【2025年11月21日発売】ネクセトール錠180mg(ベムペド酸)の特徴、作用機序

『みなさん、こんにちは。今回は2025年11月に新たに発売された高コレステロール血症・家族性高コレステロール血症治療薬「ネクセトール錠180mg」について、簡単にまとめました。』

はじめに:ネクセトール錠180mgとは

高コレステロール血症は、動脈硬化性疾患の主要な危険因子のひとつであり、心筋梗塞や脳梗塞などの予防のためには、LDLコレステロール(LDL-C)を管理目標値以下にコントロールし続けることが重要とされています。家族性高コレステロール血症(FH)は遺伝性にLDL-Cが高値となる疾患で、ヘテロ接合体(HeFH)だけでなく、より重症なホモ接合体(HoFH)も存在し、若年から動脈硬化が進行しやすいことが知られています。

ガイドラインではまずスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害剤)が第一選択薬とされますが、最大耐量のスタチンでも管理目標に到達しない例や、筋症状などの副作用のためスタチンによる治療が難しい症例も少なからず経験されます。そのような患者に対しては、エゼチミブやPCSK9阻害薬、インクリシランなど、スタチンとは異なる作用機序のLDL-C低下薬の追加・切り替えが検討されます。

ネクセトール錠180mg(一般名:ベムペド酸)は、HMG-CoA還元酵素のさらに「ひとつ上流」を標的とするATPクエン酸リアーゼ(ACL)阻害剤です。1日1回経口投与でLDL-Cを低下させる新規機序の薬剤であり、スタチンで効果不十分な症例、あるいはスタチン治療が適さない症例に対する新たな治療選択肢として期待されています。

製品概要

  • 商品名:ネクセトール錠180mg
  • 一般名:ベムペド酸
  • 薬効分類:ATPクエン酸リアーゼ阻害剤
  • 製造販売元:大塚製薬株式会社
  • 効能・効果:高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症
  • 用法・用量:通常、成人にはベムペド酸として180mgを1日1回経口投与
  • 承認取得日:2025年9月19日
  • 薬価基準収載日:2025年11月12日
  • 発売日:2025年11月21日

なお、本剤はHMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、またはスタチンによる治療が適さない患者に使用する薬剤と位置づけられています。また、家族性高コレステロール血症のうちホモ接合体(HoFH)に対しては使用経験がなく、治療上やむを得ない場合に非薬物療法(LDLアフェレーシスなど)の補助としての適用が考慮されます。

作用機序と特徴

ベムペド酸は肝細胞内でCoA活性体(ETC-1002-CoA)に変換され、ATPクエン酸リアーゼ(ATP citrate lyase:ACL)を選択的に阻害します。ACLはコレステロール合成経路において、HMG-CoA還元酵素より上流に位置する酵素であり、クエン酸からアセチルCoAを生成するステップを担っています。

  • ACL阻害により、肝臓でのコレステロール合成が低下
  • 肝細胞表面のLDL受容体(LDLR)の発現が誘導される
  • 血中LDL-Cが増加したLDLRに取り込まれ、結果としてLDL-Cが低下

ベムペド酸は主に肝臓で活性化され、骨格筋ではほとんど活性化されないとされており、その点が「筋障害リスクを比較的抑えつつLDL-Cを低下させる」可能性がある点として注目されています。一方で、本剤はスタチンの血中濃度を上昇させ得るため、スタチン併用時には逆に横紋筋融解症などのリスクが増加する可能性がある点に留意が必要です。

効能・効果・適応症

効能・効果(添付文書記載):
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症

適用前には、診察および血清脂質検査などにより、対象が高コレステロール血症または家族性高コレステロール血症であることを確認した上で使用を検討します。また、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、あるいはスタチン治療が適さない患者に限定して使用します。

用法・用量と投与時の注意点

基本用法・用量:

  • 通常、成人にはベムペド酸として180mgを1日1回経口投与する。

用法・用量に関連する注意点:

  • スタチン治療が適さない場合を除き、HMG-CoA還元酵素阻害剤との併用が推奨されます。
  • 投与中は定期的に脂質プロファイルを測定し、反応が不十分な場合は投与継続の是非を検討します。
  • 食事療法・運動療法・禁煙など、生活習慣介入と併せて使用することが基本です。
  • 本剤投与により尿酸値上昇・高尿酸血症・痛風があらわれることがあるため、既往のある患者では特に注意が必要です。
  • 重度の肝機能障害(Child-Pugh C)患者では非結合形の血中濃度が上昇し得るとされ、慎重な適応判断が求められます。
  • 妊婦・授乳婦には使用しないこととされており、生殖能を有する女性には適切な避妊指導が必要です。

相互作用・代謝経路

ベムペド酸は主にNADPH依存性酸化およびUGT2B7によるグルクロン酸抱合で代謝され、CYP依存性代謝の寄与は小さいとされています。一方で、他剤との相互作用に関する検討は複数行われており、臨床的に注意すべき薬剤が存在します。

1. HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系)

アトルバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチンとの併用試験において、本剤併用により各スタチンおよびその活性代謝物のCmax・AUCが最大でおよそ1.5~2倍程度まで上昇することが報告されています。

  • 機序:主として有機アニオン輸送系(OATP・OAT系など)やグルクロン酸抱合への影響が関与すると考えられています。
  • 臨床的影響:スタチン血中濃度上昇 → 筋障害・横紋筋融解症リスク増大。
  • 対応:スタチン併用時はCKの定期測定、筋痛・脱力・こむら返りなどの症状に注意し、症状出現時には速やかな受診と検査を指導します。

