『みなさん、こんにちは。今回は2025年4月に新たに発売された肥満症治療薬「ゼップバウンド皮下注アテオス」について、簡単にまとめました。』
はじめに:ゼップバウンドとは
ゼップバウンド(一般名:チルゼパチド)は、日本イーライリリー株式会社が製造、田辺三菱製薬株式会社が販売する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。2025年4月11日に2.5mg・5mg・7.5mg・10mg・12.5mg・15mgの6規格が発売されました。肥満症はBMI 25kg/m2以上と定義され、特にBMI27kg/m2以上かつ肥満関連健康障害を有する場合、またはBMI35kg/m2以上の場合に薬物治療が検討されます。本剤は週1回の皮下注射製剤で、生活習慣改善のみで十分な減量効果が得られない肥満症患者に新たな治療選択肢を提供します。
製品概要
- 商品名:ゼップバウンド皮下注2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス
- 一般名:チルゼパチド
- 製造販売元:日本イーライリリー株式会社
- 販売元:田辺三菱製薬株式会社
- 薬効分類:その他のホルモン剤(持続性GIP/GLP-1受容体作動薬)
- 効能・効果:肥満症(適応基準あり)
- 承認日:2024年12月27日
- 発売日:2025年4月11日
- 包装:各規格0.5mL×2キット
作用機序と特徴
チルゼパチドはGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体およびGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体のアゴニストです。中枢神経系のこれら受容体に作用して食欲を抑制し、脂肪細胞のGIP受容体に作用して脂質代謝を促進、体重減少効果をもたらします。内因性アルブミンと結合する構造で半減期が長く、週1回投与で持続的効果が得られます。
効能・効果・適応症
高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下のいずれかに該当する肥満症患者
・BMIが27kg/m2以上で2つ以上の肥満関連健康障害を有する場合
・BMIが35kg/m2以上の場合
用法・用量と投与時の注意点
通常、成人には週1回2.5mgから開始し、4週間ごとに2.5mgずつ増量、週1回10mgを皮下注します。患者の状態に応じて週1回5mgまで減量、または15mgまで増量も可能です。同一曜日に投与し、投与忘れ時の対応や自己注射指導を徹底します。胃腸障害等が出現した場合は減量または漸増延期を検討します。
本剤投与中も食事療法・運動療法は継続し、3〜4か月間で改善傾向がなければ中止を検討します。
相互作用・代謝経路
チルゼパチドは主にタンパク質分解系・β酸化・アミド加水分解で代謝されます。DPP-4阻害剤や他のGLP-1受容体作動薬との併用は避けてください。糖尿病薬や経口避妊薬、ワルファリンとの併用時は作用の増減に注意が必要です。CYP酵素への影響は基本的にありません。
食事の影響について
皮下注射製剤のため、食事の影響はありません。注射部位は腹部、大腿部、上腕部で交替します。
主な副作用と安全性情報
- 主な副作用:悪心、下痢、便秘、嘔吐、食欲減退、腹痛、消化不良、注射部位反応
- 重篤な副作用:低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.1%未満)、胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸、アナフィラキシー
- 低血糖症状:インスリンやSU剤併用時に注意
- 脱水、急性腎障害、甲状腺関連症状、味覚異常、過敏症反応など
胃腸障害・低血糖・急性膵炎や胆嚢関連症状出現時は中止・適切な対応が必要です。
処方時のチェックリスト(医師向け)
- 適応(BMI・合併症)の確認、肥満症治療の実施後であること
- 妊婦・授乳婦、小児、高齢者、既往歴(膵炎・甲状腺疾患等)を事前評価
- 他のGLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害剤との併用禁止
- インスリン・SU剤・経口避妊薬・ワルファリンなど併用薬の管理
- 自己注射の教育・廃棄方法の説明、投与忘れ時の対応指導
- 効果判定と副作用モニタリング体制の確保
服薬指導のポイント(薬剤師向け)
- 副作用(悪心、下痢、便秘、低血糖、注射部位反応等)の説明
- 投与スケジュール・投与曜日の守り方、投与忘れ時の対応方法を指導
- 注射針・器具の安全な廃棄方法、保管方法の指導
- 併用薬の確認、妊娠・授乳への注意、投与中止や体調異常時の医師への連絡を指導
ケアポイント(看護師向け)
- 自己注射の手技指導、観察とサポート
- 副作用出現時の報告・受診勧奨
- 定期的な体重・血糖・血圧等のモニタリング
- 心理的サポートと生活習慣の改善継続を啓発
まとめ

『ゼップバウンドは、週1回皮下注投与で高い体重減少効果を持つ肥満症治療薬です。患者さんの生活改善とともに、安全な自己注射管理と副作用モニタリングを徹底し、QOL向上に貢献したいですね。』