ベネクレクスタ錠(ベネトクラクス)の特徴・作用機序

開発の経緯について
ベネクレクスタ錠(以下,本剤)は,B 細胞性リンパ腫-2(B-cell lymphoma-2:BCL-2)阻害薬であるベネトクラクスを有効成分とするフィルムコーティング錠である.慢性リンパ性白血病(CLL)では BCL-2 が過剰発現していることが知られており,CLL 細胞の生存は一般に BCL-2 に依存するとされている .ベネトクラクスは直接かつ選択的 に BCL-2 と結合することにより,BCL-2 からアポトーシス促進性タンパク質を遊離させ,CLL 細胞を速やかなアポトーシスに誘導する.BCL-2 ファミリータンパク質に対する選択性を検討した in vitro 試験では,ベネトクラクスは BCL-2 に高い結合親和性(Ki<0.01nmol/L)を示したのに対し,他の BCL-2 ファミリータンパク質(BCL-XL,BCL-w,MCL-1)に対する結合親和性は低かった(Ki はそれぞれ 48nmol/L,245nmol/L,>444nmol/L).また,抗腫瘍作用の検討では,ベネトクラクスは BCL-2 依存性の腫瘍細胞の増殖を in vitro で阻害し,さらに患者由来 CLL 細胞を ex vivo で傷害することが示された(EC50=6nmol/L).
近年,本邦においても CLL に対する新規分子標的剤が承認され,臨床現場での治療選択肢は拡大しているが,海外に比べ依然として臨床使用可能な承認薬剤は限られている.とくに既存治療に対して再発又は難治性となった患者,予後不良因子を有する患者に対する奏効率の向上,奏効期間の延長,安全性の向上,長期にわたる病勢のコントロールが課題であり,新しい作用機序を有する薬剤の導入が望まれている.
CLL における本邦での臨床課題は,再発又は難治性患者の治療,予後不良患者での奏効率向上,奏効期間の延長,安全性の向上,長期の病勢コントロールなどの解決であり,新規作用機序の薬剤が望まれていた.

一方,急性骨髄性白血病(AML)は,成人で最もよく見られる急性白血病であり,CLL と同様に BCL-2 が過剰発現している.その罹患率は年齢とともに高くなり,本邦では AML 患者のうち 65 歳以上の割合は 56%で,65 歳以上の AML 患者の 39%は強力な寛解導入療法の適応とならないと推定されている .また,重大な併存疾患を有する若年例も,強力な寛解導入療法に対する忍容性は低く,本邦では 65 歳未満の AML 患者の 17%を占めると推定されている.現在,本邦では強力な寛解導入療法の適応とならない未治療の AML に対する標準的な治療はなく,国内ガイドライン上,使用可能な治療法はシタラビン単剤の少量療法のみであることから,新たな治療法の必要性は高いと考えられてきた。

作用機序

ベネトクラクスは,アポトーシス抑制タンパク質である BCL-2 を選択的に阻害する経口投与可能な低分子化合物である.BCL-2 はアポトーシス促進性タンパク質(BAX/BAK,BIM など)と相互作用することにより,アポトーシス抑制性に機能している.ベネトクラクスは,BCL-2 を直接結合することによりアポトーシス促進性タンパク質を遊離させ,腫瘍細胞を速やかなアポトーシスに誘導し,抗腫瘍作用を示すと考えられている.

製品情報

商品名ベネクレクスタ錠
一般名
(洋名)
ベネトクラクス
(Venetoclax)
発売年月日2019年11月22日
メーカーアッヴィ合同会社
ステムBCL-2 阻害剤:-toclax

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効能又は効果

再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)
急性骨髄性白血病

警告
本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与を開始すること。
腫瘍崩壊症候群があらわれることがあり、特に本剤投与開始及び増量後1~2日に多く認められている。本剤の投与開始前及び休薬後の再開前に腫瘍量に基づく腫瘍崩壊症候群のリスク評価を行い、リスクに応じた予防措置を適切に行うこと。また、本剤投与開始前及び投与中は、血液検査(カリウム、カルシウム、リン、尿酸、クレアチニン)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には、適切な処置(生理食塩液、高尿酸血症治療剤等の投与、透析等)を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。
禁忌
<効能共通>
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
<再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)>
用量漸増期における強いCYP3A阻害剤(リトナビル、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、コビシスタット含有製剤)を投与中の患者