2. エゼチミブ

  • エゼチミブのグルクロン酸抱合体(活性代謝物)のCmax・AUCが約1.7~1.8倍に上昇。
  • ベムペド酸側の曝露への影響は軽度(Cmax・AUCともに約1.1倍程度)。
  • 臨床的には併用可能とされますが、胆石症や肝機能異常などエゼチミブの副作用リスクに留意します。

3. プロベネシド(UGT阻害剤)

  • プロベネシド併用により、ベムペド酸のAUCが約1.7倍程度に上昇。
  • 機序:UGT2B7阻害によりベムペド酸の抱合代謝が抑制。
  • 腎機能障害や高尿酸血症を背景にプロベネシドを使用している症例では、本剤の血中濃度上昇と尿酸値上昇が重なり得るため、より慎重なモニタリングが必要です。

4. その他の脂質異常症治療薬との併用

フィブラート系、PCSK9阻害薬、インクリシランなどとの併用は臨床試験で実施されていますが、本剤側からの大きな薬物動態相互作用は報告されていません。ただし、スタチンや他の脂質異常症治療薬と併用する場合には、それぞれの添付文書に記載された禁忌・重要な注意点を必ず確認した上で使用する必要があります。

代謝・排泄の概要

  • 代謝:主にNADPH依存性酸化およびUGT2B7によるグルクロン酸抱合
  • 蛋白結合率:約99%以上と高い
  • 排泄:放射能試験ではおよそ6割が尿中、約4分の1が糞便中に排泄

食事の影響について

健康成人での食事影響試験において、空腹時と食後投与時でCmaxおよびAUCの差はわずか(Cmax比約0.88、AUC比約0.98)と報告されており、食事の影響はほとんどないとされています。

そのため、服用時間は1日1回、患者の生活リズムに合わせて一定のタイミングで継続することが重要であり、特段の「食前・食後」の指定はありません。

主な副作用と安全性情報

臨床試験で認められた主な副作用は以下のとおりです。

  • 高尿酸血症/尿酸値上昇:比較的高頻度。痛風発作の誘発に注意。
  • 肝機能検査値上昇(AST・ALT・ALP・ビリルビンなど):定期的な肝機能検査が推奨。
  • 腎機能関連検査値の変化:血中クレアチニン、尿素窒素の軽度上昇、eGFR低下など。
  • 血液関連:貧血、ヘモグロビン低下など。
  • 筋障害・筋痙縮・四肢痛:単剤では頻度は高くないものの、スタチン併用でリスク増大に注意。
  • その他:四肢痛、関節症状、消化器症状など。

特に高尿酸血症・痛風の既往がある患者では、症状の悪化や新たな発作に注意し、血清尿酸値を定期的にモニタリングすることが推奨されます。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 高コレステロール血症または家族性高コレステロール血症であることを確認したか。
  • 食事療法・運動療法などの基本療法が実施されているか。
  • スタチン治療で効果不十分、またはスタチン不耐(禁忌・副作用)の条件を満たしているか。
  • HoFH症例ではないか(HoFHの場合は非薬物療法の補助としてやむを得ない場合に限定)。
  • 投与前に肝機能・腎機能・CK・尿酸値等の検査を実施しているか。
  • 痛風の既往や高尿酸血症の有無を確認したか。
  • 併用中のスタチンやエゼチミブなど、他の脂質異常症治療薬を把握し、相互作用リスクを評価したか。
  • 妊娠の可能性がないか、避妊の必要性を説明したか。
  • 2026年11月末日までは1回14日分までの投薬制限があることを念頭に置き、処方日数を調整しているか。

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 1日1回服用であること、毎日同じ時間帯に継続することの重要性を説明する。
  • 食事の影響は少ないが、「飲み忘れ防止のための工夫」を患者と相談し決める。
  • スタチン併用中の場合、筋肉痛・こむら返り・筋力低下などが続いたら受診するよう強調する。
  • 高尿酸血症・痛風の既往がある場合、関節痛や足趾の腫れなどの症状にも早期受診を促す。
  • 他の脂質異常症治療薬やサプリメント(ナイアシンなど)を自己判断で追加しないよう注意喚起する。
  • 妊娠を希望する場合や授乳中の場合は、必ず主治医に相談するよう伝える。

ケアポイント(看護師向け)

  • 定期受診時に服薬状況を確認し、飲み忘れや中断がないかチェックする。
  • 体重、血圧、生活習慣(食事・運動・喫煙)の変化を継続的に評価し、必要に応じて指導につなぐ。
  • 痛風発作様の症状(足の親指の疼痛・発赤など)がないか観察し、患者にも注意点を共有する。
  • 筋肉痛や脱力感を訴える場合は、スタチン併用の有無も含めて医師へ情報共有する。
  • 検査予定(脂質・尿酸・肝機能・CKなど)と結果を患者と一緒に確認し、治療継続の意義をわかりやすく説明する。

まとめ

『ネクセトールは、スタチンだけではLDLコレステロールのコントロールが難しい方や、スタチンが使いにくい方にプラスできる新しいタイプのお薬ですね。尿酸値や筋肉の症状などに気をつけながら、患者さん一人ひとりのリスクに合わせて、より安心できる脂質管理につなげていけたらいいな、と感じました。』

執筆者:薬剤師(大学病院)
参考・引用資料:添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイド、メーカープレスリリース資料など
※掲載内容には細心の注意を払っておりますが、古い情報や誤りを含む場合があります。最新の添付文書などをご確認ください。
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