【2025年5月21日発売】カムザイオスカプセル(マバカムテン)の特徴、作用機序

『みなさん、こんにちは。今回は2025年5月に新たに発売された閉塞性肥大型心筋症治療薬「カムザイオス」について、簡単にまとめました。』

はじめに:カムザイオスとは

カムザイオス(一般名:マバカムテン)は、2025年5月21日にブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社より発売された、国内初となる閉塞性肥大型心筋症(HOCM)治療薬です。HCMは心室壁肥大を特徴とする指定難病で、2023年度の特定医療費受給者証所持者数は約4,400人と報告されています。特に閉塞性HCM(HOCM)は、心室中隔の肥大により左室流出路(LVOT)が狭窄し、息切れや疲労、失神などの症状や、進行例では心不全や突然死のリスクも指摘されています。

従来はβ遮断薬やCa拮抗薬などが治療の中心でしたが、これらで効果不十分な場合、心筋ミオシン阻害薬が治療の選択肢となりました。カムザイオスはサルコメア異常による心筋の過収縮に直接作用することで、LVOT狭窄の改善や心機能維持に貢献しうる、期待の新薬です。

製品概要

  • 商品名:カムザイオスカプセル1mg、2.5mg、5mg
  • 一般名:マバカムテン
  • 製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社
  • 薬効分類:その他の循環器官用薬(選択的心筋ミオシン阻害剤)
  • 効能・効果:閉塞性肥大型心筋症
  • 承認日:2025年3月27日 
  • 発売日:2025年5月21日
  • 包装:1mg/2.5mg/5mg 各30カプセル(PTP)

作用機序と特徴

マバカムテンは、心筋ミオシンのATP加水分解サイクルを選択的かつ可逆的に阻害し、肥大型心筋症で過剰となったアクチン-ミオシン間のクロスブリッジ形成を抑制する作用を持ちます。これにより心筋の過収縮を抑え、エネルギー消費を減らし、左室流出路狭窄(LVOT狭窄)や拡張機能障害を改善します。従来治療で改善困難なHOCMに対し、根本的な病態修飾が期待できる国内初の経口薬です。

効能・効果・適応症

閉塞性肥大型心筋症(症候性HOCM患者への適応)

用法・用量と投与時の注意点

通常、成人にはマバカムテンとして2.5mgを1日1回経口投与から開始し、患者の状態に応じて1mg~15mgの範囲で増減します。
投与開始前・開始後は心エコーによる左室駆出率(LVEF)・バルサルバLVOT圧較差の評価・モニタリングが必須です。LVEFが55%未満では投与不可、投与中に50%未満となった場合は休薬・減量を検討します。投与量調整は4~12週間ごと、維持期は12~24週間ごとに心エコー管理が必要です。
PTP包装剤はシートから取り出して水とともに服用させます。

相互作用・代謝経路

マバカムテンは主にCYP2C19およびCYP3A4で代謝されます。CYP3A4強力阻害薬(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)、CYP2C19阻害薬(フルコナゾール等)、CYP3A4誘導薬(リファンピシン等)との併用に注意が必要です。β遮断薬や非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、クラスⅠA抗不整脈薬との併用も、陰性変力作用の増強に注意して患者状態を慎重に観察します。

食事の影響について

高脂肪食摂取時はTmaxの遅延、Cmaxの低下(50%減)、AUC12%増が報告されていますが、臨床的な意義は限定的です。基本的には食事の影響は少なく、食前・食後どちらでも服用可能です。

主な副作用と安全性情報

  • 心不全(収縮機能障害に伴うNT-proBNP上昇、呼吸困難、浮腫、疲労、動悸等)
  • 浮動性めまい、頭痛、疲労、末梢性浮腫、心房細動、動悸
  • 筋力低下、労作性呼吸困難、不眠症
  • 駆出率減少

心機能悪化・LVEF低下があれば速やかに評価し、休薬・中止等の対応が必要です。重度肝機能障害例・妊婦・授乳婦・小児は原則禁忌です。

処方時のチェックリスト(医師向け)

  • 閉塞性肥大型心筋症の診断と適応確認(LVEF・LVOT圧較差)
  • 投与開始前・投与中の定期的な心エコー管理
  • CYP3A4・2C19阻害薬/誘導薬、β遮断薬などの併用確認
  • 心不全兆候や副作用発現時の早期対応
  • 妊婦・授乳婦・小児・重度肝機能障害は投与不可

服薬指導のポイント(薬剤師向け)

  • 用法・用量、定期的な心エコーの重要性説明
  • 副作用(息切れ、むくみ、倦怠感等)出現時の医療機関受診指導
  • PTPシートから取り出して服用、噛まずに服用すること
  • 併用薬やサプリメントの申告、併用薬管理
  • 妊娠・授乳中、肝障害、持病のある方は必ず申告

ケアポイント(看護師向け)

  • バイタルサイン・心機能・自覚症状の観察
  • 定期心エコー・診察受診のアドヒアランス支援
  • 副作用や異変の早期把握と医師への報告
  • 薬の正しい服用方法説明、自己管理支援
  • 心理的サポートや生活指導

まとめ

『カムザイオスは、閉塞性肥大型心筋症に対して根本からアプローチする国内初の経口治療薬です。定期的な心エコー管理や多職種連携を大切に、患者さんのQOL向上に役立てていきたいですね。』

執筆者:薬剤師[博士(薬学)]
参考・引用資料:添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイド、メーカープレスリリース資料など
※掲載内容には細心の注意を払っておりますが、古い情報や誤りがある場合がございます。最新の添付文書などをご確認ください。
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