リフヌア錠(ゲーファピキサントクエン酸塩)の特徴・作用機序

開発の経緯について
 咳嗽は、医療機関を受診する患者の主訴として頻度が最も高い症候である。成人の咳嗽は持続期間に基づき、急性(3 週間未満)、遷延性(3 週間以上8 週間未満)又は慢性(8 週間以上)に分類される。多くの慢性咳嗽患者は、原因疾患への特異的な治療により奏効するが、治療抵抗性を示し改善が不十分な場合(治療抵抗性の慢性咳嗽)や、徹底した検査にもかかわらず原因疾患が不明であり、既知の疾患の臨床的な経験に基づく治療にも抵抗性の場合(原因不明の慢性咳嗽)がある。難治性の慢性咳嗽に対する効果的な治療法は確立しておらず、咳嗽が持続することにより身体的、社会的及び精神的な生活の質が低下する。原因疾患によらない非特異的な咳嗽治療薬としては中枢性鎮咳薬等が存在するが、有害事象の問題点から使用を控えることが推奨されており、難治性の咳嗽治療薬へのニーズはいまだ満たされていない。
 リフヌア錠45mg の有効成分であるゲーファピキサントクエン酸は、F. Hoffmann-La Roche, Ltd.(以下、Roche社)が海外で創製した選択的P2X3 受容体拮抗薬である。当初はRoche 社及びAfferent Pharmaceuticals, Inc.(以下、Afferent 社)によって海外で開発が進められていたが、2016 年7 月にMerck Sharp &Dohme Corp., a subsidiary of Merck & Co., Inc., N.J., U.S.A.(以下、MSD 社)がAfferent 社を買収し、その後は、MSD 社により新規作用機序を有する非麻薬性で末梢に作用する経口投与可能な咳嗽治療薬として開発された。日本を含む国際共同試験等の結果から、ゲーファピキサントクエン酸塩が日本人患者においても難治性の慢性咳嗽に対する有効性、安全性及び忍容性を有することが確認されたため、2021 年2 月に承認申請を行い、2022 年1 月に「難治性の慢性咳嗽」を効能又は効果として承認された。

作用機序

 ゲーファピキサントは選択的P2X3 受容体拮抗薬であり、P2X2/3 受容体サブタイプに対する拮抗作用も有している。
 P2X3 受容体は、気道の迷走神経のC 線維上にみられるATP 依存性イオンチャネルである。C 線維は炎症又は化学刺激物質に反応して活性化される。ATP は炎症条件下で気道粘膜細胞から放出される。細胞外ATP のP2X3受容体への結合は、C 線維による侵害シグナルとして感知される。C 線維の活性化は、患者が咳嗽の衝動として感じ、咳嗽反射を惹起させる。P2X3 受容体を介した細胞外ATP シグナル伝達の遮断により、感覚神経の活性化及び咳嗽が抑制される。

製品情報

商品名リフヌア錠45mg
一般名
(洋名)
ゲーファピキサントクエン酸塩
(Gefapixant Citrate)
承認年月日2022 年1 月20 日
発売年月日2022 年4 月21 日
メーカーMSD 株式会社
名前の由来特になし
ステムpurinoreceptor (P2X) antagonists:-pixant

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効能又は効果

難治性の慢性咳嗽

禁忌
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

用法及び用量

通常、成人にはゲーファピキサントとして1回45mgを1日2回経口投与する。

注意
・重度腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)で透析を必要としない患者には、本剤45mgを1日1回投与すること。
・本剤による咳嗽の治療は原因療法ではなく対症療法であることから、漫然と投与しないこと。

代謝・代謝酵素について

 ゲーファピキサントの消失における代謝の寄与は小さい。ゲーファピキサントの主要な消失経路は腎排泄である。ヒトのゲーファピキサントの代謝には酸化反応及びグルクロン酸抱合化反応が関与する。
 [14C]ゲーファピキサント50mgを外国人健康成人男性6例に単回経口投与した際、血漿中の主成分は未変化体であり(約87%)、血漿中代謝物は投与放射能の10%未満であった(in vitro試験)。

食事の影響

 日本人健康成人男性14 例にゲーファピキサント50mg(ゲーファピキサントクエン酸塩として76.95mg)を空腹時及び高脂肪食摂取後に単回経口投与した際、血漿中曝露量は高脂肪食摂取後投与と空腹時投与で同程度であり、ゲーファピキサントのAUC0-∞及びCmax に対する臨床的に意味のある食事の影響は認められなかった。

副作用(抜粋)

重大な副作用は臨床試験の結果からは設定されていない。
その他の副作用として、頻度の高いもの(5%以上)は、胃腸障害(悪心、口内乾燥)、神経系障害(味覚不全(40.4%)、味覚消失、味覚減退、味覚障害)がある。

※味覚不全は、主に苦味、金属味及び/又は塩味としても報告された。味覚関連の副作用(味覚不全、味覚消失、味覚減退、味覚障害)の発現割合は63.1%であった。大多数は、ゲーファピキサントの投与開始後9 日以内に発現し、軽度又は中等度であり、ゲーファピキサントの投与中又は投与中止により改善した。なお、味覚関連の副作用は曝露量依存的に増加する傾向が認められている。

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情報更新日:2022年10月

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