【2024年10月11日発売】ハイイータン錠50mg(グマロンチニブ水和物)の特徴・作用機序

開発の経緯について

ハイイータン錠50mg(一般名:グマロンチニブ水和物、以下、本剤)は、中国のHaihe Biopharma Co., Ltd.により開発された、間葉上皮転換因子(MET)に対する阻害作用を有する低分子化合物である。METのリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異は、通常、上皮成長因子受容体(EGFR)変異、カーステン・ラット肉腫ウイルスがん遺伝子(KRAS)変異、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)変異、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)再構成、ROS1がん遺伝子受容体チロシンキナーゼ(ROS1)再構成、RET前がん遺伝子(RET)再構成等の他のドライバー遺伝子と共存しない、非小細胞肺癌の重要な発がん要因の1つである。EGFR、KRAS変異又はALK再構成を有する患者と比較して、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異を有する非小細胞肺癌患者は一般的に高齢で(年齢の中央値、72歳)、MET変異を有する腫瘍は、急速な成長、浸潤、再発、転移を特徴とし、予後不良を伴うことが多いと報告されている。実際、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異を有する転移性非小細胞肺癌患者において、MET阻害剤で治療しない場合の全生存期間の中央値は8.1ヵ月であった。
本剤は、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異及びMET増幅を有するヒト非小細胞癌由来細胞株を皮下移植した免疫不全マウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した(マウス)。
本剤は2017年より中国で第Ⅰ相試験が開始され、2020年より国内第I相用量漸増試験を開始し、安全性が検討された。第Ⅱ相試験は2019年より、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者を対象とした国際共同第Ⅰb/Ⅱ相試験(SCC244-108/GLORY試験)の第Ⅱ相パートとして実施され、本剤の有効性及び安全性が検討された。
以上の結果より「MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能又は効果として、2024年6月に製造販売承認を取得した。

作用機序

本剤は、間葉上皮転換因子(MET)に対する阻害作用を有する低分子化合物であり、METのリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

製品情報

商品名ハイイータン錠50mg
一般名
(洋名)
グマロンチニブ水和物
(Gumarontinib Hydrate)
承認年月日2024年6月24日
発売年月日2024年10月11日
メーカー製造販売元:海和製薬(株)
販売元:大鵬薬品工業(株)
名前の由来特になし
ステムチロシンキナーゼ阻害剤:-tinib

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効能又は効果

MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌

警告

・本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
・本剤の投与により間質性肺疾患があらわれることがあるので、初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び定期的な胸部画像検査の実施等、観察を十分に行うこと。また、異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。

禁忌

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

用法及び用量

通常、成人にはグマロンチニブとして1回300mgを1日1回空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

注意

・食後に本剤を投与した場合、本剤のCmax及びAUCが上昇するとの報告がある。食事の影響を避けるため、食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けること。
・副作用が発現した場合は、添付文書記載の基準を考慮して、本剤を休薬、減量又は中止すること。

代謝・代謝酵素について

グマロンチニブは主にCYP3A、CYP2C8、及びCYP2C9によって代謝される(in vitro)。CYP3Aはグマロンチニブの代謝に寄与する主なCYP分子種ではあるが、グマロンチニブの代謝に対するCYP3Aの寄与は限定的である(5%未満)。健康成人(6例)に14Cで標識されたグマロンチニブ300mgを単回経口投与したとき、投与168時間後までの血漿中に、主に未変化体及び薬理活性を示さない代謝物M199(スルホンアミド加水分解物)が検出された(血漿中総放射能のAUC168hに対する割合は、それぞれ52.72%及び27.23%)(外国人データ)。

食事の影響

健康成人(18例)にグマロンチニブ300mgを単回経口投与したとき、空腹時投与に対する高脂肪食後又は低脂肪食後投与におけるグマロンチニブのAUC0-∞及びCmaxの幾何平均値の比は、高脂肪食後投与ではそれぞれ2.36及び1.95、低脂肪食後投与ではそれぞれ2.18及び1.95であった。また、グマロンチニブの曝露量に対する高脂肪食及び低脂肪食の影響は以下の通りであった。

上記の結果から、食事の影響を避けるため、食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けることとなっている。

副作用(抜粋)

・重大な副作用として間質性肺疾患、体液貯留、肝機能障害、QT間隔延長が報告されている。

・主な副作用(10%以上で発現)は、疲労、食欲減退、高血糖、低カリウム血症、高尿酸血症、低ナトリウム血症、低カルシウム血症、悪心、嘔吐、便秘、貧血、白血球減少症、好中球減少症、血小板減少症、血中クレアチニン増加、蛋白尿、発疹、四肢痛、頭痛であった。

こちらのサイトは記載日時点の添付文書、インタビューフォームをまとめたものです。記載内容には十分な注意を払っておりますが、医療の情報は日々新しくなるため、誤り等がある場合がございます。参考にする場合は必ず最新の添付文書等をご確認ください。

情報更新日:2024年10月

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