開発の経緯について
卵巣癌は主に閉経後の女性に多く発症する癌であり、患者の約 75%が 50 歳以上の女性である。卵巣癌の初期段階では症状に乏しく、早期の検出が困難であるため、進行してから初めて検出されることがしばしばであり、予後は不良とされている。進行性の卵巣癌患者の多くは一次治療後に再発し、治療を受けるごとに治療の反応性が低下し無増悪生存期間(PFS)は短くなり、5 年生存率は全ステージを通じると 47%と報告されている。
卵巣癌は女性生殖器悪性腫瘍の中で最も死亡者数の多い疾患であり、罹患数及び死亡者数は増加傾向にある。過去 5 年間の全国死亡者数は 5,000 人程度、全国罹患数は 1 万人程度、年齢調整全国罹患率は人口 10 万人当たり 10.5~11.9 人と推計されている。
ゼジューラは、メルク〔現 Merck Sharp and Dohme(MSD)〕社により創製され、TESARO〔現 GlaxoSmith Kline(GSK)〕社により開発が進められた経口投与可能で選択的な PARP1 及び PARP2 阻害剤であり、非臨床試験では breast cancer gene(BRCA 遺伝子)変異を含む相同組換え修復欠損陽性腫瘍に対する腫瘍縮小効果が示された PARP 阻害剤である。
作用機序
ニラパリブは、ヒト PARP-1 及び PARP-2 の酵素活性を阻害する。
PARP を阻害すると、DNA 複製時に複製フォークの障害が起こり二本鎖切断を生じる。通常は相同組換え(HR)によって修復されるが、相同組換え修復欠損(HRD)を有する卵巣癌では、二本鎖切断を修復することができず細胞死に至る。
製品情報
商品名 | ゼジューラカプセル |
一般名 (洋名) | ニラパリブトシル酸塩水和物 (Niraparib Tosilate Hydrate) |
発売年月日 | 2020 年 11 月 20 日 |
メーカー | 武田薬品工業株式会社 |
ステム | ポリアデノシン 5′-二リン酸-リボースポリメラーゼ阻害剤:-parib |
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効能又は効果
〇卵巣癌における初回化学療法後の維持療法
〇白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法
〇白金系抗悪性腫瘍剤感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣癌
警告
本剤は、緊急時に十分対応できる医療機関において、がん化学療法に十分な知識及び経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又は患者の家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
禁忌
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
用法及び用量
通常、成人にはニラパリブとして1日1回200mgを経口投与する。ただし、本剤初回投与前の体重が77kg以上かつ血小板数が150,000/μL以上の成人にはニラパリブとして1日1回300mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
注意
本剤投与により副作用が発現した場合には、添付文書に記載の基準を参考に、本剤を休薬、減量、中止すること。
カプセル剤の貯法は冷蔵だが、錠剤は室温で管理することができる。
代謝・代謝酵素について
ニラパリブは、主に薬物代謝酵素カルボキシエステラーゼで代謝される(in vitro)。
食事の影響
卵巣癌患者 16 例に本剤 300mg を単回経口投与したとき、空腹時投与に対する高脂肪食後投与におけるニラパリブの Cmax 及び AUCinf の最小二乗平均値の比は、それぞれ 0.785 及び 1.10 であった(外国人データ)。
副作用(抜粋)
重大な副作用として、骨髄抑制(78.8%)、高血圧(9.8%)、可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)、間質性肺疾患(0.6%)があらわれることがある。
発現頻度 10%以上の主な副作用として、頭痛、不眠症、悪心(59.1%)、便秘(24.2%)、嘔吐(20.0%)、食欲減退、下痢、疲労、無力症が報告されている。
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