用法及び用量

<再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)>
通常、成人にはベネトクラクスとして、用量漸増期は第1週目に20mg、第2週目に50mg、第3週目に100mg、第4週目に200mg、第5週目に400mgをそれぞれ1日1回、7日間食後に経口投与する。その後の維持投与期は、400mgを1日1回、食後に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

<急性骨髄性白血病>
アザシチジン併用の場合:
通常、成人にはベネトクラクスとして、用量漸増期は1日目に100mg、2日目に200mg、3日目に400mgをそれぞれ1日1回、食後に経口投与する。その後の維持投与期は、400mgを1日1回、食後に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
シタラビン少量療法併用の場合:
通常、成人にはベネトクラクスとして、用量漸増期は1日目に100mg、2日目に200mg、3日目に400mg、4日目に600㎎をそれぞれ1日1回、食後に経口投与する。その後の維持投与期は、600mgを1日1回、食後に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

注意
〈効能共通〉
骨髄抑制があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に血液検査(血球数算定等)を行うこと。
〈再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)〉
腫瘍崩壊症候群があらわれることがあるため、以下の点に注意すること。
・本剤投与開始前に血液検査(カリウム、カルシウム、リン、尿酸、クレアチニン)を行い、電解質異常のある場合は本剤投与開始に先立ち補正を行うこと。
・本剤投与開始前から、高尿酸血症治療剤の投与を行うこと。
・本剤投与開始前に、X線(CT検査)等による腫瘍量の評価により、腫瘍崩壊症候群のリスク評価を行い、本剤投与開始前及び用量漸増期には、腫瘍量に応じて、添付文書記載の表を参考に対応すること。なお、具体的な方法、検査頻度等は患者の状態を考慮して判断すること。
・本剤投与開始後、2週間以上休薬した後に再開する場合には、本剤投与開始前及び用量漸増期と同様の腫瘍崩壊症候群のリスク評価及び予防措置を行うこと。
維持投与期においては、定期的に血液検査(カリウム、カルシウム、リン、尿酸、クレアチニン)を行うこと。
〈急性骨髄性白血病〉
腫瘍崩壊症候群があらわれることがあるため、以下の点に注意すること。
・白血球数が25×103/μL未満となるよう、本剤開始前に調整を行うこと。
・本剤投与開始前に血液検査(カリウム、カルシウム、リン、尿酸、クレアチニン)を行い、電解質異常のある場合は本剤投与開始に先立ち補正を行うこと。
・本剤投与開始前から、高尿酸血症治療剤の投与を行うこと。
・本剤投与開始前及び用量漸増期には、添付文書記載の表を参考に対応すること。また、本剤投与開始前に、腫瘍崩壊症候群のリスク評価を行い、腫瘍崩壊症候群の危険因子を有する患者の場合、頻回な検査の実施や本剤を減量して開始するなど、追加の予防策を考慮すること。なお、具体的な方法、検査頻度等は患者の状態を考慮して判断すること。
・維持投与期においては、定期的に血液検査(カリウム、カルシウム、リン、尿酸、クレアチニン)を行うこと。

代謝・代謝酵素について

本剤は主にCYP3Aにより代謝される。また、本剤はP-糖タンパク(P-gp)の基質であり、P-gpを阻害する。

食事の影響

健康成人女性 24 例を対象とした海外第Ⅰ相単回投与,クロスオーバー試験(M15-101 試験)において,絶食下,低脂肪食及び高脂肪食摂取後に本剤を単回投与した結果,ベネトクラクスの曝露量は絶食下と比較して,低脂肪食及び高脂肪食摂取後にそれぞれ約 3.4 倍及び 5.1~5.3 倍であった.

副作用(抜粋)

【重大な副作用】
腫瘍崩壊症候群(2.7%)、骨髄抑制「好中球減少(44.2%),貧血(15.7%),血小板減少(27.7%),発熱性好中球減少症(17.6%)」
感染症(29.3%)、肺炎(11.0%),敗血症(4.5%)

【その他の副作用(10%以上の頻度)】
悪心(24.0%)、下痢(20.8%)、嘔吐(11.2%)、食欲減退(10.1%)

こちらのサイトは記載日時点の添付文書、インタビューフォームをまとめたものです。記載内容には十分な注意を払っておりますが、医療の情報は日々新しくなるため、誤り等がある場合がございます。参考にする場合は必ず最新の添付文書等をご確認ください。

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