【2025年10月27日発売】プレバイミス顆粒分包(レテルモビル)の特徴、作用機序

『みなさん、こんにちは。今回は2025年10月に新たに発売されたサイトメガロウイルス感染症発症抑制薬「プレバイミス顆粒分包」について、簡単にまとめました。』

はじめに:プレバイミス顆粒分包とは

プレバイミス顆粒分包(一般名:レテルモビル)は、免疫抑制状態にある患者、特に造血幹細胞移植(HSCT)や固形臓器移植(SOT)後の患者において高リスクとなるサイトメガロウイルス(CMV)感染症の発症を抑制するための抗CMV化学療法剤です。

CMVは多くの人が保有しているウイルスで、通常は問題を起こしませんが、免疫力が低下している移植後の患者では再活性化して感染症を引き起こすことがあります。特に小児HSCT患者では予防投与に使用できる抗CMV薬が国内で承認されていなかったため、治療選択肢が限られていました。

プレバイミスは、CMVのDNAターミナーゼ複合体を標的とした新規作用機序を有しており、これまでの抗ウイルス薬とは異なるメカニズムでウイルスの複製を抑制します。既存の錠剤・注射剤に加えて、2025年に体重に応じた用量調節が可能な小児用顆粒製剤として本剤が登場し、小児HSCT・SOT患者への使用が現実的なものとなりました。

製品概要

  • 商品名:プレバイミス顆粒分包20mg・120mg
  • 一般名:レテルモビル(Letermovir)
  • 製造販売元:MSD株式会社
  • 薬効分類:抗サイトメガロウイルス化学療法剤
  • 製造販売承認日:2025年3月27日
  • 薬価基準収載日:2025年5月21日
  • 発売日:2025年10月27日
  • 剤形:顆粒分包(20mg/包、120mg/包)

作用機序と特徴

レテルモビルは、CMVの複製過程に必要不可欠なDNAターミナーゼ複合体(pUL56サブユニットを含む)を特異的に阻害することにより、ウイルス粒子の成熟・放出を阻害します。

従来の抗CMV薬(ガンシクロビル、ホスカルネット等)はDNAポリメラーゼ阻害を作用機序としますが、プレバイミスはそれらとは異なる部位を標的とするため、既存薬に対して耐性を持つCMVにも有効である可能性があります。また、腎毒性や骨髄抑制といった副作用リスクが低い点も特徴です。

顆粒分包は、小児における体重に応じた用量調整が可能であり、内服のしやすさにも配慮された剤形です。

効能・効果・適応症

効能・効果:
造血幹細胞移植又は臓器移植におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制

用法・用量と投与時の注意点

用法・用量:
通常、レテルモビルとして、成人には240mgを1日1回経口投与する

なお、体重や年齢に応じて小児には下記表のとおり調整投与を行う。体重30kg未満の患者では顆粒分包製剤での用量調整が必要。

 

投与上の注意:

    • CMV感染が確認された場合は本剤を中止し、他の抗CMV薬による治療を検討。
    • 注射剤との切り替えが可能だが、小児(特に30kg未満)では換算用量に注意。
    • 同種造血幹細胞移植患者では、十分な知識と経験を有する医師の管理下で投与を行うこと。

 

相互作用・代謝経路

代謝・排泄:プレバイミスは主に肝代謝酵素(CYP3A)によって代謝され、OATP1B1/3の基質でもあります。

併用禁忌:

  • ピモジド、シルデナフィル(肺高血圧症治療目的)、アスナプレビル、リファンピシンなど:QT延長や血中濃度異常によるリスクあり

併用注意:

  • シクロスポリン:血中濃度が上昇するため、減量が必要
  • タクロリムス、シロリムス:CYP3A基質であるため、血中濃度上昇の可能性
  • スタチン系薬剤:ミオパチーのリスク増加の可能性があるため慎重投与
  • 抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトイン等):酵素誘導により本剤の効果減弱の可能性
  • ワルファリン:CYP2C9を介した相互作用に注意

食事の影響について

食後でも空腹時でも服用可能ですが、食後投与の方が吸収のばらつきが少ないとされています。経口投与時には可能であれば食後の服用を推奨します。

主な副作用と安全性情報

主な副作用(臨床試験・市販後調査より)

  • 悪心、下痢、腹痛
  • ALT・AST上昇(肝機能異常)
  • 頭痛、疲労
  • 注射部位反応(注射剤使用時)

重大な副作用:

  • アナフィラキシー様症状(頻度は不明)
  • 重篤な肝障害(黄疸、肝酵素高値など)
  • 薬剤性過敏症症候群(DRESS)

副作用の発現頻度は比較的低く、腎毒性・骨髄抑制の報告も少ないため、安全性の高い薬剤とされています。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • HSCTまたはSOT後のCMV再活性化リスクがあるか
  • CMV感染症の既往、現在の血清CMV状況を確認
  • 肝機能検査・薬物相互作用の事前確認
  • 併用薬(特に免疫抑制剤やスタチン)との相互作用に注意
  • 小児に対しては体重に応じた用量調整を行っているか

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 毎日決まった時間に1日1回服用するよう説明
  • 食後の服用が望ましいことを案内
  • CMV感染症の予防に適応があるのは本剤のみ。自己判断でやめないよう指導
  • 併用薬との飲み合わせ、飲み忘れ時の対応を丁寧に説明
  • 下痢や発熱などの異常があれば速やかに報告するよう指導

ケアポイント(看護師向け)

  • 服薬管理が適切に行われているか確認
  • 肝機能・副作用(腹部症状、発疹など)の変化に注目
  • CMV感染徴候(発熱、倦怠感など)の早期発見を意識
  • 移植後の患者に対し心理的ケアと服薬継続の声かけ
  • 定期検査(CMV定量PCRなど)の日程管理と声かけ

まとめ

『プレバイミス顆粒は、小さな患者さんでも飲みやすくて、CMV予防ができる心強いお薬やね。安心して移植後を過ごせるように、チームみんなでサポートしていきたいですね』

執筆者:薬剤師(大学病院)
参考・引用資料:添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイド、メーカープレスリリース資料など
※掲載内容には細心の注意を払っておりますが、古い情報や誤りを含む場合があります。最新の添付文書などをご確認ください。
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