
『みなさん、こんにちは。今回は2025年3月に新たに発売された潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック・0.92mg」について、簡単にまとめました。』
はじめに:ゼポジアとは
ゼポジア(一般名:オザニモド塩酸塩)は、2025年3月19日にブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社より発売された経口の潰瘍性大腸炎(UC)治療薬です。UCは大腸粘膜にびらんや潰瘍が生じる炎症性腸疾患で、主な症状は下痢、血便、腹痛など。指定難病のひとつで、2023年度の特定医療費受給者証所持者数は約14万6,702人にのぼります。再燃・寛解を繰り返し、長期化すると大腸がんのリスクも増加する疾患です。
UCの治療は寛解導入と維持に分かれ、既存の5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤やステロイド製剤が第一選択ですが、効果不十分例や重症例では生物学的製剤やJAK阻害剤などへの切り替えも必要となります。一方で、服薬コンプライアンスや利便性・安全性の観点から、新たな経口治療薬のニーズが高まっていました。ゼポジアは、従来の薬剤で効果が不十分な中等症~重症UC患者に対し、新規作用機序と高い利便性を持つS1P(スフィンゴシン1-リン酸)受容体調節薬として登場しました。
製品概要
- 商品名:ゼポジアカプセルスターターパック、ゼポジアカプセル0.92mg
- 一般名:オザニモド塩酸塩
- 薬効分類:潰瘍性大腸炎治療薬/S1P受容体調節薬(239)
- 製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社
- 効能・効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合)
- 承認日:2024年12月27日
- 発売日:2025年3月19日
- 包装:スターターパック(0.23mg×4、0.46mg×3)、0.92mg(28カプセル)
作用機序と特徴
ゼポジアの有効成分オザニモドは、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体のサブタイプ1(S1P1)および5(S1P5)に選択的に結合するS1P受容体調節薬です。S1P1受容体に作用し、リンパ球を末梢循環からリンパ組織に留めることで、炎症部位(大腸粘膜)へのリンパ球の遊走を抑制し、炎症反応を低減します。
従来薬で効果が乏しい患者に新たな経口選択肢を提供し、臨床試験では投与12週時点で臨床的改善率がプラセボに比べて有意に高く、特に0.92mg群で61.5%の改善率が示されています。また、1日1回経口投与という利便性も大きな特徴です。
効能・効果・適応症
中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)
用法・用量と投与時の注意点
通常、成人にはオザニモドとして下記の用法・用量で投与します。
- 1~4日目:0.23mgを1日1回
- 5~7日目:0.46mgを1日1回
- 8日目以降:0.92mgを1日1回
初回投与時は心拍数低下リスクに備えて漸増投与が必須です。スターターパックを用い、8日目から0.92mgカプセルに切り替えます。休薬期間が長くなった場合は再度漸増投与が必要です。また、肝機能障害や心疾患リスクのある方、高齢者では慎重な投与が求められます。
相互作用・代謝経路
オザニモドは主にアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)、CYP3A4、CYP2C8などで代謝され、P-gp基質でもあります。CYP2C8阻害薬(例:クロピドグレル)や誘導薬(例:リファンピシン)、MAO阻害剤(例:セレギリン)との併用は血中濃度変化のリスクがあるため注意が必要です。
生ワクチンは投与中および投与終了後3カ月は接種を避けてください。不活化ワクチンも効果減弱の可能性があります。
食事の影響について
食事の影響はほとんどなく、空腹時・食後いずれでも服用可能です。
主な副作用と安全性情報
- 感染症(帯状疱疹2.8%、口腔ヘルペス0.6%など)
- 肝機能障害(ALT増加4.6%、AST増加3.1%、γ-GTP増加3.1%)
- リンパ球減少(10.2%)
- 徐脈性不整脈(1.7%)
- 黄斑浮腫(0.6%)
- 可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)
- 頭痛、めまい、高血圧、浮腫、皮疹など多様な副作用
特に心疾患既往や黄斑浮腫リスク(糖尿病、ぶどう膜炎既往)のある患者では、治療開始前に心電図・眼科的検査を推奨。治療中は定期的な肝機能・血液・眼科検査を実施してください。
処方時のチェックリスト(医師向け)
- 心疾患・徐脈・伝導異常・QT延長歴の確認と心電図検査
- 黄斑浮腫リスク(糖尿病、ぶどう膜炎など)の有無
- 既存治療薬(5-ASA、ステロイドなど)での治療経過確認
- 活動性感染症、肝機能障害の有無
- 生ワクチン接種歴の確認(必要なら投与開始前に接種)
- 適切な知識・経験を持つ医師のもと、緊急対応可能な施設での治療
- 患者への説明と同意取得(完治薬ではないことを含む)
服薬指導のポイント(薬剤師向け)
- PTPシートから取り出して服用するよう指導(誤飲防止)
- カプセルは噛まず、開けずにそのまま飲み込むこと
- 服薬スケジュール(スターターパック→0.92mg)をしっかり説明
- 心拍数低下・めまい・失神・息切れなどの副作用に注意し、異常時は速やかに受診を促す
- 定期検査(肝機能・血液・眼科)の必要性を説明
- 服薬を自己中断せず、医師と連携して治療を継続する重要性
ケアポイント(看護師向け)
- 初回投与時や漸増期間のバイタルサイン(特に脈拍)のモニタリング
- 感染症・肝機能障害・浮腫・皮疹など副作用の早期発見
- 患者がめまい・視力障害・息切れ等を訴えた際の迅速な対応
- 定期的な眼科・心電図・肝機能検査への協力
- 患者・家族への副作用・服薬管理に関する説明と不安の軽減
まとめ

『ゼポジアは新規作用機序を持つ潰瘍性大腸炎治療薬として、従来の治療で効果が不十分な患者さんの新たな選択肢です。1日1回の経口投与で利便性も高く、QOLの向上に貢献することが期待されます。治療の際は副作用管理と服薬アドヒアランスの維持に気をつけながら、現場で活用していきたいですね。』