タブネオスカプセル(アバコパン)の特徴・作用機序

開発の経緯について

 タブネオス(一般名:アバコパン)は、米国 ChemoCentryx, Inc.によって創製され、キッセイ薬品工業株式会社が日本で開発した経口投与可能な選択的 C5a 受容体(C5aR)拮抗薬である。補体活性化の最終段階で産生される補体成分であるアナフィラトキシン C5a は C5a 受容体を活性化し、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎の病態進行に深く関わると考えられている。
 ANCA 関連血管炎は小型血管炎に分類される壊死性血管炎であり、主な病型に顕微鏡的多発血管炎(MPA)及び多発血管炎性肉芽腫症(GPA)がある。ANCA 関連血管炎はミエロペルオキシダーゼ(MPO)やプロテイナーゼ 3(PR3)などを対応抗原とする ANCA の出現を特徴とし、臨床的には、皮膚、腎、肺など様々な臓器に、多様な重症度の病変を呈する。
 ANCA 関連血管炎の病態の 1 つである GPA 患者は、未治療のままでは発症から 2 年以内に 93%が死亡するとされている。また、GPA 患者より MPA 患者の生存率は低いことが示されている。現在の ANCA 関連血管炎の標準治療として、海外ではシクロホスファミド+グルココルチコイド又はリツキシマブ+グルココルチコイドが用いられている。本邦ではシクロホスファミド+グルココルチコイドが初期治療として推奨されているものの、リツキシマブの使用が適切と判断される症例においては、ANCA 関連血管炎の治療に対して十分な知識・経験をもつ医師のもとで、リツキシマブ+グルココルチコイドを用いてもよいとされており、ANCA 関連血管炎の標準治療に国内外で大きな差はない。これらの標準治療が導入されて以降、ANCA 関連血管炎患者の死亡率は改善してはいるものの依然高いままであり、診断後 1 年以内に約 11%が死亡する。
 ANCA 関連血管炎の治療においては、疾患活動性の長期抑制、再燃率の低下、腎機能の改善、健康関連 QOL の改善、並びにグルココルチコイド等による治療関連副作用の最小化が大きな課題であり、アンメットメディカルニーズを満たす新しい安全な治療法が求められている。アバコパンは 2011 年 9 月から海外で MPA 及び GPA に対する臨床試験が開始され、第 III 相試験は国際共同治験として 2017 年から開始された。本邦では 2017 年 6 月に、米国を除く全世界の商業権を保持するスイスの ViforFresenius Medical Care Renal Pharma 社より、キッセイ薬品工業株式会社が日本国内におけるアバコパンの開発権及び販売権を取得した。その後、国内第 I 相試験を実施し、日本人及び白人におけるアバコパンの薬物動態及び安全性に大きな違いがないことが確認されたため、国際共同治験として実施された第 III 相試験に日本人患者 21例を組み入れた。その結果、ANCA 関連血管炎に対するアバコパンの有効性及び安全性が確認されたことから、2021年 2 月に製造販売承認申請を行い、2021 年 9 月に「顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症」を効能又は効果として製造販売承認を取得した。なお、本剤は 2019 年 3 月に希少疾病用医薬品(指定番号:(31 薬)第 430 号)の指定を受けている。

作用機序

 アバコパンは選択的 C5a 受容体(C5aR)拮抗作用によって C5a-C5aR シグナルを介した好中球のプライミングを抑制する。それにより、好中球によって誘発される 抗好中球細胞質抗体(ANCA) を介した血管炎の増幅を緩和させ、ANCA 関連血管炎の病態を改善する。

製品情報

商品名タブネオスカプセル10mg
一般名
(洋名)
アバコパン
(Avacopan)
発売年月日
メーカーキッセイ薬品工業株式会社
名前の由来Target ANCA Vasculitis と”NEOS”(ギリシャ語で新しいを意味する言葉)からタブネオス(TAVNEOS)とした。
ステム補体受容体拮抗薬/補体阻害薬:-copan

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効能又は効果

顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症

禁忌

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

用法及び用量

通常、成人にはアバコパンとして1回30 mgを1日2回朝夕食後に経口投与する。

注意

本剤の投与中はニューモシスティス肺炎に対する適切な予防措置を考慮すること。

代謝・代謝酵素について

 アバコパンは主に CYP3A4、その他 2D6、2C19、2C8、2B6 等を介して肝臓で酸化的に代謝された(in vitro)。CYP3A4はアバコパンの代謝及び主要代謝物 M1(メチル基の水酸化体)の生成と代謝を担う主要な酵素である。

 アバコパンはいずれの CYP 分子種(CYP1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6 及び 3A4)に対して可逆的な阻害作用は示さなかったが、CYP3A4 に対し時間依存的阻害作用を示した(in vitro)。

食事の影響

 日本人健康成人男性 8 例に本剤 30mg を空腹時又は食後に単回経口投与したときの食事(低脂肪食)の影響を検討した結果、Tmax(空腹時:1.50 時間、食後:2.50 時間)及び t1/2(空腹時:44.3 時間、食後:109 時間)に影響を及ぼし、食後投与時の Cmax及び AUC0-∞は、空腹時投与に比較してそれぞれ約 1.08 倍及び 2.11 倍であった。

副作用(抜粋)

 重大な副作用として肝機能障害、重篤な感染症が報告されている。

 その他、1%以上~10%未満の副作用として、感染症(上気道感染、鼻咽頭炎、鼻炎)、血液およびリンパ系障害(好中球減少症)、胃腸障害(悪心、下痢、嘔吐、上腹部痛)、神経系障害(頭痛)などが報告されている。

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情報更新日:2022年3月

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