加します。
POLARIX試験:Pola-R-CHPの成績
未治療のDLBCL患者(IPI 2〜5)879例を対象とした国際無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験(POLARIX試験)において、Pola-R-CHPとR-CHOPが比較されました。
- 主要評価項目PFS:Pola-R-CHP群で有意に改善(ハザード比0.73、95%CI: 0.57-0.95)
- 2年PFS:Pola-R-CHP群76.7% vs R-CHOP群70.2%
- OS:2年時点では有意差なし(5年時点でも同様)
- 完全奏効率(CR):Pola-R-CHP群78.0% vs R-CHOP群74.0%(有意差なし)
- ASH 2024での5年観察データでも、PFS・DFSの延長効果が持続して確認された
「R-CHOPを明確に上回る一次治療」が長年課題とされてきたなか、Pola-R-CHPは主要評価項目のPFSで有意な改善を示した初めてのレジメンとして高く評価されています。
Pola-R-CHPの副作用プロファイル:R-CHOPとの違い
Pola-R-CHPはビンクリスチンをポラツズマブ ベドチンに置き換えることで、ビンクリスチンによる神経障害の軽減が期待されます。一方で、ポラツズマブ ベドチン自体も微小管阻害により末梢神経障害を起こしえます。
| 副作用(Grade3以上) | Pola-R-CHP | R-CHOP |
|---|---|---|
| 全体のGrade3/4有害事象 | 57.7% | 57.5% |
| 重篤な有害事象(SAE) | 34.0% | 30.6% |
| Grade5有害事象(死亡) | 3.0% | 2.3% |
| 有害事象による減量・中止 | 9.2% | 13.0% |
全体の有害事象発現率は両群でほぼ同等でしたが、有害事象による減量・治療中止はPola-R-CHP群で少ないという注目すべき結果が示されています。これはビンクリスチンの累積神経毒性による中止がR-CHOP群で多かったことが影響していると考えられます。

Pola-R-CHPで注意すべき副作用は末梢性ニューロパチー・骨髄抑制・悪心・下痢・便秘です。ポラツズマブ ベドチン(ポライビー®)は微小管重合阻害により軸索輸送障害を起こし、発現は数週間以内が多いです。「手足のしびれや力が入りにくい感じはありませんか?」と毎回確認するようにしましょう。
患者説明トーク(Q&A)
Q:ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫って、何が違うんですか?

どちらも「リンパ球ががん化した病気」という点では同じですが、がん化した細胞の種類と、病気の広がり方・治療法が異なります。ホジキンリンパ腫は若い方にも多く、リード・シュテルンベルク細胞という特徴的な細胞が見られる比較的まれなタイプです。非ホジキンリンパ腫はリンパ腫の大部分を占め、50種類以上の病型があります。それぞれに合った治療法がありますので、担当の先生と相談しながら進めていきましょう。
Q:A-AVD療法でG-CSFの注射が出ましたが、なぜ必要なんですか?

A-AVD療法は効果が高い反面、白血球(好中球)が下がりやすい特徴があります。G-CSFは骨髄を刺激して白血球を増やす注射で、感染症(発熱性好中球減少症)の予防のために使います。決められたタイミングで投与することで副作用のリスクをかなり下げることができますので、打ち忘れのないようにお気をつけください。
Q:治療中に手足のしびれが出てきましたが、どうしたらいいですか?

それは末梢神経障害という副作用の可能性があります。使っているお薬の種類によっては出やすい副作用で、重くなる前に早めに主治医に伝えることが大切です。我慢せず、次の診察を待たずに病院に連絡することをおすすめします。日常生活でつまずきやすくなっている、手先が不器用になったなどの変化も合わせてお伝えください。
Q:R-CHOP療法を始めるにあたって、特に気をつけることはありますか?

いくつかポイントがあります。まず、リツキシマブというお薬の影響でB型肝炎ウイルスが再活性化することがあるため、治療前に検査をして、必要に応じて予防薬が処方されます。また、免疫が下がるため感染症に注意が必要です。発熱(37.5℃以上)が続くときはすぐに病院へ連絡してください。ステロイドが入っているため、食欲増加や不眠、血糖値が上がりやすくなることもあります。何か気になることがあれば、いつでも薬局にご相談ください。
まとめ
- 悪性リンパ腫はホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別され、日本では非ホジキンリンパ腫が90%以上を占める
- ホジキンリンパ腫の標準治療はABVDだったが、ECHELON-1試験でA-AVDが6年OSで有意に優れることが示され、進行期の治療選択肢として重要な位置を占めるようになった
- A-AVDの最大のメリットはブレオマイシン肺毒性の大幅減少。一方でG-CSF予防投与が必須で、末梢神経障害・好中球減少への注意が必要
- DLBCLをはじめとする中〜高悪性度B細胞リンパ腫の標準治療はR-CHOP。B型肝炎再活性化・ビンクリスチン神経障害・リツキシマブ投与関連反応に注意
- Pola-R-CHPはPOLARIX試験でR-CHOPに対してPFSの有意な延長を示し、「R-CHOPを超える初回治療」として位置づけられつつある。5年観察でもPFS優位性が持続
- 4レジメンそれぞれ副作用プロファイルが異なるため、薬剤師として疾患・レジメンに応じた服薬指導・副作用モニタリングが重要
参考情報
- 日本血液学会. 造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版). https://www.jshem.or.jp/gui-hemali/
- Ansell SM, et al. Overall Survival with Brentuximab Vedotin in Stage III or IV Hodgkin’s Lymphoma. N Engl J Med. 2022(ECHELON-1試験 最終OS解析)
- Connors JM, et al. Brentuximab Vedotin with Chemotherapy for Stage III or IV Hodgkin’s Lymphoma. N Engl J Med. 2018;378(4):331-344.(ECHELON-1試験 主解析)
- Tilly H, et al. Polatuzumab Vedotin in Previously Untreated Diffuse Large B-Cell Lymphoma. N Engl J Med. 2022;386(4):351-363.(POLARIX試験 主解析)
- Salles G, et al. Five-Year Follow-up of POLARIX Trial. ASH 2024 Annual Meeting.(POLARIX試験 5年データ)
- 各薬剤の添付文書、適正使用ガイド